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No.1-1 ▼
世界を不幸にしたグローバリズムの正体 / レビュー総評点:351
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ASIN:4198615195 / 売上順位:47779
徳間書店(2002-05)翻訳:鈴木 主税/ジョセフ・E. スティグリッツ/原著:Joseph E. Stiglitz ¥ 1,890(中古:¥ 190)
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名著と悪訳
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基本的にグローバリズムと資本主義と市場原理を肯定しながらも、現在の特殊なグローバリゼーション(IMFとウォールストリート主導のグローバリゼーション)を厳しく具体的に批判した名著である。IMFは市場主義を教科書的に肯定しながらも、現実には強力な競争政策を放棄して一部の特権階層を潤すだけの民営化と自由化を各国で強引に押し進めており、このようなグローバリゼーションは世界を不幸にするものだ、というのが本書の趣旨である。
さて、本書の意義と限界はすでに多くのレビューが教えてくれている。問題はこの著作の翻訳水準である。翻訳者は有名なプロ翻訳家、鈴木主税。レビューの中にも「翻訳も鈴木主税の堅実な訳で文句なし」と太鼓判を押しているものがある。 しかしながら、原文と照合した結果として言えるのは、初歩的な誤訳満載のとんでもない欠陥翻訳書だということである。ほとんどどの頁にも誤訳が存在する(日本語だけを読んでいても気がつく誤訳も多数)。抜け落ちも非常に多く、場合によっては7〜8行まるまる訳し落とされている。 「Clinton administration(クリントン政権)」をところどころ「クリントン行政府」と訳している時点で実に素人的であり、マレーシアの「exit tax(海外送金課税)」を辞書どおりに「出国税」(旧ソ連にあった税金で、国内で教育を受けた人間が海外に移住する時に課す税金)と訳すなど、きちんと調べずに訳しているタームも多い。弟子に適当に翻訳をやらせて、名前だけ鈴木主税にしたのか? せっかくの名著も翻訳でかなり減点される結果になっているのは残念だ。(サンザンクロース / 2006-09-06)
本書では、実際に発展途上国のために行動を起こしてきた著者が、グローバリズムの経済的な担い手であるIMFを経済学的視点から批判している。
98年のアジア通貨危機、ソビエト連邦崩壊後の共産主義国の資本主義社会への移行の失敗など数々の事例を経済学的に分析し、IMFがそれらの国家に押付けた政策が逆効果であり、経済学的にも間違っていることを本書では次々と明らかにする。 にもかかわらず、根本的に彼とIMFとの間にある本質的な違いは、経済学的な立場の違い(ケインジアンとマネタリズム)の違いではない。 ここにあるのは、経済政策の、そして経済活動の「目的」の違いである。「経済とは何か」という問題に対する、姿勢の違いである。 経済政策の目的を貧困の絶滅と発展途上国の発展㡊??願う彼と、市場主義を絶対的に信奉して金融界の利益のみを考えているIMFの違いが根本的にあることが、本書では明かされている。 しかも、彼は邦訳タイトルから想像されかねない「反グローバリズム」主義者では決してない。世界を幸福にするグローバリズムの在り方を模索する姿がそこにはある。峻厳な「真の」経済学者の姿がここにある。(ケンイチロウ / 2003-03-29)
ノーベル賞経済学者によるIMF批判
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クリントン政権の経済諮問委員会(CEA)及び世界銀行副総裁として、1990年代後半の世界経済問題(旧共産主義国の市場経済への移行、東アジア通貨危機等)に実務面で関わった著者は、経済学の教科書も執筆している著名な経済学者である。その事実が、本書における批判を深みのあるものにしている。著者は、米国財務省及びIMFが金科玉条とする「ワシントン・コンセンサス」(インフレ抑制、均衡財政、自由化、民営化を推進する徹底的な自由市場主義)が、東アジア通貨危機を悪化させ、またロシア等の自由市場経済への移行を困難なものにしたのかを現場での経験及び経済的なロジックを使って分かりやすく説明する。本書は非常に説得力がある。それだけに、批判の対象となっているIMF・米財務省側の言い分も(あるのであれば)聞いてみたいものである。(万里馳駆 / 2004-03-16)
再訳の出版を望みます。
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近年では世界社会フォーラムにおいても発言をしている元世銀幹部のエッセイ。
