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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
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ASIN:4102159711
新潮社(2006-05)
原著:Simon Singh翻訳:青木 薫サイモン シン
売上順位:537
¥ 820(中古:¥ 390)

レビュー総評点:371総評点300以上の注目商品
ニュートンもかくありき |||||||||||||||||||||||||||

とても上質なドキュメントです。「余白が足りないので驚くべき証明を書き記せない」という何とも思わせぶりなメモと、簡潔な数式で余りにも有名なフェルマーの最終定理が、とても余白などには書ききれないような膨大かつ高度な最新数学を駆使して証明される過程を素人に分かりやすく記した、小説以上にドラマティックなノンフィクションです。

ワイルズの証明の前提を成すある『予想』を提示した数学者も、ワイルズの発表前に誤った『証明』を発表した数学者も、そしてワイルズが発表後の瑕疵を解決する際に大きな役割を果たしたある『理論』を提唱した数学者も、全てが日本人であると言うこともこの真実のストーリーにのめりこむ一要素になっています。

しかし、何と言っても一番感動的なのは、砂上の栄光の後の挫折の中で一度は自ら閉じかけた解決の扉を才能が導いた閃きと共にもう一度押し開く瞬間の描写です。ここはワイルズ自身の言葉で語られていますが、もしニュートンにリンゴが落ちた瞬間の閃きの感動をインタビューしても同様の言葉が返って来るのではないかと思えるほどです。

最終章の四色問題や球体充填問題の説明は蛇足のような気がしますし、73ページ9行目の誤植は場所が場所だけに残念な気がしますが、そのような小さな欠点を補って余りある興奮と迫力が全編を貫いています。 (midiman/2006-07-03)
数学におけるノーベル賞と言われているのが、4年に一度、国際数学者会議で授与されるフィールズ賞である。ただし、40才以下の数学者が対象である。
本書の主人公、アンドリュー・ワイルズは、1998年、フィールズ賞の受賞制限年齢を超えていたが、350年間未解決だった「フェルマーの最終予想の解決」という業績に対し、史上初めて特別に1998年にこのフィールズ賞を授与された。
原著はこれ以前に書かれているため、フィールズ賞受賞の記述はない。ワイルズの業績が数学史上特筆すべきものであったことを示すものであった。

フェルマーの最終予想の問題が非常にシンプルであるにもかかわらず、どれほど、この予想の証明が難しかったか、大数学者コーシーですら誤った証明を発表し、350年間、目もくらむような多くの大数学者たちが、この問題に取り組んでいったか、若かった谷山豊、志村五郎が、日光での国際会議で配った一つのレジュメが与えた衝撃、谷山の自殺、19世紀31歳で決闘で死んだ天才ガロアの生涯の詳細な記述、ワイルズの最初の証明の致命的欠陥、そして、ワイルズの証明がどれほど広大な分野を含んでいたかが、素人にも雰囲気が伝わるように書かれており、著者の才能に驚く。

途中で読むのをやめることができなかった。

(hmyog/2007-09-16)
今回文庫本になったこともあり、読んでみました。約500頁もある本ですが、約3日で読めました。非常にドラマチックです。読了後も暫く興奮してました。
大きな夢(grand design)を持つこと、良い課題を設定すること、それを上手くブレークダウンすること、壁にぶち当たった時にも考え抜いて「ひらめき」が生まれる状況にうまく自分を持っていくこと、、、そんな研究者の営みが「フェルマーの最終定理」に取り組むワイルズの姿を通じて良く分かります。「貴方が、出来ると思っても、出来ないと思っても、どちらも正しい」(フォード)という言葉が思い出されました。「出来るはず!」と信じて8年もの間この課題に取り組むワイルズの根性に素直に感動しました。

広中平祐氏の自伝「生きること 学ぶこと」と色々と共通する点を見出しました。(こちらの本もオススメですよ!) 「知恵の広さ・深さ・強さ」「創造のある人生こそ最高の人生(=気付かなかった自分の資質を掘り当てる喜び)」の意味がこれらの良書を通じてよく分かりますね。「試行錯誤は絶対に無駄ではない」(広中氏)、これはワイルズの話でも共通します。この言葉は大事にしたいですね。 (ゴルゴ十三/2006-06-16)
フェルマーの最終定理を解くために、19世紀の数学、世界中の数論を
統合したプリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ、なんともすごい話
である。それにしてもピタゴラスの定理につながるとは、この著者サイモ
ン・シンもすごい、物理学からTV界に、そして、この本である。たぶん、
サイモン・シンがBBCで放映し、この本を書かない限り、一般の人には
この大きな業績の意味を理解できなかっただろう。たまたま、何年も前に
BBCの番組を観て、このときのワイルズの言葉で、「朝起きたら、ふっ
とひらめいた」とひらめきの話しがすごく印象にあり、仕事や日常で壁に
ぶつかったときに思い出した、そして、その話しを人にもした。数学は、
問題の解決をする学問である。したがって、答えは一つでも、人それぞれ
に解決への道は違う。ワイルズは、350年間の全ての数学者の考えを1
つにした。こんな、ワクワクした本の著者サイモンに感謝し、さらに、こ
の本を翻訳した青木薫氏にも感謝する、訳者が自然科学を愛する女性とは。
 この三者がいなければこれほどの読み物にならなかっただろう。
 確率論やゲーム理論などなるほどと思った話しが満載である。
 ただ、最終章の未解決のケプラーの話しからは、蛇足であった。

(A・佃崎/2007-01-14)
「数学はいつも3。 |||||||||||||||||||||||||||||||
暗算を求められるとパニックに陥ってしまう。」

そんな超文系の私でも、最後まで一気に読んでしまいました。
今では周囲の友人たちにも、「最近こういう本を読んでさぁ」と、言いふらしたくてしかたありません。
そうすると、数学がニガテであればあるほど、目を輝かせて聞いてくれるのですよ。数学に挫折した人間にとっては、それほどまでに新鮮な世界なんです。

文系人間の私が、数字を通じては感じることの出来なかった美しい「数論」の世界。それを文章というかたちを通じて知ることができたことが奇跡のように嬉しいです。

(チト/2006-07-31)
2000年に出たハードカバー版の文庫化。ハードカバー版は2000円以上しちゃうのでなかなか買えなかった。文庫版になって820円になったので購入したのだけれど、いまさらながらに後悔した。

これは2000円以上出しても良い本であった、と。

ピタゴラスからワイルズに到るまで、数学の歴史を紐解きながら、フェルマーの最終定理について語るサイモン・シンの筆力に脱帽。多くの個性的な登場人物が登場し、フェルマーの最終定理に挑みながら破れ、しかし破れてもなお彼らの挑戦が後の挑戦者の礎となっていく。下手な歴史小説などより遥かに面白い。
この本を高校生の頃に読んでいれば、間違いなく自分は数学者を目指していただろうなあ…。 (miya/2006-06-07)
フェルマーの定理が証明されたと聞いてわくわくした。その後、このことを報道する番組や、扱った本を何冊か目にしたが、やっぱりこの本が一番おもしろかった。おもしろさのポイントは、フェルマーの定理の証明の中身に深入りせず、その背景や手法の説明に重点を置いた点にある。その中で、数学の歴史や、わかりにくい「数論」のおもしろさ、女性や日本人研究者の貢献や、証明を計算でやってのけるコンピュータの活用とその影響など、興味の持てる題材をちりばめている。
その証明を理解できる数学者はむしろ少数であるらしいし、何章にも分かれた証明を読む気にはならない。でも、あの単純さとわかりやすさで多くの人にすぐ理解可能であった定理の証明が、これほどの積み重ねであることには感心する。純粋学問としての数学の奥深さにふれることができた。 (pooh bear/2006-07-22)
最近読んだ本の中では一番面白かったです。
自分は生粋の文系人間ですが、この本は一気に読むことが
できました。難解なことはそれほど書かれていないし、補遺も付いて
るし、無限ホテル、素数ゼミなど興味深い話もあって分かりやすいです。
苦手だった数学に改めて目を向けさせてくれた点で、感謝
したい一冊でもあります。

