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夜は短し歩けよ乙女
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ASIN:4048737449
角川書店(2006-11-29)
森見 登美彦
売上順位:3718
¥ 1,575(中古:¥ 569)

レビュー総評点:186
なじめたら星5つ、なじめなかったら星1つ ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本書の良さについては多くの方が書かれているので、別の面から書いてみたいと思います。

この独特な文章になじめるかどうかで評価は大きく別れてくるでしょう(これもすでに指摘されている方がいますが)。
わたしはなじめませんでした。

その具体的な箇所をいくつか挙げてみます。
ネタバレ注意。

・・・

私の手なんぞ何の面白みもありません。紅葉饅頭のほうが断然可愛いに違いないのです。 p.22

私は頬が火照るのを感じましたが、それは酔いのためではなく恥じらいのためでした。豆ッ恥、豆ッ恥。 p.47

しかも私が中学生の頃から欲しかった本が、百円玉一枚だとは! お財布への信頼に一抹の翳りある我々にとってはありがたすぎるお話です。ビバ、「ビギナーズラック」。それとも私は古本市巡りの才能があるのかしらん。私の興奮はいやが上にも高まります。 pp.81-82

そして樋口氏から、彼女がその絵本を追い求めて古本市をさまよっていたことを聞いた刹那、「千載一遇の好機がついに訪れた」と直感した。今ここに一発逆転の希望を得て、ついにふたたび起動する私のロマンチック・エンジン。 p.117

なぜ先輩はあんなに驚いたのだろうと私は思いました。私の顔に何かオモシロオカシイものが? p.138

この先どんなオモチロイことが私を待ち受けているのであろうか! と我が興奮が天井知らずに高まるのも宜なるかな。 p.156

もちろん私は普段から精神を研ぎ澄ましているような人間ではありませんが、その「ボーッ」は、「ボーッ」の中の「ボーッ」、「世界ボッーとする選手権」というものがあれば日本代表の座も間違いなしと思われるほどに筋金入りのボーッであったのです。 p.228

・・・

こういう文章に違和感を感じなければ読んで損はしないはずです。

いずれにせよ、購入する前に一度立ち読みしてみてください。
10ページも読めば雰囲気がつかめると思いますので。 (モノクロ/2007-02-07)
傑作! ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ずっと待ってました。

思えば、「四畳半神話体系」が出版されてから実に2年が経過しているわけです。
その間、「Seet Blue Age」や「きつねのはなし」と氏の作品は出版されましたが、
前者は本作品の1話目のみ、後者は「太陽の塔」で絶賛された独特の文体と世界観から
離れ新境地を開拓した作品だったため、作品の出来とは別に物足りなさを感じていました。

というわけで、個人的な気持ちとしては2年間待ったということになるのですが。
しかし、この作品を読んだ後は、待った甲斐があったという満足感でいっぱいです。
今回は「太陽の塔」のような「不思議な幕引き」や、「四畳半神話体系」のような
「実験的構成」も無く、先の2作でいまいちとの判断を下した人にも、納得の行く
作品に仕上がってるのではないかと思います。

大げさかもしれませんが、この作品をきっかけに本格的なブレイクを果たすのでは
という手応えを感じました。 (日々是好日/2006-12-02)
春の夜、先斗町や木屋町界隈。夏の下鴨納涼古本市。秋も終わりの青春闇市たる学園祭@本部構内&吉田南構内。そして、冬。クリスマスを前に浮き足立つはずの四条河原町など。
この本を楽しむには、やはり、京都を知っているほうが有利だ。京都で大学生活を送ったり、京都の大学生の生活を知っている人なら、尚よい。

癖のある文体がクセになった。大袈裟でしかつめらしい文章で、荒唐無稽な物語を紡ぐ。好き嫌いは別れるところだろう。物語よりも、この文章が個性だ。
全文がパロディのようなノリのよさに釣られ、見知った地名の懐かしさを追うに連れて、最初の読みづらさも減じた。
腹の底、心の奥をそうっと温めてくれるようなのどかさがある。偽電気ブランに酔うように、世界で神々と遊び、雰囲気を楽しみたい。 (香桑/2007-02-16)
表紙とタイトルに惹かれ、とりあえず1ページ目だけを読んだ時は、その文体に慣れておらず買おうか迷ったものでしたが、買ってその先を少し読めばあっというまに世界に引き込まれてしまいました。

読み終わった後味も甘くて心地よく、とても楽しくて、ステキな物語です。

いい本に出会えたので、いろんな人にオススメしたくなりました。

面白く不思議な登場人物や、不思議な(それでいてこんなことあるか!という文句は言いたくならないほど気持ちいい)出来事がたくさん詰まっているので、サブカルな漫画などが好きな人にも、是非読んでみてほしいです。
片想い中の方も、青春真っ只中の方も男女問わず是非! (リョコ/2007-01-21)
とても楽しい |||||||||||||||||||||||
大傑作。文句なしに今年の恋愛小説ナンバーワン。(大森望 文芸評論家)
 天然キャラの女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。

 とにかく読んで損無しです。読むほどに引き込まれ、映画を見ている様な感覚に引き込まれて行きます。
 是非とも、スタジオジブリの次回作品に推薦したいほど楽しい作品です。
 
 奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々と運命の大回転にほんろうされる、恋愛の行方に引き込まれてみては如何でしょう。

今年最後の恋愛小説にピッタリな作品です。とても楽しい作品ですよ。ご賞味あれ。 (トトロの寝言/2006-12-09)
可愛いくってあったかい ||||||||||||||||||||||||||
私にとってまるで「本の神様」がめぐり合わせてくれたような、愛すべき本です。
有名な作家の本でもいつも「まあ、こんなもんか・・・」くらいにしか思えないのですが、こんなにむさぼるように読んだのは小学生のときに読んだ「太閤記」以来でしょうか。
とにかく、かわいい!おもしろい!作者の視点はヒロインへの愛に満ちていて、それがとても私の心を暖かくします。高い教養に裏打ちされた、とんでもなくおバカな笑いが痛快☆
すぐにもう一度読み直しましたが、こんなことは人生初です。
日本語という言語の無限の可能性を余すことなく操る森見登美彦という才能が、早く世間にお披露目されないか楽しみのような、ずっと秘密にしておきたいような・・・ (maiko/2006-12-23)
残念・・・ ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
話題の本なので手に取り読み進めましたが、私には向いてなかったようです。
残念ながら途中で読むのをやめました。
以前作者の他の本も読んだのですが、やはりそちらも途中棄権です・・・
向き不向きってあるんですね。
私には読みすすめるのも辛いほど全く面白みのない本でした。
でも、面白いという人が多いので私の意見は少数派の意見になりますね・・・ (とらとら/2007-10-22)
ハハ、やられた ||||||||||||||||||||||||||||
このカバーデザイン、凄いアイキャッチですよ。
いかにもイマドキらしいピンとした線の絵柄と、ちょっと古びた浮世絵のような色彩で、
道後温泉がチンチン電車に乗っかったような不思議な乗り物が描かれている。
これが平積みにされてしまうと、そこだけ何じゃこりゃなキッチュな世界が広がっていて、
思わず手に取って見ずにはいられませんでした。

で、即立ち読みモード突入。
どうせ2,3ページ読んだら「クダラネ」って展開になるだろうなとか思ってました。
しかしこれが見事に裏切られましたよ(いい意味で)
ページを繰るごとに、不覚にもこの不思議世界にどっぷり引きずり込まれてしまい、
知らず知らずのうちに私も夜の先斗町を徘徊しておりましたですよ。なんですかこの世界は。
京都の町を舞台とし、浮世絵模様の光景が怒濤のように展開します。
「んなバカな」
と言ってしまえばそれまで、でも何故か最後まで読ませてしまうパワーは認めざるを得ません。
まいったな、コレ面白いですよ。一章を読み切った所でレジ直行でした。

