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わたしを離さないで
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ASIN:4152087196
早川書房(2006-04-22)
カズオ イシグロ
売上順位:25824
¥ 1,890(中古:¥ 377)

レビュー総評点:325総評点300以上の注目商品
静かだが揺るぎない感情の交錯 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「事態の全貌が明らかになった時、読者は血も凍るような恐怖感を覚えることになる。魂の奥底にまで届くような衝撃がある」。脳科学者の茂木健一郎は、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』の書評でこのように書きました。あらすじに注目した書評としては、あながち的外れでもないのでしょうが、私個人がこの作品に抱いた印象は大きく異なります。
運命を強制された人々の心の中にあっても、静かでも途絶えることのない感情の動き、それらをイシグロならではの抑制された文体で静謐に描き出した作品。私はそのような印象を受けました。三人の主人公、キャシー、ルース、トミーが共に過ごしたヘールシャムという施設、自らの手で選び取ることのできない運命、これらはあくまで舞台背景であって、この作品の本質を成すものではないように思われます。
他者の手で強いられた運命の中においてさえ、三人の心の内では、喜び、怒り、悲しみ、あらゆる感情が揺れ動きます。それは、三滴の雫が静かな水面に発生させた同心円の波が広がり、交錯して増幅し、すれ違い、そして去っていく様子が想起されます。
海辺の町クローマ(イングランドのLost Corner:遺失物置き場)は、この作品において極めて重要な土地ではないでしょうか。トミーがキャシーのために”Never Let Me Go”が収録されたカセットを探す町、ルースが自らの母親を探す町、ヘールシャムで育った者達が異なる未来を探す町。そこには何も見つからないかもしれない、私達の運命は既に決定されているのだから、それでもそこを訪れない訳にはいかない。
この作品でのイシグロは、これまでの執筆活動の頂点に達したように見受けられます。今後彼は、技術的にも内容のうえでも新しい試みを始めることになるのでしょうか。不安と共に期待をもって待ちたいと思います。 (Yaginuma/2007-07-21)
衝撃☆ |||||||||||||||||
どこかミステリアスに描かれていて、読むに連れてこの小説の中の世界が段々と見えてくるようになっています。
それは私達の住む世界と異なる世界ですが、同時にその世界は私達の世界に重ねられるべきものであり、登場人物達は私達と同じなんだと思いました。SF的でありながらも、登場人物達の姿は何よりも現実感を持って訴えかけてきます。そこから私達の何気ない日常に繋がるメッセージが透けて見えるような気がしました。これは登場人物達が、(極端に言えば私達と同じように)限られていて、抜け出せない現実があり、でもその中に何かを見出そうとしているからこそではないでしょうか。

そしてこの小説を支えるひとつに文章の良さあると思います。描写や洞察力も素晴らしいのです。その繊細かつ静かな語り口で綴られるエピソード群は、確かな生を感じる事ができ、引き込まれます。特にラストシーンにかけてのそれは本当に、本当に痛切なるもので、思わず言葉を失ってしまいました。心の一番奥で渦巻くような気持ちです。大袈裟ではなく、読み終わってもずっと胸がヒリヒリしたまま、何も出来ないでいたほどでした。
今思い出しても、自分が何かを感じてるのがよくわかります。凄く「残る」作品です。
読んでよかったです。 (ファミリーアフェア/2007-05-09)
SF的な形式をとりながら、人間のエゴイズムについて掘りさげた小説だなあと、私は思いました。『日の名残り』にも共通する、知り合いの思い出話を聞くような文章で、すんなり読み進んでいけますが、数ページでその異常さに気づき、それは章がひとつ進むごとに増していきます。「人間」でありながら人間ではないキャシーHたちと一緒に、彼らを生み出した「人間」の善良さに期待していくと・・。人間の善良さとはいったい何なのか。実は私たちも形を変えた「提供者」ではないのか。読み終わったあとも、読者にいろいろ考えさせる力を持った作品です。実は私も読み終わった夜、心がざわざわして、よく眠れませんでした。カズオ・イシグロの作品のなかでも、最も読みやすく、また、翻訳の土屋政雄さんの日本語が、私はとても好きでした。 (よむよむ/2006-11-22)
A recommended read |||||||||||
NEVER LET ME GO stands out as one of the most remarkable books I have ever read. It is difficult to say whether this book is sci-fi or plain fiction. Whatever, it is unique in the sense that it would satisfies any high-minded reader who is versed with present day developments and what could happen in the future. The lesson learnt is that the meaning of life is best achieved when we find joy, joy which comes from the soul. That joy from the soul surpasses blind faith, unsubstantiated materialism and an idealistic purpose of life that is based on discrimination. Ishiguro successfully weaved this story through characters that we can easily relate to, characters who in their pathetic states mirror man at the height of his false sense of achievement. In its portrayal of the futility of life, I got reminded of DISCIPLES OF FORTUNE, FRANKENSTEIN, UNCONSOLED. This is a recommended read for a deep-thinking person. (YU-YU/2005-05-05)
読み終わるのが勿体無いような、何時までも浸っていたくなるような、抑圧の効いた、最初から最後までまったく世界観がぶれない文体に脱帽です。この作品を読んでみて、昨今の日本の小説家の表現があまりにも直接的で強いかに気づかされました。淡々と、抑えた表現の中に誠実に書き綴られていく人間関係の厄介さ、成長していくことの辛さ、そして、抗えない運命の残酷さ。小説の王道をいくテーマと、現代(もしくは近未来)が抱えるテーマが見事に共存した傑作です。久しぶりに小説らしい小説に出会えました。そして、柴田元幸氏氏の解説がまた、短いながらも大変素晴らしいです。 (/2007-01-30)
友人がこの本の話をしてくれて、実際にストーリーを知ってしまったのですが、それでもなお、読んでみたくて買いました。つまり、ミステリの種明かしをされてもなお、どうしても読みたいと思ってしまったのです。
この作家の本は初めて読みましたが、翻訳も素晴らしいのでしょうか、睡眠時間を削っても最後まで読みたくて、泣きながら夜更かししてしまいました。主人公は31歳の女性で、昔の回想を淡々と述べていきます。でも、子供時代、思春期、青春時代、その描写のこまかいことといったら、男性が書いているなんて思えないくらい、繊細でした(失礼!)。この小説の世界を見事に構築したカズオ・イシグロに、私は敬服しました。素晴らしい想像力です。他の作品もぜひ読みたいと思いました。いままでにない、読後感でした。 (べっこう猫/2006-09-04)
過酷な運命から逃げようとせず、受け入れながら生きる主人公たちの生き方が、
なぜか不自然には感じられません。
自分では動かしようのない、既成の制度や、階級のなかでとらわれて生きている私たち自身、
本当の意味で自由な存在ではないからかもしれません。

