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経済学的思考のセンス―お金がない人を助けるには (中公新書)
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ASIN:4121018249
中央公論新社(2005-12)
大竹 文雄
売上順位:10350
¥ 819(中古:¥ 70)

レビュー総評点:187
本書の狙いは、世の中で起きている格差の問題について経済学的な意味を考えることで経済学的な思考のセンスを身に付け、社会を視る眼を養うことである。ここで言う経済学的思考のポイントとは、
1)金銭的なインセンティブの観点で物事を見ること
2)物事の相関関係ではなく因果関係をきちんと押さえること
である。ただし、人々の行動原理には、名誉、プライド、価値観、使命感、生きがい等の非金銭的なインセンティブも大きく関係している。

1章、2章では、身長や美男美男度と賃金の関係、オリンピックのメダル数と人口&一人当たりのGDPとの関係を例に、こんなことも経済学者が研究しているのか?という驚きを提供し、経済学的な思考に対する興味を喚起してくれる。
そして、3章、4章では、現在から将来の日本が抱える問題について論考している。具体的には、V章では年金の仕組みを例に年功賃金について検討し(賃金抑制のための成果主義の問題についても言及)、W章では所得格差と再配分について取り上げている。

1〜4章では興味を引くようなトピックスを取り上げ分かりやすく説明しているため、単なる読み物として面白く読めてしまう。しかしながら、プロローグではこの本の目的として“お金がない人を助ける具体的な方法を提示することではなく、お金がない人を助けることの経済学的な意味を考えてゆくことである”と述べられており、エピローグでは所得格差の問題は“機会の不平等や階層が固定的な社会を前提として所得の平等化を進めるべきか、機会均等を目指して所得の不平等を気にしない社会を目指すかの意思決定の問題である”と指摘している。

本書を読む前にエピローグとプロローグを先に読むほうが、本書のポイントを明確にして読み進められるかもしれない。 (私撰 綜(市川聡:さとる)/2006-12-27)
センスのいい入門書 ||||||||||||||||||||||||
あとがきに「日常のさまざまな話題を経済学の視点で議論することを通じて、経済学の本質を読者に理解していただくことを目指し」とありますが、本書は、その点で非常に成功していると思います。日常の話題から、経済学へ掘り下げていくため、自然と読者は引き込まれます。最新の論文とかも引用してあって、今の経済学の学問としての雰囲気も味わうことができますし、最後に引用文献がまとめてあるので、更に進んでいくこともできます。この本を読めば、経済学って面白そうだと感じるでしょう。 (いじさま/2006-01-29)
インセンティブ的観点(金銭/非金銭:教育・倫理観)から社会を見る力と経済データから因果関係を見つけ出す力こそが経済学的思考があるといえる。その分析例(男女の結婚問題、プロスポーツ選手やエンジニアとインセンティブ、日本的雇用慣行(年功賃金)、所得格差と平等・不平等)が本書に述べられていることである。わかりやすいと言えばわかりやすいが、自分がこういう風に分析できるかと言えば難しいな。

アメリカのプロスポーツはどちらかといえば、全体で共存することを選んでいるように思える。特に、アメリカンフットボールはそうである。どちらかというと、お金持ちのチームとお金のないチームとの差をなるべくなくそうとしている。リーグ全体で盛り上がらないと、全体のパイは小さくなるからである。

若年世代は所得格差が大きくなっている。ニートやフリーターの人たちと正社員で働いている人は所得格差だけでなくさまざまな保障面で差がでている。これが完全な階層関係につながらないように、セイフティネットの充実や教育や優秀な才能がある人をうまく救い上げるなど力を入れてほしい。
(itchy1976/2009-01-11)
副題にある「お金がない人を助けるには」に惹かれて購入しました。
ただ、本書を読んでいると、本題の「経済学的思考」について、色々な例を挙げて説明しています。それはそうですよね。(とはいえ、論じられていないわけではありません)

筆者の云う経済学的思考というのは、世の中の出来事を「リスクとインセンティブ」で捉えなおしてみてみること。また、色々な事象の相関関係について、その中にある因果関係を捉えるための思考であるとしています。
また、昨今注目されている行動経済学の事例も紹介してあり、それらも今後の経済学的思考には必要なことと感じました。

語る上での実例として「女性はなぜ背の高い男性を好むのか」「美男美女は本当に得か」「いい男は結婚しているのか」など世間話としても面白いものから、日本的雇用の損得、所得格差と所得の再分配など一般的に経済学のイメージに近い話題までを扱っていおり、それらを改めてインセンティブとリスクからの視点で語っているので、読むのが苦ではなく面白く読み進めることができました。
また、事象の相関関係からあたかもそれらが因果関係であるかのように捉えて議論を進める例は、仕事上私の周りでもよく見られることなので、改めて因果関係を探りだすセンスは必要である!ということを感じました。

おそらくちゃんと経済学的視点で物事を見るためには、たくさんの事例の検証を必要とするのでしょうが、「センス」と言う意味では、見方を変えるだけで物事の捉え方が変わるのだということを理解させてくれる一冊でした。
面白かったです。 (itgaki/2007-11-19)
 経済学という、庶民には(私もそうですが)
なかなか取っつきにくい学問を・・・

・女性は何故、背の高い男を好むのか?
・自然災害に備えるには?
・プロ野球監督の能力

 といった一見しただけでは「これの何処が
経済学と繋がっているの?」と思われる
トピックをネタに経済学の本質(ここでは
「意欲」と「因果関係」の証明)を説明して
います。

 そして(ここからが本題だ)上記のような
軽いネタで読者を引き込んだ後に待ち受けるのは
この国の年金未納と所得格差についての論考です。

・何が原因で年金未納や所得格差が起こって
 いるのか?
・それに対する処方箋は有るのか?

 それは読んでのお楽しみですが、しっかりとした
データを元に論を展開しているので、読後に得る
ものも多いと思います。

 「格差」という言葉が一人歩きをしている感を
受ける現代だからこそ読んでおきたい一冊です。 (藤崎健一/2006-06-07)
第1章「イイ男は結婚しているのか?」では「イイ男は結婚している」のか「結婚してイイ男になる」のか、どうでもいいような興味のあるような、かつ経済学とは一見無縁であるような話題を経済学的な思考を用いて追求している。外見が本当に生産性に関与するのか?所得プレミアになるのか?結婚は生産性を上げるのか?調査や仮説を駆使して因果関係を求めることが経済学の重要な思考法であることを伝える章である。

第2章「償金とプロゴルファーのやる気」ではプロスポーツの世界が経済学では絶好の調査対象であることを初め知った。個人競技であるゴルフと集団競技である野球それぞれの成果のはかり方の違い、リーグとして繁栄するための考察も興味深い。また大学教授やエンジニアを例に金銭によるインセンティブは本当に有効か、有効であるならばその条件について・・・といった成果報酬主義の限界に鋭く切り込んでいる。非金銭的インセンティブの強調は経済学というと金銭的価値と短絡しがちな風潮に警鐘を鳴らしている。なんでもかんでも成果主義の人々に是非読んでもらいたいところである。

第3章「年金未納は若者の逆襲である」第4章「所得格差と再分配」は昨今話題の格差社会論に挑戦している。様々な調査や学説を駆使して世代間格差や社会保障の問題とも絡めながらそれぞれの世代が自分の利益の最大化を図ろうとする姿が浮かび上がる。ここでも各種の統計・仮説を駆使しての因果関係の追求とそれぞれの立場からのインセンティブの追求が織りなす世界である。

章が進む事に次第に身近な問題へと論点が進んでいく。興味を抱きそうな話題から経済学的思考への導入を行い、身近な問題へと発展することにより、自分のまわりの世界を経済学的思考により読み解くように誘導する。なかなか巧みな展開であるように感じた。 (糸音/2007-03-18)
具体的な例は非常に生活に密着した内容になっているけど、
経済学の本質を見事についていて、かつ、分析が緻密。
(もっとも議論をこねる専門家にはいろいろと言いたいこともあるだろうけど)
入門書というよりは、経済学を多少なりともかじった人間の
復習に使う感じですかね。決して易しくはないです。
金銭的かどうかは別として自らの欲求を最大限実現すべく
合理的行動を取る、という経済学の根本がわかる点では、全ての人に
読む価値を与える一冊であることは確か。 (エイチ/2006-10-17)
新書とはかくあるべき ||||||||||||||||||||
最近、タイトルだけの新書が圧倒的に多いのですが、
本書はめずらしくまともな経済学者によるまともな新書です。
経済学に基づく適切な分析・検証による内容の濃い本です。
著者の「日本の不平等」を時間が無くて読めない人にはお薦めです。

出版社はこのような新書を出さず、タイトルだけで売ろうと思っているようですが、
その結果新書はすでに週刊誌レベルに成り下がっています。
まともな新書を探すことがすでに難しくなっています。 (meme/2006-05-05)
身近なさまざまな事を経済学的に解釈するとどのようになるかという本です.例えばプロ野球再編問題を経済学的に見るとどうなるか,野球選手の年俸は高いのか安いのかなど.あるいは,身長や容姿が所得に関係するのかしないのかといった話です.

身長が高いほど,美男美女ほど所得が高い傾向があると言われてがっかりではありますが,それよりも経済学者がこういうことをまじめに研究しているということを知ってびっくりです.

前半は上記のようなやわらかい話題でとても楽しく読めました.後半は,賃金や所得格差の話になって若干難しく,負け組意識のある私はちょっと暗い気持ちになりました.