春夏秋冬「彼女」と「私」を巡る4つの恋のエピソード集・・・それがこの作品です。ま、オムニバスですね。
こう書くといかにも「キュートでポップ!とびきりのラブコメディ!」なんて陳腐な帯とともに、
新刊本の洪水に流れ去ってゆく一冊にも見えますが、案外コイツはむんと胸を張って踏ん張りそうな予感がします。
散りばめられた近代文学のテイストや、作中で見せる著者の本オタクぶりなど、ところどころ小技が効いてます。
漱石、太宰、いや千と千尋かうる星やつらか、電車男か。何だか色んな物ごっちゃ混ぜの不思議世界を冒険した気が。
このキャッチーな装丁と、作風が見事にマッチしてますよ。
本屋さん大賞ノミネートもむべなるかな、飛んで火にいる夏の虫とは私のことです。
やられました。 (@poor work/2007-04-19)
やっぱり何だかんだ言ったって、恋をするって楽しいことだよね、っていうそんな感想を持ちました。
恋愛小説の9割5分は書いていることが同じっていう本だけど、この本はそれに該当しない。
数少ない「残りの5分」の作品です。設定は在り来たり、アプローチは上手くいかないって、恋愛話の
典型パターンなのに、こんなに面白いのはどうしてだろう。只、話に浮世離れ?している所があるので
ファンタジーが全く駄目な方は読めないかな…。残念です。
語り口調が特徴的で好みが分かれるかもしれませんが、口調だけでこの本を避けては勿体無い!
できれば全人類に読んで欲しい!
ハードカバーは学生にとってはお高いけど、買って読んで大切にしていく価値は充分にあります。
こういう恋愛小説には、二度と会えないかもしれない。 (アパート/2007-02-01)
かわいらしい表紙イラストに惹かれて買ったのですが、
古臭さを装った文体に最初は馴染めませんでした。主人公のへタレぶりもイライラするし。
ところが読み進むうちに、そのエキセントリックワールドに嵌ってしまったのです。
登場人物はみな一筋縄でいかない変な人ばかりで飽きさせない。
そして主人公が思いを寄せる不思議ちゃんが、だんだん愛おしく思えてくる…。
ラストのキュートなエンディングは胸がきゅんとなります。
はちゃめちゃなようでよく計算された小説です。
作者の力量は大変なものだと思いました。
(アマゾン三郎/2007-05-02)
ニュージャンルか!? |||||||||||||||||||||||
可愛らしい装丁に惹かれ、手にとって1ページ目を読んだらやられてしまった。
緻密で繊細で愛らしい文体。選び抜かれた語彙。こんな文を書く人がいたなんて!頭を撃ちぬかれたような衝撃だった。

本書はシャイな大学生男子が想いを寄せる黒髪の乙女をひたすら追い掛ける話だ。しかし話の展開は恋愛小説の枠を軽く超え、あまりにも予想だにしないない方向へコロコロと転がっていく。妙な事件に巻き込まれながらも右往左往して黒髪の乙女の姿を探しているのは何やら自分のような気さえしてくる。

空から降ってくる鯉を迎えたり、古本の神様に会ったり、学園祭テロを追いかけたり。著者は一体このアイデアをどこから持ってきているのだろう。あまりにも既存の枠に収まらないので皆目検討もつかない(強いて言えば千と千尋か!?)。本書ですっかり著者のファンになってしまった。「なむなむ!」と唱えながらゆっくり次の作品を待ちたいと思う。 (桑の実からできた泡/2007-09-01)
中村祐介さんのカバーに惹かれてジャケ買いしたのですが、
25年の間に読んだ小説の中ではイチバンのヒットです!
もうツボに入りまくり!!

ラリホー♪と我が道を行くカワイすぎる ”黒髪の乙女” と
妄想が暴走しまくりの永久外堀埋立機関 ”私” と
かなーり濃い登場人物たちが織り成すどこかレトロで
ほんわりあたたかくずっと胸キュンな小説です。

小説を読んでいて『ぶはっ』と吹き出したのは初めて。
好き嫌い分かれるとは思いますが、私はとっても好き。
出会えてよかったです。 (andouchable/2007-07-24)
タイトルに書いた通り、「恋愛小説」として読むか「ファンタジー」として
読むかでまた違います。というか、この小説は僕は「恋愛ファンタジー」だと
思っていますが、バラで読んだときに違う色が見えてきます。

森見さんのデビュー作『太陽の塔』や、第2作『四畳半神話大系』も大好きな
作品ですが、この『夜は短し歩けよ乙女』を読んで現在の森見作品で最高傑作
だと思いました。
しかし、『太陽の塔』に比べると今作品は連作短篇形式の長篇なので全体の密度
が低かったり、『四畳半神話大系』と比べると企み・仕掛けがあまりないという
弱点もありますが、総合評価では『夜は短し歩けよ乙女』は最高ですね。小ネタ
も、文体のテンポも、キャラクター造形もこちらの方が好きです。

これからもずっと追い続けていきたい作家ですね。 (ライラライ/2007-02-11)
あえて作品から離れて ||||||||||||||||||
 作品の面白さについては他の人が語っておられるので、
森見登美彦という作家についての所感を。

 ついに伊坂幸太郎・本多孝好らの次の世代の確かな力
量をもった作家が現れたなという感じがします。文体か
ら察するに、日本近代文学の知識を包摂している作家だ
と思われます。『きつねのはなし』でみせたホラーテイ
ストの作風と本作のような『太陽の塔』路線の二刀流。
作家として生き残るための老獪さも兼ね備えているとい
ってよいでしょう。

 今後の見通しとしては、京都という「世界」とこの独
特な「文体」が分かちがたく、この博学な語り口を操れ
る人物を主人公にしなければならないという制約がある
ゆえ、これ以上、作風が拡散していくということはない
のではないでしょうか。理系出身の方のようなので、そ
ちらの知識を積極的に活用してくることはあるかもしれ
ませんが。

 優れた作家だと思います。若手にしては、などという
留保は要りません。この作家はこのまま我が道を突き進
めばいいのではないでしょうか。

 ただ、この作家を読み手のほうがどれだけ受け容れら
れるかという問題は残るかもしれません。世間を騒がせ
たところの平成純愛小説に心から涙した乙女は果たして
こういったものも読めるのでしょうか。

 読書家に愛される作家であることはまちがいなさそう
です。これが本屋大賞とったら本当に同賞を見直すんだ
けどなあ。ま、直木賞でもいいけど。 (横山P太郎/2006-12-23)
読んでいて本書にみなぎっているノリは「うる星やつら」に通ずるものもあるのではないだろうかと思った。はちゃめちゃで個性的(異様?)な面々が登場する。夢と現(うつつ)が気持ちよく融合し伸び伸びと物語が進行していく。この本が漫画だったとしても違和感はないだろう。でもあの独特な言い回しに満ちた魅力的な文体と出会ってしまうと小説という器が一番ぴったりだなと思い直す。魅力的な(そしてちょっと不思議な)ヒロインと彼女を一途に追いかける「私」が主人公で、それぞれのパートが一人称で交互に語られていく。「恋」に関して鈍感な彼女と自意識超過剰の片思いに身を焦がす青年のすれ違い、嗚呼、すれ違いの切なさよ・・・なんて面白いのだろう(他人事だからだけれど)! 舞台となる京都は元々素敵な町だが、ここに描かれている京都はさらに輪をかけて魅力的である。続篇を読みたいと痛切に思う。 (竹の梯子/2007-01-09)
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w:10 h:15 237page
太陽の塔 (新潮文庫)
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ASIN:4101290512
新潮社(2006-05)
森見 登美彦
売上順位:2292
¥ 420(中古:¥ 4)