学術書というよりはドキュメンタリーですね。
食わず嫌いせず、まずは読んでみることをおすすめします。 (ゾラ/2008-04-19)
タイトルだけだと誤解しかねないですが、定理の証明が載っている訳ではありません。(だいたい、証明自体はとても常人に理解できるものではありません。)これは、非常に秀逸なノンフィクション・ドラマです。小説好きな文科系の方には是非読んでみて欲しいと思います。中学校で習った「ピタゴラスの定理」さえなんとなく知っていれば、読むのに何の苦労もありません。読み出したら一気です。次の日が休日であることを確認してから読んでください。著者も素晴らしいですが、このような題材の文章を、軽快且つ平易に訳している訳者もとても素晴らしいと思います。快作。 (ATS/2007-10-15)
本書は数学をテーマに掲げているものの、
その内容は素晴らしいドキュメンタリーだ。

戦争映画を見るのに、銃の取扱いを知ってる必要は無い。
スパイ映画を見るのに、数ヶ国語に熟達してる必要も無い。
数学者の物語を読むのに、数学を知っている必要は無い。
むしろ、先入観も無く、数式もさらりと流してしまえる、
数学嫌いな人の方が本書をより楽しめるのではないだろうか。

500頁のボリュームだが、ハラハラドキドキの展開、
思わず息を殺して読んでしまう程のスリルと緊張感。
面白いドキュメンタリーの要素が、ぎっしりと詰まっている。

ぜひ、身構えずに読んでみて欲しい。 (ナカヤンJP/2007-06-04)
すご〜くおもしろい ||||||||||||||||||||
フェルマーの最終定理の証明に関係する専門分野の数学者でも10%程度しか
ワイルズの証明を理解できないと,本文にあるように
非常に難しい,というか意味のわからない話が主体なのに
途中で?もなく,ここまで面白くまとめた著者はすごいでしょう,
もちろん著者も完全に理解はしていないでしょうに,
すぐにファンになりました.

内容はワイルズのフェルマーの最終定理を中心に,それまでの歴史,周辺数学事情を
非常に的確に選んで一つの物語となっています.
難しいはずの内容がほとんどの人が読めるように,しかし「わかった気にする」だましではなく,
うまく端折って次への興味を抱く構成となっています.
数学のわからない人でも一気に読める内容なので,多くの人がおもしろく読めるでしょう.
残念なのはこの書名だと数学嫌い(日本人の大半?)は手に取らないこと.
しかし,これしか書名はないか.

これくらいのテーマだと,訳者も背景の勉強は大変だったでしょう.
著者,訳者ともにブラボー.


(歩く鳥/2007-02-27)
簡単な算数からはじめて、飛躍を感じさせること無くフェルマーの
最終定理が解決される過程を読ませる構成力と文章力に脱帽です。
また、翻訳特有の感情移入を妨げる変な日本語も無く、
ダビンチ・コードに劣らない、最高にエキサイティングな一冊です。
(kaz-p/2006-06-24)
フェルマーの最終定理という数学の中でも最も厄介で難解と言え、
それでいて単純な構造のこの公式を解くべく、幾多の数学者たちが
挑戦と挫折を繰り返しながら、最終的にワイルズの証明へとつながる
苦難と栄光の物語。

物理学者である著者の数学に対する客観的で、しかし温かみのある
視点から綴られた文章が軽快で心地よく、その臨場感溢れる筆跡は
この難解な公式に関わった人たちのドラマをより劇的なものにして
私たちに伝えてくれる。
さらに、この公式を解く過程で重要で新たな理論や公式が次々と
生まれてきたという、副次的ながら重要な事実も教えてくれている。

また、ついに解けてしまったフェルマーの公式への、ある種の切なさをすら、
著者は最終項で気遣ってくれる。

「暗号解読」、「ビッグバン宇宙論」と興味深いタイトルを続けて排出する
著者の作品の中でも出色の出来。
原書であるハードカバーの重たさにめげずに一気に読破したことを思えば、
文庫の本書は文句なく星5つ。

少しでも数学に興味がある方なら必ずや満足いただけるはずの良作。 (晴耕雨読/2007-08-10)
明快。 |||||
すぐに読破できた。そして話の軸がぶれていないため、内容が脳に爽快に入ってくる感覚を覚えた。数学ハイの状態を演出してくれます。
はっきりいってお勧めですね。 (難波教授/2007-06-03)
フェルマーの最終定理を軸に置いた、ピュタゴラスの時代からの数学に関するドラマを、興奮を覚えながら興味深く読み進めることの出来る著作である。そして、知的好奇心のみならず感情も刺激される。

また、フェルマーの最終定理を証明するために、なぜ谷山=志村予想の証明が必要なのかも本書を読むと理解出来る(谷山=志村予想自体が具体的にどう言ったものなのか理解出来た訳ではないが)など、数学に関する専門知識が無くとも読みこなせる内容となっている。

日本では、数学の才能があってもなかなか仕事に数学を生かせないらしいが、谷山・志村以外の日本人の名が本書にはしばしば登場するのは意外でもあり心強くもある。 (3.14カラットのダイアモンド/2006-10-28)
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暗号解読〈上〉 (新潮文庫)
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ASIN:410215972X
新潮社(2007-06)
原著:Simon Singh翻訳:青木 薫サイモン シン
売上順位:3363
¥ 620(中古:¥ 288)

レビュー総評点:73
最高です. |||||||||||||||||
紀元前の初歩的な暗号から第一次世界大戦でドイツ軍が使用し他国を震撼させたエニグマ,
さらに現代の量子暗号までの暗号の歴史を,暗号開発,解読に携わった技術者たちの話や,
暗号のしくみとともに紹介しています.

非常に面白いです.前作「フェルマーの最終定理」よりさらに面白くなっていると思います.
エニグマをめぐる各国の争いなどは,
普段探偵マンガなどにみるダイイングメッセージの解読とは違い,
生死の際で必死になって暗号解読にとりかかる技術者たちの姿が克明に描かれています.
すでに過去の話であるため公開されているとはいえ,
各国が極秘事項をどのように扱っていたか,国どうしの関係なども描かれていて
興味深いです.
(歩く鳥/2007-07-30)
 「フェルマーの最終定理」のサイモン・シンさん、
暗号解読の歴史というドキュメンタリーのこの素材を、
ストーリーテラーとして本当に上手く料理されてます。

 冒頭に、暗号の重要さを説明する例として、
 16世紀後半のスコットランド女王メアリーの悲劇を紹介・・・
暗号が破らなければ助かるが、暗号が破られると死刑・・・という究極の状況。


 副題通り、ロゼッタストーンのヒエログリフの解読から、
 量子暗号の原理まで、読みごたえありました。

(papillon/2007-10-06)
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』で長門が読んでいた本の文庫版だ。
 上下巻で600ページを超える厚モノだが、これは面白い。一気に読めてしまう。
 この本の凄いところは、暗号にまつわる物語を「スコットランド女王」の物語から始めて「暗号解読」を「人間ドラマ」として読ませてしまうところ。
 フランスの鉄仮面、エニグマ暗号を巡るドラマ、ゴールドラッシュ時代に隠された宝探し、第二次世界大戦のナヴァホ族の言葉を使った暗号などなど、古代文字の解読から現代のコンピュータ通信網まで、暗号を使う人のドラマや暗号を解読する人のドラマ、暗号の現れる舞台には必ず人のドラマが存在する。
 一方で、この本は本格的に「暗号の解説本」でもあり、解読テクニックの詳細を徹底的に書き込んでいて、ただの歴史解説本ではない。ほとんど数学書のようなページもあって、コンピュータを使用しないレベルの暗号については、実際に読者が解読に取り掛かれるだけの情報を盛り込んでいる。巻末には懸賞金をかけた「挑戦問題」まである。
 「暗号解読」をこんなにスリリングな読み物にしてしまう「サイモン・シン」というライターは凄い。他の本も読みたくなってしまった。 (からから!/2007-08-31)
世界の情報化が進む中、暗号の重要性は益々大きくなってきている。

普段、何気なくウェブで買い物をしたりメールを送ったりしているが、これらが安全にできるのは暗号のお陰である。現在は当たり前のように使われている暗号だが、そこに至るまでには様々なドラマがあった。