とはいえ、最後に全てを受け入れるように見えるキャシーの生き方が、
決して受動的な消極的なものではないところにこの小説のすごさがあります。
あきらめるのではなく、限りある生を、動かしがたい条件の下であっても、
彼らが丁寧に愛しみながら自己を賭けて生きるさまが描かれているからでしょうか。
 そこにこの静謐で穏やかな小説のもつ、凄みのようなものがあるように思えます。
 
 最後の場面は、何度読み返しても、苦しいほどの感動を覚えます。
希望がなければ生きられないと思いがちですが、あらゆる希望を奪われたとしても、
ひょっとしたら幸福な記憶だけでも人は自分を支えつづけることができるのではないか、と考えさせられました。 (little bird/2008-08-05)
「日の名残り」を読まれたことのある方は、ほぼ同じテイストをイメージしていただいて間違いないと思います。
ある限定された特殊な社会で暮らす主人公が、幼年期、思春期、青年期に渡るエピソードを、繊細な描写と美しい文章で語ってゆく物語です。「日の名残り」では大英帝国の執事、今回は女性と主人公は違いますが、あたかも作者に主人公が憑依したかのような、リアルに語りきる作者の力量には、同じように舌を巻かされました。

ストーリーの後半でサプライズがあるところも同じです。似たような設定の話は世に多いようですが、カズオ・イシグロの場合、主人公たちは能動的に自らの住む世界を変えようとはしません。そうした類の活劇ドラマに展開させず、あくまで限定された特殊な社会の中で、静かな日常のドラマを繋いで行くことによって、独自の大きな物語世界を作り上げています。その意味では、この特殊な設定はカズオ・イシグロ的世界を構築するためのまさに「設定」に過ぎず、作品のテーマではないとさえ思えました。
カズオ・イシグロの作り上げるこの緻密な箱庭のような世界は、一見特殊なようでいて、逆にわれわれ一般人の平凡な人生のメタファーなのかもしれません。平凡で限定されているからこそ、いとおしい。執事や「提供者」の人生を借りて、それを作者は繰り返し表現している気がするのです。

繊細で、叙情にあふれる丁寧な文体。あまりに謙虚な語り口に、「日の名残り」の執事口調を思わせる、一種のあざとさを感じるところもありますが、それを補って余りある清冽な描写が胸を打ちます。特に最後のシーンは美しく、この一ページのためにこの長い物語が語られたのだ、と思えるほどでした。
(pine_l/2006-10-11)
とても特異な道具立てで書かれている作品です。その特異さがある種の警告と受け止められるかもしれません。しかし、根底にあるのは生きることの切なさに対する作者の暖かい理解であると思います。きめ細かい愛情に満ちた良書。 (あめんぼう/2008-04-08)
何もはっきりとは書かれていない。
秘密が明かされて行くのも、小出しにされるというよりも、
読んでいる自分たちさえ最初から知っていて暗黙の了解の上に会話をしているような気になる。
公然の秘密を共有しているような感覚。

曖昧な状況とは裏腹に、子ども時代からの心模様は過剰に思えるほど詳細で執拗だ。
始めから役割が決まっているとしても、逆らえない運命だとしても、
それが降り掛かっている人物にだって「ふつうの」感情があることを示しているのだろうか。
地に足がついていないというか、足をつけるべき地面がないような感じがするのは、
登場人物たちの不確かな境遇ゆえだろうか。

話したところでどうにも抗えないと分かってはいるけれども、
もしかしたらという気持ちを捨て切れない、あの妙な期待感を覚える。
訥々とした語り口からは想像もできないほど先を急ぎたくなる物語で、
キャシーたちの「ふつうの」しあわせを願わずにはいられなくなった。
それが叶わないことだと知っても。 (ヤヤー/2006-06-22)
静かに震えつづける心 ||||||||||||||||||
素晴らしい、ほんとうに素晴らしい小説でした。
丁寧に、細心の注意を払われて選ばれた言葉のひとつひとつが、
登場人物と彼らを取り巻く風景をいきいきと精緻に構築します。
読んでいる途中、何度も本を閉じ、小説世界の風景や心象に目をこらし、耳をすませました。その反面、はやく続きを読みたくてたまらなくなりました。
読み終えた今、まだ心が震えています。
その震えには、痛みもあるのですが、それでもそっと確かめたくなるような、胸に手をあてて心臓の鼓動を感じるような、確かでかけがえのない震えです。
今世界で起きていることに、あらためて目をむけたくなり、
同時に自分自身にいろいろ問いかけたくなる、貴重な小説です。
カズオ・イシグロ氏の小説を読み続けられる幸福に感謝します。
原文で読むことにも挑戦したいです。

(blanc/2006-04-30)
日本生まれのイギリス人作家、
カズオ・イシグロ氏の長編第六作である。

氏は長編第三作『日の名残り』でブッカー賞を受賞以降も、
手にした評価に安住することなく、
一作一作その作風を変えてきており、
本作も前作『わたしたちが孤児だったころ』とは
がらりと違う手触りの作品となっている。