レビュー総評点:91
学歴コンプレックスの連中が京大だからと批判し京大卒の馬鹿どもが周辺地理を面白がる。この作品はそれだけの価値しかないのか?否、この作品は、日本語を愛し、もてないで悶々と過ごした青春時代をもち、自分というものの価値を信じているすべての男性のための切ない物語だ。そして、私はそう読めなかった人たちがうらやましくてならない。おそらく、男臭さむんむんとする部屋で友人と語り続けてた経験もなく成長されたのだろうと思うからだ。しかし、この作品はそういう人たちに読まれるべき作品ではない。女性にもスポーツにも縁がない学生時代を持つ(生きる)人にこそ読まれるべき作品なのだ。 (たかちん/2007-01-23)
大学生の失恋の話。もてない男達がうだうだと集まって明晰な頭脳によって恋愛の下らなさを否定するのだが、当然思想という深い森に迷い込むだけでもてないという事実からは逃れられず、さらにもんもんとする話。
主人公が振られた彼女にもつ切実な想いを、屈折した言葉を使って振られたことを肯定していこうとする心理状態を面白く面白く書いていく技術や、言葉の使い方に共時的な面白さを感じることができた。
物語としても、最後に物語を盛り上げるために「ええじゃないか」があったり、なぜか、悲しくなるラストはよかった。
自意識過剰な感じはするが、それはそれで私はあまり気にならない。とても面白いと思う。
(津和差志/2007-01-14)
妄想ワールド炸裂 ||||||||||||||||
妄想ワールド炸裂。
どこまでが現実でどこからが妄想か。
不思議な物語。
しかし、面白い。

女の子に振られた『私』はその振った相手『水尾さん』研究に
いそしむようになる。
しかし、一歩間違えれば、というか
すでに間違っていると思うが、
その行為はまさしくストーカー。
理路整然と自分の行動の正当性を訴えるけれど
やっぱりストーカーだよな〜。
しかし、ストーカー物とは一線を画す物語。

でも誰にも経験あるような、妄想。
妄想に生きる男の性、
分かるような分からないような・・・
いや、分かっちゃうんだよな。
でもここまでの行動は起こさないけど。

ところどころ「くすっ」とか「がはっ」とか笑えます。
人前では読めません。
登場人物がわけの分からない人たちばっかりですけど、
でも愛嬌があって、とても愛おしい。

森見登美彦はまってしまいそうな作家です。 (なおっち/2007-01-25)
いわゆる「童貞」ジャンルの映画や漫画(吉田秋生とか)
そして小説(みうらじゅん、原田宗典とか)って、
実は結構たくさんあると思うんですが、
この「太陽の党」は著者の膨大な知識と知性、
そしてユーモアによって、一線を画す作品になっています!

 実際のところ、主人公の「わたし」が童貞かどうかは分からないのですが、
膨れ上がる欲望を女の子にぶつけることも出来ず、
男同士でひたすら妄想を弄ぶ。
そして世の幸福な男女へひたすら悪態をつき続けるその様は、
まさに「童貞スピリット」。
痛々し過ぎて、愛しくさえなってくるんです。
男性のみならず、女性も共感できるのではないでしょうか?

 これといった起承転結のストーリーもないし、
ファンタジーノベル大賞受賞のわりにさしてファンタジーでも無いのですが、
その語り口の軽妙さが最後まで読み手を引っ張っていってくれるでしょう。
できれば「夜は短し歩けよ乙女」を読む前に読んでおいて頂きたいですね☆

 森見登見彦さん、今一番注目している作家の一人です。 (moripu/2007-03-22)
話題作です。
「夜は短し、歩けよ乙女」と同じく、独特の作風はすでに本作で
確立されています。文体や構成、なにより主題が非常に独特で、
読めばすぐ、この作者の作品だとわかります。このような感覚は
ジャンルは違いますが、京極夏彦を初めて読んだときに近いものが
あります。

内容はすでに他のレビュアーの皆さんがお書きになっているように、
京都を舞台にした、妄想大魔王達の疾走する日常が、半ば強引に
勢いだけで語られていきます。前半の盛り上がり、絶妙な言い回しの
連発に比べて、後半少し盛り下がりますが、作品の主題が、そもそも
勢いと妄想にあるようなので、それもまた良いのかもしれません。

久しぶりに登場した貴重な若手作家だと思います。
妄想族だけでなく、万人が読むべき21世紀の純文学です。 ((た)/2007-11-04)
京大農学部を休学中の五回生(作者自身がモデル?)が語る,イケてない日常の日々。
中盤までは爆笑の日常の連続。こういう勘違い系の学生って,やっぱ多いのかな。彼らの綴る馬鹿馬鹿しい日々が,大仰な文体で綴られているためか「プッ」と吹き出してしまうことが何度も。

時はクリスマス商戦真っ只中。イケてない学生にとって,クリスマスは恋人と過ごすものと定義される昨今の風潮は到底受け入れがたい。そこで彼らは「恋愛ファシズムに対する挑戦」を企て,「我々の精神の持つエネルギーで,鴨川に座る男女を焼き払う!」と息巻く。すげーよ,そのエネルギー。

ただね。第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞作品ということですが,この本の何をもって「ファンタジー」とするかについては議論がありそう。特に後半では現実とファンタジーの境界があいまいで,作者の世界から置いていかれそうになりました。そこが少々,心残り。
(たつパパ/2006-11-19)
自意識過剰かつ生意気な感じの文章がかなりツボにはまって、読んでるあいだは吹き出したり、ニヤニヤしたりの連続でした。なかなか面白かったです。ファンタジーノベル大賞受賞作と聞いて予想する作品とはだいぶ違うけど、現実と、京大生ならではの巨大な脳(?)から紡がれる幻想というか妄想とが混在している様と独特な古風さは、ファンタジーと言えなくもないかも。また京都っていう舞台も大きいかと。出てくる固有名詞も「叡山電車」「北白川別当交差点」「幽水荘」など妙に魅力的だし。東京じゃこうはいかないだろうな。四天王の学生たちの浮世離れした生活ぶりには少し憧れる(モテないところ以外は・・・)。ラストは若干拍子抜けしたけど。ところで解説を読んで「まなみ号」の意味がわかりました。 (冬苺/2007-06-14)
過剰な自意識と自尊心で防衛している、達成と承認と親和のいずれの欲求も満たしかねている男の子たち。心の肉球はぷにぷにと柔らかくて傷つきやすく、型にハマった幸せを満喫する人々を目の前にしてぷるぷると震える。
仮想京都で息づく昔の文学青年風の彼らが可愛いし、親しみも憶える。文章も事件も人物も、奇想天外に見せかけて、自分や友人と重なる。太陽電池でゆらゆら揺れる機械仕掛けの招き猫なんて、私がもらったら大笑いして大喜びするのに。
ええじゃないかと言い聞かされても、ちっともよくない。ええわけがない。失恋というものはつらいのだ。つらくてつらくてたまらんのだ。初恋でも、何度目かの恋であっても、どんなに自分に言い聞かせて、頭ではわかっていても、理性じゃどうにもならない。
著者のデビュー作とあり、素顔に一番近いのではないかと思う生々しさがあった。とても自然に読むことができる本だった。ほんと、失恋はつらい。 (香桑/2007-05-03)
古きよき、文芸盛んなりし頃の”小説家”を思わせる文体が、とっても巧い。
でも、舞台はあくまで現代。 そのギャップがとても新鮮だった。
本質的には、近代以降、変わらぬ、青春、恋愛、葛藤小説。
でも、時代にあったディテールを消費したいという文系若者層の欲望に、みごとにハマったと思う。