いずれにせよ,I章,II章は読み物としても楽しく読めます.経済学って難しそうだなと敬遠されている方もきっと目からウロコが落ちますので,是非読んでみてください. (wave115/2006-01-05)
 本書は「経済学」などと堅苦しく考えることはなく、人間の行動をインセンティブ(意欲)の面から切り取ってみると、通説とは異なる物事の見方、考え方が浮き彫りになるという本である。

 「自然災害に備える」では、ハザードマップの公開と災害保険税の創設を提案している。確かに、危険地域に住む人たちが税金が高いとなれば安全な地域への移転のインセンティブは働くだろう。
 また、「プロ野球における戦力均衡」では、なぜ日本のプロ野球人気が低迷しているのかを分析し、ファンを無視した球団の既得権がそもそもの原因であり、プロ野球機構そのものを株式会社化し、球団の参入の自由化やJリーグのような上位リーグと下位リーグの入れ替え制などを提言している。
 その他、年金未納は事実上の「ねずみ講方式」である今の年金制度に対する若者の逆襲であり、団塊の世代以上の既得権を崩さない限り年金改革は不可能であると断じている。

 さらに、最近よく言われる「格差社会」については、「誰が所得の不平等を不幸と感じるのか」という視点で、ヨーロッパとアメリカの対比を行い、日本は所得階層間の移動が難しい社会になりつつあるとしている。

 本書を通じて、経済学はお金をめぐる人間の“心理学”だと感じた。 (takokakuta/2007-05-19)
本書は、ひとびとのさまざまな行動をインセンティブ(意欲)の視点から解き明かす本である。
年金未納やプロ野球から、美人と結婚の問題まで、身近な話題で読んでいて楽しい本。
また、章が細かく分かれているので、短い時間でもちょこちょこ読める。

どちらかというと、経済学よりも心理学の気がした。 (θ/2007-05-28)
 経済学が役に立つ学問か、という問いに対して、本書の第2章においてはプロスポーツを実例にとって、経済学がプロスポーツにおける問題を客観視するうえで意義深いツールとなるものとして紹介している。
 特に始めに言及されている、FA制度の導入とドラフト制度の弱体化が今のプロ野球の歪みを生んだという多くの人が抱く論に対する経済学的アプローチからの反論は、非常に興味深い。
 「球団は利潤を最大にするように経営されているとしよう」という経済学的に考えれば極めてスタンダードな指摘は、そもそも球団経営とは何か、という根源的な問いにたち返らせるものであり、基礎的な事項から論理立て、経営のあるべき姿を説明することに成功している。
 
 これまで特に日本のプロ野球・アマチュアスポーツを中心に、その運営・経営手法に経済学の視点が導入されることは少なかった。
 本書では経済学からのプロスポーツへの分析アプローチが多くなされてきたと書かれているが、それらの多くがあくまで学者間の机上レベルに留まっており、その結果、経営者の耳に届きそれらが実行されたことや、多くの一般大衆(ファン)の目にとまり、それに反した経営が行われていることに対しての批判がなされた、という例は残念ながら見聞したことがない。
 日本プロ野球においても北矢行男が『プロ野球の経営学』(東洋経済新報社、1992年4月刊)を発表し、実際にストライキが起こる10年以上も前から経済学的な視点を持ってプロ野球危機を訴えてきたが、視聴率という名のいわば「架空の」人気に安住して重要視してこなかったことが、現在の歪みにつながっているのだと考えられる。
 しかし、プロ野球における球団格差をはじめとして、長く隆盛を誇ってきた企業スポーツの限界が露呈した現在、スポーツビジネスの発展にとって経済学を実学としてとらえ、それを取り入れていくことが、非常に有益であると改めて考えさせられた。 (banana/2007-02-13)
面白いです。面白さの源泉は、身近な例で(例えばプロ野球監督の評価、結婚、オリンピックなど)経済学的に分析するとこうなる、と見せることで「ふーん、理屈ぽっく言うとこうなるんだ」と実感できること。ただ、理屈といっても著者が言っていることは、1.インセンテイブに着目して物事を考えましょう 2.物事の相関関係だけではなく、因果関係もきちんと分析しましょうということ。「経済学的思考のセンス」はこの二点に集約されるような気がします。

したがって、身近な例を科学的に分析することにより知的好奇心(?)が刺激され、経済学的なものの見方が勉強できて(これが著者の主眼ですが)、さらに今、話題の格差についての議論も整理できる三回おいしい内容になっています。新書サイズのパフォーマンスは充分。

その格差の問題ですが、所得再配分はそもそも「リスク(成功の源泉が努力か生まれ持ったものか。努力が報われないと意欲がそがれるリスク→社会不安も引き起こす)とインセンティブ(賃金格差の有無)のトレードオフ」をどう考えるかということ。最終的には「機会の不平等や階層が固定的な社会を前提として所得の平等化を進めるべきか、機会均等を目指して所得の不平等を気にしない社会を目指すか」の意思決定であり、少なくとも今の日本では前者に近い有り様(この認識はちょっと意外。でもデータあり)だから、もっと「国内の税制・社会保障・就職支援等改革を中・低所得者層の勤労意欲を高める方向とすべき」と具体論を展開。主張は現実には、将来的な展望がなく固定的であまり見通しも立たない層があるからそこに対してもっと支援すべき、という普通の理解をしました。 (omr/2006-05-07)
ミクロ経済学的な見地から、社会の様相を読み解くことを通じ、経済学的思考のセンスを磨くことを意図した本でであり、文体も平易で、軽やかに読み進むことができる良書。ここでいう「経済学的思考のセンス」とは、インセンティブの観点から社会を視る力と、因果関係を見つけ出す力とされている。例えば、所得の平等主義を過度に進めていくことは、人間の行動パターンを変化させ、人々が労働意欲を喪失することで、より多くの負担を社会全体に強いる結果となる。このような、人間の行動変化を考慮した上での費用と便益の分析を通じ、社会を様相を捉えることの重要性は、読後において強く認識することになるだろう。
勿論、マクロ経済学的に社会の問題を考えるセンス、技術というものも重要であり、ミクロ経済学的なセンスを磨いた上で、マクロの問題を考えていくことも、また、必要なことであろう。例えば、景気循環の局面によって社会の諸様相は変化するものであり、幾分でも、そのような観点に触れた方がよかったのではないかとも思う。
(ラスカル/2006-03-05)
 プロローグに“この本の目的は、お金がない人を助ける具体的な方法を提示することではなく、お金がない人を助けることの経済学的な意味を考えてゆくことである。キーワードとなるのは、インセンティブと因果関係である。身近にあるさまざまな格差を経済学で考えてみることで、経済学的思考のセンスを体得していただければ幸いである”とある。本書の性格をよく表わしていると思う。副題の“お金がない人を助けるには”はちょっと的外れ。

 書き下ろしの本ではなく、経済誌や新聞誌に連載していたものをまとめた本。前半はまさに一般向けで、海外の研究者による最近の計量経済学的研究を簡単に紹介しつつ、背の高い人ほど給料も高いとかプロスポーツ選手の年棒や賞金などの身近な話題を使って、その裏にある経済学的なカラクリを浮かび上がらせる。個々のトピックがせいぜい10ページ程度の長さなので、経済学のけの字も知らなくても飽きることなく読めると思う。後半は、年功序列型給与体系についてと、経済格差について取り上げられている。前半と比べるとトピックも文章もややカタメの印象。

 想像していた内容と少し違ったが、期待していた以上に面白かった。「経済学的思考とはカクガクシカジカ・・・」と真正面から論じるわけではないが、なるほど経済学的思考ってこういうものか、という読後感があった。エピローグに“「経済学的思考のセンス」がある人とは、インセンティブの観点から社会を視る力と因果関係を見つけだす力をもっている人だと筆者は考えている”とある。インセンティブという観点を強調するあたりは『ヤバい経済学』(東洋経済新報社 2006年)と通じるものがあるかもしれない。プロローグ、エピローグ、あとがきといった本文以外の部分に著者の視点の取り方がよく表われていてる。
(萩原 湖太郎/2006-10-03)
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ランチタイムの経済学―日常生活の謎をやさしく解き明かす (日経ビジネス人文庫)
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ASIN:453219248X
日本経済新聞社(2004-09)
原著:Steven E. Landsburg翻訳:佐和 隆光翻訳:吉田 利子スティーヴン ランズバーグ
売上順位:121886
¥ 900(中古:¥ 171)

レビュー総評点:8
「どうして映画館のポップコーンは高いのか」
「シートベルトの強制で死者は本当に減るか」
「必ず売り切れるチケットを値上げしないのはなぜか」
という日常の疑問を、経済学的思考でもって理論展開していきます。
作者はスティーブン・ランズバーグという経済学者です。
「なるほど!」と思うときもあれば、「それはちょっと違うでしょう」と言いたくなるときもありますし、作者もそういう状況を想定し認めているので、頭の体操にもいいかもしれません^^
また和訳本ですから、英語的な言い回しがあって、一回ですんなりと頭に入ってこないセンテンスもあるのですが、きっと楽しく読むことができると思います。
全部で24章あるので、一気に読破することなく、ちょっと時間が空いたときにでも本を開いてみるのもいいかもしれません。 (イワヤン/2005-04-26)
偏りすぎと思われます。 |||||||||||||||||||
間違っても「ランチタイム」に気軽に経済学の知識を得られる書籍ではありません。正しくは「ランチタイム」に経済学者が素人の経済学的無知を語り合ったという意味の題名です(監訳者がそう書いています)。しかもその無知は「シカゴ学派又は共和党」から見て無知という意味で、普遍的な無知の定義が得られる訳でもありません(もしそうなら無知を馬鹿にされる甲斐もあるのですが・・)。

素直な人は24章を読み通したころにはガチガチの「小さな政府・規制緩和」論者になっているでしょう(サムペルツマンも出てきます)。アメリカですぐ共和党員として活動できるはずです。もし経済学派の異なる教義に属しているならおそらく序章、もしくは1章を読み終えたところでその不遜かつ露骨な論調にページを閉じるでしょう。

経済学者の例に漏れず、「合理的経済モデル」王国を作り上げ、自ら万能の神として君臨しています(自らが作り上げた世界ですので万能なのは当然です)。これまた例に漏れずその万能感を現実の世界に持ち込み、異教徒(異なる経済学派)と激しい聖戦を繰り広げることになる事請け合いです。決して世界の平和は訪れません。


本書で得た見識を用いるときは、著者の万能感に基づいた断定的論調まで誤って乗り移らないように注意しましょう。逆に著者の見識の足元をすくってみる方が良い経済学のトレーニングになるかもしれません。 (squash/2007-04-25)
 オーストリアの経済学者であるフレドリク・バスティアによると、「悪い経済学者といい経済学者を分かつものは、前者が行為や制度の結果のうちすぐに発生するもの、つまり「見えるもの」しか考慮しないのに対して、後者がその後発生するもの、つまり「見えないもの」も考慮するという点にある。」 こんな例え話が載っている。AがBの家の窓ガラスを割り、もちろんBはAに激怒する。しかしAはこう切り返す「私が窓ガラスを割ったからガラス屋は仕事ができた。もしだれも窓ガラスを割らなければガラス屋はどうなる?」と。ここでは「ガラスが割れた事実」を見えるものとして扱う一方で、見えないものすなわち「ガラスが割れなかったときの効用」、具体的にはガラス修繕費として出費しなければ他の用途に使えたであろう効用を無視しているのである。バスティアの分類に従うなら、スティーヴンランズバーグは「悪い経済学者」であろう。
 まずすべてをアダムスミス的な市場観で語ってしまおうとするやり方が気に食わない。第8章「なぜ価格は善か」では、大気汚染をめぐる企業と住民の対立をとりあげ「工場を移転させるためにいくら支払いますか、あるいはいくらもらえば工場があってもかまいませんか」 と、大気汚染をめぐる対立が非効率な原因は「市場の不在」にあるとし、金銭的な問題に還元する事によって議論を解決しようとする。こういったやり方は実際の政策の現場や法整備を進めるときには非常に効率的なやり方である。しかし万物の価値尺度を網羅的に分析し、すべての効用を数値化しようとするこのような試みは、200年以上まえにベンサムによって行われそして失敗に終わった事を忘れてはなるまい。市場でない領域を理解するのに市場原理を用いるやり方には限界がある。ここでもやはり「見えるもの」を意識しすぎるあまり、「見えないもの」(具体的には人間の人格など)への配慮を欠いている。
 非効率を「市場の不在」の責任とし、仮想的に市場原理を埋め込むという手法がどういった構造を生み出すか。それは市場が存在しない、もしくは必要としない空間にまで無理やり市場化を押し付ける権力と化すのである。いわゆる南北問題はそういった文脈で理解できる。あるいはサイードのオリエンタリズムのようなものをイメージし、効率性・合理性といった近代西洋の所産を、他の地域に押し付ける構図だと認識する事もできる。しばしば「支配」と「権力」は区別されるが、後者はその「権力」が「見えない」事が特徴であるを思えば納得がいく。
 学問というのはそれぞれ得意とする環境がある、専門分野に没頭するとこの事実をしばしば忘れがちになる。しかし経済学や今はやりの心理学、社会学などは社会を考察する際にその切れ味がよすぎるため疑問を抱く暇さえ与えない。学問というのは自身の射程距離を絶えず認識することが肝要なように思える。異常なまでの科学信仰の中、プラグマティックな人気を誇る経済学が一見正当かのような論理だてを行うとすぐに正当性を持ちえてしまうのだ。絶えず「本質」を見つめる努力を怠ってはならない (あっちゃまん/2008-04-18)
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行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)
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ASIN:4334033547
光文社(2006-05-17)
友野 典男
売上順位:1242
¥ 998(中古:¥ 387)

