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アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか / レビュー総評点:93
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ASIN:4757102453 / 売上順位:1616
エヌティティ出版(2008-10-27)濱野 智史 ¥ 1,995(中古:¥ 1,480)
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レビュー総評点:
93
増殖していくエコシステムとしてのネット文化
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昨年起きた秋葉原の無差別殺傷事件。あの事件の加害者についての論説をまとめた論集
『アキハバラ発』に、本著の著者濱野智史も小論を寄稿している。そこで濱野が試みたのは、 事件前にあの青年が繰り返し書き込みをしたのが「なぜ2ちゃんではなかったのか?」という 論点から迫る独自性の強い文章で、他の青年犯罪論者や社会論者などの並べる見慣れた 仕事の中で、埋没することなくひたすら異彩を放っていた。 本書は、情報社会論を専門とし、さらに自らを「ネットオタク」と自称する著者のホームグラウ ンドといえるであろうネット論。ちなみに『アキハバラ発』においての「デバイスから文脈を読み 取る」という方法は、本書のケータイ小説論に受け継がれていると言える。 「アーキテクチャ」というキーワードから、本書がレッシング『CODE』の影響下にあることは予 測できるだろうが、本著並びに著者の独自性はむしろタイトルで言うところの「生態系」の方に こそある。進歩ではなく進化と繰り返し著者が論ずる通り、ネット文化は誰か一人の固有の 意思によって予め意図されていた通りに構築されていったわけではない。その機能の利便性 や内部コンテンツとのインタラクティブな影響のし合いによって、無限にある可能性の中から 偶然的に今の構造が選ばれたに過ぎない。生態系のその「繁殖過程」を、2ちゃんやニコ動、 Tuwitterなどを通して著者は明らかにしていく。 その「生態系」に対しての著者の語りは毒気がなく、異常なまでにネットを賛美するアメリカ帰り の某氏や、未知なるものに対して過敏なまでの警戒心を持つ評者などのそれにはない客観性 があり、好感がもてる。ただ、分析に重きをおくあまり「ネットの未来像」という多くのネット論者 が触れるその人固有の「思想」と呼べる部分が省かれ、その点は少し淡泊すぎたか。 次の著作では、この人の「欲望」の部分をもっとみたい。(倒錯委員長 / 2009-09-17)
この『アーキテクチャの生態系』はグーグルやWeb2.0に象徴されるゼロ年代のウェブ周辺の環境を明瞭に書きまとめた、まさに良書というべきものである。
インターネットの起源、またレッシグの「アーキテクチャ」やグーグルの「ページランク」といった今や多くの人々が知るところとなったものから、様々な文献を引用しつつ懇切丁寧に解説されている。 ウェブ入門書として「ネットのことはいまいち分からないんだけど…」という方には、是非新書を読むような気分で気軽に手を伸ばしてもらい。 ただしこの本の真の魅力は、ウェブ入門書としての側面ではない。 それはこの本が、アーキテクチャの生態系(≒環境管理型権力を用いた社会設計の進化のプロセス)という新しい観点でウェブを語ることによって、ネット賛歌あるいは、ネット断罪というこの手の本では定番化した結論を克服したことにある。 最初は、この二つの立場を限りなくフェアに解説している(ような素振りをする)彼のスタイルに対して、正直煙に巻かれている感を感じざるを得なかった。しかし、それは一つの結論として「日本社会論」や「若者論」に絡められ、日本のウェブサービスが如何に「ガラパゴス的」に進化して来たか、ということが鮮やかに紐解かれていくことになるのだ。 彼のバランス感覚は、2ちゃんねるやP2P、そしてケータイ小説といった意見が二分されるものを正しく読み取っていく上で非常に貴重な才能であると感じた(特に第7章の恋空に関する記述は今までに無いタイプの論調であり、彼の独自性が見て取れる)。 先に述べたように新書的明瞭さと、情報社会論としての確かな内容を両立させた極めて優れた本なので、より多くの方に読んでもらいたいと思う。 (azumamiko / 2008-11-21)
グーグル、ブログ、2ちゃんねる、ミクシィ、ウィニー、ニコニコ動画、ケータイ小説、その他もろもろのウェブサービスを、一種の「生態」として把握し、それらがいかに「進化」してきたのかを実に興味深く分析してくれる作品である。ネット社会をできるだけ賢く楽しく生きようとしている私たちの自己認識を深めてくれる良書だと思う。