本作の設定についてはその取り扱いがこなれているわけではなく、
純文学系の作家が手を出す領域ではないという批判もあろう。
しかしその奇妙な設定の上に築きあげられた、
触れれば壊れてしまいそうに繊細な人間関係と
箱庭の中のようなキラキラとした過去の風景は
この上なく珠玉のものであり、
エンターテイメント系の作家には描けぬ
一種完成された心象風景であろう。 (アジアの息吹/2006-04-27)
この物語に出会えたことに感謝 ||||||||||||||||||||||||||||
 よくある小中学校学園物として、物語は始まる。誠実に、丹念に、物語はつむがれる。だが、「提供」という不可思議な(しかしある予感を持たせる)概念が、次第に物語りに影を落とす。やがて、「ポシプル」という言葉が、予感めいた影に実態を与える。そして、とうとう「クローン」という、身もふたもない設定が明らかになる。
 でも、物語は急がない。ヘールシャムの提供者ジュニアたちが、自然に認識していく速度にあわせて、描写されていく。作者の素晴らしい計算。心憎いまでの抑制。イシグロの並々ならぬ力量を感じる。
 ルースは、よくいる女王様タイプのコンパ主役。いじめられっ子だったトミーも、生々しいキャラクター。だから、この物語の世界は、もうすでに主題を語っている。彼らは、腎臓や肝臓や心臓や網膜の単なる集合体ではない。数ページ読んだだけで、それは明らかだ。
 理屈ではない。この世界に理屈を言っても仕方ない。この世界はそこに存在する。私達は、今や苦役を終えて「提供者」となっていくキャシーに、ただ涙を流すだけだ。
 土屋政雄氏の邦訳はすばらしい。そもそも日本語で書かれたのではないかと思うような自然な語り口に仕上がっている。 (ドクトルg/2006-12-14)
設定が特殊ですが、この本に表現されているものはなぜか普遍的なものとして感じられました。
少年時代の思い出は大人になってその輝きが脆いものの上にあったと知ったときでも、それゆえにさらに輝かしく思えるものです。
思春期に夢中になっていたものや、悩んでいた人間関係を思い出し。何でこんなものに?とくすぐったくなる感じ。
現実を知っていたはずなのに、理解していなかったと気づく瞬間。
たとえば戦争や災害、病に直面したときの人間のある種のあっけらかんとした強さ。
彼らは我々の人生のある側面の象徴なのかもしれません。

死、生、倫理、こうしたテーマを宗教的色彩なく描くことは、死後に何も残らないことを知っている現代の我々にとっての生の価値を描くことなのでしょう。 (staro/2008-04-10)
最初の印象は、、 |||||||||||||
いかにも現代的な設定だと感じた。クローン技術などが急速に発展してきた、現代社会への警句とうけとるこもできると思う。でも僕はその設定自体はこの話の主題ではないと思う。人は誰でも自分の意思とは無関係にいろいろことが限定されてしまっている。例えば、才能、容姿、財産などだ。物語のなかでも主人公たちは、僕たちの想像をこえて、悲劇的に限定されてしまっている。でもその不条理のなかでも、彼らは生きていかなければならない。これは人間だれしもに当てはまることではないだろうか?これが僕がこの本から感じたことだ。いろんな読み方ができる、考えさせてくれる本だった。 (nori/2006-09-08)
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w:10 h:15 365page
日の名残り (ハヤカワepi文庫)
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ASIN:4151200037
早川書房(2001-05)
原著:Kazuo Ishiguro翻訳:土屋 政雄カズオ イシグロ
売上順位:2894
¥ 798(中古:¥ 273)

レビュー総評点:288
落ち着いた叙情と抑制といえばいいのか、作品にひたひたと心が吸い込まれてます。 映画のナレーションのように、文章一つ一つが 穏やかな男性の声で再現されていくような感じ。 すべての英国的なるもの、そして いかにも英国的な婉曲な言い回しを堪能したいなら ぜひこれを。 (RANZAN/2007-05-23)
日の名残り |||||||||||||

国家が、初老のオヤジが、思い出が・・・・
暮れていくまえの、輝きの記憶。
騒がないで、黙っていないで、忘れないで。

品格国家イギリスの礼節は冷淡なる現実をも
美しく包み込んでしまう。
そうして、日本にも、この小説の主人公たちが
かつて確かにいたし、今もいる。

英文のレベルは大そう高く、どちらかといえば
難文。読みがいあります、少し・・・泣けます。 (reopen/2007-04-06)
上質の感動 |||||||||||||
ふだん、テンポ感のある大衆的な小説を読み慣れていると、
最初は単調な展開に戸惑いを感じた。英国貴族に仕える執事
の物語なんて、現実味に乏しく想像力が及ばなかった。
どうして評価が軒並み高いのだろうか、と、不思
議でもあったのだけれど、ページを追うごとに胸にじんわり
主人公の切なさが染み込んでくる。

人生の夕暮れ時に近づいて、誰でも悔いることや、また、か
なわなかった夢に、苦い感情を抱くことはあるのだろう。
ちょっとした歯車の狂い、ボタンの掛け違え、、、
及びもしない過去を振り返り、あったかもしれない別の人生
を想像してみる。

後半部分、特に、主人公が思いがけないアクシデントがきっ
かけになり出会う人々、そのあたりからの心理描写は秀逸!
最後まで引き込まれるように読んで、深い感銘を受けた。

タイトルの意味は、過ぎ去った一日を振り返ってそのとき目
に入るもろもろのこと、と、訳者のあとがきにある。最後に
夕暮れを比喩にしたメッセージ的な台詞が出てくるが、タイ
トルと微妙に異なる。
是非、あとがきもしっかり読んで欲しい。