レビュー総評点:170
2002年にノーベル記念経済学賞を受賞したカーネマンとトヴェルスキーが開拓した
経済学の新分野「行動経済学」を俯瞰的に紹介した良書。経済学もしくは経済学を
ベースにした経営学を学んだ人には役に立つ本だと思う。

これまで、経済学では前提条件として合理的な人間を想定し、その下に理論構築・
実証研究が行われてきた。近似的に正しいと納得できる結論もあれば、どこか現実
感覚にそぐわない結論もあった。後者は理論上の帰結と現実とを粒さに眺め、傍証
を用いて説明するしか方法が無かった訳だが、それを実験を通じた心理学の手法で
体系的に実証したところにこの分野の意義がある。その実証分析から導き出された
結論をまとめたものの一つが本書である。これまで経済学を学び、知識を更に獲得
したいと思っている人には経済学の新分野を学ぶ上で有意義なものであると思う。

しかしながら、新古典派経済学に闇雲に批判的な人が読むことはお勧めしない。
この本は決して「人間が非合理だ」と主張する本ではなく、「合理性を追求できな
い理由」を分析した本である。本書でも引用されているように、「事実の集積は科
学ではない」(ポアンカレ『科学と仮説』)ので、感覚的に導いた(身勝手な)セオリ
ーを補強する材料とはならない。いくらかの経済学的バックグラウンドを求められ
るのが本書の辛いところと言える。 (県民/2007-01-06)
感情も結局合理的なのか |||||||||||||||||||||||||||||||
経済的局面において人々が実際に選択する行為と、標準的経済学が予期する、効用を最
大化し合理的選択をすると仮定されている「経済人」との間には乖離がある。それらに
ついて深く掘り下げたのが本書である。
本書はなぜ人は「経済人」のように合理的な行動ができないのか、損してまで感情的行
動を起こしたり、将来の大きな利益を省みず、目先の小さな利益に飛びついたりするの
か等の謎を解くヒントになるだろう。さらにこれらは人の生物としての合理性(だっ
たの)ではないかということが次第に明らかにされる。
しかし、本書を読んで「経済学が根底から瓦解した」なんて誤読してはいけない。著者
自身も書いているように、「経済学で長年に渡り蓄積されてきた理論に認知心理学の成
果を取り入れて改良するというのが行動経済学の目指すべき方向であって、標準的な経
済学を全面的に放棄あるいは解体して、新しい経済学を一から建設するというものでは
ない」からだ。
さらに(実はというべきか)、この種の適応的合理性という性質は、進化社会学や社会
心理学の最近の知見について既知の読者ならば、さほど真新しさを感じないのではと思
われる。逆に本書を読んで、はじめてその面白さに触れたなら、そちらの入門書等を読
まれることをお勧めする。本書の網羅的・教科書的記述は(学生や研究者には巻末の参
考文献リストが)辞書的に役に立つ種の本でもある。
著者の中立的記述は、ぶれがなく好意的。逆に面白味に少々欠けるという意見もあるだ
ろうし、この行動経済学が政策的にどう生かされるべきなのかという方法論までは著者
自身認めるとおり、射程とはされていない(今後の課題)。だが、新書というスペース
に行動経済学の議論を詰め込めるだけ詰め込み紹介したという姿勢は評価されるべきで
あろう。 (ori_pupa/2007-02-04)
経済学を知らない人が読むと… ||||||||||||||||||||||||||
経済学を全く知らない,あるいは誤解している人が読んでしまうと,経済学に対する認識が間違って伝わってしまうのではないか,と思いました。

経済学はそもそもものごとを考えるための思考様式としてとらえるべきで,モデルつくって抽象化して,問題の本質となりうる部分をいろいろな面から考えていくと言うことに意味があるのではないでしょうか。

どのような人間が行動するかを仮定し,どのような影響を受けるかを仮定し,それらを総合してモデルをつくって(別に小難しい数式ではなくても),ものごとの本質を理解するための学問だと思います。

そういう意味では,行動経済学は,従来の経済学が仮定してきた条件や,つくってきたモデルが,実証分析や実験を通じて検証され,それらとずれている部分をより現実に沿う形で修正していった結果として示されていくわけで,伝統的な経済学のレールの上にあるべきものだと思います。

この本は,読み物としては面白いですけど,「経済は感情で動いている」なんていうと,なんだか行動経済学が全く別物として理解されがちになってしまいそうで,ちょっと言い過ぎかなと思います。単なるクイズみたいな紹介も面白いですが,もう少し基本的なところから始まった方が理解しやすいのかなと思いました。 (カスタム/2006-10-13)
行動経済学の紹介 |||||||||||||||||||
スタンダードな経済学における合理的な人間とは、たしかに利己的で一貫しており、言葉によるバイアスを受け入れないようなものです。しかし、本書を読めば、これは仮定であって、現実の人間の犯しがちな認知的な誤りやバイアス、その他の言葉による「ひっかけ」などは、実際の行動に大きな影響を与えていることが、わかります。この意味で、行動経済学や、その一部である行動ファイナンスなどは重要な学術分野です。カーネマンとツヴァースキーによる先駆的な研究も大きな流れとなったものだと感心することしきりです。


しかし、私は主流経済学の合理的経済人の仮定は、それでも有意味であり、今後も主流であり続けるだろうと思います。それは、仮定から行動を規定する定理へいたる道が比較的計算しやすいからです。風があれば投げたボールは変化しますが、だからといってニュートン力学が無意味なわけではないのです。この意味で、行動経済学は惑星の運行における周点円の説明にしかなりえていないと思います。それと、アドホックな説明が多く、統一的な理論がないのも弱点だといえるでしょう。


なお、記述があまりにも教科書的なので、一般のかたにはやや読みにくいかとも思います。著者はさすがに多くの研究をしているだけあって、新書を書くにはいまだに現役の学者すぎるのでしょう。 (蔵研也/2006-11-07)
行動経済学の本を読んだのは本書で2冊目ですが、本書から学んだのは行動経済学の適用範囲の広さです。

最初に読んだ本で頭に残ったのはプロスペクト理論だけでした。これは、株価が1万円から1万1000円になる喜びよりも1万円から9000円に減る悲しみのほうが大きい、という人間の感情特性を定式化した理論です。本書でもプロスペクト理論には大きな紙数が裂かれていますが、具体的な問題・現象への適用例が豊富なのが特徴です。

著者はこのプロスペクト理論を「もっているものへのこだわり」と簡潔に表現し、一例として市場価格以上でも土地を売ろうとしない人の性向を上げています。このように、持っているものへのこだわりが経済の基本的事象である「取引」の促進に影響すると考えれば、その重要性が認識されることでしょう。

インフレのときに賃金があがらなくても不満はないのにインフレ率ゼロのときに賃金を下がると不満を抱く、という例もあげられていますが、これもマクロ経済の運営に大きく関わる特性といえます。

他にも割引率のこと、人間の行動特性を脳科学に帰着させんとする「神経経済学」のこと、が豊富な具体例と共に解説されており、新書としては充分お得な内容となっています。 (三四郎/2006-07-23)
ごまかしに要注意 |||||||||||||||||||||||||||
読者は非専門家だけという前提で書かれた本である。そもそも著者は、行動経済学の専門家と言える人物なのか?たまたま「双曲型割引率」について、本書がどのように解説しているのかを参照した。本書では、「第7章 近視眼的な心」のp.222以下に古典的な「指数割引」に対比させて、「双曲割引」を解説している(pp.225〜229)。ここで著者友野氏は、「古典的な指数割引は時間の経過にかかわらず割引率が一定である」という問題を指摘しつつ、「時間とともに減少する割引率」を想定した双曲型割引を説明している。友野氏は、双曲型の割引方法をあらわす式として、次の式を示している(p.227)。
現在価値=将来の名目価値/(1+d)
ここで、dは時間の遅れを示すものとし、「たとえば、1年後ならd=1、2年後ならばd=2・・・である」と説明している(p224)。
多少とも理論的なトレーニングを受けた読者ならば、上の式のどこに「時間とともに減少する割引率」が示されているのか疑問を抱くはずである。それもそのはずで、この式は読者を素人と見くびってでっちあげたとんでもない代物である。最も単純な双曲割引関数は、以下の通りである。なお、V(D)は遅延期間D後に受け取る報酬の効用、kは双曲割引率である。双曲割引関数は下式のようになる。
V(D)=V(0)/(1+kD)
この式から双曲割引率の変化を次式で示すことができる。
−[dV(D)/dD/V(D)]=k/(1+kD)
上記右辺から、遅延期間Dが増すにつれ、割引率が減少することが示される。本書が記述する2つの関数から描かれたはずのp.228の図も全くでたらめな図である(著者はこの図を数学的に理解していない)。このことは高校レベルの数学力で見抜けるはずである。本書p.227のおもちゃのような式が双曲割引計算の基本式などと勘違いしないよう、読者諸賢の注意を促したい。さらにp.116には、「Aにとっては4000万円が参照点であり、・・・、参照点の価値はゼロ、すなわちv(0)=0であることに注意しよう」と書いてある。Aの参照点が4000万円ならば、参照点は、v(4000)=0と書くべきである。こうしたミスも著者の理解が生半可である証左である。注意しなくてはならないのは、著者の方だ。
いずれにしても、入門書であればこそ、セイラーなど第一級の研究者の著作で学ぶべきだという教訓を本書は提供してくれる。この教訓を与えてくれることが本書の唯一無二の存在理由である。「標準的な経済学を超える」というレビューもあるようだが、著者自身標準的な意味で「経済学者」の範疇に含まれる人ではないだろう。 (zigeunerweisen/2008-09-23)
標準的な経済学の世界というのは、すべての情報を入手でき、それに基づいて合理的な判断・行動を取る人間を前提として組み立てられているいわばフィクションの世界であり、経済学者たちはそのような純粋状態をモデルとして経済の仕組みを分析することに意義を見出しているわけだが、一方で、「そのような前提はまったく現実的でない」といった批判も根強くある。行動経済学は、そのような批判に応え、むしろ個々の人間が合理的な判断・行動を取らないということを前提に、どうして合理的な判断・行動を取らないのかを分析し、経済の仕組みを理解しようとするアプローチである。本書は、その入門書と言ってよい存在で、人間の先入観、錯覚、リスク性向などに始まり、精神学的な脳の構造と働きに至るまで幅広い行動経済学上の理論をカバーし、分かりやすく解説してくれている。この本を単独で読んでもそれなりに面白いと思うが、標準的な経済理論を一通り勉強した人が読むと、対比が明確になり、経済に対する理解(困惑?)がより深まること間違いなしである。 (海援隊/2006-10-24)
いままでの方々のレビュでほとんど言い尽くされていると
思いますが、ちょっとだけ。