それにしても、この作品が、「ファンタジー大賞」!? 
投稿した著者も、選者も、やるなあ、と関心してしまった! (misora/2007-07-23)
異色作です。その前に「一読の価値がある」と付け加えるかどうかが迷うところですけど。
「すべての失恋男たちに捧ぐ」という惹句が見えますが、「すべて」と言うより一部の失恋男に深ーく愛される作品かと。それから京都に土地鑑がないと置いてきぼりを食らった気持ちになるかな・・・でもその点は想像力で補って読べきか。ファンタジーですからね。 
登場人物について。モテない四天王が、とんでもなくヘンテコなようでいて少々小粒、ヘンテコぶり、ヘンテコ故の切実さがリアルに伝わってこないのが残念。この4人ですら「まあまあ変わり者」程度のところを、語り手である主人公の妄想・誇大表現で底上げしたのかと勘ぐってしまいます。主人公が失恋した「水尾さん」も同じくうまく伝わってこないのですが、これは主人公との悲しい隔たりを示すための確信犯的書き方でしょうか? ただそれがうまくいっているかというと・・・
登場人物と、エピソードがうまく連携していないような感も。だから、部分部分ではおもしろく読めるのだけど、総合力でずしんと響くものにはならなかったです。
大仰な一人語りにちらっと覗く内省的で気弱な文章。肥大化した内面とちっぽけな実像の間を主人公が行き来する様は、ちょっとひりひりします。そこがツボかと思いました。
書評などで本書へのコメントを見ると、京大にはこんな学生が少なからず生息するとか。どんな皮をかぶった京大生がこんな内面を抱えているのか、見てみたいなあと思いました。彼らの下宿もぜひ覗いてみたいです。その意味では興味をかきたてられた一冊。
(シロフォン/2007-06-07)
連れ ||||||
全ての失恋男達に捧ぐ」という言葉にかこつけて買ったのだけど、長らく読んでいなかった。ついさっき抹茶モカを飲みながら3時間ほどで読み終えた。

中身はある男の恋愛をリリカルに匂わせつつも、男の妄想でそれを固めつくした様子。京都の街を奔走する男、京都でのリアルな大学生活が伝わってきた。

ひねくれてもどこか可愛らしいインテリチックな会話や、なんだかんだで女を美化する奴ら、キモ可愛い。

僕が今送ってる大学生活とは似ても似つかない、昔ながらの大学生っぽい大学生活。京都でのんびりと大学生活をしてみたくなった。なんか昔の友達を思い出すような。

また場所がそうぞうできるからおもしろい。京都での恋か。場所は違うのだけど、なんか地元の匂いを感じる。

固く結ばれた友情と個性のあるキャラ。こんな友人に囲まれて大学生活送りたいものだ。 (MJ/2008-03-20)

 崩壊しかけた四畳半の真ん中にでんと腰を据えて、私はこの手記を書く。内容は私
の日常である。「おまえの日常なんぞに興味はない」と言う方は読まない方が賢明で
あろう。周囲を見渡せば、もっとお気軽で、お気楽で、愉快に読み捨てられる書物が
ごまんとある。なにを好きこのんで、こんな男汁溢れる手記を熟読する必要があろう。
読了したあかつきには、必ずや体臭が人一倍濃くなっているはずである。読み終わっ
た後で文句を言われても困る。私の経験から言えば、いったん濃くなった体臭は二度
と元には戻らない。
 しかし、敢えてこの手記を読む人は、貴重な経験をすることになるだろう。もちろ
ん愉快な経験とは言えまい。良薬とはつねに苦いものである。
 ただし、苦いからと言って良薬であるという保証はどこにもない。
 毒薬もまた苦いのだ。

                                              本文より (ナイルリバーサイド/2007-10-19)
「私」が、振られた彼女の水尾さんを追っかけている話だと、はじめにそう思ったのですが、どうもそればかりでもないのです。
 書き出しでは、水尾さんにまつわる手記だと思わせながら、その内容のほとんどが彼の日常で埋め尽くされており、終始晴れない胸中を語り続けています。

 しかし、その悶々たるや、まことに絶妙です。流行の恋愛小説家などが書けば、憂鬱に口をふさぎたくなるかもしれませんが、この作品、前向きなネガティブとでもいいましょうか、やや高尚な文体ながらギャグテイストが満載であり、笑いが止まりません。
 愉快な仲間たちの紹介に明け暮れていた感もあり、ストーリー的には贅肉が多かったかもしれませんが、美味しいご馳走となりました。
 これがファンタジーノベル大賞というのが素敵な選考です。

最後に回想される水尾さんとの想い出には、自分と重なるところもあり、ほろりとしました。
ありがとうございました。 (くまスリー/2007-09-24)
笑えます |||||||||||||||||
久々に面白い小説に出会えて大満足です。
最初の二行を読んで、笑ってしまったら、そのままレジに直行しても
大丈夫だと思います。
ところどころで爆笑しつつ、最後の二行では、じわりと感動できます
よ。

「非モテの文化誌」で取り上げられていたので読んでみました。
もてないということは、自意識過剰で自己正当化が得意、ということ
なのだなぁと反省しました。 (tully/2006-07-11)
さえない大学生の失恋およびその大学生活についておもしろおかしく書かれた本。
京都で学生生活を経験したことのある人ならば一層本書を楽しむことができるだろう。
そして、とにかく文章が素晴らしい。
古風な日本文学的な言い回しで語られる文章は、読んでいてとても気持ちがよい。
声を出して笑える箇所や、独特のセンスを感じさせる表現が幾度となく現われた。

最近売れている作家の多くの本はとても読みやすく現代的なのだけれども、
何か物足りないと私は感じていた。
なんというか、最近の本は文章が透明すぎるのである。
しかし本書はそうではない。
古風で濃厚な文章を用いながらも、とても読みやすく出来上がっている。
筆者の今後に大いに期待したい。

現代文学に何か物足りなさを感じている人におすすめです。



(almost transparent blue/2007-08-26)
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w:13 h:18 219page
新釈 走れメロス 他四篇
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ASIN:4396632797
祥伝社(2007-03-13)
森見 登美彦
売上順位:8617
¥ 1,470(中古:¥ 496)

レビュー総評点:126
愉快愉快! ||||||||||||
「山月記」
斎藤秀太郎の底抜けの阿呆っぷりが、おいしすぎ。斎藤同様、〈もんどり〉が気になって気になって…。
「藪の中」
数人の証言から浮かび上がる真実。微妙な食い違いに注目。
「走れメロス」
絶妙なボケとツッコミ(さすが関西人!)に、噴き出すこと数知れず。
「桜の森の満開の下」
美しさは嫌というほど伝わってくるのに、体温が感じられない女の人が怖すぎる。
「百物語」
京都の蒸し暑い夏の夜。古い屋敷の座敷に自分も座っているかのような臨場感。


最近は“古典新訳”が流行りですが、こちらは“古典新釈”ときましたか!
原作から受けるイメージを大切に、一編ごとに文体を自由自在に変える器用さはお見事です。
彼の古風でノスタルジックなスタイルが、驚くほどハマッてしまった傑作でしょう。
人によって好みの作品が異なりそうなところもおもしろい。それだけ多彩ってことですね。
古書のような装丁もすてきです。 (諍い女/2007-05-24)
教科書に出てくる様な古典の名作を現代の京都の大学生という世界で切り取っている。
とにかく笑える。
表題作『走れメロス』が一番光っている。こんな友情もあったのだ と目からウロコが落ちる かも。
元になった小説を読んでいないとどこをどういじくっているのか分からないのでこれを機に元話も読んでみるのがよろし。 (かばりっち/2007-04-18)
名作を現代に ||||||||||||||||||||||
これは名作を一大学生の偏狭な世界観で描きたい作品なんですね、きっと。
想像を絶した苦悩なんて、絶するゆえに多くの者にとってはどうでもいいことでしょうし。そういった高尚と考えられるものとずれた、駄目大学生の屁理屈の中に一片の真実を汲み取るかどうかなんじゃないかと思います。芸術としての小説だとか、敬遠されがちな古典ですがそれらは意外に自分達の身近な悩みに一々頷いてくれるものなんですね。その一つの面をふくらましたものとして、森見氏のこの本がある(原作の詳読記ではないのは当然のこと)。大いに笑えるものもあるし、切なくもなるものもあるし、なんだか不気味なのもある。京都が好きな人も、腐れ大学生を愛する方も、また原作を愛する人も、多くの人が楽しめる内容じゃないかなと思います。とにかく、「走れメロス」の奔走ぶりと、うってかわった「桜の森の満開の下」読後の余韻だけでも、一読の価値ありです。 (モリソン/2007-03-30)
五篇のうち原作は「走れメロス」しか読んだことがありませんでしたが、
他四編も充分楽しめました!原作読んでいると、笑えます!
全篇で登場人物など設定が繋がっていて、原作も?と錯覚するマジックでした。
読んでいない原作を読んでみたいと、思いました。 (ぴよぴよ/2007-05-13)
標題のとおり、著者による近代文学の名作リミックス5編です。