あとがきにもあるように、まさに上質の感動を得られる作品
だった。 (lautomnedeja/2004-04-17)
 熟練の域に達した画家は、鉛筆のような素朴な道具を使い、ただ影の部分だけを緻密に描くことにより、壮大な構造物や輝ける風景を浮かび上がらせることができる。Ishiguro氏は、小説の世界において、同様の手法に成功していると思う。
 ダーリントンハウスにおける歴史的な会合の数々。それを黒子のごとく目立たず、ただ主人と客人をひたすらもてなすバトラーの立場から描いているがゆえに、なおさらその情景が華やかに浮かび上がる。ミス ケントンへの秘められた思いも、忠実に当時を回想し、ひたすらスティーブン自身の職務との関連づけにおいてのみ描き出しているがゆえに、直裁な表現を尽くすより一層その繊細でナイーブな心の揺らぎが伝わってくる。
 イギリス英語のよさである控えめで上品な言い回しの数々、スティーブンが時に披露するdignityに関する哲学、心に残るDAY FOUR-AFTERNOON。私は長く読みつがれる名作であると思います。 (sleuthhound/2003-07-14)
■ 1956 年の英国。Darlington Hall で三十年にわたり執事を務めてきた Stevens は、6 日間の休暇を与えられ、フォードを駆って何十年ぶりかのの旅に出た。West Country への旅、そして過去への旅。二度の対戦を経て移ろい行く英国の精神世界を背景に、人間の尊厳とは何か、という疑問の答えを探りつづける年老いた男が、旅の最後に得た答えは何だったのか?静かにやさしく心の空洞を満たす感動作。英国ブッカー賞受賞作。
ハリウッド映画やサスペンスのような激しい感情などなにひとつ描かれない、いわば「地味な」作品。なのにその穏やかな感情のうねをかき分ける筆の細やかさといったら! この作者は光の粒子のひとつひとつまでいとおしげに描いている、といったら大げさにすぎるだろうか?
最後の数ページ、あのひとことにはおもわず涙がこぼれた。人生の晩年にさしかかったら、ぜひもう一度読んでみたい作品だ。 (/)
これぞイギリス!? ||||||||||||||||||||
話題作だったことは知っていましたが、夏にイギリス旅行をしたときに、添乗員さんが何かの話でふれていたのがきっかけで、気になって読んでみました。淡々とした「執事」の語り。全編が、ある「執事」の目で見たもの、「執事」の耳で聞いたもの、そして、感じ、考えたことでつづられており、それが最後まで、読み手を惹きつけたまま終わっていきます。効果的に使われるイギリスの牧歌的な風景も、旅行でバスの車窓から見ていたものと重なって、より楽しませてもらえました。 (celialone/2001-07-28)
格調高いイシグロの最高傑作 |||||||||||||||||||||||||
すでに古典的存在となりつつあると思われる、ブッカー賞受賞の名作。イシグロの作品を一つ読むなら、絶対にこれをお勧めする。これ以上の完成度は、他の作品では残念ながら望めないと思われる。1930年代のイギリス。善意で行動を起こしていたのに、結果的には知らずに悪いものを助けてしまった貴族に仕えた執事の回想録。「自分ができる限りのことをして、自分より偉大なもののために仕えていると信じていたが、実際は自分のしたことはよかったのか?もしそうでなかったとすれば、自分の人生は無駄だったのか?」という問いが、全体を覆っている。感情を抑えた語り口が、かえって主人公のスティーブンスの思いを鮮やかに浮き上がらせているような氣がする。文章にもストーリー全体の流れにも無駄なところが全くない。小説はこうあるべきというそのままの小説。近年の書物にはなかなか見つけられない、dignityを感じさせる格調高い名作。何度も読みたくなる本だ。 (ベック/2004-10-08)
郷愁をまねく昔日の日々。もうイギリス本国でも絶えて久しい、本当の執事の姿が描かれています。慎ましさ、慇懃さ、そして誇り。人間としての美徳を体現するスティーブンスの姿は現代に生きるわたしの目から見ると、忍耐と抑圧ばかりの毎日みたいなのですが、しかしそこには確かに「品格」がありました。スティーブンスとケントンの歯がゆい関係も目を離せませんし、全編に漂うウイットにとんだユーモラスな雰囲気もいい感じです。 (駱駝楽団[早寝早起き式]/2006-01-21)
長らく先送りにしていたことが悔やまれるほど、本当に素晴らしい作品でした。自分のしている仕事への誇り、または仕えている主人への恭順、畏敬の念、などと単純に言ってしまえるものでもないとは思うのですが、そうした内側から人を支えるものの不確かさや、それが不確かであるがゆえのおかしみや悲しさ、といったものが、読み進むにつれて心の芯に近い場所をひたひた満たしていくような感じがしました。物語はゆっくりわずかずつ流れ、その傾斜は読後感として後からくるので、安心して(というのも変ですが)一行一行、一語一語を噛みしめて読むことができました。また、わたしにはそうする価値の十分にある一語一語に思えました。訳文もとってもいいムードで、しばらく間を置いてからぜひまた読みたい一冊です。 (Grace/2002-07-07)
スティーブンスはもう30年以上も大邸宅で働くベテランの執事。屋敷の運営が思うようにいかず、使用人を増員しようと考えたスティーブンスに手紙が届く。それは、以前同じ屋敷で働いていた女中頭、ミス・ケントンからの手紙。スティーブンスはかつて彼女に淡い恋心抱いていたのだ。スティーブンスはミス・ケントンが再び屋敷で働く気があるかを尋ねるために、フォード車でドライヴ旅行に出かける。…
この作品を書いたイシグロ氏はもともと日本生まれ。そのことを考えると、どこか頑固で身なりがびしっとしている典型的な英国紳士であるスティーブンスと礼儀や伝統を重んじる日本人には似通ったところがある。それだけに感情を抑えつけ、ただひたすら主人に仕えてきたスティーブンスが自分の半生を回顧して涙を流す場面が、嫌味なく胸に迫る描かれ方をされているように思った。
フォード車というのもイギリスらしいし、礼儀正しいスティーブンスが町の人々に「紳士」と思われたり、いかにも古き良きイギリスという雰囲気が作品のそこら中に漂っている。 (/)
古き良き日のイギリス |||||||||||||||||||
伝統的なイギリスの名家(貴族、事業家など)がまだイギリス政治・外交の
中心であった時代(1920〜50頃が中心)とその落日を史実に照らし
合わせながら、ある貴族の執事の視点から描き直した物語です。
執事は主人と執務に余りに忠実で滑稽なほどです。いつの時にも執事は
自分の存在意義や幸福の定義に照らし、考えを肯定しながら前進していくの
ですが、それらに多くの間違いが含まれていたことをクライマックスの
夕暮れ時に悟る執事が哀れでなりません。
社会的な仕組みに重要なパラダイムが起こる際には必ず旧世代と新世代の
せめぎ合いが発生するわけですが、そこで旧世代の考え方にしがみついた
者の顛末はいつも悲劇的であり、新世代から見れば滑稽と捉えられても
仕方の無いこともあると思います。
しかしながら、本書の救いは絶望に打ちのめされた執事が、それでも旧式の
スタイルに希望を見出すところで締めくくられており、一縷の望みを託せる
ところでしょうか。
人生をも変えてしまう決定的な瞬間を人はどうして見落としてしまうのか。
深く私自身に問いかけてくるとともに、ほろ苦い心象を残した是非一読を
お勧めしたい書です。 (daphnetin/2006-08-19)
現代の古典 |||||||
現代英文学の名著である。哀愁漂う雰囲気とどことない滑稽さが巧みに融合し、独特のイメージを構築している。主人公の視点を通して語られる登場人物の巧妙かつ精緻な心理描写は、雄弁だが同時に心の琴線に触れるものがある。そして、そのような描写を可能ならしめているのが筆舌に尽くし難き文体の華麗さである。美文調の多いカズオ・イシグロの作品の中でも、本作は一際文体の絢爛さが際立っており、一般的な英語学習者が典型的に躓く類の、変則的でありながらしかし伝統の重みを感じさせる構文を畳み掛けるように次から次へと用いて読者を魅了する。英語を文学的に味わいたい人にとってはこれ以上ないマテリアルとなろう。 (g-head/2006-06-22)
4年ぶりに、また、読んでみました。舞台はイギリス、主人公は執事なんですが、なぜか、日本の田舎で育った庶民の私と精神的にシンクロする部分が多いんです。主人公の固さや不器用さ、筋の入り方や優しさが心で素直に感じられる。そして、その舞台が、優しい色で目の前に奥行きをもってイメージされる。これは、イシグロマジックと言わせて頂きましょう。ただ、この作品をめいっぱい味わうには、読む側の心のゆとりがキーとなるかもしれません。 (tigercat/2006-01-20)
読んでいる最中、作者が
日本生まれの日本人であるということを思い出し、驚きました。
まるで流れるような、美しい英語で書かれているこの小説。
はたして日本人がこんなにも自在に英語を操る事が出来るのかと思い、
特にプロローグの文章には感動しました。
話は世界大戦前後にイギリスのお屋敷に使えていた執事“Stevens”の
彼の仕事への哲学と、その思い出を旅の最中に語る回想の形をとっています。
ジャンルとしては一応“淡い恋物語”らしいのですが、
決してそれだけの小説ではありません。
その時代とその土地の濃厚な雰囲気がよく伝わってきます。
人間の描写もとてもよく出来ています。
いわゆる喜劇では全くないのですが、
人物のにじむような哀しさや暖かさ、その背中を感じる事が出来ます。 (ウォンバット/2005-09-24)
感動 |||||||
日本人の英文学作者と聞いて、特別な思い入れで読みました。一言でいって感動。豪邸のイギリス人の執事という、私たちとは、全く違った設定なのですが、こういうことって、人生にはよくあるよなあ、これが人生だよなあ、と深く深く、共感させられるのが、この小説のとてもよくできたところです。このイギリス人執事は、滑稽ですらあるのですが、気品と美しさが感じられるのは、私たち日本人の美的感覚にとてもよくあっているように思います。最後は、切なくて胸が締め付けられます。久々に深い感動のあった本でした。最初は、堅苦しいのですが、読み進めるうちに面白くて引き込まれていきました。是非多くの人に読んでもらいたいと思います。 (フィラデルフィアン/2003-09-23)
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w:11 h:15 537page
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)
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ASIN:4151200347
早川書房(2006-03)
原著:Kazuo Ishiguro翻訳:入江 真佐子カズオ イシグロ
売上順位:21930
¥ 987(中古:¥ 526)