この本をひとことで言うと、「行動経済学」の内容を、海外の
大量の文献をもとに、うまくまとめたもの。

人間の合理的でない面を、「ヒューリスティクス」「バイアス」
「プロスペクト理論」「フレーミング効果」「双曲割引」「評判」
・・・本当に多くのキーワードにより、説明している。
新書で、これだけの情報量、これほど得られるものが多い
ものは、なかなかないと思う。
神経経済学についての説明もあり、至れり尽せり。

ただ、双曲割引に対する批判の部分をはじめ、読んでいて、
「本当にそうなのか??」と思う部分も、いくつかある。

類似の書籍、近接する分野の本も読んで、勉強してみたい。

(迷亭/2006-07-20)
人間の感情を重視する経済学、「行動経済学」についての本。

いくつもの思考実験や具体例を通して、
いかに人間の行動は合理的とはほど遠いか、考えさせられます。

私は標準的経済学のことはわかりません。
しかし、そんな私でも上記の具体例が興味深く、楽しく読むことができました。

千円手に入れたときの喜びよりも、千円なくしたときの悲しみの方が大きくありませんか?
食べ放題の店に行ったら、お腹が苦しくても元を取ろうとしませんか?
600人中、200人が死ぬ政策よりも、400人が助かる政策の方がよく思えませんか?
ピンと来た方、オススメです。

400ページと新書にしては厚いし、内容がやや難しいところがあるので、
サクッとは読めないかもしれません。
しかし、何度も目から鱗が落ちるし、実生活で役に立つ知識も多いです。
飛ばし飛ばしでも、ぜひ読んでみてください。 (グライド/2008-07-21)
既存の経済学ではその議論の前提として,
完全に合理的な経済人を置いていますが,
それは少し考えてみればおかしいと分かるもの。

行動経済学は人間の感情の及ぼす影響を考えに入れ,
人間の行動の本当の姿を調査しようというものです。


この本には非常に情報が詰め込まれており,
多くの行動経済学やその周辺での議論が詰め込まれています。
まだ完全には普及しきっていない分野での入門書,
あるいは紹介書的な位置づけとしては非常に有用であると感じます。

この本単体では学問的な理解にとどまるかもしれないですが,
既存の経済学と組み合わせて考えてみたり,
あるいは心の持ち方といったことと併せて考えていくことで,
学問だけに限らず,実用の面までにも役立ち,
様々な可能性をもった議論展開が可能になるように思います。 (pacman/2008-05-18)
 一読、「経済」というより、「心理学」「行動学」の本という印象である。
 経済学が前提とする、「完全に合理的で利己的な人間」――そんなものは実在しない。実在しない人間像を基準に、まさに人間の営みである経済を論じても仕方ない。では現実の人間は経済行為にあたって、どんな風に判断し行動するのか?それを認知心理学や人間行動学の研究を元の解き明かそうというのが『行動経済学』であるらしい。

 「損失は、同額の利得よりも強く評価される」
 「人は現在の状況からの移動(変化)を回避する傾向にある」
 …など、本書に取上げられた“(経済学が想定する意味では)合理的でない”判断や行動の多くは、生活実感からすれば「当たり前」「常識的」な判断・行動である。
 しかし、それを科学的な知見とするためには大変な労力が必要なのだなぁ…というのが読んでの率直な感想である。逆に言うと、人間の心の動きや、それに伴う行動についての科学的理解は、未だなかなか進んでいないということなのだろう。
 そして、この“人間”と言うやっかいな生物の営みである“経済”の科学的理解もまた、未だ遠い道のりだと言う事がよくわかった。

 非常に興味深い内容で勉強になりましたが、いかにも学者さんの文章といった印象で、読みやすいとはいえないので、その分、1つ減点した。しかし、新しい分野について語りおこすのは、どんな内容でも簡単なことではないのでしょうね。 (D.O./2007-03-01)
従来の経済学における主体は、現実の経済を担う主体とは、経済的な行動の起こし方に大きな違いがある。

それは、合理性の部分が大きく異なる。現実の経済を担う主体、すなわち我々は、様々な前提に支配されて意思決定がなされる。

本書では、そういった様々な前提を、様々な実験ゲームを用いて一つ一つ明らかにしていく。

例えば、本書に登場する「プロスペクト理論」によれば、確率に対するバイアスについては、確率関数に価値関数を乗じることで、より人間にとって近い確率認識に近づくとしている。

この本をきっかけに更に行動経済学の本が読みたくなる、そういう入門書でありお勧めである。 (osa_tomo/2007-11-28)
この手の本では多田先生の本がわかりやすさでは一番だと思っていましたが、もっと理解しやすい、記述だと思いました。そういう私も教官から教えてもらって読んだわけです。また最後の章の経済人は感情に左右されず、もっぱら勘定で動く人々である、のくだりからがこれからの経済の話であります。neuroscienceあたりの話は脳についてどこがなにでどこがそれといわれてもリアリティがないのですが、きっと今に時代を取って代わるようになるのかもしれません。よくわかる本、だと思いました。 (picabo/2006-06-03)
大は一国の経済政策から、小は駅前の放置自転車対策まで、政策というのは「人々をどうやったら望ましい行動に誘導できるか」という「インセンティブ」の問題であることが多い。本書でも紹介してあるイスラエルの保育所の例のように、決まった時間に子供を迎えに来てくれない親が多いのでどうしたら減らせるか、というような小さなこともまさに「インセンティブ問題」であり、政策を考えるのにたいへん参考になる。イスラエルの保育園では、遅れてきたらいくら、というような一種の罰金制を導入したのだが、遅刻する親は却って増えてしまった。「遅刻の代償をカネで払った」気分になった親の心理的負担が軽くなったためである。そして「罰金制度」を廃止しても遅刻数はもはや元には戻らなかった。本書は、こういう示唆に富んだ事例が豊富に紹介してあり、かつ人間が取りがちな行動の「傾向」について、理論的分析が加えられている。社会問題の解決方法を考えるのに、とても参考になる本である。 (馬場伸一/2006-09-11)
行動経済学から神経経済学、さらに進化生物学や文化心理学の観点も踏まえて、人間の意思決定に関する最新の知見が紹介されている。

とかくお上によって政策決定がされるとき、その根底にある人間像は伝統的な「合理人」が前提になっているように思えてならない。
昨今の学校教育対策しかり、少子化対策しかりである。

本書によれば、人間の意思決定には感情が大きく関わっている。感情と理性は補完関係にあるのである。
そうすると、人間をある程度コントロールし、望ましいと思われる方向へと導く立場にある者は、その双方をよりよく理解すべきであるということになる。
そして、その感情が広い意味での文化によって伝達・維持されるものであるならば、政策決定において文化の違いというものも考慮にいれる必要があるし、さらにその前提として文化がきちんと伝達される基盤をしっかり整えねばならないだろう。

もっとも、この本はそのような特定の人向けに書かれたものではもちろんない。
社会生活を営む上で、人間はただ利己的に個人の効用のみを追い求めるのではなく、あくまで協力関係を前提とした効用最大化の行動によってこそ結果としてより多くの幸せを得ることができる。
そのような協力関係を構築・維持していくのは、我々一人一人であって、そうした意識なり行動こそ現代人にとって最も必要なのものではないだろうか。
社会で起きている様々な問題を前に、自分は無関係であると決して思ってはならない。
そして、感情がその協力関係を支えるのに大きな役割を果たしていることを忘れてはならないのである。

本書を一通り読んだ上で、脳神経学、社会学、文化人類学、文化心理学等の本を読み進めてみると、なおいっそう内容の理解が深まるものと思われる。 (represent/2006-06-21)
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こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)
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筑摩書房(2008-01)
編集:大竹 文雄
売上順位:83696
¥ 714(中古:¥ 196)

レビュー総評点:9
わかりやすくて良いのだけど、ややテーマ的に散漫。
あくまでマメ知識の域を出ないレベルにとどまっている。
あと、複数著者であるせいか、若干視点の違いによる論旨の乱れも気になるところ。
要するにまとまりに欠ける印象。 (毒ギョウザ/2008-02-12)
経済学は役に立たないと思いこんでいる人々は多いし、経済学の知見を使って制度設計が行われる例もまだ少ない。これに対し、本書は、広く身近な社会経済に関する27の事例を、個人のインセンティブ(及び情報の非対称性や行動経済学の成果等)を使って説明することにより経済学の有用性を示した好著である。近年、同趣旨の本も出版されているが、現在の日本において身近に実感できる経済社会現象を多数取り上げており、経済学に通じた読者にも馴染みやすく楽しめるものになっている。
 内容は経済学に通じる人々には目新しいものばかりではないが、それでも刺激的なものが多い。人によって興味の湧く部分は異なるだろうが、例えば、なぜ一部の人だけが肥満となるか等の健康問題、教育の義務化が長期的な人口増から人口減への転換の背景にあること、人々の生まれ月は制度に適用しようとする親たちのインセンティブによって影響されること、日米を比較すると日本人の方が公共財の提供において「いじわる」で相続においても「利己的」であることなど、意表を突いた議論が楽しめる。
 難点は、一つの章の中に別々の執筆者がそれぞれのテーマで6ページほど書いているが、それらを関連づけずに掲載しているため、内容的に連続感がなく一気に読む際に少々読みにくく思えること。元は週刊誌の連載という事情は理解するが、一般の人に経済学に興味をもってもらう目的からすれば、各パートの連続性をもたせ読みやすくする工夫があって良かったのではないか。読者はまず自分の興味のあるテーマのところを拾い読みしてもよいだろう。
 編者の大竹先生が繰り返すとおり、制度設計において人々のインセンティブを無視してはいけないという点は重要である。日本ではこれを無視した制度設計が多いが、これに対して経済学から一石を投じ、より良い社会作りが行われるように人々を啓蒙することが本書の隠れた狙いだと勝手に想像している。 (烟霞/2008-02-09)
個々のテーマがとても興味深く、ためになりました。
最新の成果が盛り込まれている気がしました。