上巻では、暗号の歴史が主に書かれている。カエサルから第二次世界大戦に至るまでの暗号作成者と暗号解読者の攻防がいきいきと描かれている。歴史、戦争にこれほどまで暗号が関わっていたということに驚く。

過去の歴史の中で使用されてきた暗号は種々あるが、具体的な暗号の例を一つ挙げよう。最も原始的な暗号の一つに、アルファベットのある一定分ずつずらすというものがある。例えば、dogという単語を一文字ずつ後ろにずらすと、ephという意味のない文字列に変換される。この手法で作られた暗号は素人目からしたら十分に解読不可能と感じられるが、このタイプの暗号は解読者の手に掛かれば見事に解かれてしまう。その手法に現代にも通ずるような統計学、言語学の知識が使われていたことは驚くに値する。


下巻では、現在の安全なウェブ社会を支えている暗号を実現するために最も大きな問題となる「鍵の配送問題」が中心に記述されている。

ある人が他の人に暗号を送る場合、暗号を送るだけでは正当な受信者はそれを復号できない。復号するには、「鍵」が必要で、それをある法則に従って暗号に当てはめ、解読することが必要となる。従って通信を成功されるには送信者は受信者に鍵を事前に知らせておく必要がある。

この鍵を知らせるためには、それを直接持っていく、または第三者に委託するなどの方法があるが、いずれも盗み見られたり奪われたりする危険性を免れない。またウェブ社会では相手が不特定多数になるため、一々配ったりすることもできず、この問題は大きな障害となるはずであった。しかし、これはある数学的知見により見事に解決されることとなる…。


上下巻とも非常に面白く読み応えがあるのであわせて読まれることを薦める。なお、補遺は下巻の巻末についているため、参照しながら読みたい人は上下巻をセットで買った方がよい。 (pragma/2007-09-28)
フェルマーの最終定理があまりにも面白かったので、こちらも購入。

メアリ女王をはじめとする暗号にまつわる数々のエピソードを物語風に描くのは見事。これらのストーリーにはぐいぐいと引き込ました。

ただ、全体的には読解が難しかったかなあ・・・と。
暗号というかパズルを解くこと自体苦手な私にはやや読みづらい面もありました。

本書は「フェルマーの・・・」と違い、じっくり読み込んだ方がいいかも知れませんね。 (はっしー/2007-10-23)
「フェルマーの最終定理」に魅了され、この本も購入。

今回の「暗号解読」も素晴らしい出来だった。暗号解読者と作成者の間で繰り広げられる果てしない知的競争、その中で進化していく暗号。そこに暗号に関わってきた人間達のドラマが加わり、知的興奮と感動が同時にやってくる。

中でも鍵配送問題、公開鍵が取り上げれる下巻は最高だった。
(nori/2007-08-08)
「フェルマーの最終定理」のサイモン・シンが暗号ものに挑むとなると読まずにはいられない。期待を上回る内容で再度この著者の力量に感嘆してしまいました。
暗号解読から古代文字の解読まで、途中途中に様々なエピソードを混ぜ合わせながら、暗号そのものの魅力と、その暗号にまつわる国家や組織人物を、余すことなく伝えてくれる。
面白いのは、暗号作成側と解読側のそれぞれの時代の攻防だ。きっと今現在も平和な暮らしの裏側で壮絶な暗号を巡るやり取りが行われているんだろうと思うと背筋がゾクゾクするようなワクワクするような・・・
暗号学の異色さはこの一文が如実に語っている
「プロの科学者の大半は誰よりも先に仕事を発表しようとする。なぜなら彼らの仕事は広められて初めて真価を発揮するからだ。それに対して暗号の研究は情報が漏れる可能性を、最小限にとどめてこそ最大限にその価値を発揮する。暗号に関する秘密が公開されるのは秘密にしてもこれ以上意味がないことが明らかになったときで、ただ歴史的正確さを期すためだけのものでしかない」
国家的なプロジェクトの暗号解読により、間接的に多くの犠牲を防いだ英雄的暗号解読者達は、ほとんどがその偉業を世間に知られることなく死んでいる。そんな知られざる偉人達に遅まきながらも拍手を送ることが出来る名作。面白い。
(山根晋爾/2008-05-11)
邦訳リリースは2001年7月、文庫版は2007年7月。オリジナルは1999年である。非常に難解な暗号の歴史と技術をこれだけ噛み砕いて時系列的に配置した本はこれ以上にない、と言いきれるくらい傑作だ。そしてこの本を翻訳するというのは生半可な作業ではなかったろうな、と思った。

この本を読む前にまず、ブルース・シュナイアーの名著、『暗号の秘密とウソ』・『暗号技術大全』・『セキュリティはなぜやぶられたのか』の3冊を読み、ロス・アンダーソンの『情報セキュリティ技術大全』を読んでから取りかかった。しかしながらこの本はそういった専門書を遙かに平易に遙かに歴史的流れに沿って、その上遙かにドラマテックに読者に教えてくれた。たとえば良い例が、RSA暗号で使われている非対称暗号における公開鍵と秘密鍵の説明だった。シンはこう平易に説明している。

公開鍵→二つの素数aとbの積
秘密鍵→その積の元となった二つの素数
そしてその積の長さが充分に長ければ暗号強度は強い。

実に解りやすい説明だ。僕はこれ以上に解りやすい非対称暗号における公開鍵と秘密鍵の説明を見たことがない。

この例のような極めて冴えた説明が最後まで衰えない。有名なアリスとボブとイブも後半に登場するのだが(物理学においてアリスとボブの例えというのは通例になっているようだ)、この有名なキャラクタもシンの手にかかるとより一層見事な例示をしてくれる。超難解な量子力学においてですらだ。翻訳共々すばらしい作品で読み逃せない傑作だ。 (voodootalk/2008-05-04)
 「フェルマーの最終定理」が面白かったので 本書を自然に手にとる機会を得た。相変わらず 科学を小説のように語る著者の語り口は健在であり ぐいぐい読ませる。科学に必要なのは こういう「語り部」なのであろうと感心させられた。

 読んでいて一番感じたのは 現代こそが暗号の時代であるという点だ。

 本書の通り 暗号は 主に戦争で必要とされてきた。言葉通り「武器」の一つとしての暗号という時代が長く 本書が取り上げる暗号の歴史は 戦争の歴史となっている。実際 本書で取り上げている暗号の歴史を見ていると 人間が戦争を「情報戦争」にしていった様がはっきりとしており 大変勉強になった。
 その上で 21世紀の現代こそが「暗号の時代」であると言いたい。

 考えていると いつのまにか僕らは「パスワード」という暗号を日常で使う日々となっている。ネットを通じた「仮想空間」へのアクセスには 自分で決めた「暗号」であるパスワードが不可欠であるし アクセス中のやりとりもすべて「暗号化」されている。僕らはそんな「暗号」が無ければ 日常生活にすら支障を欠く程になってしまっているのではないだろうか。

 「暗号」とは 自分がやりとりする個人情報が 「他人の目や耳にふれるルート」をたどる際に必要なのだと思う。
 ということは 現代の特徴とは「他人の目や耳にふれるルート」の飛躍的な増大にあるのではないかということだ。その代表格であるインターネットの社会のインフラ化こそが 暗号の需要の最大原因だと僕は思う。

 昔は(そうして今もだが)「親展」とスタンプの押してある封書は 受取人以外には開かなかったものだ。ある意味で これは人間のモラルが健全に機能してきた証左だと思うのだが 今 ネット世界で見えてくる人間のグロテスクな一面は そんなモラルを否定している。
 匿名という隠れ蓑があれば(そうしてそんな隠れ蓑も暗号で担保されているわけだが)人は「親展」と書いてある封書も平気で明けるようになった。なぜなら 自分が開けたと誰にも分らないから。
 そうなると 「親展」のスタンプも 暗号がなければ開けないスタンプにしなくてはならないし さらに封書の中身も暗号にしなくてはならない。それが 現在のコミュニケーションであり それを通じて見えてくる人間の様相なのだ。