レビュー総評点:86
喪失感と希望 ||||||||||||||
「日の名残り」にしても本書にしても、イシグロの作品を読むと、「喪失感」という言葉が浮かんできます。私達は生きている間にいろいろなものを失っていく。時にはかけがえのない大切なものを、自分がそうとは知らぬ間になくしていき、後から振り返ってそれに気づくのだが、そのときはもう全てが終わっている。本書を読むとそんなメッセージが伝わるように思います。
物語の前半は比較的ゆっくりと登場人物のあり方が描かれているのに対して、後半は下手すると荒唐無稽な展開が繰り広げられ、驚きと不安を読者に持たせ、一気に切ない大団円を迎えます。
喪失そのものは哀しく切ないのですが、しかし読後感は決して悲愴感だけではありません。失うことを現実としてあるがまま受け入れ、はじめてそこから何かが始められる、そんなそこはかとない希望を持たせてくれる、素敵な小説でした。 (benkeiu/2004-07-31)
本書の主人公バンクスは、上海育ちの英国人であり、
彼が10歳の時に両親が相次いで失踪した結果、
英国に送られて教育を受けたという、かすかにイシグロ本人の
経歴を思わせるような人物設定になっている。

内容のほうも、これまでの純文学路線とは違い、
探偵小説のパロディめいたエンタメ寄りのもので、
前半では、上海での少年時代の回想を差し挟みつつ、
バンクスが英国のスノッブな社交界の中で、
探偵としての名声を築いていく過程が描かれ、
後半はいよいよ、第二次上海事変から日中全面戦争へと至る
渦中の「魔都」上海へと、バンクスが乗り込むことになる。

こう書くと、傑作たることはほとんど約束されているようにも思えるが、
読み終わって、そう呼ぶには何かが欠けていると感じた。
ひとつには、バンクスの養女となる孤児のジェニファーが、
物語の流れにうまく組み込まれていないように思えることが
挙げられるかもしれない。彼女が登場する場面は、主要な筋からは
半ば独立しているため、単に孤児をもうひとり登場させる必要上、
都合よく導入された人物ではないかという気がしてしまうのだ。