行方不明となった文学狂いの青年と、かつての麻雀仲間との再会を描く「山月記」に始まり、登場人物がそれぞれの作品にかかわる様子は、藤沢周平の「本所しぐれ町物語」に通じるようにも感じます。原作と同じ表現を微妙にからませながら、おバカ方向まっしぐらの暴走だったり、切なさ倍増だったり(どちらの路線でも、心理描写がリアルでうならされます)…文学好きのツボを心得たコンビネーション攻撃を心から楽しめます。それぞれの作品と、原作が持つ緊張感が見事にシンクロしているところは「まいりました!」というほかありません。こういった連作集では「これが好きで、これはちょっと…」という順位ができてしまうものですが、どの作品も甲乙つけがたい面白さです。

舞台となる街の様子も、あたりを知るものにとっては「あそこ、そういうヤツいるよな」「そうそう、あのあたりはね…」とくすくす感を倍増させるスパイスとなっています。

森見作品を手に取るのはこれが初めてですが、「しまった、他の作品をもっと早く手にしていれば!」と悔やませるパワーがあふれています。装丁も小粋で、文句なく☆5つの評価としたいと思います。 (Pipo/2007-03-18)
元ネタを知ってるかどうかでこの本の面白さはかなり左右されます。
私は『山月記』『藪の中』『走れメロス』に関しては読んでいましたが、後半二作品は未読。
そんな私に限れば、前者は☆4つか5つ付けていいくらいだが、後者は1つ減らして☆3つから4つ(総合して☆4つの評価)。
いや、ダメだったなんて言うつもりはない。
物語自体はそれなりに面白かったし、元になった作品を読んでみたいと思わされもした。
それでも元を読んでなきゃ森見氏の「新釈」の面白さは分からないですから。
そういう意味でのマイナス評価です。
『走れメロス』の「逆転の発想」なんかはその極み。

何より素晴らしいのは『山月記』。
この『新釈 走れメロス』の5作品は、それぞれの物語がリンクし合っており、登場人物や舞台背景が2作品以上にまたがって描かれていることが面白さの1つの要因なのだが、それが最も巧妙に表現されたのが『山月記』である。
作者のストーリー構成の見事さは、この『山月記』を作品の頭に持ってきたことの一点で集約されてるとさえ言えると思う。

ホンット面白いから、騙されたと思って読んでくださいな。
でも「元ネタ」を全く知らないって人は、1つか2つくらいは読んでからのほうがいいですよ。
(ふるむーん/2007-07-13)
表題の『走れメロス』(太宰治)の他、『山月記』(中島敦)、『藪の中』(芥川龍之介)、『桜の森の満開の下』(坂口安吾)、『百物語』(森鴎外)の、現代版劣化コピーという感じです。
「劣化」は言い方悪いですが、劣化のさせ方が著者らしくて面白いです。

『山月記』は、原作が大好きなのもあってか、楽しめました。
原作のダメ人間ぶりが、著者のよく書くダメ人間によくマッチしていて。
にしても、原作:虎に化ける→新釈:唾に化ける って。。

『桜の森の満開の下』は、原作:山に住んでた鬼が都に移住→新釈:京都に住んでた著作家目指す学生が東京に移住。
これは普通に現代的な恋愛小説として楽しめました。

文体もそれぞれの原作に似せていて、よく勉強してるなーと思いました。(やや僭越か)

どれも、原作は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)あたりで無料で読めちゃいます。短編だしすぐ読めます。
もともと原作を知ってると面白さが倍になると思われます。 (K内/2007-09-30)
独壇場 ||||||||||||||||
もう森見さんの独壇場です。一度読んでしまったらやめられない文体で
語られる妄想レベルの高い躍動する物語。
『太陽の塔』で一部で話題になり、『夜は短し歩けよ乙女』でブレイク
した奇才・森見登美彦による最新作は太宰治「走れメロス」を中心に文
学史に刻まれた名作たちをカバー・リミックスした爆笑のリメイク小説
集です。

特に表題作にはやられました。もともと僕は太宰治が大好きなので、どんな
方法で料理されているのかと思ったら、この方法ですよね。スゴイです。
一度物語を解体し、それを再構築するという簡単のようでいて難しい作業を
これだけ「自分の色」を反映し、原作に決して劣らない完成度の『走れメロス』
を作り上げていると驚きました。

そして何より面白い。今回も前作に続き、腹の底から笑わせていただきました。
森見さんはいったい次は何をやってくれるのか?
またまた期待に胸が脹らみます。 (ライラライ/2007-03-14)
『夜は短し歩けよ乙女』を読んで楽しんだ人にお勧めする。短編はすべて同じ仮想京都を舞台とするからだ。詭弁論部があり、パンツ番長戦があり、図書館警察があり、単位取得と桃色遊戯にあまり熟達していない男たちが力いっぱい阿呆をやりぬく、あの大学の、あの文化祭のサイドストーリー集でもある。
短編集であるため物足りない感じもする。が、短編ごとにがらりと雰囲気を変えて見せた上で、登場人物が次の章のどこかに出てくるようなオムニバスになっている。そこに体はあるけれども心が場と一体になれぬ人の孤独感が、この本の全体に共通して登場人物の誰かが感じているものでもある。
南禅寺から銀閣寺までの哲学の道から蹴上インクラインの桜並木が出てくれば、思い出に胸が詰る。河原町から烏丸の四条の地下道も、桂駅から嵐山までも懐かしい。景色も、原作の風合いもさることながら、短編ごとに変化する作品の気配の違いを味わうことが面白かった。 (香桑/2007-04-12)
古典の名作を森見流に解釈したらこうなった!
キターーーーって感じです。
前5篇からなる短編集。
もちろん原作は誰でも知っている作品ばかり・・・・だと思う。
自分は『山月記』と『走れメロス』しか読んだことはありませんが・・・。
この2作に関しては、
ここまで原作を壊してしまっていいのか?と思うくらいに
面白かった。
でも『山月記』の斎藤秀太郎は本家『山月記』の「李徴」の切なさ
やるせなさを見事に再現しているし、
『走れメロス』では本家の友情とは真逆の友情を、それでも
根底に流れる友情の素晴らしさをしっかりと伝えている。
単に面白おかしく書いてるわけじゃないところが、さすが森見さん。

他の3篇も読んだことはないけれど、
きっと同じような手法なんだろうな、と思う。
これを読んで本家の方も読んでみようかという気持ちにさせてくれる。

5篇とも同じように爆笑妄想モード炸裂だったら
きっとつまらなかったと思うけれど、
幻想的な話だったり爆笑妄想モードだったり
不可思議な物語だったり
実にバラエティに富んでいて、最後まで飽きることはなかった。

古典名作が苦手でもこれなら読めるんじゃないかな? (なおっち/2007-03-24)
「走れメロス」はとてもバカバカしい内容なのに
臨場感あって、手に汗にぎり、不覚にも引き込まれてしまった。