 暗号は人間臭い。それがはっきりしたことが本書を読んで勉強になった点だ。
 

 
  (くにたち蟄居日記/2008-05-29)
歴史のさまざまな場面で決定的な役割を果たし、現代情報化社会の根幹を支えている暗号技術とその解読について、詳細かつ非常に分かりやすく書かれています。
内容の詳しい紹介は他のレビューに譲りますが、今まで関心のなかった事柄が一冊の本をきっかけに、二度と無関心ではいられなくなるそんな体験ができる一冊です。
サイモン・シンの他の著作を読んだ人はおそらく本書も読むでしょうが、まだサイモン・シンを知らない人は是非読んでみて下さい。 (眼鏡越しの宙/2008-06-24)
科学技術系のノンフィクションで有名なサイモン・シンによる暗号本。
単純に暗号の理論面を、一般人に理解できるように噛み砕いて説明しているだけでなく、どういう社会的な状況の中、その暗号が開発され利用されたかを、人間ドラマを軸に書いています。

かなり読ませる文章に一気に読んでしまいます。

自分は情報工学系の学科出身なので、この書籍に登場する暗号の理論面は知っているのですが、背後で起きていた出来事があったのかと感心しました。
工学系の学生でも、単純に理論を学ぶだけでなく、技術や理論の背後にあった人間ドラマを同時に学ぶと関心が強まるんじゃないでしょうか? (ヴィヴ/2008-04-30)
ちゃんとした暗号の基礎理論や、メカニズムまでしっかりと解説してくれる。取り上げた一つ一つの暗号にまつわる壮大な物語が背景となって、知的興奮を呼び起こされずにはいられない。通信の速度・量ともに暗号の重要性が増し、いまや無意識に暗号文がやり取りされている昨今、こうしてその原点を見つめなおしてみるのも面白い。

充実した内容もすごいし、翻訳本とは思えない読みやすさ。ページ数は多いのに、一気に読めてしまいます。通勤電車と得書会でしか本を読まない僕が、久々に家でじっくり読んでしまった。

言語学者から古典学者、トレジャーハンターたち、そして数学者を魅せ続けた「暗号解読」。暗号と、それを鍵に繰り広げられる壮大なストーリーを読み解くことができるすばらしい本でした。 (mnishikawa/2008-03-29)
日常的な存在すぎてこれまで全く注意を向けたことのない暗号技術の歴史とこれからについて,楽しく知ることができました.暗号作成者と解読者のタカ・ハトゲームの描写がとてもエキサイティングです.
これはサイモン・シンのサイエンスライターとしていちばん優れた特徴だと思うのですが,一般向け読み物といえど数学的・工学的なエッセンスを誤魔化していない点もすばらしいです. (mits/2008-02-26)
無茶苦茶面白かった。著者はとにかく、難解な学門を平易に書くのが上手い。この人の本を読むといつも思うのは、人間て凄いなあということ。何千年も前から、天才というのは常に存在していて、その天才というのは、他人から見たら、「そんなの無理無理、ヤメといた方がいいよ」というようなことを何年も何十年も考える人だと思う。そういう天才に、神はある日突然インスピレーションを与えるのだ。その発想たるや、唖然とするしかない。ホントに、もしかしたら人間に出来ないことはないんじゃないだろうかと思わせる本。 (sukeza/2007-11-14)
サイモン・シンの最初の作品である、「フェルマーの最終定理」がとても面白く、本作もきっと面白いと思い購入したが、期待は裏切らなかったです。
暗号を作成する者。その暗号を破る者。そのいたちごっこの歴史が書かれている。内容は私にはかなり難しいが、ドキドキワクワクさが半減することはない。読めば読むほどはまってしまう。そして、古代文字を暗号とみなし、古代文字の解読をした学者たちの活躍は一番楽しめたのだが、現在解読されていない中国の西夏文字についても書いて欲しかったと思う。それを書いてくれていたら星5つだった。
(smil427/2007-10-24)
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w:10 h:15 382page
暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)
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ASIN:4102159738
新潮社(2007-06)
原著:Simon Singh翻訳:青木 薫サイモン シン
売上順位:2379
¥ 660(中古:¥ 330)

レビュー総評点:19
ウェブ社会の恩恵は企業にとっても個人にとっても計り知れないものとなっている。それを可能にしているのは顧客と企業を結ぶ安全な通信手段である。そしてその通信手段の天守閣こそが暗号である。


上巻を通して語られているように暗号には国家の存亡に関わるほどの強い力と深い歴史がある。下巻のはじめにも暗号がいかに戦争の行方を左右したかということが鮮明に描かれている。かくも重要な暗号であるが、1960年代以前のものには大きな弱点があった。それは「鍵配送問題」である。

ある人が他の人に暗号を送る場合、暗号を送るだけでは正当な受信者はそれを復号できない。復号するには、「鍵」が必要で、それをある法則に従って暗号に当てはめ、解読することが必要となる。従って通信を成功されるには送信者は受信者に鍵を事前に知らせておく必要がある。

この鍵を知らせるためには、それを直接持っていく、または第三者に委託するなどの方法があるが、いずれも盗み見られたり奪われたりする危険性を免れない。この機密性の不完全さが問題の一つである。さらに、戦争などの場面を考えると、コストが問題になってくる。それは、軍隊への通信を可能にするには各部隊に暗号復号用の鍵を知らせておかなければならず、鍵が変わる度に多くの部隊にそれを配送しなければならないからだ。実際、戦時中は鍵を配送するために多大な費用が掛かっていたという記録がある。また、ウェブ社会では相手が不特定多数になるため、一々配ったりすることもできず、この問題は大きな障害となる。

この「鍵配送問題」は長い間、解決できないものだとされてきた。しかしながら、これはある数学的知見により見事に解決されることとなる。それは、一方向関数という概念(を応用したもの)で、ある一定の状況に限って復元可能な(=双方向な)関数になるというものだ。これにより、暗号化には公開鍵(文字通り広く公開されていて問題ないもの)を使って一方向関数にいれ、それを相手に送り、受信者は個人鍵(自分で決められる)という一方向関数を唯一逆転できるものを使って復号する。これは個人鍵さえ機密にされていれば暗号の送受信は成功することを意味している。ここで重要なのはどちらの鍵も「配送」というプロセスを得ていないということである。

この鍵配送問題は下巻で最も力点が置かれる部分であるといえる。なるほど思わず唸ってしまうような知恵が、平明な文章で記述されており、筆者・訳者の力量に脱帽である。


また、暗号の強力さに関して、ある一定以下に保とうとする国家と暗号推進者の攻防も実に興味深い。暗号が強力になることは国家がそれを解読できないことでありテロリスト達の暗躍に拍車をかけることになる。これは国家にとって大きな脅威となる。一方で、ウェブに代表されるように暗号は私たち一般市民のプライバシーを守るためにも欠かせない。現状では企業の後押しなどもあって後者が勝っているが、いつ(どこかの)国家が暗号に制限をかけてもおかしくない状況だという。このことは、暗号技術は国家をも揺るがすものだということを改めて示している。 (pragma/2007-09-28)
 
 暗号の歴史を分かりやすく解説するだけでなく、ドラマチックに見せてくれる本書。
素因数分解という意味不明な(僕にとってですが)数学的テクニック(?)を初めて
現実に役立つ物として見せてくれた本書。必読!

 有名な「シーザー暗号」に始まり、第二次大戦中ドイツの暗号機エニグマを通り
現代のコンピューター通信に用いられるRSA暗号に至り、さらには次世代の暗号テクニック
(実際には既に使用されているかもしれないが)量子暗号まで。
本書の案内に従って読み進めてゆけば、僕のような数学のずぶの素人にも
(とりあえずは)暗号の歴史とそのテクノロジーを理解する事ができる。
しかも人間同士の、暗号制作者と、解読者との知恵比べのドラマは読み物としても上々の出来だ。

 
 この文庫本版の良さは、原書から約十年の月日が流れたため、
追補として現在(2007年)の暗号の現状を挙げてくれているところだろう。
 
 なんと、作者が量子コンピューターの登場を待たねば解読不能と断じた、
RSA暗号を用いた暗号システムDESが現在では解読可能といえるまでになっているのだ。
 素因数分解を利用したこの暗号方式は、地球上全てのコンピューターを稼働させても、
一つのメッセージを解読するまで千年かかると言われていた。

 十年の時間はコンピューターの速度を飛躍的に向上させてだけでなく、数学のルール上あり得ない
と言われていた素因数分解の近道を発見させるまでに至ったようだ。

 まったく、まったくもって人間同士の知恵比べには驚嘆させられる!