反(新保守主義的・新自由主義的)グローバリズムの観点から見ても非常に頷ける叙述が多かったです。 グローバリゼーションそのものが悪いのではなく、現在進行中のグローバリゼーションの在り方が悪いとする本書の主張には非の打ちどころがありません。 しかし、その対策としてIMFを始めとする国際経済機関のみの批判や改善点の指摘で終わるのは、大変もったいないように思われました。 指摘がいちいちごもっともであるので、それを踏まえて経済思想やグローバル民主主義の在り方についても深く突っ込んでほしかったところです。 翻訳については、なかなか酷かったです。 翻訳という作業が非常に難しいことは理解しているつもりですが、それでも商品として売るのに、このクオリティではなかなか納得できないのではないでしょうか。 タイトルも、原著と比べてずいぶん扇情的なのが気にかかります。 内容の方について一つ例を挙げると、「IMF」を「IFM」と何か所も間違うというのは、誤植・語訳のレベルを超えていると思います。 校正をかけたのか疑わしくなります。 また、解説は全くの蛇足であり、必要ありません。 出版社の方にはその辺りを考慮された上、再訳の出版を望みます。(33 / 2008-11-03)
正しいグローバリズムのあり方を教える名著。「解説」さえなければ……
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アメリカ財務省とIMFが、硬直した方針を途上国に無理に押しつけてまわったために、多くの場合には途上国の問題が解決するどころかさらに悪化し、このために各種グローバリズムの問題と称されるものが出てきたのだ、と指摘する良書。世界銀行の主任エコノミストという立場にあって、各種の「経済支援」や政策決定にたずさわり、同時に政治的なかけひきを廃した(ある意味で大人げない)率直さで、純粋な経済学者として、IMFなどのまちがいをわかりやすく解説してくれる。
読みやすく、わかりやすいし、また現場の臨場感もあふれる。翻訳も鈴木主税の堅実な訳で文句なし。通俗的な反グローバリズム主義者たちも、是非本書を一読してほしい。本当のグローバリズムは、人々を豊かにして、世界中を向上させる。問題はそれをどうやるか、ということ。それが本書を読むとよくわかる。ただ、それを正しい方向に変えるのはなかなかむずかしい。でも、目指すべき方向は本書に示されている。もちろん、安易な市場万能グローバリズム翼賛主義者も熟読すべし。 唯一の欠点が、解説と称する駄文。「おれもスティグリッツと同じ主張を昔からしていた」と称する自慢がだらだらと垂れ流されるだけ。グローバリズムの問題点という本書の中心的な問題意識はまったく無視されて、スティグリッツの主張が散漫につまみ食いされるだけ。スティグリッツのなんたるかについても解説皆無だし、本書の持つ意義についての考察もまったくなし。「IMFは硬直しているが、日本の財務省も同じように硬直している」って、それがどうした。解説には、テレビで名を見るタレントひょーろんかなんかじゃなくて、きちんと解説できる人を起用してほしい。(h.yamagata / 2002-05-23)
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著名な経済学者で世界銀行の上級副総裁を務めたスティグリッツが、IMF(国際通貨基金)の構造調整政策を強く批判した書。
IMFは、グローバリゼーションの名のもとに、途上国それぞれの経済社会の実態を見つめようともせずに、緊縮財政、市場開放、民営化を強要した。途上国政府はIMFの指示に疑問を持ちつつも、あるいは誤りであることを承知しつつも、資金援助を失うことが恐いためにそれに従った。その結果途上国が経験した痛みは必要なレベルをはるかに超えていた。 その一方で、IMF自身は秘密主義で自己矛盾に満ちた存在だ。そもそもIMFは、第2次大戦後、市場はしばしば有効に機能しないとする信念の下に設立されたはずなのに、いまでは市場至上主義者になってしまった。 そのIMFは何故か為替相場だけには大規模に介入する。しかし、介入による相場維持は投機家を設けさせるだけである。 IMFのイデオロギーは、ウォールストリートの金融界の利益と一致しているとの指摘が妙に説得的である。 (いーた / 2006-05-17)
この本が凡百のグローバリズム批判と異なるのは、筆者が経済学的な思考を批判しているのではなく、「完全市場における自由競争」というナイーブな経済学を批判し、極めて経済学的な論理に基づいて不完全市場における政府の役割を肯定しているという点である。筆者はグローバリズムの役割を明確に肯定しているし、その役割が経済学的な無理解によって機能を果たしていないことを批判しているのである。