しかし、まるで「うる星やつら」で諸星あたるが追いかけられているようだ。。。
芽野が“あたる”で芹名は“メガネ”ってところか。 (momokichi/2008-08-26)
山月記が汚された感あり。 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
内容にふれていますので、読まれる方はご注意を。
最近の新訳物ブームの勢いか。日本文学の結晶を集めて、現代に置き換えた。
音楽で言えば、リスペクトによるカバーか、サンプリングと言ったところだろう。
それにしても、山月記は、ひどすぎる。
漢文学をカバーして、完全なる日本文学に昇華させた中島敦の珠玉の一作。
静寂、無常、驕慢、諦観、人間の俗や卑しさ、哀しみ、優しさを見事に
描写している。文庫で10ページにも満たない紙幅でである。
それを、1大学生の偏狭な世界観で表すことより、作者は何が言いたかったのか。
原作終盤の、妻子より己を優先する事への自己嫌悪と憐憫、
白くなった月への咆吼の意味を一体何処で表現されているのか、
全くわからなかった。
森見版の最後で記述されている雨に濡れた紙の束が出てきている時点で、
作者の原作に対する読み込みの浅さを悲しく思う。
または、それ程、山月記に思い入れはないのであろう。

ただし、坂口安吾の「桜の森の満開の下」を知ることが出来たので★ひとつ。
私とは逆で、坂口安吾好きで、山月記の初読の人も、私と同じような感想を
持つのか、とても気にかかります。 (田上一隅/2007-03-28)
どれも巧みなリメイクぶりでひたすら圧倒されっぱなしだったんですが、個人的には坂口安吾のこの名編からの再創造が一番よかったです。森見作品を読んでいてはじめて涙が出ました。
実は(というのも変ですが…)森見さんの描く「抱腹絶倒」の「笑い」とか奇抜なキャラクターの言動とかは正直あまり好きではなくて、若い人はこういうので喜んでるのかー、正直よくわからん、と思いながらも、この人の文章の上手さと物語りのパワフルさに魅了されて、これまで色々と読んでいました。
「桜〜」は、そんな主流派に属さない(はずの)森見作品の愛し方をしている私にも、心から入っていける一編でした。うーん、文学って感じです。この浮世にあるあいだ誰にもときどきおとずれてくる、わたしなにしてるんだろう感と、その果てにやってくる、もうどうしよもない寂しさと哀しさが、クールで幻想的な文章のもとにたんたんと述べられいて切なくなりました。
「走れメロス」の、むぅ、調子狂うなあ、な結末のビジョンをみせられたすぐあとに、まったく作風の異なるこの美しげな作品を一挙に読んだので、そのコントラストも手伝ってやたらと感動してしまいました。森見登美彦おそるべし。
(ソコツ/2007-08-09)
原作が好きで、森見 登美彦を知らない人が読んだらびっくりするのでは・・・。
とにかく全て「原作」とはぜんぜん違いますよ!
現代版です、現代版。 (タンタン/2007-07-22)
ならでは! ||||||||
著者のもつテイストを最大限に活かしながら、
古典テキストを大胆アレンジ。

原作のファンからすれば決していい顔はされないかもしれない。
しかし森見ファンとしてはよくぞここまで大胆に味をつけたと絶賛するのではないだろうか。

妄想ワールド大爆発なのです。 (ニャンゴロ/2007-09-29)
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四畳半神話大系 (角川文庫 も 19-1)
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角川書店(2008-03-25)
森見 登美彦
売上順位:15368
¥ 700(中古:¥ 400)

レビュー総評点:118
帯に青春コメディとあったので、私好みではないと思っていましたが、なかみ検索を読んでいたら続きが気になって買ってしまいました。
読み始めたら面白くてとまらなくなりました。
いや〜すごいな。よく考えてあるし、計算されている。
青春コメディという言葉からはとても予測できなかった展開。
馬鹿っぽくみえて実はかなり奥深い。
森見さんってすごいなって感服してしまいました。
文体も賛否両論あるみたいですが、私は大好きです。
出町ふたばの豆餅は遠くて買いにいけませんが、カステラは食べたくなって買ってしまいました。
例え一話目で、読みずらいな〜と感じても、一度慣れてしまえば引き込まれて、もっともっと読みたくなります。
読み終えてしまうとなんだかさびしくなり、普通の文章では物足りなくてさらなる森見作品を求めてさまよいでてしまいました。
この本に出会えて本当によかったです。 (みけの たまこ/2008-07-15)
のだが、そうした見栄えの良い形容が似合わないところが魅力なんである。無駄に多くを語らない、という美徳があるとすれば、これは斯様な美徳に真っ向からお尻を向けている。フリフリしているかもしれない。見る人の視点によっては、そのお尻は大変にキタナイものかもしれない。しかしまた別の視点から眺めると、そうして世に向け放たれたお尻達は、珍妙ながらたいそう愛しくも映るのだ。

本作は4つの章から成っている。描かれる世界はある意味とても小さい。そしてそこに意味がある。4話を通して読むと、最後にそのことが実に自然にふはふはと浮かび上がってくる。ほとんど悪ノリの態で紡がれる言葉に立ち向かう術はない。読めば呑まれる。無用の長物こそを武器に選び出すような、どうしようもない阿呆さと愛しさは、その人物造形や世界観と共に通底した魅力となって、ぐるぐると活発に、半ば無駄に動き回っている。

舞台設定は『太陽の塔』に近しい。だけどここには、前作には無かったような一つの仕掛けが用意されている。その仕掛けが分からないぶん、第2章あたりで一瞬躓く。現に自分も「なんたる怠慢!」「これでは体の良いコピー&ペースト地獄ではないか!」と憤りかけたりもした。しかし、その作りこそが肝だったのだね。

可能性ではなく、不可能性の認識から振り返り見た世界。その鮮やかな感触を最後にふわりと描き出した本作は、私的には稀に見る傑作。巻末解説は同じく大好きな作家/佐藤哲也氏が書いている。森見作品が好きな人は、一度佐藤氏の諸作も読んでみると面白いかもしれない。 (あかちゃん/2008-05-19)
文句なし! ||||||||||||||
文句なしの星5つ。
森見登美彦にしか書けないであろう、アホさといい軽快さといい。
舞台が回る回る。それにつられて喋り捲る登場人物たち。
パラレルワールドというのだろうか、有ったかもしれない過去の選択。しかし、どの選択肢の先にも…
緻密なアホさ、精密な無駄、大迫力の空振り、広大な京都で、絶大な馬鹿達を引っさげて、主人公の青春群像が咲き乱れる。
行き着く先は大円満か異次元か。京都の魔物、森見登美彦の真骨頂。 (SOo/2008-04-11)
同じ題材やキャラクターを用いて、四つの話が平行して繰り広げられる。
太陽の塔さながらのユーモラスで軽快な語り口調は健在です。
各話で同じ文章が何度も繰り返し出てくるのですが、
不思議と飽きることなく、洗練されていて心地良い気分にさせてくれます。
そして主人公である私を取り巻く小津や明石さんや樋口師匠といった
一癖も二癖もあるキャラクターが魅力的です。

賛否分かれる作品ではありますが、
僕にとっては手放すことの出来ない貴重な一冊です。 (我利/2008-05-16)
05年01月刊行の単行本を文庫化,4編の短編集になります.

主人公で大学生である『私』が4つのサークルに興味を惹かれ,
4編で4つ,それぞれに入っていた場合の日常が描かれています.

これが,ただの『もしも…?』でおわらないのがおもしろく,
同じ人やアイテムでも,編が違えば別の経緯や役割があるなど,
微妙に大胆に交わりつつも,繋がりのない別物語になっています.
また,舞台となる京都や和の香りがするファンタジも大きな魅力で,
デジャヴュを見るかのような不思議な感覚に引き込まれてしまいます.

はじまりやおわり,ほかのいくつかに同じ文章や表現があるのも,
手抜きなどではなく,この世界観を描くための演出と思えば納得で,
ひねりの効いた最終話では,ラストにもニヤリとさせられるはずです.

主人公の偏屈で小むずかしい物言いや,たくましすぎる妄想など,
全編を通じたクセのある言葉まわしは好みがわかれるところですが,
これがこの作品の楽しさのひとつで,おかしな掛け合いにもなるので,
はまれればよいものの,そうでない人にはとことんダメだと思います….