欲を言えば、もう少し紙数を使って掘り下げて欲しかった。
元が雑誌の連載だから、ないものねだりかも知れない。 (あんとん/2008-03-03)
本書は経済学の入門書というより、経済学的な考え方で世の中の現象を説明したものである。『週刊エコノミスト』の連載をまとめたもので、経済雑誌の中で読むと「ちょっと読んでみようか」などと興味が引かれそうなテーマが多い。

内容は多岐にわたる。肥満、タバコ、臓器売買、教師の質の低下、能力か学歴か、早生まれと遅生まれなど経済とさほど関係なさそうなものから、日本人の貯蓄の低下、株式、貸し渋りなど、まさに経済が対象になったものまである。

それぞれのテーマを、基本的に1人の執筆者が担当している。執筆者一覧を見ると、1980年生まれもおり、若い研究者が中心である。そのぶん発想も柔軟で、新しい視点でそれぞれの現象を見ることができ、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と目がひらかれることもあった。読ませる文章を書く人もいるので、今後、本の執筆で活躍できそうな人材もいて頼もしい。

本書は経済学を知るのには役に立たないだろうが、物事を経済学的な視点から考えられるようになりたいという向きには有益だ。たとえば、教師の質の低下なら、普通なら教師の資質の問題を問うだろうが、本書ではそれを「女性の労働市場における差別が減少し、男女で差のない数少ない職である教師という仕事の魅力が減り、優秀な女性が教師にならなくなってきた」という視点から説明を加え、データの裏付けを与えている。感情的になりがちな社会問題ほど、こういった冷静な視点を必要とする。そういった意味で、本書はたいへん有意義である。

本書の研究はおそらくCOEになっているのだろうが、COEでは多額の公費(つまり税金)が使われているのだから、こういった形でなるべく一般に還元して欲しいものだ。COEにはどう考えてもくだらないテーマもあるようだ。そうでないと言うなら、本書のように一般が読める形で提供し、一般の「審査」も受けるべきだろう。その意味でも本書は評価できる。 (所沢白猫/2008-03-18)
特に「インセンティブ」の概念を中心軸としながら複数の著者の論文を掲載した書籍。

見方によっては視点の拡散、内容のまとまりの無さが気になるかもしれませんが、
それをそれと受け入れた上で読めば、現実の問題に対する経済学の適用の仕方、
そこから導かれる経済学的真実(実社会で適応出来るとは限らないが)
など、参考になる点が凝縮された本です。

ゲーム理論の「パレート効率的」という概念や、「効率的市場仮説」という考え。
経済学を学んだものには当然の概念ですが、かつて経済を学び記憶が希薄化した方、
独自に経済を学び始めた方、経済学部の学生など、
経済初級者レベルの方が幅広い知識を学ぶには最適の書籍であると考えます。

「新書の厚み」「新書の内容レベル」において、非常に秀逸な作品です。 (belle_epoque0903/2008-10-01)
経済学を学んで得られるメリットの一つとして,バタフライ効果(日本の例で言えば,「風が吹けば桶屋が儲かる」の理論)を予測することが可能になることである.つまり,ある一つの行動や制度が原因で起こる次の行動や状態(因果関係)が分かるようになることである.ある現状の改善策として打ち出される法律や制度の中には,現状を悪化させるようなものも有る.それは経済学で言うところのインセンティブを踏まえていないからであり,因果関係と相関関係を混同していることに由来する場合が少なくない.本書は,統計より得られるデータをもとに,問題の原因とその解決策としてのインセンティブ設計を,個人の行動レベルで考えられる内容となっている.中公新書の『経済学的思考のセンスーお金がない人を助けるには』(大竹)と近い内容だがトピックスが異なり,また論文などの研究成果をベースとしているため,よりインセンティブの考え方が身につくものとなっている.
そうはいってもやはり,インセンティブの発想が自然に「使える」レベルになるには,こういった新書は馴染まないものであるという他ない. (アメゾン/2009-04-26)
いまいち実感が伴わない内容ではなく
就職率や学力 株式などの一般人でも
何となく実感がわく分野での記事が興味深い。
問題の全体像を理解することで、本当に恐れなくてはならない
問題かそうでないか?を理解することに役立つ。 (I/2008-04-26)
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経済学入門
経済読み物(1)
 
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これも経済学だ! (ちくま新書)
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筑摩書房(2006-08)
中島 隆信
売上順位:206701
¥ 756(中古:¥ 93)

レビュー総評点:65
本書は「伝統文化」「宗教」「弱者保護」といった経済学と対局にあると思われている事象を経済学的に説明することで「経済学的思考」の重要性を説いている。平易な文章で予備知識を必要とせず読める万人向けの本であると同時に、経済学部や経済学研究科を卒業した人間にも新たな視点を提供する本としてオススメできる。

一方、高校生が本書を読んでから経済学部に入学したなら、落胆するかもしれない。ミクロ経済学やマクロ経済学の講義内容は、本書で取り扱うような身近な話題でもないし、機械的に式を解くことになりがちである。「これも経済学」には違いないのだが「これが経済学」と誤解なきように・・・・。 (鞄持ち/2008-01-17)
この著者による、「障害者の経済学」という本を題名にひかれて手に取った。おもしろそうとは思ったが、買おうかどうしようか迷った。
そのまま新書売り場にゆくと、この本が置いてあった。おおっ これはお買い得では、と思って買った。
結論から言うと、かなりお買い得。社会の「弱者」が実は真の「弱者」ではないという直感的に納得できることが、明快に示されている。
さらに、最後の章。経済学の原則が示され、それが自分の学生や今の社会に照らしたときにどう感じられるかが示されている。
このあたりが、とても共感が持たれる。社会を見る目、そしてそれを見極める目の重要性を再認識できる。
良著。 (pooh bear/2006-09-09)
経済学はもともと人間社会の「なぜ?」を探求、解明する学問である。
しかし、数学や理論や専門用語に満ちていて、一般には敷居が高いイメージがある。

そこで本書は、経済学はもっと身近なのだ、経済学的視点を使えば社会のしくみがスッキリわかるのだ、ということを示すため、一見経済とは全く縁のなさそうな文化や伝統、宗教、弱者保護を取り上げ、経済学の原理を使って「なぜ?」の説明を試みている。

本書は理論や専門用語を排除しているが、使われている経済学の原理=解剖道具はおおよそ次の3点である。

 1.人間は自己の欲望を満たすように行動する。
 2.人間は無駄を避け、利得を最大にするよう行動する。
 3.人間の生産活動は、需要と供給のバランスに支配される。

経済学的視点での社会のありようを理解するということと、社会をあるべき理想の姿へもっていこう、ということは本来動機が別であるが、たいていの類書では前者よりも後者が強く前にでてくる。しかし本書は意識的に前者の立場で書かれている。そこが新しい。

経済学も歴史学や社会学や哲学と同じ人間と社会を理解する方法論のひとつなのだ、ということをあらためて認識した。
これはあたり!である。 (丁三/2006-11-23)
「全ての人間(もしくは組織)の選択する行動には、当事者にとって合理的な理由が存在している」
という前提に基づき一見非合理とされる伝統芸能、障害者(弱者)保護、宗教といった領域について、
組織の規範と人間の行動の合理性を解明していく。
経済学の範囲をかなり広く捉えているが、貨幣経済や人間の経済的行動そのものの分析から離れて組織や制度を分析しており、広く社会科学そのものと言える。
世間的なバイアスに左右されず、自分のイメージや思い込みを排してモノをみること。
理不尽、非合理と思えるものの合理性を冷静に見つめること。
すなわち、自分が合理的だと思っている世界は、自分が属している世界の合理性に過ぎないと知ること。
そのような社会科学的なモノの見方を学ぶために、ヒントに富んだ新書である。
本書のスタンスの通り、全ての人間および組織で、インセンティブに基づく合理性のある判断が行われている以上、
その人や組織を変革していくことの難しさも理解できる。インセンティブの量と質を変えていかなければいけないということだ。
ただ、組織変革の成功事例を並べるビジネス書に比べて、「変革」の意味を真摯に考えることができるであろう。 (picander/2006-11-17)
本書の中で一番印象に残ったのが伝統文化の生き残りについて書かれた部分。これこそは通常の経済学ではありえない参入障壁というものがあり、それによって相撲や将棋等の世界の伝統が守られているらしい。また、この参入障害があるからこそ力士独特の体型等も守られている。
そしてこれらの伝統文化もマーケティングが必要であると著者は力説する。たとえば両国国技館で相撲は行われるが、両国駅から国技館までの間に歴史を感じさせる建物や資料館が少ない。国技館そのものも余り伝統を感じさせる装飾が施されているとは言い難い。その点ヨーロッパは徹底的に伝統のマーケティングが進んでいる。少子化が進み労働人口が減少する日本は今後観光立国として外貨を稼ぐことも視野に入れるべき時期に来ていると思うので、私は著者の意見に非常に共感が持てた。 (平和/2006-11-18)
 本書は、決して色物ではない。しかし、著者は色物視されることを恐れては居ない。
 人は、往々にして自分の現在地点の狭い視野から、世界を物事の仕組みを見がちな傾向を持つ。全体像を解明し、背景を形作るシステムを解明する努力をせずに。
 このシステムの解明に著者は、経済学の思考方法を薦める。
 最適の資源配分の道筋を考える経済学。人間の行動を解明するツールとしての経済学。
 その経済学の効用を、大相撲・プロ棋士の世界や、伝統仏教の寺院、家元制度の生き残りのために作り上げたシステムの解明を通して読者に示し、読者を経済学への接近へと誘う。
 そして更に、社会が「弱者」とする存在に著者の経済学のメスを入れ、思考実験を行う。
 表層的なマスコミ報道をなぞるだけの論議や床屋政談に厭きた貴方にお勧めする一冊です。 (歯職人/2006-12-12)
著者は経済学を単なるお金儲けのことだという常識に反して、
1、華道、茶道、剣道、など人性修養として確立することの合理性を説く
2、宗教にも合理性はあり、それによって心の安寧サービスを得るという競争産業の支店から、これまでの日本仏教を分析している、
3、政府による弱者保護は画一性を生み出すので、今後はNPOなどが最低限度をこえる福祉活動をおこなうのが望ましい、
という、実に常識的な経済学者としての考えを披瀝しています。特に将棋リーグや大相撲の勝負が、閉じられた(人的な資本の保護のための)年功システムを維持するために、八百長に近い状態にあるという指摘は鋭いと思います。