そのため、何を言っているのかは容易に分かるのだが、なぜそう言っているかを理解するには経済学の素養が必要になる。無意味な「経済学批判」をする人、特にその拠り所を失ったマル経の学者(もどき)やプロ市民たちが、「アメリカの偉い学者もそう言っておる」と言うために読むべき本ではない。むしろ、「開発学」のような誰も救わない学問に飽き飽きし、しかも教科書の単純なモデルだけでは人は救われないことを知っている人が読むべき本である。 また、某クーが場違いのことを解説に書いているが、極端に市場が機能しない途上国についての論理を、一応は先進国経済の端くれであるわが国の経済情勢に「置き換えて」批判するのは、正誤以前の問題としてナンセンスである。日本で失業することとインドネシアで失業することでは「痛み」の強さが違いすぎる。(insight2 / 2003-11-28)
この本のもっとも大事な主張を一言でいうと、IMFがすすめたグローバリズム、たとえば発展途上国に対する資本市場の自由化などが世界各国を破滅に導いてしまったということである。それに対して著者はケインジアン的(ケインズの理論を知っているわけではないが、この本の記述から十分読み取れるだろう)な立場から漸進主義的なグローバリズムを遂行することを主張する。そして、IMFの言うことを聞かないでそのような政策を採用した中国などが経済がよくなっていることを力説する。ところで、読みすすめていくと、どこか今の日本に似ているなと思ったが、解説を読んで合点がいった。やはりこの本は急激な構造改革・規制緩和を進める小泉改革の批判としても読めるのだ。以上のように、国内外の経済を考えるのにいい本であり、それなりの説得力があるので、星5つとする。(清高 / 2005-05-23)
IMFの大勢を占めている市場万能主義ないし市場至上主義が、理論を現実に押し付けているという現状を辛辣に批判している。著者スティグリッツ本人の情報の非対称性というロジックが、必ずしも本書に活かされているとは言い難いものの、著名な経済学者による国際機関に対する批判は、注目に値する。
本書に反論を呈する形で書かれた、白井早由里『メガバンク危機とIMF経済政策』角川書店、2002年、もあわせて読むと、より深い理解が得られることと思う。(grad / 2003-03-18)
ノーベル賞受賞経済学者であるスティグリッツ教授によるIMF批判の本です。スティグリッツ教授は、情報の経済学を発展させた功績で有名ですが、情報の経済学や市場の歪み論などは、IMFが理論的支柱としてきた新古典派経済学を修正するものでした。スティグリッツ「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」アジア通貨危機や中南米危機におけるIMFの政策のみならず、IMFの官僚的体質も鋭く批判しています。途上国経済に対し大きな影響力を行使するIMFと、米国及び金融界との政治的つながりを知り、何が途上国経済にとって最適なのかを考える上でも興味深い本ではないかと思います。(ごうすと / 2002-08-03)
著者は、ノーベル賞受賞者にして世界銀行上級副総裁まで務めた著名な経済学者です。本書は、IMF・世界銀行など国際金融秩序の安定を図るべき機関に対して、身内とも言うべき著者が歯に衣せぬ批判をしたことで大きな反響を呼んだ本です。
著者は、IMF・世銀が主に途上国の経済危機に際して当該国に対して行う施策が、的外れで国際金融秩序の安定という本来目的と外れた方向にしか作用していないことに警鐘を鳴らします。すなわち、当事国の雇用や景気に配慮しない市場化一辺倒の政策を押し付けがちなこと、例えば'98のアジア金融危機の際にはそれらの政策を拳々服膺しなかった国(韓国)ほど回復が早く、受容してしまった国(インドネシア)ほど傷が深くなってしまったことをあからさまに描き出します。 このようにこれらの国際機関がおかしくなってしまった原因として、著者は、これらの機関の幹部を構成するエリート達が、ワシントン(財務省等政府機関)−ニューヨーク(大手金融機関)という狭い世界でキャリアを形成していった結果、自分達の権益やイデオロギーにのみ従順な了見の狭さしか持ち合わせていないことに求めます。さらに一国の議会や行政機関と異なり、民主的基盤を持たない国際機関は、これらエリート達に他者に配慮することなく権限を振るえる環境を提供してしまうことを指摘しています。 選挙などの民主的洗礼にさらされることなく、他者には過酷な要求をしながら、自らは権限の大きさに比例した責任は決して引き受けようとはしない独善的なエリート達―。本書の解説をしておられるリチャード・クー氏は「日本の財務省を思い出す」として決して日本も無縁ではないことを力説していますが、皆さんはどのような機関を思い出されるでしょうか。私は日本銀行を思い浮かべましたが。(射手座 / 2006-08-09)