また、舞台が上海に移った途端、急速に現実感が乏しくなり
なぜか皆がバンクス一人に事態の解決を要求するという、
「セカイ系」の展開に突入していくのだが、ここでの上海の描き方が
むしろ類型的なものに留められていることにも、
(イシグロ本人によれば意図的なものらしいが)
微妙な物足りなさを覚えた。名探偵であるはずのバンクスが、
現実にはあり得ない仮定を信じ込むに至る経緯が、
いささか簡単に描かれ過ぎているようでもあるし、
結末近くで明かされる真相の重さとも、
もうひとつうまく釣り合っていないような気がする。

最後に、これは翻訳の問題になるが、
原文でアキラが話す英語は、be動詞や3単現のsが
ほぼ完全に省略された舌足らずのものであり、
邦訳はそこを流暢に訳し過ぎていると思う。 (デルスー/2007-09-15)
熟語の宝庫 |||||||||||||
 斎藤兆史著『英語達人塾』の中で、そのすぐれた英文であることを知り、自分も読んだ次第。自分はあまり英語が出来るわけではありません。ですから、一文また一文のなかに、辞書の例文よりも最適な英文がちりばめられているのを見ると、辞書を引いてノートを作ることが、とても楽しくなってきます(もっとも英語が出来る人なんかは、小説を読むとき、まず辞書はお引きにならないでしょが)。 加えて、オーディオのJohn Leeが読む読み方・声もいい。併せて『わたしたちが…』の翻訳も意訳なく逐語訳なく、いい。余談ですが弊塾では、原書を教材として、大学院受験生に使用しています。すでに世に多くの英語教材あれど、本書およびその付属書の完璧なこと、言うに及ばない気がします。未読の方で、英語力をつけたい方、それと、辞書を引いてノートを作ることを苦に思わない人、ぜひお読み下さい。 (中村塾zen/2005-01-03)
イシグロ作品を読んだのはこれが4作目。The Unconsoled を除いて発表された順に読んできた。最初の2作品(A Pale View of Hills と An Artist of the Floating World)はしみじみとした趣で、こうした日本人の心情をイギリス市民となったイシグロはどのようにしてつかんだのかと不思議に思われた。
3作目The Remains of the Day は古き良き時代のイギリスの伝統的な世界と当時の世界情勢を描いていて興味深かった。
さて、このWhen We Were Orpahns はそれまでの作品に比べると、かなり波乱にもとんでいて物語性があり、大戦間の上海を舞台に、当時の状況も生き生きと描かれていて読み進むにつれて引きこまれていった。動乱の世界状況を背景にあまりにも明白なフィクションが十分に楽しめる。フィクションだと承知していながら結末の部分には涙なしには読めなかった。プロットが複雑という評もあったが、結局は非常にわかりやすい設定だと思う。唯一、幼なじみのアキラに関して最後の部分の主人公の心情の描き方が不十分で理解に苦しんだ。
なおイシグロの英語は全作品を通してとても読みやすく、この点も私が彼の作品を好む所以である。 (takako/2003-06-21)
上品で繊細な文章(翻訳者の力量にも敬意)、興味深いストーリーそのものに惹きこまれる好作品ながら、読後感は非常に奇妙なものでした。本作品には強烈なメッセージがあると感じたせいだと思います。訳者あとがきによると著者はあるインタビューで「話し手の言うことをすべて信じないように。語られていない部分、言葉の裏にある部分を読取ってほしい」と語ったそうです。
主人公が世界、社会の悪のカラクリを直視した後、彼に残った大切なものは、悪と闘い、社会を守るという夢ではなく、惜しみない愛を注いできた養女と「故郷」でした。 人間が生きていく上で、夢や希望はエネルギーの源となっていると思います。しかし、その夢や希望の源流は、幼少期の美しい思い出や故郷といった「愛された思い出」であり、人生の最後に残されるものは「愛し、愛された思い出」である、というのが著者から私に送られたメッセージの様に思います。 探偵小説としての楽しみもあるので、内容に詳しく触れることは控えますが、寂しくもあり、しかし、日常において大切なものを考えさせてくれる人間愛が描かれた好作品です。 (/)
文体が素晴らしい |||||||||||||
イシグロの作品はまともには本作しか読んだことがないのですが、彼の文章の美しさには感嘆させられます。しかも語彙が受験レベルをさほど逸脱していないのにもかかわらず、十分骨のある内容を格調のある文法を駆使して明確に伝えきっているという点は特に驚きです。内容もさることながら、英語学習の一環として読んでもいい作品だと思いました。ちなみに書店では本作に『TOEIC860点レベル』と書いたシールが張られていたりしますが、これは
『この本をスラスラと正確に読める人ならTOEICを受けても860点くらいは取れるでしょう』という意味であって、逆に『TOEICで860点あればこの本をスラスラと読めるでしょう』という意味ではないと考えるのが賢明だと思います。 (g-head/2005-02-02)
「英国」作家カズオ・イシグロ五番目の長編である。
今までのイシグロの作品と同じく、語り手の独白に近い「語り」により
ストーリーが淡々と語られていく。
しかし気を付けなければならない点は、
イシグロの語り手は決して真実を語っていないということだ。
起きたこと、台詞、そして語り手の心情でさえも
語り手の恣意によって歪められ、都合の良いように隠匿される。
つまりイシグロの小説世界は寄る辺無い世界なのだ。
足許が安定していないだけに、読み手の位置も、
他の登場人物との距離感も判然とはしない。
普通の小説に慣れた感覚で読み進めると、かなり気分の悪い思いをするはずだ。
本書の舞台は上海租界。
中国大陸にありながら、中国でも欧米でもない魔都を舞台に選んだということは
ありきたりではあるが、そのイシグロの小説に流れる浮遊感覚
を表現するには最適な舞台なのだろう。 (アジアの息吹/2003-12-13)
事実と真実 |||||||||
事実と真実は別の場所にあるものだ。
イシグロの構成力が、幻想的なまでのズレを見事にかさねあげ、世界を立体にしている。リアリズム、というのとはちょっと外れる確固たる世界。明かされない謎と明かされない命題の間を読者は滑らされる。
とても面白かった。 (ハイエナキャット/2004-12-02)
Ishiguro does it again! |||||||||||||
石黒ワールドに引き込まれて、一晩で読み切ってしまいました。もともとの石黒ファンの人はもちろん、まだ彼の作品を知らない人にもお勧めです。霞がかった英国社会と帝国主義時代の上海の世界の両方を経験できる本です。すべての謎は解けた瞬間は涙なしでは読めませんでした。是非皆さんも味わって下さい。 (いつかはポルシェ/2008-04-10)
「日の名残り」「浮世の画家」に続き、私にとってイシグロ氏3作目の小説ですが一番面白く読みました(前記2作品も好きですが)。主人公の独白を基本とし、各章の小見出しだけを追えば時間の流れに沿いつつ、途中回想や過去のエピソードをふんだんに交えることでその世界に引き込まれる点は3作品とも共通していました。しかし本作品はスケールの大きさで過去2作品の比でなく、そこに大きな魅力を感じました(まあ、この点は評価の分かれる点でしょうけど)。前記2作品では「あの人はその後どうなったんだろう、あの事はどういう意味があったんだろう、もう少し詳しく解説(謎解き?)してほしい」と思ったものでしたがこの作品を読むことで、「書き過ぎない」ことがイシグロ氏のスタイルではないかと考えるようになりました。つまり「タネ証し」と「読者の想像力を刺激し続ける」こととのバランスの取り方がこの人の真骨頂なのではないでしょうか。再読すれば、1回目では読み取れなかった“仕掛け”の発見や違った読み方ができそうなので、少し時間をおいて挑戦しようと思っています。 (/)
Opinion |||||||
Opinion: 斎藤兆史著『英語達人塾』の中で、そのすぐれた英文であることを知り、自分も読んだ次第。自分はあまり英語が出来るわけではありません。ですから、一文また一文のなかに、辞書の例文よりも最適な英文がちりばめられているのを見ると、辞書を引いてノートを作ることが、とても楽しくなってきます(もっとも英語が出来る人なんかは、小説を読むとき、まず辞書はお引きにならないでしょが)。 加えて、オーディオのJohn Leeが読む読み方・声もいい。併せて『わたしたちが…』の翻訳も意訳なく逐語訳なく、いい。余談ですが弊塾では、原書を教材として、大学院受験生に使用しています。すでに世に多くの英語教材あれど、本書およびその付属書の完璧なこと、言うに及ばない気がします。未読の方で、英語力をつけたい方、それと、辞書を引いてノートを作ることを苦に思わない人、ぜひお読み下さい。 Also worth a look is The Fates by Tino Georgiou, a truly memorable read.
(Lo Chow/2006-04-30)
冒険 |||||||||||
ポールオースターの「鍵のかかった部屋」がそうであるように、また村上春樹の「羊をめぐる冒険」がそうであるように、この作品もまた冒険小説なんだなと思う。
ただしそれはあくまでカズオイシグロ的なものに変貌している。
これまでの彼の作品は小綺麗で優雅な作品が続いたがこの作品で彼は自身の創作自体においても「冒険」をした。
この作品における著者の筆運びは勇ましく挑戦的で多少荒削りなやり方を試しているが、やはり同時に優雅でもある。
そしてそれがどうにもこうにも心地よい。
物語はある一つの点に向けて探偵小説的な要素を含みながら展開する。
一瞬めまいさえしそうな鮮烈で優美な文章の応酬が我々を襲う。 (とり/2005-04-01)
舞台は上海。最初に父が消え、次に母がいなくなった。そして少年は孤児になった。
少年は成長し、イギリスで高名な探偵になる。彼は再び上海を訪れ、両親を探し始める。
探偵小説の形式を得て、信頼できない語り手というイシグロ十八番の手法がさえまくる。
この小説はトリッキーで美しく、強烈なカタストロフを読者に与えてくれる。はっきりって、傑作だ。 (suwabe12/2004-10-20)
イギリスの売れっ子の探偵さんが、自分の母親を探しに中国にやって来て、そのどさくさの真っ只中をあっち行ったりこっち行ったりするというお話。カズオ・イシグロの新作は世界中のファンの待望だったのか、この本が出版された時にアジアの英語圏の各都市の書店で大きなポスターがたくさん貼り出され、店頭で山のように横積みされていたことを思い出します。
作品自体はそのファンの期待を裏切らない、これぞイシグロ・ワールドとも言うべき内容です。この作家の新しい文章が読めるというだけで十分にワクワクしながら読んだのですが、たっぷり満足させて貰いました。
ただ、最後は・・・? 私はイシグロの作品の中では他のものに軍配を上げさせて貰います。でも早く次が読みたいですね。 (郷田庄太郎/2003-10-29)
読み始めるとすぐに、ぐいぐいと小説の世界に引き込まれていく感覚が心地良い。1930年代のロンドンや上海を、実際に旅しているような気分に浸らせてくれる。両親の失踪の謎を解き明かしたあと、結末にいたるまでの数ページが珠玉。
文体も英語も読みやすいことも、またありがたい。 (みたちゃん/2001-12-11)
25件のレビューうち参考になった順で15件までを表示しています。
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充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)
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早川書房(2007-05)
翻訳:古賀林 幸カズオ イシグロ
売上順位:22398
¥ 1,470(中古:¥ 928)