さて、本書には原著と同じ暗号例題が巻末に付録している。
文庫版で残念なのは、それらの懸賞付き十問がすでに破られている事だろうか・・・・。
しかし僕はと言えば、その知恵比べに参加どころか、
舌を巻いて見守り、尻尾を巻いて降参するしかない。 (タック/2007-08-08)
邦訳リリースは2001年7月、文庫版は2007年7月。オリジナルは1999年である。非常に難解な暗号の歴史と技術をこれだけ噛み砕いて時系列的に配置した本はこれ以上にない、と言いきれるくらい傑作だ。そしてこの本を翻訳するというのは生半可な作業ではなかったろうな、と思った。

この本を読む前にまず、ブルース・シュナイアーの名著、『暗号の秘密とウソ』・『暗号技術大全』・『セキュリティはなぜやぶられたのか』の3冊を読み、ロス・アンダーソンの『情報セキュリティ技術大全』を読んでから取りかかった。しかしながらこの本はそういった専門書を遙かに平易に遙かに歴史的流れに沿って、その上遙かにドラマテックに読者に教えてくれた。たとえば良い例が、RSA暗号で使われている非対称暗号における公開鍵と秘密鍵の説明だった。シンはこう平易に説明している。

公開鍵→二つの素数aとbの積
秘密鍵→その積の元となった二つの素数
そしてその積の長さが充分に長ければ暗号強度は強い。

実に解りやすい説明だ。僕はこれ以上に解りやすい非対称暗号における公開鍵と秘密鍵の説明を見たことがない。

この例のような極めて冴えた説明が最後まで衰えない。有名なアリスとボブとイブも後半に登場するのだが(物理学においてアリスとボブの例えというのは通例になっているようだ)、この有名なキャラクタもシンの手にかかるとより一層見事な例示をしてくれる。超難解な量子力学においてですらだ。翻訳共々すばらしい作品で読み逃せない傑作だ。 (voodootalk/2008-05-04)
 「フェルマーの最終定理」のサイモン・シンさん、
暗号解読の歴史というドキュメンタリーのこの素材を、
ストーリーテラーとして本当に上手く料理されてます。

 冒頭に、暗号の重要さを説明する例として、
 16世紀後半のスコットランド女王メアリーの悲劇を紹介・・・
暗号が破らなければ助かるが、暗号が破られると死刑・・・という究極の状況。


 副題通り、ロゼッタストーンのヒエログリフの解読から、
 量子暗号の原理まで、読みごたえありました。 (papillon/2007-12-22)
歴史のさまざまな場面で決定的な役割を果たし、現代情報化社会の根幹を支えている暗号技術とその解読について、詳細かつ非常に分かりやすく書かれています。
内容の詳しい紹介は他のレビューに譲りますが、今まで関心のなかった事柄が一冊の本をきっかけに、二度と無関心ではいられなくなるそんな体験ができる一冊です。
現時点で無敵の公開鍵暗号を葬り去り情報化社会の根底を破壊しうる量子コンピュータと、原理的に解読不可能な量子暗号は、
私たちが生きている間に実用化されるのでしょうか、そしてその後の世界はどんな姿になるのでしょうか。
暗号の歴史はまさに現在進行形なのです。 (眼鏡越しの宙/2008-06-24)
 暗号解読(下)の白眉は 現代社会における暗号の善悪のせめぎあいを描いた部分だ。

 ネットは完全に社会のインフラとなった。情報流通の「早さ」と「量」と「質」が飛躍的に進歩した現代において もはやネットが無いことは考えられない。もちろん 将来的にはネットが 発展解消的に新しいものに生れ変わるとは思うが 情報社会の高度化という 大きな流れにはなんら変わりはないはずだ。

 その時代に「暗号」がいかに重要なものになったかを本書は描く。

 暗号は戦争から始まった。戦争に不可欠な暗号が 僕らの日常のネット生活に不可欠になったということは とりもなおさず 僕らの日常が「戦場化」したことを意味している。
 僕らが何気なく行っているネット上での「買い物」や「やりとり」が「戦場」で行われていることは 最近の各種の詐欺を見ていればわかる。
 更に言うなら 各種テロもネット抜きには語れない時代だ。今目の前に見ている このPCこそが 戦場への「入口」といっても良いのかもしれない。

 その時代に僕らは「暗号」で自分をプロテクトする。自分をプロテクト出来る点で暗号は「善」だ。但し 犯罪者が自分をプロテクトしつつ 犯罪を犯すとしたら 暗号は「悪」なのかもしれない。そうして この「善悪」に関しては 余りに色々な判断が可能なだけに 現段階では結論が出ていないということなのだと思う。

 暗号はずいぶん遠いところまで来てしまったということだと思う。暗号の持つ人間臭さは 誰もがなんらかの形で「暗号」を使っているからだ。「交換日記」で符号を作った甘酸っぱい記憶がある方も多いのだと思う。
 暗号という一つの「人間の所作」から見えてくるものの 驚くべき「深い淵」ということが本書の読み応えだ。
 はっきりしていることは 僕らは既に恐ろしいくらいに「暗号」に依存しているということだ。 (くにたち蟄居日記/2008-06-13)
歴史のあらゆる局面で、まさに鍵の役割を果たしてきた暗号。その基礎技術と、暗号を中心に繰り広げられてきたストーリーが一気に読める「暗号解読(上)」のつづき。

「失われた言葉」古代文字の解読から、現代の高速・大量データ通信に欠かせない現代の最新暗号技術(DES,AES,RSA)、そして、その安全性の根拠になっている基礎理論。さらに、現代暗号を打ち破る量子コンピュータの可能性と、その先を行く量子暗号の現状までが綴られる。

暗号をかける側は何としても読まれたくない。暗号を解く側はあらゆる手を駆使する。長い歴史の中で繰り広げられてきた高度な「知」のパズルは、それに関わった人たちを中心に、壮大なストーリーを残してきた。
「暗号解読(上/下)」を通して、暗号の歴史はもちろん、基本的な技術解説も非常にわかりやすくまとめられている。翻訳本とは思えない読みやすさもあり、すばらしい本でした。

(mnishikawa/2008-03-29)
7件のレビューを表示しています。
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ビッグバン宇宙論 (上)
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新潮社(2006-06-22)
翻訳:青木 薫サイモン・シン
売上順位:16454
¥ 1,680(中古:¥ 782)

レビュー総評点:93
 書名を聞いたときに、訳者があとがきで語っているのと同じく、”なんで、いまさら、ビッグバンを。サイモンシンが?”と私も思いました。
 「暗号」や「フェルマーの定理」のように、過去あまり一般向け類書がないテーマを扱った話の場合、そのテーマ選定自体の新奇性でつかみがあります。しかし、「ビッグバン」となると、すでにさまざまな一般向け書籍がでているメジャーなテーマなので、すこし後回しにしていました。でも、やはりサイモンシンでした。「そうだったのか」という発見の連続でした。
 いろいろな形をした素粒子のように個性豊かな科学者が絡みあいながら、宇宙創生の理論を解明していくストーリーは、あらためて科学に対する理屈無しの憧憬を思い出させてくれました。  
 上巻では、天動説から地動説、相対論の登場という決定的なパラダイムシフトを経て「宇宙は静的なのか・・」というあらたな課題認識までが扱われています。誰でも名前は知っているガリレオ、ニュートン、アインシュタインといった巨人たちの取り組みも結果にいたるプロセスまで味わうと格別です。もちろん、他にもティコ・ブラーエ、ケプラー、コペルニクス、マイケルソンとモーリー、フリードマンとルメートル、ハーシェル、メシエ、ハッブル・・・と覚えきれないほどの天才鬼才も連綿と織り込まれた宇宙解明の物語です。

・・・下巻に続く
(jimmy/2007-10-10)
いつもながらサイモン・シンの鮮やかな語り口には、宇宙のナゾが解明されていく過程を追体験した気にさせられ、"天才に肉薄!"した気分に浸れますね。