なお,巻末の記載によれば,単行本からの加筆・修正があるとのことです. (ポロロッカ/2008-04-10)
京都を舞台に、大学生の怠惰でエキセントリックな日常が描かれる一冊。

主人公の最初の選択によって4つの平行世界が分岐して現れ、その物語が順々に描かれる、という構成になっている。
とはいえ、それぞれの話でまったく同じ出来事が起こったり(その際は、文章すら一字一句同じだったりする)、あるいは経緯はまったく違うのに同じ結果に落ち着いたりと、結果的にはまぁ大体同じようなことになる。
というと、なんだか同じ話ばかり読まされて飽きそうな気がするが、決してそんなことはない。
綿密に構成されたストーリーとネタが一体となった、極上のエンターテインメント小説に仕上がっている。

しかも、少々毛色の違う4つめの物語のバカバカしくも圧倒的なラストは、ちょっと感動的だ。
ゆるい作品のはずなのに、なぜか最後は感動してしまうというのは、同著者の『太陽の塔』と同様。
著者の筆力を何よりも物語っている。

本書の読後感は、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と似ている気がする。
どちらの作品が優れているかなんて比べることはできないが、『世界の終わり』になくて『四畳半』にあるものは「笑い」だろう。
というわけで、村上作品と「笑い」が好きな人には、必ず面白く読んでもらえる作品かと。 (チャックモール/2008-04-07)
運命論 |||
最終章のみ、パラレルワードを扱っているので、SFなのかもしれませんが、他章は主人公の懊悩する青春が可笑しく描かれています。
『太陽の搭』でも思ったのだが、解説が良い。
人生には無限の可能性があると思いがちなのですが、実は自分の不可能性に大きく制約を受けるという但し書きがあるということを本書を読んでいて実感しました。
作者はパラレルワードを描きながら、実のところ運命論をを説いているように思えました。 (コークス萌太/2008-06-11)
京都大学に進学した事を自慢しているだけの小説(;'Д`)ハアハア ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(;'Д`)ハアハア この小説は京都大学が舞台である。京都大学卒業生は何故か、京都大学を舞台にした物語ばかり描くのが特徴である。

東京大学の卒業生は東大の物語をあまり描かないのに・・・京都大学の卒業生は京大物語ばかりである。

京都大学という大学がそこまで『理想郷』であり 地上の楽園である事の証なのだらうか??

この著者は自分が京大に進学できたことを鼻にかけており・・・他の大学の学生(東大以外)
をバカにしているのが・・文面から・・ちらほら 感じられる・・・。

京都大学に進学する事で・・・自分が ネ申様にでもなったつもりなのか・・・

『神話体系』という・・・タイトルをつけている・・・。

京大に進学できた自分はネ申であり・・・神話を体系するのに相応しいと言わんばかりである・・・。

農学部なのに・・・どうしてそこまで・・・傲慢になれるのだらうか??

理学部なら分からんでもないが・・・まったく不思議である・・・。

(ホッカルさん(改)/2008-06-04)
本屋でたまたま見かけて購入しましたが、
意外な構成で楽しめました。

自分の大学生の頃を思い出し、懐かしい気持ちで読める
一冊です。 (ソライロ/2008-11-19)
IF
誰でもそうなのかもしれないが、人生において“もし”ってのが出来たらなんと楽しいのだろうか・・・

“if”

たった一つの選択肢が大きく自分の人生を狂わせていく

自分でも思うんだが、人生にリセットボタンがあったら何処からやり直すだろうか??
どこからやり直しても、根本的にはやはり変わらないんだろうな〜

この小説のように一つの選択肢で変わってくる世界はあるかもしれない。
でも、やっぱり自分は自分だし大きくは変わってこないってのが、改めて感じられてしまう。

やっぱり人生は小説のようにはいかないな〜。
まぁ、だから面白いんだろうけどね

って、そんな話。 (ブックジャンキー/2008-08-19)
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きつねのはなし
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新潮社(2006-10-28)
森見 登美彦
売上順位:13750
¥ 1,470(中古:¥ 680)

レビュー総評点:101
濃い京都 |||||||
夜は短し、太陽の塔と読んで、この「きつねのはなし」に進みました。
2作とは違う感じで、ポップさ・キラキラ感というよりも、ぼんやりと得体の知れない何か、という雰囲気です。暗いなかぼうっと光る神社のお祭り・長々と続く灯篭行列といったものを見たときの、心の中で感じる警告のようなものです。
何冊か読んでみて共通して思ったのは、装飾的なものを全て取り去って考えると、実は素朴でストレートで、なんか好感が持てます。
「京都」を濃く土俗的に表現してる、なんか京都に行ってみたくなる本です。
(ziwatto/2007-05-07)
京都+怪奇 ||||||||||||
京都好きの方にはたまらない小説です。
京都という街がもつ不思議な雰囲気が存分に出ています。
どの話も少しずつリンクしているようで、していないような…。
同じ世界の話だけれど、どこかちょっとずつずれているような…。
というような構成です。
森見さんの他の話よりも少し笑い出してしまうような文体は少ないですが。

レビューのタイトルにも書いたとおり、京都という趣のある舞台+少し背筋がヒヤッとする奇妙な話、といった感じです。

京都好きにも、ちょっと不思議な話が好きな人にも、読みやすい小説だと思います。 (メメントモリ/2007-03-15)
ぬるりとした感触 ||||||||||||||
本を読むと時々「感触」のある本に出会うことがある。
「感触」は読んでいる途中に文章が視覚以外の感覚を通して、
体に入ってくるという感じでしょうか。
単純な「ホラー」ではなく「するり」というか「ぬるり」というか、
ページを通して、肌にそんな感覚を残していく本でした。
特に描写に関しては、そんな感覚が強かったように思います。
雨の描写では、鼻につんとくる雨の香りが漂い、
起こるであろう恐怖を予感させる。
そんな文章を超えた感覚が、この本にはあるように僕は感じました。
(スクルージ/2007-04-03)
暗闇をじっと見つめて |||||||||||||||||||
デビュー作『太陽の塔』では京都の大学生の日常と妄想を面白おかしく書いていたが、今回の作品はがらりと雰囲気を変えて京都という街の暗がりの部分に目を向けた。
京都は観光都市でありながら、どこか謎を秘めた街だ。いわば京都のB面とでも言おうか、そこに足を踏み入れてしまった人たちを主人公に据えた中篇が四つ収められている。伏見稲荷・吉田神社の節分祭・琵琶湖疏水など、京都人には馴染みの場所を舞台にしてひそやかに繰り広げられる、いわば京都のB面とでも言おうか、影絵のような妖しく美しく恐ろしい物語もまた、古都・京都のもつ秘密に新たに加わった。京都という街が書かせた話といってもいいかもしれない。個人的には「果物の中の龍」が気に入った。
ただ怖いだけでなく、時には華麗ですらある描写が読ませる。夏目漱石『夢十夜』、京極夏彦『巷説百物語』などの幻想怪奇譚が好きな方には是非手に取っていただきたい。 (suira/2006-11-04)
不思議なことが不思議なままにある。きつねは、きつねの思惑で動いているのであって、人の思惑では推し量ることができない。
景色も綿密でほの暗く、感触は濃密で生ぬるく、嗅覚や聴覚が研ぎ澄まされる。
4編は、ゆるやかに繋がっているが、独立した物語として読んでもよい。
著者の独特の古風な文体は見られず、むしろ淡々とした語り口。圧倒的なインパクトには欠けるが、これはこれで好ましい。
ホラーという響きには不釣合いで、ひっそりと木陰にたたずむだけの白けた幽霊を見るような心地だった。
龍は、住むところに還れたのであろうか。淡い夢から醒めては忘れ去られる、物寂しさが残る。 (香桑/2007-05-16)
心理的にジワジワと近付いてくる恐怖。これが意外と怖いことに気付かされました。
ふだんはあまりこういう類いの小説を読まないのですが、これは面白かった。