レビュー総評点:-4
主人公がある町にやってきて起こる出来事。
一見何の変哲も無いような小説に思えるが、読んでみるとこれがどうして・・・。
これでもかこれでもかと主人公の前に立ちはだかる不条理な出来事。
救われる結末なのか?いったい事態は好転するのか!?と思い始め、ページをめくるのがもどかしい。
「いったいどうなるんだ!」と叫び出したくなりながら、それでも本を投げ出さずに読んだ。
ハラハラする長い小説だが、私が読み終えた後発したのは「充たされなかった・・・」という言葉であった。
タイトルは小説を読んだ人も含まれるのか?
私自身も「充たされざる者」?と思い、つい笑ってしまった。
読後の「充たされない度」は満点である。挑戦するつもりで読むのがおすすめ。
パラドックスのようであるが、「読んだ!」という充実感とともに、カズオ・イシグロの小説に益々興味が湧いたのであった。 (バイオリンねこ/2008-02-23)
カズオ・イシグロの初心者として、3冊目のこれを読了し、今その面白さと美しさに“圧倒”されている。
著名なピアニスト、ライダーの行く手に、人の心そのものと、人の縺れた関わりの間にある迷路が次々にたち現れる。出口を失って彷徨い、また道を発見したかと思うと、さらに新たな迷路に迷い込む。
物語はcaricature仕立てで、曲りくねった心象の連鎖が延々と執拗に辿られるにもかかわらず、その心象が投影される不思議な建築や空間の描写の美しさには意表を衝かれる。
現代音楽のマレリー、カザン、ヤマナカなど架空の作曲家がたびたび登場するが、カリカチュアライズされているにも関らず、不思議にそのゴシック的空間の中から、“垂直線”の透明かつ不協和な音がリアルに聴こえてくるから不思議だ。
・・・いつかこの続編をぜひとも読んでみたい。深い心の迷宮と東欧風の風景が交錯するシックな闇と、精緻に彫りこまれた建築空間の内部に響き渡る、光のようなカザンのカデンツアを聴いてみたい。
(pochi/2008-11-24)
読み進めているとドップリと作品世界に巻き込まれ、日常的な意識に霞がかかってくるような「危険な」作品だ。これこそ小説であり、大部の文庫本の半分も読んでくれば、それは心地よくなる。とは言え、作品世界は不条理の連続。しかも、主人公のピアニストは次々と現れてくる不条理をその都度肯定していく。また、主人公に関わる登場人物たちは、主人公の過去に関わったことのある人物たちであると、主人公は「思い出す」ようになる。それは欺かれているのか、幻想世界の錯覚なのか・・・・。過去にあらざる記憶。それは本来、矛盾なのだが、主人公は彼の周りに立ち現れてくる人びとによって、様々な期待をかけられることで、過去を想起し、彼らとの過去があったかもしれないという想念に落ち着き、彼らのために生きようとするのだ。
そう、この不可思議な世界、これこそ小説にしかなし得ない世界であり、しかもこれこそリアルな作品ともいうこともできるだろう。
松浦寿輝の『半島』にも、本作と似たようなテイストがあるが、主人公が右往左往しながら、それでも事態を肯定的に受け止めてしまうという究極の不条理(これこそ現代社会ではないか)の描写において、イシグロよりはロマンチックに過ぎる。つまり不徹底なのだ。 (野火止林太郎/2007-09-27)
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好きな小説
 