訳者の青木薫さんが言われているように、宇宙論のことをよく知ってる人ほど、深く楽しめますし、
また宇宙論に詳しくない人にこそ、読んでもらいたい。この科学史ドラマには感じるものがあるでしょう。

それにしても「天才列伝」というよりもむしろ「反逆児列伝」という感じなのが笑えますね。
(nonsense/2006-10-12)
この本(以下上下巻をまとめて扱う)は,著者のこれまでの名著(Fermat's Last Theorem 等)に比べると長い.その理由は,主題の性質上,抽象化も省略もせず,なまの素材を用いたことによる.しかし読んでみると全く快調で長くなんかない.まず定石的に Eratosthenes の地球の大きさの測量から始めて,宇宙マイクロウェーヴ背景放射の非一様性の最終的確認まで,驚くほどの詳しさ (Gamow の ylem の語源など知らなかった)と劇的描写の連続 (Hoyle による質量数5のクレヴァスの克服 ! )で,人間はどこまでやってのけるのか息を呑む思いが続く.私たちは Alpher-Bethe-Gamow 論文には間に合わなかったが,Burbidge-Burbidge-Fowler-Hoyle (B2FH)論文の衝撃は昨日のことのように思い出す.でもその裏にHoyle 対 Fowler の駆引きがあったとは.今思えば,Hoyle の定常宇宙モデルは初めから負けだったけど,彼の建設的反対ぶりは見事だった.
一つだけ注文がある.この本に出てくる人名は,上に書いたようにまだ文献的に生きている.従って検索の便のために,ローマ字ではどう書くのか,短い索引が是非ほしい.それと110番元素 (図67) は darmstadtium (Ds)と命名された. (ymatsui4/2006-06-25)
「フェルマーの最終定理」、「暗号解読」で我々を楽しませてくれたシンが第三弾として「宇宙論」に挑んだもの。だが、出来は前二作より落ちるようだ。

プトレマイオスから最新のビッグ・バン理論まで敷衍するのだが、如何せん本書を手に取るような方には"常識の範疇"の逸話が多く、啓蒙される点が少ない。題材が雄大過ぎて個々のエピソードに深みがないのだ。ただし、語り口は相変わらず巧みなので、体系だって「宇宙論」を俯瞰したい方にはお勧めかもしれない。

また、近代以降の研究者は別として、ロクな観測機器もない昔に、夜空の星を眺めながら次第に宇宙の謎に迫って行った研究者達にはロマンを感じると共に、改めて人類の英知に驚嘆する。そういう意味で、「宇宙論」と言うよりは宇宙への夢に賭けた人物伝としての価値がある書。 (紫陽花/2007-09-25)
ガリレオ、ニュートン、アインシュタインなど誰でも知っているメジャーな学者をベースに展開しながらも、無名に近い一般人や学者の貢献を
巧みに織り込んでギリシャから現代にいたる宇宙論をみごとに描ききっている。個々にはどこかで読んだか聞いて知っていた事が天動説から
ビッグバン理論までの壮大なストーリ展開の中で「そうだったのか!」という新鮮な驚きをもって改めて教えてくれる内容である。

これは正にその妻でしか知られていない無名な武将山内一豊の目線で
戦国を描いた「功名が辻」のストーリ展開と同じなのである。

「コンピュータ」といわれた婦人たち、聖職者でありながらビッグバン
理論を提唱したル・メール、ビッグバンの証拠となる赤方偏位写真を
最高の精度でとるのに貢献したもともと掃除夫だったハッブルの助手
など多くの無名の人たちが描かれている。

また「ビックバン」というネーミング自体もビッグバン理論に負けた定常宇宙論提唱者が冗談半分で呼称したのがはじまりだとか。

これだけの内容をサスペンスストーリのように一気に読ませてしまう
著者の力量たるや正に「ビッグバン」なみと言えよう。
(猫好きのアナログおじさん/2006-07-11)
ポピュラーサイエンスのライターって、オーケストラの指揮者みたいに見えてきますね。どちらも題材(事実/楽譜)は決まっている訳で、あとはライター/指揮者の解釈によって見せ方/聴かせ方を変えてくる訳です。本書を読み終えると、サイモン・シン氏はただ者ではないなぁーと感じ入った次第です。

私はこれまでビッグバンに触れられた本(※1)を読み、TV番組(※2)を見てきました。それでもなお本書を読むと、新しい発見がありました。(私はすっかり本書にハマリ、週末の午後で上・下冊を読みきりました)
「科学はエラーの自己修正過程である」(カール・セーガン教授)の発言通り、ビッグバン理論が紆余曲折しつつも次第に確立していく様子がイキイキと描かれます。非常に感心したのは、資料・図・表の見せ方ですね。(ガリレオのスケッチを始めとするオリジナル資料、対立理論の勝敗表、概念の説明図、等々) オリジナル・データによっては「えっ、そんな風に見るんだ、解釈できるんだ」というモノがあり、「星の王子さま」の名言「ものごとは、心で見ないと良く見えない。いちばん大切なことは、目に見えない」を思い出した次第です。実験データも「仮説に基づく信念」がないと真実を掴み取れない訳ですね。科学におけるセレンディピティ的発見の解説にもなっているところがサスガです。
そんなわけで宇宙科学に馴染みがない方は勿論、「今さらビッグバンなんて」という科学ネタ通な方にもお薦め出来ます。

(※1)「僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して」(マーカス・チャウン)、「人類が知っていることすべての短い歴史」(ビル・ブライソン)は特にお薦めです。
(※2)「Cosmos Collector's Edition」のDVDボックスは、1980年の作品ではありますが、今もなお重要な作品だと思います。 (ゴルゴ十三/2006-06-25)
興奮する宇宙 ||||||||||||
いい本にはよけいな言葉はいらない。ここまでわかりやすく、かつ人間味あふれた宇宙論はない。一種のミステリーを読み終えたような爽快感がある。基礎知識も必要なし、まさしく万人向け。読んで損なし。 (ボウモア/2006-10-18)
暗号解読、フェルマーの最終定理の著者、サイモン・シンの第3作目。前2作、特に暗号解読は、僕の生涯ベスト3に入る名著だったため、ちょっと期待しすぎてしまったか、新鮮な驚きはありませんでした。

じっくりと秩序だてて宇宙創造という複雑なテーマを、その背後にある人間ドラマとともに書き上げているのは確か。僕自身もずいぶんと頭の整理になりました。宇宙論の入門編としてはとてもよいです。でも目新しいものはなし。

良くできたガイドブックではあるけれど、穴場案内やマニア垂涎のお宝紹介までは含まれていません。うーん、ちょっと残念。 (くろくま/2006-06-27)
 サイモン・シンならではのタッチでとても分かりやすく古代から現代に至る宇宙論を展開している。地動説と天動説、定常宇宙論とビッグバン宇宙論をそれぞれの論点から比較した表はとても分かりやすい。時代とともにその表の項目の評価が変化して行き優劣が定まる様は人間の理解が確実に深まってゆく様子を示している。
 また登場人物が生き生きと描写されている。訳者あとがきでも触れられているビッグバン宇宙論を展開したジョルジェ・メルートルは私も初めて知った。神学者であり科学者であるがゆえにうがった見方をされたことと思う。彼自身は「科学と宗教を混同することはない」と明言している。しかしファイマンが言うように(その直感があっているかはともかく)直感が人を動かす。したがって聖書の「光あれ」は科学者にインスピレーションを与えたのではなかろうか。

 その他にも民間企業のATTで電波望遠鏡が発明された経緯、それを更に発展させて宇宙マイクロ波背景放射の発見に至る経緯は、損得を超えた人間の善意がもたらした発見ではなかったか。