すべてを見透かしているかのような怪しい老人。
その老人により、得体の知れない恐怖にはまっていく青年。
老人の怖さをあおり立てる、暗く美しい骨董屋の女主人。

全体がじめっとした小説世界の空気(恐怖)は、現実にまでも浸透し始め、
寝る前に部屋の電気を消しデスク用のライトだけで読んでいた私は、
何となしに部屋の電気をつけ明るくして表題作を読み終えました。
本当は電気を絞って読んだ方が雰囲気でるかも。勇気があればですが…。
(まるき/2007-02-20)
ホラーとも言いがたいような幻想的で不思議なお話でした。

それぞれの短編に
「狐の面」「芳蓮堂という古道具屋」というキーワードが出てきて、
一瞬すべての話はリンクしているように思えるんだけど、
設定が微妙に違う・・・・
で、どれも謎が謎のままで解決していない。

腑に落ちないような不可思議な要素が多く、
全体的に曖昧な印象を醸し出しています。

著者、作品時代は多くを語らず、
それらは自分の想像力で解決納得してくれというタイプの作品なのかも。

世の中にははっきりとさせてはいけないことがある。
「狐は人間を騙す」だとか、
そういう言い伝えも本気になって証明したりはしてはならない。

謎は謎のままでのこしておかなくてはならない場合もある。
そのへんの境界線をゆらゆらと漂うような作品でした。 (夢追い虫/2007-01-29)
ホラーではありません。恐怖を正面に据えて、「ほら怖いでしょ?」と作者が語りかけてくるような作品ではありません。キング以降のモダンホラーとは、対極にあるのでしょう。伏線、登場人物の内面描写、謎解き、クライマックスといった約束事がないので、肩すかしにあう読者もいると思います。
ところが、なかなか面白いのです。
本作は幻想を語っています。たくさんの謎も提示されますが、どれも未解決のまま、放っておかれます。
京都の夜、さびれた古道具屋、血縁の謎、ミステリアスな女、竹薮に囲まれた屋敷、琵琶湖疎水。想像力をかき立てる小道具は揃っています。
連作ですが直接の関連はなく、次章を読む度「この古道具屋って?」と、物語の背景を想像させられます。
本書は、とにかく半分だけ出して、あとは想像しなさいという小説です。

本作は、若者が道に迷い、誰かと出会い、夢のように時間が過ぎたエピソードを描いています。
幻想として描かれてはいますが、描かれている感情って、結構普遍的なので、本作は面白いのだと思います。
って、ことは幻想小説でもありますが、青春小説でもありますね。(随分屈折した方のです・・・) (いせむし/2006-11-23)
なんだか不思議でどうなるんだろうと、期待半分で読み進めても解決しなくてあれ??と思っているとなぜか繋がっていたり気が付けば、どっぷりと物語の世界にはまり込みました。
京都の持っている独特の雰囲気からか、こんなこともあるかもしれないと思えてしまえるのが不思議でした。
京都の竹林を揺らす風の音と共に異界の扉が開いて、なんだかココに住む人は違和感無くこの世界と異界とを行き来しているのでは?と思ってしまいました。 (Linden/2007-01-20)
幻想怪奇譚というジャンルであるのにミステリ的な要素を期待しすぎて読み始めたわたしが間違っていたと気付いたのは第二編の「果実の中の龍」に入ってから、でした。

第一編の「きつねのはなし」はそこそこ読めて、「骨董屋」を狂言回し的にプロットして展開していく・・・おっ面白そうじゃないですかと感じたのですが、伏線があって何か一つ(複数でもよいのですが)の謎解きや筋に収斂していく、という展開ではなく、それぞれのエピソードが「ゆるく」繋がって、物語の流れとして何となく「怪奇譚」。何せ「幻想」ですので。

ん?これは前の話(後の話)とどう繋がるの?と思っても微妙に繋がらなかったり、著者が終始読者を幻惑するような、そんな本。こういう「ユルさ」を楽しんで、かつ「放っておかれ感」がお好きな方なら楽しめるのかも。ぼくの趣味ではないです。 (driven/2006-11-18)
京都という舞台といくつかのキーワードを軸にして、時代や設定、人物を変えながらも巧みにリンクしていく四篇は、果実の中の龍で先輩が言っていた“神秘的な糸”が張り巡らされているよう。深読みしすぎたのか、伏線かと思っていたら以後全く触れられない箇所もありましたが、逆に意外なところが結び付いていたり、先へ先へ読みたくなる作品です。
読後感はまさしくきつねにつままれたよう。恐怖と言うよりもう少し毒気の無い、奇妙とか不可思議と言ったほうがしっくりくるような、月夜にひっそり読みたくなるような一冊です。 (ちま/2006-11-17)
何かの雑誌で面白いとあったので期待して読んだのですが、
半分くらいで読むのを辞めてしまいました。

こういった不思議なストーリーは嫌いじゃないです。
好んで読んでいるほうだと思います。
ただ、この本は登場人物の気持ちが全然伝わってこないのです。
見たままを文字にしただけで、
ナレーションのないドキュメンタリーを見ているような感じでした。



(ひつじ♪/2007-06-08)
う〜ん、どうだろう?
『きつねのはなし』はわりに面白く読めたんだけど
他の作品がちょっと肌に合わないというか、
摩訶不思議な体験談ってだけで
なかなか話の中に入り込めなかった、そんな感じがした。
入り込めないと言うか、
置き去りにされた感じですね。

こういう不思議系な話は嫌いではないけれど、
どの登場人物にも
感情移入ができなくて、
まぁ、どの登場人物もなんとなく影が薄い気がして
しょうがなかったです。

しかし、森見さんのもつ独特さはこの作品でもしっかり健在で
それはそれでよかったんだけど、
これまで読んだ作品のように
強烈なキャラクターがいない分、
物足りなかったのは気のせいではないはずです。

芳蓮堂をもっと前面に押し出して
そこから人間の心の奥に潜む『魔』について
書いていくともっと面白かったかな〜と個人的には思いました。 (なおっち/2007-07-30)
あれ? ||||||||||||||||||
 「太陽の塔」、「四畳半神話大系」は面白く読めたのですが・・・。これらの作品とはタッチが違っていて、ああ、こういうものも書けるのか、と納得して読んだのですが、全4話のうち面白かったのは1作目だけですね。あとは好みではありません。ただ、この作品はこの雰囲気を狙っているのか、失敗しているのかよくわかりませんでした。しかし、残りの3作が書下ろしであることから考えて、やはり構成不足であると考えます。これまでの作品は荒削りだけど面白かった。この作品は、うまくなったけど面白くはなくなった、という感じでしょうか。
 あえて、辛口の星2つにしましたが、応援しています。次回作を期待しています。細かいことは考えずに思いっきり書いてください。カーブを得意とする投手が覚えたばかりのフォークボールで勝負している感じです。ゆるいカーブでいいんですよ。バッターは打てないんだから。また、観客もそれを望んでいるんですから。 (秀文/2007-08-05)
書店で幾度か見かけて、
不思議大好きっ子にはたまらない題名と表紙につられて買いました。が、
・・・ん〜
全然文章とかもうまいしいいと思うけど
読んでくうちに”続きが読みたい!”という衝動にかられないんですよ。
はじめて本を読んでいて退屈になりました。
ストーリーもたぶんものスゴく深いと思うんですけど、わからない。
自分の読解力がたらないのもあるとおもうんですが、
それ以上にストーリーにひきつけられない。
これといって怖くもないし、楽しくないし、
けして人にすすめられるような本ではありません。
でも、表現力がすごくて、その本の舞台の情景が目に見えるようです。
それが、唯一この本のいいとこかな?と思います。
ホラー系と思っている方は、たぶん満足されないと思います。

ん〜、これが文学というやつなのでしょうか?

(ポッチャ/2008-02-10)
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