「世界を不幸にしたグローバリズム」とは、実はIMFが途上国に硬直した政策ー「緊縮財政」「民営化」を何が何でも推し進めるーを押し付け、その政策が失敗に帰しているところがそもそもの元凶なのだ、というのが本書の主張。特に市場メカニズムがまだ不十分な経済システム下では「政府の役割」が大切であり、IMF路線はそれらを全く看過していると喝破。
またそうした路線を押し付けるIMF自体も、内部からの批判に答えなかったり情報のディスク・ロージャーが全く不十分であるなどの硬直した組織であることにも批判を加えている。著者自身が経済学の「情報の非対称性」の大家であるだけに説得力があるように思える。 現在の日本では、不況下で適切なマクロ経済政策に失敗している中央銀行、過去のバブ㡊??期~その崩壊から失われた10年まで~金融政策の失敗に関して未だにアカウンタビリティーが欠如していたり、不況下の総需要不足の状況で構造改革を進めようとする(その実「改革なくして成長なし」を連呼するのみで具体案皆無だったりする)現状という、不適切な経済政策と結果責任を問われない組織の硬直した経済政策運営が行われている有様だが、本書ののIMF批判は日本にも当てはまりそうな気がする。(子母原心 / 2003-04-03)
第一線の経済学者による本ではあるが、さして経済学的バックグラウンドがなくとも十分に理解することができるし、そのメッセージを受け取ることができる。著者のスティグリッツはいわゆるニュー・ケインジアンの旗手の一人に加えられる。したがってシカゴ学派的な市場志向とは一線を画すスタンスをとる。今や初級のマクロ経済学においても言及されるような、効率賃金仮説であるとか、信用割当の問題に関して、彼は優れた分析を行ってきた。本書においても、そのような分析に基づく記述が随所に見られる。控えめにそれとなく、ではあるが。また、スタンフォード大学で近年研究が進展している比較制度分析の一連の研究プログラムにも何らかの形でコミットしており、市場と制度の関連について極めて意を用いる学者である。その彼が、国際金融機関のIMFに関して批判を行う一書を出した。今述べたような彼のスタンスからすれば、まことに納得のいく論の運び方をしている。結果的にIMFの採用する途上国への融資プログラムは、市場の性急なる自由化を強制するあまり所期の目的を達成しないばかりか、かえって逆効果をもたらしてきた。IMFとウォールストリートとの隠微な関連もあり、金融界の利益に奉仕しているのではないか、という批判もむべなるかな、である。自由化にしろ、グローバル化にしろ、長期的には人々に計り知れないベネフィットを齎す。そのことを彼は疑ってはいないのだが、問題なのはその手法である。市場が有効に機能するためには法制度的基盤が不可欠だが、それなしに自由化をすれば結果的に地下社会が蔓延るだけに終わるだろう。実際そのような痛ましい経験を私たちは見てきた。教室で教わる経済学が現実と切り結ぶときにどのような知的、倫理的動機が必要になるのか。彼のメッセージの射程はその意味でも幅広い。もっとも、真の困難はグローバリズムが成就した暁に起こるという見方も有力ではある。しかし、この本にそこまで求めるのは酷だろう。(itv / 2002-07-16)
現在、世界で進行中のグローバリゼーションとはアメリカ式の経済システムを世界標準として導入することであり、その推進役はWTO(世界貿易機関)、IMF(国際通貨基金)、世界銀行などの世界経済の安定と発展途上国の援助を使命とする国際機関です。しかし、実際にはこれらの組織が導入した援助プログラムにより東アジア、ロシア、東欧、アルゼンチン、アフリカ諸国はさらに経済的な困窮度合いを増してしまいました。この原因は国際機関がもつ歪んだ信念、アメリカ方式を押し付けることで利益を得る団体といった大国の二枚目の舌、すなわちダブル・スタンダードにあると筆者は指摘します。
筆者のスティグリッツは2001年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカきっての経済学者であり、1993年からクリントン政権の大統領経済諮問委員会、同会委員長を務め、世界銀行の上級副総裁兼チーフ・エコノミストを務めました。学問と政治と経済の現場を入れ替わりながら現実に機能する学問を築き挙げる姿勢がアメリカの研究教育機関のダイナミクスです。そのため本書も現場の重大な問題を指摘・批判し、考察すると同時に非常に整理が行き届き、読みやすい内容に仕上がっています。読みやすさの点では訳も極めてよいと思います。内容は開発経済やマクロ経済の知識があればさらに深い知見を得られるでしょうが、それらを専門としなくても十分に読い勧められます。(jinchoku / 2003-10-10) レビュー数 32 [残りも全部見る][amazonでレビューを書く] 平均点:4.0 |
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