 定常宇宙論推進者のホイルが元素合成の問題を解決しビックバン宇宙論の基礎固めをするなど多くのドラマがあり生き生きとした宇宙論になっている。そのにしても量子力学の世界では無から有が生まれるというおよそ現実の世界からは推測できないことが生じているという。サイモン・シンには量子論の話も書いて欲しいと思う。 (21世紀/2007-04-22)
宇宙論の歴史を、それに携わった人々を伝うようにして話を進めていく、「フェルマーの最終定理」等と同じ手法でのストーリーの組立で、頭を悩ませる事無くすいすいと読んでいけるのは流石と思った。最終的にはどのような経緯を辿って今の宇宙論があるのかを、ざっと把握でき、ストーリーも楽しんで読めるのでオススメできるが、「フェルマーの最終定理」の時ほど盛り上がる感じもなく淡々と進む印象だった。(私個人としては「暗号解読」をまだ読んでいないので、「フェルマーの最終定理」のみとの比較になってしまいました)
上下巻まとめてのレビューとします。 (anomalocaris/2007-04-20)
 これまでにも多くの書籍がビッグバンを題材として取り上げ、様々な角度から論じているが、本書はいかにビッグバンを解説しているだろうか。上下巻を読んだ感想としては、特別新鮮な驚きはなかったというのが正直なところだ。確かに筆者の筆力は素晴らしく話には引き込まれるし、今まであまり語られていなかったエピソードなど見所もあるのだが、いかんせん到着点が決まっているためにどうしても新味が薄いのだ。さらにビッグバンは殆ど「事実」として認められているもののまだその理論には不完全な部分も多く、最新の理論では主流?のインフレーション理論や、果てはVSL(光速変動理論)等も提示されており、そのあたりの展開がなかった事も不満が残った。
 ただし最新の(まだ不確定な)理論が記述されていないのは、観測と理論の科学の両輪が揃った地点までを現代の科学的宇宙観として知って欲しいためだと語られており、これには納得させられた。人類の叡智がいかにしてビッグバンを解明したのか、その歴史を知るにあたっては本書は一読の価値ありと思う。 (ことち/2006-11-16)
この本の内容は、宇宙論の歴史です。
今まで私は、宇宙論の歴史を断片的にしか知りませんでしたが、この本により体系的に理解できました。
また、適切な図や巧みな文章、本の内容の構成などこの作者の良い面が前面に押し出されています。

人によっては、既に知っていることばかりという人も居られるかと思いますが、そんな方にも復習(?)がてら読んで損は無い本だと思いました。 (てとり/2007-01-02)
たくさん宇宙の歴史やビッグバンについての解説書があるので、さすがのサイモン・シンも執筆には困っただろう。宇宙論に関心のある人ならば、何冊も読んでいるだろうから、新事実を期待するわけには行かない。それでは、この本の特徴はなんだろうか。上巻は、古代ギリシアから始まる(年代や前後関係が、ややわかりずらい)。コペルニクスからケプラー、ガリレイ、ニュートン,アインシュタインまでの流れには、それほど特徴は無い。やはり、現存する人や、故人を直接知っていた人とのインタビュー調査がないことの限界を感じる。しかし、シンは埋もれていた事実を紹介し、不幸な先駆者たちに優しい言葉を与えている。ゴシップや風説をあえて紹介しないところ、また、科学と技術の違いを厳密に示そうとしていることには好感が持てる。日本の新聞やマスコミでは特に、科学と技術や医術の区別の無い解説が横行しているので、こういう面をもっと強調しても良かった。引用や出典などの参考文献の一覧が無いが、これは下巻にあるのだろか。上巻を読む限りでは、シンの独創的な表現なのか、類書からの引用、あるいは既知のことを言い直しに過ぎないのかがわからなかった。 (美猴王/2006-09-05)
トンデモ本である ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
  本書は題名にあるとおり、現代宇宙論の標準理論であるビッグ・バン説について解説したものである。
  この手の書物にはよく見られることなのだが、本書もその例外ではなく、上巻においてビッグ・バン説と直接(と言うか、ほとんど全く)関係のない天動説/地動説について論じられている。
  しかし、それがまたえらく時代遅れなのである。
  どうやら、本書の著者は Owen Gingerich “The Book Nobody Read”(2004年1月刊)および Joshua & Anne-Lee Gilder “Heavenly Intrigue”(2004年5月刊)には目を通していないらしい。
  著者がどこぞの無名の一ライターなどではなく、“Fermat's Enigma” などで知られたベスト・セラー作家だけに、またも旧聞に属する誤謬を撒き散らしたという点においてトンデモ度高し。

  というわけで、本書の上巻をお読みになる際には、O・ギンガーリッチ 『誰も読まなかったコペルニクス』、J&A-L・ギルダー 『ケプラー疑惑』、高橋憲一(訳・解説) 『コペルニクス・天球回転論』 を併せてご覧になることをお薦めする。

(Bay Flam/2006-07-12)
「フェルマーの最終定理」「暗号解読」の面白さを期待して読んだが、前二作に比べて面白みに欠ける。おそらくストーリー性に欠け、全体的に説明調であるからだろう。所々に挿入される説明のための図や表が、読者をぐいぐい引っ張っていってくれるはずの文章を分断してしまう。サイモンシンがこの分野の専門だから、妥協できなかったのだろうか。細かいところに気をとられてしまう記述は、証明を巻末に付録にして、ドラマチックな展開をみせたフェルマーとは真逆の空気を感じる。宇宙論のポピュラーサイエンスの本を読んだ人はあえて読む必要はないだろう。サイモンシンを読んだことが無い人には、「フェルマーの最終定理」「暗号解読」から入ることを勧める。 (K/2008-07-29)
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ビッグバン宇宙論 (下)
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新潮社(2006-06-22)
翻訳:青木 薫サイモン・シン
売上順位:11169
¥ 1,680(中古:¥ 791)

レビュー総評点:-2
前2作が超絶に面白かったので、こちらも期待して購入した。700ページ近くある大作であるが、あっという間に読んでしまった。
確かに宇宙論の解説本としては物足りないという意見もあるだろう。ビックバンの解説はほかにもいい本がある。だが、この本は、ビックバン理論が歴史上どうやって浮かび上がって、どうやって対立する理論を蹴散らし、最終的に確立されたかという筋を追ったもので、たいへん説得力がありドラマがある。
昔はトンデモ理論だったビックバン論が正しいと認知されるまでの過程を知るのと、
すでに認知されたビックバン論を解説したものを読むのでは、理解の深さでいうと前者の方に軍配が上がるだろう。
たとえば、現在の民主主義、たとえばアメリカの3権制度の仕組みを解説した本があったとしよう。それは確かに詳しく現状を分析しているが、面白くはないだろう。それより、古代からどうやって民主主義が成り立ってきて、なぜヨーロッパのピューリタンが新大陸にわたって国家をつくったのか、といった根本に流れる思想について解説した本の方が、はるかに示唆に富むからである。
本書もそのようなものである。
(もぐぞう/2007-04-03)
「宇宙論理研究者は研究室の外に出て、ビッグバン・モデルは人間の好奇心と知性に対する
賛辞なのだと、世界に向かって語りかけるべきである。」(本書より)
高校2年で物理の授業についていけなくなった。
しかし、そんな自分でも本書は面白く読めた。
そして、上記の言葉に心から賛成した。
人間の理性が到達し得る、究極の謎解き。その世界をかいま見せてくれたサイモン・シンと、
訳者の青木薫氏に感謝。 (みーむ/2006-09-07)
やはり物足りない内容だった。恒星の核反応や銀河形成に付いては、佐藤・松田『新装版 相対論的宇宙論』(ブルーバックス)が、ビッグバンに付いてはワインバーグ『宇宙創成はじめの三分間』が良い。ホイルが公平に解説した『宇宙物理学の最前線』(値段が高い)や、背景放射の観測ならスムート自身による『宇宙のしわ』が、インフレーションならグース自身の『なぜビッグバンは起こったのか』がある。そちらの方が迫力がある。
出典のがわかるような文献表が無いのは不思議。ノンフィクションや個人の会話などがたくさん載っている本で、出典が明記されていないの不合格。訳書で省かれているのならば、言語道断。また、原著刊行から2年経っているのが惜しい。自然科学の翻訳は、少数の翻訳者に仕事が集中しているようだ。出版社や編集者自身が内容を理解せずに、安易に企画しているのだろう。 (美猴王/2006-09-15)
うーん、前の二冊が神がかって面白かったので期待していたのだけれど、
思った以上にあっさりしてました。前作までは「数学者」「暗号の解読者&作成者」達が、
試行錯誤やひらめきにより問題を突破していくところに興奮と感動があったんですが、
今回の研究者たちは基本的に当時最新の科学機器による「忍耐強い観測」と「データ収集」
により業績を上げていくもので(というのも対象が手の届かない「大宇宙」なので
仕方がないんですが)、宇宙論の発展=科学者たちの戦い、というよりは科学技術の
発達の歴史じゃないのって思えてしまうのね。ハッブルが「自作の望遠鏡で大発見をした」
というので無い以上、科学機器に関する記述も並行して述べていくべきかな、と。
直径うんメートルのレンズが登場したところで、それがどういう素材や製作過程を経て
生み出されたのか等は全く記述がありません。人間ドラマを通して描く、という今までの
スタイルにこだわりすぎたのかなとも思います。
文句ばっかですが値段相応の読み応えはありましたし、引き続き次回作が待ち遠しい作家で
あることには変わりません。個人的には「暗号解読2」でもオッケーですw (ねこのつむじ団/2006-11-15)
「フェルマーの定理」「暗号解読」とサイモン・シンの本は、専門外の私でもとても楽しく読めた。
ビッグバンについては類書がたくさん出ているので、何をいまさらと思っていて、最初はこの本を読んでいた。特に下巻に至るにつれ、冗長に感じて、飛ばし読みをしてしまった。
しかし、2006年のノーベル賞は、まさにこの本の下巻の後半で大きく取り上げられているCOBEが受賞した。改めて読み返すと、ビッグバンというのは、今こそ旬というのがよく理解できた。 (777/2006-10-30)
 本を読んでいて徐々に残りのページが少なくなっていくのを、残念、残念、もっと読んでいたい、と思う事がある。 科学書でこんな気持ちになったのは久しぶり、小学生のとき野口英世伝を読んだとき以来である(嘘つけ!)。 この本は、ビッグバンという現実にあったかどうか本当のところはまだはっきりとはわからないイベントを非常にうまく説明している。 カトリックの坊主の理論がビッグバンの端緒だったとは! 女性コンピュータの面々が、ボランティアで頑張ってくれたおかげで、天体写真の画像解析が飛躍的に進んだなんて、みんな、知ってた? ヘンリエッタ・リーヴィット、あんたはエラい。  (ヒデボン/2006-07-19)
ポピュラーサイエンスのライターって、オーケストラの指揮者みたいに見えてきますね。どちらも題材 (事実/楽譜)は決まっている訳で、あとはライター/指揮者の解釈によって見せ方/聴かせ方を変えてくる訳です。本書を読み終えると、サイモン・シン氏はただ者ではないなぁーと感じ入った次第です。