あえてけちをつけるなら、無神論の私には宗教というものが与えてくれる安寧はサービスとしてはあまり魅力的ではないし、かつ「なぜ」人は安寧を求めるのか、言い換えれば、効用関数の決定の理論が(経済学者の常として)存在しないのが、残念です。 (蔵研也/2006-11-06)
「経済学的に物事を考える」とは、どういうことか、という本です。

カンニング、リサイクル、恋愛などを、「経済学的に」軽く分析して例を示したあと、「伝統文化」「宗教」「社会的弱者」について、詳しく分析されています。

「伝統文化」については、「××道」「相撲・野球」などを対象に、伝統文化が生き残るためには、が分析されています。

「宗教」については、信仰というマーケット、それに対する日本の宗教のサービスやその歴史を分析しています。

「社会的弱者」については、弱者とは何か、弱者対策(?)について、分析されています。

学校で勉強するような「経済学」の知識が身に付くかどうかは、微妙ですが、物事を「経済学的」に考える、「深く考える」点で、参考になりました。

といっても、「お堅い」本ではなく、テーマの身近さとあいまって、興味深く、読みやすい本でした。難しい経済学の用語や、数式も出てきませんし、経済学を、全然知らなくても、楽しめる本でした。 (lemonerika/2006-09-29)
著者は、「人は経済的に合理的に行動するものだ」との前提にたつ経済学の手法・視点で、お寺、大相撲、障害者といった非合理的な(産業)分野に光りを当ててきました。レビューワーはその姿勢や解析の自由さ、大胆さに惜しむなく拍手をおくるものです。この本は、ハンバーガーで例えれば、お肉のところに、既刊3部作(お寺、大相撲、障害者の経済学)のサマリーを置き、前後に緒言と総論をバンとしておいたような構成になっています。基幹部分は当然ながら既刊本の骨子部分で、やはり本編の方が丁寧に書き込まれていて説得力が上です。 しかし、新書本という廉価な本で、3冊の本のサマリーが読めることは一応歓迎すべきことなのでしょうが、既刊本との関係で良いのかしら?と思わず疑問に思う自分がいるのは事実。これも資源の有効活用を考える経済学者からすれば自然のなせる業なのでしょうか? そこのところが割り切れず、内容的には星5つ、少なくとも4つのところを星3つとしてしまいました。中味は良い本ですから、問題なくおすすめです。 (gehararigo/2006-09-01)
新たな視点 |||||||||||
今まで、経済学では分析されなかった問題を経済学的に考察しています。宗教活動、伝統文化などについて非常に示唆に富む分析を行っています。然し、「世の中に弱者はいない」の所には違和感を覚えます。けど、全般的には非常に面白く読むことが出来ます。これまで提供されえなかった分野を提示してくれたことは評価出来ます。 (USC/2006-08-27)
大相撲の世界はどのように成り立っているのか。
日本人がなぜ宗教観を持たずにこれだけ檀家制度が発達したのか。
行政はなぜ、「弱者」のための政策を行うのか。

本当に身近にありながら、何にも疑問に思っていなかったことを、「経済学」の観点から、きれいに説明してくれた。
(takokakuta/2006-11-02)
本文には大学生のレポートを「小学生並」とあるが,それに倣えば本書は大学生の卒論なみであろう.とくに後半は手抜きもいいところ.また,大相撲の八百長の話は『ヤバイ経済学』から引いてきたと思われるものの,それに関する記述が一切ないのは学者の良心としてどうかとおもう.

あと,「大学の講義はベルが鳴ってから10-15分程度経過して始まることが慣例となっているが」とあるが,これは著者が行っているだけで通用する慣例であろう.まともな国立大学理系の講義では考えられない. (kimata/2007-08-22)
「経済学=カネ」ではないのだ。
経済学は価値判断のためのツールであって、
価値として万人が一番イメージしやすいものがカネなのであり、
むしろ人間がカネに弱いということを暗に示しているだけだ。

だけど、経済学にしてみれば、そんなの関係ねぇ

自分は経済学は哲学として有効だと思っている。
社会ってのはマクロすぎて魔物だから、
社会相手の判断でよく迷うんだよね。
都市伝説って流行ってんじゃん。
自然界は科学でだいぶ解明されたけどさ、
社会って身近すぎて科学的に解明しようって気が引けるんだよね。
宗教とか道徳とか権力とかはびこってさ。
むしろ現代社会のほうが多分に非科学的だ。

そんなことを僕と同じように思う人、
この本を読んだほうがいい。
経済学は社会に対する科学的思考の所作であることが分かる。
(厭世ガイ/2008-01-19)
 これも経済学だというタイトルはこの本にふさわしくない。経済学を学んだ著者が、自分なりの考え方で社会を見た叙述と言えると思う。経済学的思考を施す以前に、著者の主観が大きく流れている。相撲取りは1人でなにもできない、女性専用車両をよしとする女性は社会的弱者になりたがっている、といった断定の上に議論を構築しても説得力があるとは思えない。こんな考え方もありますよという主張を読むという意味はあると思うが、これを経済学という分野と捉えることはできないと思う。第4章の前半は比較的論理的であるが、社会保障問題の解決をNPOに期待するお決まりのお話には少しがっかりした。あと、脚注の内容の浅さをみても、議論に深みがないことが伺える。この本を読めば、著者による他の本『大相撲の経済学』『お寺の経済学』『障害者の経済学』を読む必要がないという意味ではお得な本である。
 この手の本を読みたいなら、大竹文雄『経済学的思考のセンス』、レベット『ヤバい経済学』の方がお薦めである。 (vinovino/2007-09-09)
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50 Facts That Should Change the World 2.0
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Disinformation Co(2007-11)
Jessica Williams
売上順位:5708
¥ 1,275(中古:¥ 1,617)

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MBAの人材戦略
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日本能率協会マネジメントセンター(1997-10)
原著:David Ulrich翻訳:梅津 祐良デイビッド ウルリッチ
売上順位:175781
¥ 3,360(中古:¥ 979)

レビュー総評点:1
人的資源管理(Human Resorce)にé-¢ã™ã‚‹ä¸€èˆ¬çš„な本は、採ç"¨ãƒ»é...ç½®ãƒ»é-‹ç™ºãƒ»è©•価・報é...¬ãƒ»çµ„ç¹"といったフレームワークで記載されているã"とが多い。
ã"の本は、そういった人的資源管理の機能というフレームワークではなく、人材経å-¶ã¨ã„うè¦-点から、戦略実現、効率的経å-¶å®Ÿç¾ã€å¾"業å"¡ã‹ã‚‰ã®è²¢çŒ®ä¿ƒé€²ã€å¤‰é©æŽ¨é€²ã¨ã„うï¼"つのフレームワークで記載されている。すなわち、人材経å-¶éƒ¨é-€ã¨ã-て、企業経å-¶ã«ã€ã©ã®ã‚ˆã†ã«é-¢ä¸Žã-ていくか、というè¦-点である。
è¦-点自ä½"は独特で興å'³æ·±ã„が、å†...容は、イマイチであった。ï¼"00ページ以上の本であるが、å†-長で、読みにくい。
なお、書名には、MBAとついているが、MBA的な知識ではなく、実務的なå†...容になっている。MBA的な人的資源管理の知識ã‚'å¾-たいのであれば、「MBA人材マネジメンã!ƒˆã€ã®ã»ã†ã‚'おè-¦ã‚ã™ã‚‹ã€‚ (アマゾン太郎/2003-05-03)
日本における人材管理・開発論の多くは、細かい議論が多く、人事として人材を成長・管理していく人事部の役割をうまく定義しきれていない。一方でこの本においては、元々の原題はHuman Resource Championsであり、今後の人材管理・開発の企業における活動を、戦略の立場としての人材開発に位置付けた実際の活動に役立つ本である。 (やっぱりIntegrityが大切でしょう!/2009-04-28)
原著はこれからの人事部のあるべき姿について論じており、非常にすばらしい内容だが、惜しむらくは翻訳だ。
翻訳のひどさで本書の評価が低くなるのは残念で仕方ない。 (/)
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日本の不平等
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日本経済新聞社(2005-05-24)
大竹 文雄
売上順位:57996
¥ 3,360(中古:¥ 979)

レビュー総評点:36
格差問題の決定版 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
大竹文雄氏の不平等論は、橘木氏の議論を反証し、90年代の所得不平等の拡大は高齢化に伴うみせかけのもので、日本の所得格差の拡大は幻想であるという議論を行ったことで広く知られている。しかしながら、若年層の所得格差(または、非正規雇用者の正規雇用者に対する所得格差等、労働市場の「割り当て」により生じている可能性の高い所得格差)の拡大については、一定の懸念を示している。なお、本書は一体的な書籍というよりも、論文集的な性格を持っている。あえて欲を言えば、最後に著者による総括的なまとめとして、現在社会に存在している格差は問題視すべきものか、何らかの施策的な対応が必要か等を論じて欲しかったところ。例えば、過度に「結果の平等」を求めることは悪平等との意見が多くあることは理解するが、その格差が入口の「機会の平等」が確保されないことにより生じているのであれば、社会移動を通じて社会の活力を高めていく上で大きな障害となると言えるだろう。ただし、機会の格差や格差の世代間移転等への言及がない点を割り引いても、本書は不平等問題に関する現時点の決定版であり、今後は、本書をも起点として、格差問題を検討していく必要が出てくるだろう。 (ラスカル/2005-10-09)
「御用学者」の反論 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
著者は本書の中で、所得不平等度の高まりは人口の高齢化によって発生したものであるとした上で、「所得が同じ2人が同じ宝くじを買ったとして、抽選前後を比べると所得格差は抽選後のほうが高い。抽選が行われる前に、宝くじに当たった人がいないからといって所得格差のない社会だというのはナンセンスである」という。だが、本当にそうなのか?親の所得が高く、出身階層が高いものは、初めから宝くじが当たりやすいポジションに立つことができるのではないか?その子供も、高額の教育投資によって、また初めから宝くじに当たりやすいポジションに立つことができるのではないか?著者は「出身階層による格差の固定化」という問題を無視している。最近、本書は経済図書に関するいくつかの賞を受賞したようだが、経済界からすれば所得格差の拡大はあくまで自由競争の結果であり、誰にでもチャンスはあると思わせたい。権力側が自分に都合の良い学説を持ち上げるのはよくあることだ。 (hazel_nuts/2006-01-14)
 高齢者の所得格差はもともと大きい。日本が急速に高齢化している以上、格差が拡大するのは当たり前である。本書の主旨はそういうことである。高齢化が問題の核心であったとしても、現実に生きる私たちにとっては格差社会の到来であることに変わりない。むしろ高齢化社会が厳然とした現実社会の方向性で有れば、格差は見かけのものだとは到底思えない。まえがきには、「効果的な不平等是正策については今後の課題として残されている」とあるが、著者の論旨には合わないしそれでは遅すぎる。一生食えなかった者が食えないまま死んでいくのと鱈腹食った者があまり食えなくなって死ぬのとどっちが不幸か、不幸を比べて競争している暇はない。 (鈴屋飯依比古/2005-11-12)
私が1番印象に残ったのは、第4章、所得不平等化と再分配効果、第5章;誰が所得配分政策を支持するのか及び第8章;労働市場における世代効果です。
第4章、5章で触れられた所得再分配、という考え方そのものが印象に残りました。
2000年代に入ると小泉内閣によって極端な再分配抑制策が唱えられるようになり、階層の固定化が心配されるようになったので、累進課税の制度に再び戻せぬものか・・・と思い立ちました。
高所得の方々に所得に応じた負担をしてもらわないと低所得者とのバランスが取れなくなるのではないでしょうか。
8章の、「不況時に就職した世代は、好況時に就職した世代よりも生涯賃金が安くなる。」という結論におおいに共感を覚えました。フリーター、ニート世代にはかくのごとく不況が色濃く影を落としているのが実証されたのです。
かように、この本には有効な経済政策及び適切な弱者救済政策のヒントがぎっしり詰まっているような気がします。