私的にとりわけ刺激的だったのは、「日本社会」の「特殊性」を強く意識した考察がなされていることである。日本における「2ちゃんねる」や「ミクシィ」の大人気の背景として、「日本人」の「集団主義」の影響を見て取る本書の議論は、前々から何となくそんな気がしていただけに、うなずけるところが大きい。高野陽太郎氏の『「集団主義」という錯覚』(新曜社)という著作により「日本人=集団主義」なんてデタラメ、という認識を獲得しつつも、ウェブにおけるこうしたあからさまな「証拠」をつきつけられてしまうと、やっぱそうなのかなあ、と考えこんでしまう。 また、日本の独創的なウェブサービスとして著者が大絶賛する「ニコニコ動画」に関する考察が、まったくもって斬新かつ説得的で非常におもしろかった。ニコ動が24時間エンドレスの擬似的なライブ感(「いつでも祭り」な状態)を維持する画期的なシステムを構築したという驚きの事実を、「時間」や「アウラ」などの論点によりながら、またセカンドライフや2ちゃんなどと比較しつつ分析する。あるいはそのインターフェイスが可能にした「客観的」なコンテンツ評価の意義を述べ、その成功の理由に迫るなど、次々に繰り出される新しい思索のあり方にうれしくなる。 こうした「生態」の考察だけでなく、『恋空』の内容を、携帯メディアの特性を存分に活かした新時代の文学として高く評価するなど、誰も言いそうもない目からウロコな指摘が満載である(従来のケータイ小説論はその「流行」の謎を解明するものが主で、文学表現としての技巧に関しては軽視されていたと思われる)。新時代の頼れそうな論客の登場を、素直に喜ばしく感じた。(ソコツ / 2008-11-30)
この本を読んでる最中ちょっと机に投げ置いていたら、私の身近な人が覗き込んでケタケタ笑い出した。東浩紀が帯に寄せた言葉がおかしいと言う。「本書ぬきにニコニコ動画は、そして日本社会は語れない」って……ニコニコ動画と日本社会が同列なの? アハハ。
ニコニコ動画はそんなに重要なのか? 著者は〈一回性〉という経験に支えられた芸術作品の「アウラ」について語ったベンヤミンを持ち出し、「いささか大仰にいえば、ニコニコ動画の出現は、こうしたベンヤミン的な構図の前提そのものを崩してしまう」(p225)とする。「芸術作品(コンテンツ)が複製可能なのではなく、それを『いま・ここ』で体験するという〈経験の条件〉が複製可能であるということ」によって、ニコニコ動画は「百年単位のインパクトを持ったメディア史的事件」(p226)なのだそうだ。 しかしそれはやっぱり、「いささか大仰」ではないか? だいたいアウラ論そのものが、そういう風に理論的に展開できる話なのかという疑問だってある。 本書でも参照されている北田暁大の2ちゃんねる論もだけど、社会学にせよ民俗学にせよ、「社会」について語る言説は往々にして小さな一部分で全体を語ろうとする。神は細部に宿るっていうか、フラクタルな世界像にもとづく逆演算っていうか、集合の一要素が集合全体を含んでいるかのように論を進めるという意味で、論理階型の意図的な混同があるとも言える。 ま、それはそうでもいいんだけれど、しかし「社会」について論じようとする者がイケてるディテール探しの競争を繰り広げているような最近の風潮には、ちょっと食傷気味ではある。しかもそういうディテールって、決まってマーケティング的に重要そうなネタが多いって感じで、「社会」論が資本主義の婢女になっちゃったみたいなのね……え、今さら何をアタリマエのことをって?(モワノンプリュ / 2009-05-19)
非常に面白い内容だった。
Webの世界はアメリカが先行していて、その後を日本が追いかけるイメージが強かったが、日本独自の発展の形(2chや、ニコニコ動画、ケータイ小説など)がありうるということ、加えて国民性や社会のあり様が、それを規定しているという、当たり前のようだが指摘されて改めてその実態に気付かされた。 著者は、昨今のWeb世界の現象を記述するだけでなく、ゲゼルシャフト/ゲマインシャフトなど社会学の中で培われてきた概念を援用しつつ、構造的な捉え方を提示してくれるので、読み進める中で見通しが得られるので大変ありがたい。 個人的には、ニコニコ動画等は何が面白いのか判然としなかったので、解説してもらえてなんとなく掴めた気になった。 ともかく一読をお勧めしたい。(hidemet / 2009-01-11)
ローレンス・レッシグがつかいはじめた意味での 「アーキテクチャ」は,権力がひとびとを規制するためというネガティブな意味をおびていたが,著者はそれをもっとポジティブにとらえようとしている.ミクシィ,ウィニーなどの P2P ソフト,ニコニコ動画,初音ミクなどがとりあげられて,アーキテクチャという観点から論じられる.あたらしい視点のはずだが,そのわりには新鮮味が感じられない.著者の議論をすでにブログなどでみているせいかもしれないが…
(Kana / 2009-09-04) レビュー数 6 [amazonでレビューを書く] 平均点:4.5 |
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