私はこれまでビッグバンに触れられた本(※1)を読み、TV番組(※2)を見てきました。それでもなお本書を読むと、新しい発見がありました。(私はすっかり本書にハマリ、週末の午後で上・下冊を読みきりました)
「科学はエラーの自己修正過程である」(カール・セーガン教授)の発言通り、ビッグバン理論が紆余曲折しつつも次第に確立していく様子がイキイキと描かれます。非常に感心したのは、資料・図・表の見せ方ですね。(ガリレオのスケッチを始めとするオリジナル資料、対立理論の勝敗表、概念の説明図、等々) オリジナル・データによっては「えっ、そんな風に見るんだ、解釈できるんだ」というモノがあり、「星の王子さま」の名言「ものごとは、心で見ないと良く見えない。いちばん大切なことは、目に見えない」を思い出した次第です。実験データも「仮説に基づく信念」がないと真実を掴み取れない訳ですね。科学におけるセレンディピティ的発見の解説にもなっているところがサスガです。
そんなわけで宇宙科学に馴染みがない方は勿論、「今さらビッグバンなんて」という科学ネタ通な方にもお薦め出来ます。

(※1)「僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して」(マーカス・チャウン)、「人類が知っていることすべての短い歴史」(ビル・ブライソン)は特にお薦めです。なお宇宙の始まりに関する試論を含めた超弦理論の解説本としては「はじめての“超ひも理論”― 宇宙・力・時間の謎を解く」(川合 光)が面白いでしょう。
(※2)「Cosmos Collector's Edition」のDVDボックスは、1980年の作品ではありますが、今もなお重要な作品だと思います。もし超弦理論と宇宙の始まりの関係に興味のある方は「Nova: Elegant Universe」を御覧になると良いでしょう。(英語の聴き取りが出来る方に限られますが) (ゴルゴ十三/2006-06-25)
さて、下巻。下巻の主役はフレッド・ホイルだ。彼は、アンチビッグバンすなわち定常宇宙論の旗頭だから、変な話だが、ヒールとして最高のパーソナリティーなのだろう。まあ、定常宇宙論は彼で持ってたわけだし、一方、ビッグバン宇宙論はたくさんの役者が出て来て、決定的なヒーローがいない。これからの正しい理論はどんどんそう言う傾向が強くなるのだろう。量子論でもそうだしね。

フレッド・ホイルの定常宇宙論は何となく嫌いで、しかも、彼の書いた SF に良い印象を持っていなかったりして、科学の発展の足を引っ張った変なイギリス人という印象しか無かった。しかし、元素合成の理論で極めて重要な貢献をしていることを本書で知った。その他にも、ホイルの宇宙論は、当時としてはビッグバンより「とんでも」では決してなかったことを説得されたのは収穫だった。それに、フレッド・ホイルに焦点を当てることで、ビッグバン宇宙論の特徴にスポットライトを当てることが出来ている。まあ、彼は、ビッグバンの名付け親でもあることだし。

そこから、宇宙背景輻射の発見、COBE による背景輻射の揺らぎの発見で、ビッグバン宇宙論は確固たる地位を確立する。本書はそこまでで筆を置いている。インフレーション宇宙など、その後の発展については本文では触れていない。現在の科学の到達点として確として書けるのがこれまでとサイモン・シンは思ったのである。本書を読んでいて、それも説得的だった。

一つ、前から感じている疑問が本書を読んでも残ったままだったのが残念。それは、背景輻射が地球の運動でドップラーシフトする話だ。直接的は当然すぎるほど当然の話なのだが、これって、絶対運動を規定するのではないだろうか。相対性信奉者としては、なんとなく引っかかる。どなたか、納得させてくれませんか? (shibchin/2008-03-27)
 まず。”ビッグバン”という言葉を軽蔑の意味で使ったフレッドホイルの、報われないが価値のある人生は、映画のように印象的でした。
 宇宙論を支える観測事実の全ては、人類が誕生した当初から、様々な波長と強度の電磁波(電波、光)で地上に降り注いでいたわけです。人間の肉体的な眼が望遠鏡で拡大されて微弱な光をとらえられるようになり、電波の理解によって機械をつかって関知できる波長の幅を広げて、既に全天に提示されていたものを認知し分析し解釈してきたのです。
 理論と観測と実験が絡み合い、複数の仮説が競争し、137億年前を見通す眼が階段状に進化していく様子は、そのままエンターテイメントにも思える面白さでした。
 以前見学した施設では暗黒物質の感知をターゲットにした次世代の眼(観測機)の製作が進んでいました。この問題の決着を生きている間に聞けるかどうかは微妙ですが、いずれ次のステップは必ず訪れるという確信は強まりました。 (jimmy/2007-10-13)
ビッグバン理論だけを扱っているのではないかと思って手を出さなかったのだが、人類の宇宙に対する認識から物語が始まっているので興味を惹かれた。まずは、ギリシャ時代の太陽中心説対地球中心説のエピソードが丁寧に書かれている。また、コペルニクスによるパラダイムシフト、それを根拠づけたガリレオの観測とケプラーとニュートンの理論もわかりやすく紹介されている。ビッグバン理論が宇宙背景輻射によって決定的になるまでの人間ドラマも面白い。科学とは、理論が提出されて、実験や観測によって根拠づけられるという、その過程を実に丁寧に書いている。本書は科学書でもあると同時に、いやそれ以上に人間ドラマを描写しているのだ。

ビッグバン理論やガリレオの成果、ニュートンの功績については、それらを個々に取り上げてる書籍の方が分かりやすいかもしれない。『ビッグバン宇宙論ん』においては、個別の事項については物足りなく感じることもあるだろう。けれども、本書はあくまで宇宙に関する科学史の本であり、また科学者たちの人間ドラマの本なのだと思う。そのことに留意すれば間違いなく楽しめるだろ