(むかしPTA大好きおばさん/2006-08-13)
格差論者は先ず本書を論理的に反駁すべき ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
格差問題については、最近メディア(特にTとA)が相変わらず都合の良い情報だけを編集して伝えているので、
名前が一人歩きしているのではないかと思わされます。
格差問題を取り上げることも、社会問題化することも構いませんが、
少なくとも本書で取り扱われている内容を十分に理解して、
そのうえで論理的に反駁してもらいたいと思います。
格差問題を経済学だけで取り扱うことには限界はあるでしょうが、
経済学を全く無視して声高に叫ぶことのほうが危険だと思います。

本書では、格差はないとは言っていません。
もともと格差のあった高齢者の人口割合が増えたこと、
世帯標準人数が分散していること、
で世帯あたりのジニ係数の変化の9割が説明できるといっています。

世帯標準人数の分散でジニ係数にノイズがはいるのであれば、一人当たりの収入で再計算すれば何らかの答えがでるでしょう。
高齢者の人口割合の増大は現実として受け止め、高齢者同士で再配分すればよいでしょう。

格差の広がっている高齢者層の子供たちが同じスタートラインにつけないのであれば、
相続税の強化しかないでしょう。
これは機会平等の観点からは賛成しますね。
でも格差問題の原因はこれだけだと思いますし、公平性なき結果平等は社会を滅ぼします。

格差をイデオロギーの道具にして欲しくないですね。 (meme/2006-05-04)
他の不平等の本と違い、最新のデータや、わかりやすい言葉で書かれていてとても為になる本でした。経済学の詳しくない方でもすんなりと読める本でした。日経新聞を読んでいる人なら大竹さんの、文章のわかりやすさは、よくわかるのではないでしょうか。 (フリーター/2005-11-30)
なかなか難しい感じもする本です ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この種の本ではかなりの量のデータを集めていますし、さらにそれを多次元的に調査・考察しています。
不平等という観点から成果主義を考えている部分は読みやすかったし、核心を突いていると思いました。
正直ちょっと議論が定量的すぎるなぁとも思うんですがそれでも十分な読み応えと内容のある本でした。 (串丸/2005-12-25)
著者の長年にわたる研究をとりまとめたものであり、根拠を基づく正確な記述がなされている。しかしながら、学術的な書籍にありがちで、「で、結局どうなの?」「で、どうしたらいいの?」といいたくなる。 (むつしんたろう/2009-07-01)
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五〇〇億ドルでできること
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バジリコ(2008-11-07)
翻訳:小林紀子ビョルン・ロンボルグ
売上順位:62506
¥ 1,680(中古:¥ 1,098)

レビュー総評点:92
以前から存在した書籍の新訳版。
全地球的問題を費用便益的な分析「のみ」で考察した書籍。そこに感情や、特定国の利益が入り込む余地は無い。

ご想像の範疇かもしれないが、本作はヒステリックな学者連中や感情で危機感を煽るマスコミからはすこぶる評判が悪い。
生命の生死に関わる問題を比較・値付けすることへの批判や「温暖化を放置するというのか!」といった批判だ。

しかし、IPCCなどの分析に拠れば、全地球的視点ではある程度(3℃以下程度)の温暖化には恩恵の方が多いことが分かっているし、
そうした温暖化で被害を受ける国家の多くでは、そんなことよりHIVや飢餓・マラリアの方がよほど切迫した危機なのである。
「100年後にあなたの国は確実に水没します」と「あなたはこのままではマラリアで死ぬ可能性が90%です」。
どちらが切迫しているかは考えるまでもあるまい。

もちろん温暖化など、本書で軽視された問題の解決を等閑視して良いというわけではない。
しかし、将来の温暖化と明日の飢餓を等価で考えてしまうことは、先進国とLLDCとの彼我の隔たりを全く理解していない暴論だ。

少量の力を分散させるよりも、最も効果が上がる分野に集中して力を注ぎ込むべきであることは、
クラウゼヴィッツでもランチェスターでもウェルチでも良いが、経営では当たり前のこととされている。
それが、全地球的問題になると突如として視野が狭窄して温暖化ばかりが俎上に載せられる。まさしく先進国のエゴイズムだ。

なお、将来価値への割引率の設定や、人が死ぬことが国家に与える損失の計算は容易ではないから、
本書で導き出された数字やランク付けを鵜呑みにすべきではないだろう。
しかし、ワイドショーのエコ特集よりは本書を読む方が、得ることが多いと私は思う。

石油で作られるエコバッグを買って何かを救った気になる前に、本書に目を通してはいかがだろう。 (belle_epoque0903/2008-11-19)
世界のためにあと五〇〇憶ドル使えるとしたら、どの問題から
解決するべきか?この問いに対して、経済学的な費用・便益に
焦点を絞り、論じていく本です。

本書は、2004年5月24日〜28日に多くの経済学者が参加して
開催された国際会議「コペンハーゲン・コンセンサス」の要約版。
世界が抱える10の深刻な問題に対する分析と対策を経済的な観
点から論じ、批判的な評価を加え、そして、経済的な費用と便
益を判断指針として優先すべきランクをつけていきます(ランク
つけのプロセスの記述が少ないのが残念です)。

マスコミでは、年金は大事、雇用対策も大事、教育ももちろん大事
・・・というけど、「じゃあ予算は?」となると「税金の無駄をなくせ
ばいい」で思考が停止していると感じる日々です。そんな中で、
使える資源が限られているという仮定から議論がスタートする所に
新鮮さを感じました。

「全く違う種類の問題に順位をつけるのは無責任じゃないのか?」
この疑問に対して本書は答えます、「議論しないからといって
優先順位の決定がなくなるわけではない。背後にある意思決
定プロセスが見えにくくなるだけだ。だから、優先順位決定
に関する議論は行うべきなのだ」、と。

本書の中には、議論として偏っていると感じる点もあります。
倫理面から見て適切な判断なのか疑問な点もあります。でも、
難しい問題だからといって、思考停止せず、考えつづけるべき
だと読者一人一人に感じさせてくれる本です。 (食いしん坊/2009-01-02)
 ロンボルグによるコペンハーゲン・コンセンサスの要約版。要約でも、世界の各種問題についてその道の第一人者が費用便益分析を行ったもとの論文とそれについてのコメント、それをもとに経済学者がつけた、世界が取り組むべき解決策のランキングが簡潔にまとまっている。
 これの特徴は、これが問題の深刻さを順位づけるものではなく、解決策として取り組むべき順位をつけたものだということ。どんなに問題が深刻でも、まともな解決策がなければそれは低い順位になる。その結果でいちばんの話題になったのは、排出削減による地球温暖化対策のランキングが最下位になったことだった。排出削減推進派は、これは結果が歪んでいるとか、意図的に過少な見積もりをしているのではとか、根拠レスなかんぐりをいろいろして批判をしたのだが、本書を読むと、排出削減による費用便益分析をしたクライン(炭素削減論大支持派)は、過少評価どころか過大推計をしているようだ。将来の費用便益を現在価値に直すときに、割引率をゼロにして、かわりに消費との比率で限界価値が決まる変わった割引を使っている(p.30)。この論文に対する批判もそこに集中している。そして、それだけ過大に評価しても、排出削減は最下位でしかなかったのがよくわかる。エイズやマラリア対策や栄養失調対策や貿易自由化といった地道なことがやっぱいちばん重要なのだ。
 翻訳は、きちんとしているし問題なし。ただ温暖化が低い順位になったことについて、訳者は将来価値を割り引くからだ、という解説をしているが(p.223)、上に述べた通り本書では必ずしもそれはあてはまらない。掲載論文ではそれを考慮して別の考え方を使っている(批判は受けているが)。自分で訳してるんだから、そういうところはまちがえないでほしいなあ。でも、それが訳文を歪めたりはしていないのが救い。
 拙訳『地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す』でもたくさん引用されているので、議論の中身を確認したい人は是非どうぞ。絶望だ破滅だと騒ぎ立てて、役にたたないものに金を使うより、本当に有効なことに少ないお金を使いたいと思う人は必読。 (h.yamagata/2008-11-07)
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数学的思考法―説明力を鍛えるヒント 講談社現代新書
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講談社(2005-04-19)
芳沢 光雄
売上順位:53064
¥ 735(中古:¥ 118)

レビュー総評点:217
文系の人にこそ読んでほしい本 |||||||||||||||||||||||||||
日々の生活において周りを注意深く見渡してみると、ささいな刺激によって今まで気付かなかったことにふと気付くことがたまにあります。そのことと、数学におけるいわゆる「ひらめき」、つまり、一つの問題にじっくり取り組むことによって、たとえその問題に答えられなかったとしても、別の問題を見たときにふと正解への筋道が見えることがある、ということとの間にはかなりの類似性があります。

発見の連鎖、そして、それを相手が納得できるように説明しようとすることは、人間の成長には欠かせない要素です。その一連の流れが証明問題をじっくり解くという過程に凝縮されているのです。

ただ、この本自体はなんらかの「答え」を与えてくれるものではありません。なぜなら、それこそ筆者が批判する「条件反射的丸暗記」に繋がるからで、このことはサブタイトルにも如実に現れています。

数学を毛嫌いしていることの多い文系の人にこそ読んでほしい本です

(represent/2006-03-24)
証明問題の重要性を説いた本
全体で4章から成っている。
第1章は、本書の結論である、証明問題の重要性を説いている。
第2章は、証明のための試行錯誤の重要性を説いている。
第3章は、試行錯誤の際に注意を払うべき、数学的な勘所を説いている。
第4章は、実際に証明を試みるときの注意点を説いている。
身近な生活の出来事を題材にした数学啓蒙書なので気軽に読める。 (tk-caesar/2005-05-22)
納得がいきます |||||||||||||||||||||||||||||
『過程が大事』、『試行錯誤するのが必要』
数学的と表題にありますが、内容は数学が苦手な私でも理解できる
ものでした。
兎角、結果重視、回答があってればいいとなりがちな学校の試験ですが
過程や考え方があっていなければ意味はないという論には賛成です。
(I/2006-11-04)
編集者志望 |||||||||||||||||||||
本書は考える力と論述力を高める要点を数学的思考の立場から平易に述べている。地図の説明能力などの面白い事例が多く、飽きることなく一日で読破したが、編集の仕事に魅力を感じる文系人間の立場から一言述べたい。教科書やパソコン等のマニュアル本の編集は正直面白いとは思えない。反対に本書やかつてベストセラーになった失敗を扱った本は、編集作業の技をふんだんに出せる書のように思える。試行錯誤をすすめる前書きから入って、なぜ子供たちはマスターしていた分数計算が出来なくなってしまうかを述べた最初の項目。時間という次元を利用した説明のすすめを述べた最後の項目から、流れるように後書きに進む構成。そのような骨組の決定に特別の魅力を感じる書であった。 (カスタマー/2005-04-20)
論理的思考力 ||||||||||||||||||||
学習参考書からビジネス本に至るまで巷ではハウツー本が溢れています。しかし冷静に考えると、何かを生み出すために一番大切なのが論理的思考力です。この論理的思考力を身につけるためのハウツーはありません。結局は、いろいろ試行錯誤して考えること以外に方法はないのではないかと思います。筆者は、それを世の中に訴える数少ない学者の一人です。その一番大切な論理的思考力に、数学的な立場から光をあてているのが本書です。教育とビジネスの両面から興味深く述べられていて、読み易い本になっています。個人的には、マークシート問題の本質的欠陥、「見直し」という試行錯誤、「2」より「3」で試すことの重要性、「たとえば」の上手な用法、などが特に面白いと思いました。 (/)
数学は、すばやく計算することだけを教えることではなく、粘り強く考えることや論理的に説明することを教えていくべきだということが、本書で書かれています。

やり方だけを覚えることは、やり方を忘れたときに何もできなくなる。分数の計算を忘れるということはそういうことなんだろう。やり方を覚えるということは、ある意味において丸暗記に近い。仕組みを理解するということは、忘れたときに思い出す可能性が高い。また、応用する能力も養われる。

説明するときは、点→線→面→時間からの説明のほうが説得力が増す。特に、時間軸というものを意識したほうがいい。

統計を見るときは、データの割合だけでなく、データの個数にも注意を払おう。新聞にも、データの個数の記載がないものがあるので気をつけよう。

地図の説明は論理的思考力を鍛えるのに役に立つというのはなるほどなあと思いました。証明問題と地図の説明が結びつくということなんだろう。

※背理法:結論を否定して推論を進めて、矛盾を導き出すことで結論の成立を言う証明法
(itchy1976/2007-08-13)
タイトルは難しいけど |||||||||||||||||||
タイトルは難しいけど、中味は数式がほとんどなくて、とても楽しい本でした。著者の〔算数・数学が得意になる本〕より、易しくすぐに読めちゃいます。しかも、同型、類別、はいり法、などなどの分かりにくい考え方が、日常生活の話題を使って分かりやすく説明してあります。しかし、タイトルはもっとやさしいものでないと、数学嫌いな人は引いちゃうかも。そこだけはマイナス? (はな/2006-07-20)
人によってはタイトルから敬遠したくなるかもしれないが、新書として適切なレベルに収まっているので、嫌がらずに手にとってみてほしい。
試行錯誤と数学的思考の重要性を説いている。
「数学的思考」というどこかあいまいな表現を使うと内容をイメージしづらいかもしれないが、本書は身近な具体例を挙げながらこれを説明してくれている。
この具体例が興味深いのだ。
ついついのめりこんでしまう。
私自身は、これまで学校で数学を学ぶということについて、「先人(ここでは数学者たち)の積み重ねてきた業績(ここでは定理や理論)を学ぶこと」だと考えてきた。
数学者を目指す人たちはそれらを身につけ、さらに理論を上乗せして数学に貢献するということになる。
一方、学ぶ意義について私は「推論力をつける」という考えだったが、「学ぶということ」と「学ぶ意義」が自然に結びつかず少し困っていた。
本書ではこの点についてもう少し広く、そして深く話が進められていたので、自らの数学に対する見方を深めるきっかけにすることができた。
ただし、事務処理能力の向上に数学が果たしている役割も捨てがたいので、数学を何のために学ぶのかということについては人によりけり、という面も否定できないのではないだろうか。 (ゴールデンキャデラック/2005-05-31)
国語入試 ||||||||||||
一年前の長崎大学の入試の国語で出題されたことを知り、読んだところ、考え方の本で実に楽しく勉強になりました。他の大学入試の国語でも出題されており、納得しました。さらに同著者の[算数・数学が得意になる本]は麗澤大学のこれまた国語入試で使われたことを知り、なんで数学の本なのに?という不思議な心境になりました。数学と名が付く本も文系人間にも勉強になるものです。

(大地/2008-03-10)
考えさせられる本 ||||||||||||||||||
普段生活や学校などにおいて、時間的制限などがあり、
「合理化」=良いこと
と考えがちではないでしょうか。
初めて何かをしようとしたとき、
すんなり行くことの方が少ないですよね。
でも、次に同じことをするときは、
前の失敗を少しでも改善しようと努力する。
これも『試行錯誤』してますよね。
「大切なのは、考える事。」
改めて、それを教えてもらえました。
「そうだよな~。」と頷く事がたくさん載っています。 (/)
最近、大学生でも途中の数式を書かない学生がいたり、
「4x=6=2x=3」という訳の分からない数式を書く学生もいるのだとか。
子どもの頃から、数式をきちんと書くことを教えられてこなかったのだろう。
反復練習は絶対大事。必要不可欠だ。
でも、その反復練習している内容の意味もきちんと教えるべきだ。

難しいからと言う理由で「発展的内容」扱いされている内容は、
算数や数学が苦手な子にこそしっかりと教えるべきだというのは目からウロコ。
なぜなら、算数・数学が得意な子は、自分で勝手に読んで勉強できるからだ。
逆に苦手な子は、見てもわからない。きちんと教えてもらって初めてわかる。

ゆとり教育で、「2桁×2桁」のひっ算だけ教えればいいというのは暴論だ。
法則を知るためには最低でも、n=3(つまり3桁のかけ算)を
考えなければいけない。

教育問題から、数学的な思考法まで、
難しい数式はない、優しく、易しい数学の入門書だ。 (改革屋さん/2006-12-24)
珍しくまともな新書 |||||||||||||||||||||
話し方、見せ方、など表面的なテクニックをさもすごそうに論じている新書が多い中、
本書は珍しくまともに思考法・説明力を提示しています。
思考力について学ぶのであれば、本書は手軽かつ重要なものといえます。 (meme/2006-05-05)
何が大切か |||||||||||||||||||||
初めて何かやろうとしたとき、
すんなり行かないことの方が多いですよね。
でも、次に同じ事をやろうとしたときに、
前の経験から、失敗を少しでも改善しようとします。
これも「試行錯誤」ですよね。
時間はかかっても、自分であれこれ考えながら、
やったことは記憶に残る。
「大切なのは、考えること。」
それを改めて教えてもらいました。
いろいろ考えさせられる本でした。 (Pt/2008-04-27)
・著者の主張を一言でまとめると「今、日本人に求められている最も重要な能力は、「粘り強く考える」ことと「論理的にきちんと説明する」ことである。従って、その両者を総合した「証明力」を育む教育が軽視されている現状を一日も早く改めなければならない。」
全くその通りだと思います。
・私は理系の工学部の院卒であるので、ポイントのほぼ全ては既知でした。
・しかし、私には以下の3つの発見がありました。
 −1.インドの算数・数学教育が日本を遙かに上回っていること
   (=私自身はインドのカリキュラムの中身については知りませんでした)
 −2.ゆとり教育に繋がった数学軽視の流れの歴史的経緯
 −3.記憶が曖昧になっていることの復習
   (たまに復習すると使っていなかった脳の一部が活性されるような印象)
・1.インドの数学のカリキュラム
 既に90年代の半ばからIT技術評論家の間ではポピュラーだったようだが、「英語を使えることや賃金面での優位性もさることながら、数学特に証明教育で鍛えた問題解決能力と論理力が優れている」と。
 証明に力を入れている一例でいうと、インド国立工科大学(IIT)の入試問題(例として2000年度)は16問の全問が証明問題である。
 また内容のレベルも上で、インドでは中学三年生で対数を、高校では(日本では一切教えていない)微分方程式や3×3の行列があり、統計の部分ではポアソン分布も丁寧に説明されていると。(日本では正規分布に触れるのが精一杯で、なおかつその箇所は教科書の一番最後部であるので軽く触れてお茶を濁す高校がほとんどだ(った。))
・2.90年代前半に言われていたこと
 −数学は単なる計算技術であるから、計算機が発達した現在はやる必要がない
 −数学は理工系学問の基礎だから文型人間や実社会では無用 と言われており1994年に数学教育の危機を訴えるシンポジウム以降、90年後半にデリバティブ取引で日本の金融機関が悉く、外資にやられた結果の背景には数学力があるという認識が追い風になって少し風向きが変わった と分析している。
・3.一例でいうと対数についての記述。「人間の感覚は、与えられた刺激の変化に対してその対数の変化としてしか感じない。」ウェバー・フェヒーナの法則=実際には100倍の刺激には2倍程度、1000倍の刺激には3倍程度しか感じないと。
(/)
数学の考え方が、とても分かりやすく楽しく書かれていました。
数学はとっつきにくいものだと思っている方に、是非読んでもらいたい一冊です。
数学に対する意識が変わるのではないでしょうか。
私は、大学で数学を専攻している者ですが、
数学がますます面白いものだと認識することができました。
何かを学ぶ上で、答えを出すことも大切ですが、考え抜くところに意義があると
いう事にも納得でした。
一つ一つの項目がとても興味深いので、没頭して一気に読んでしまったという感じで
す。
数式が無い所も、読みやすくて良かったです。 (/)
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