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浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
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早川書房(2006-11)
翻訳:飛田 茂雄カズオ イシグロ
売上順位:93321
¥ 756(中古:¥ 337)

レビュー総評点:2
カズオ・イシグロがどういう作家かを手っ取り早く知りたい人には、
本書と『日の名残り』をお勧めする。

イシグロが得意とするのは一人称による語りである。
一見、近代日本文学得意の私小説の感を受けるのだが、
作者はそこに一つの仕掛けをする。
この語り手、実は相当な曲者なのである。

視点人物が固定されているということは、
読者もまた、物語をその人物を通してしか
眺められないということを意味する。
彼が語る出来事は事実そのものではない。
彼が解釈した、言ってみれば歪められた事実なのである。

イシグロは主人公に私たちを同化させておいて、突然突き放す。
その時受ける衝撃は、現実崩壊の感覚とでも呼べばいいだろうか。
読者が憑依していた主人公の肉体から突如追い出され、
空中を浮遊する霊となって、彼の姿を目にするような感覚、
一瞬前まで現実と思って生きていた世界が、
実は夢であったと知らされるような衝撃を想像してほしい。
それを読者に感受させる、イシグロの手腕は見事というほかない。

カズオ・イシグロ。この端整な文章を紡ぐ作家は
実は、恐ろしい怪物なのである。 (ガーニャ/2008-09-13)
カズオ・イシグロの物語に出てくるのは、何かしら傷を抱えた人たち。「時代のせい」と言い切ることもできるのに、そうはしない。過去を振り返り、見つめた上で、その傷を受け入れて生きていくことを決意した人たち。この作品にも、例によりそんな画家が出てくる。

初期の作品(らしい)ゆえ、最近の作に比べると、その「傷」が何だったのか明かされていく過程がそこまでドラマティックではないけれども、抑えめの文体が、非常に心地よかった。 (mountainmania/2008-08-19)
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A Pale View of Hills (Vintage International)
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Vintage Books(1990-09)
Kazuo Ishiguro
売上順位:20883
¥ 1,101(中古:¥ 1,137)

レビュー総評点:80
7回読みました ||||||||||||
イシグロの最新作「わたしを離さないで」に感動し、彼の長編をさかのぼって読んでゆき、たどり着いたのが、処女作「遠い山なみの光」でした。翻訳ものとは思えない読みやすさ。魅力的な登場人物たちは、私の心に入り込んで、その続編を想像させずにはおかない。何より驚いたのは、20代の男性が女心をここまで書けるのかということ。会話の言葉遣いに関しては、違和感を持ったことがここのレビューに書かれてありましたが、別のサイトにも同様のことがあり、主人公の娘景子と同世代の私にとっては、逆にそれは思いがけないことでした。「昭和は遠くなりにけり」なのかもしれません。何はともあれ、日本では埋もれているこの作品を、多くの人に読んでもらいたいし、出来たら映画化して欲しいと思います。 (fumiffy0072/2004-08-22)
 この小説はメイン舞台が日本であり、日本女性の手記という形であり、その主人公は自分のことを「わたし」と第1人称でよぶ。この形式だけみると、いわゆる私小説じゃないかと思いたくもなるが、この本は違う。
 まず、主人公の感情が直接記載されていることはほとんどなく、スローモーションのような外界の描写がさらさらと淡白に描かれている。その文章の中に、激しい情念や絶望、儚い希望にしがみつく人々が息づいている。
 戦後日本の国民的精神の揺れ、移り行く価値観に戸惑う人々、何とか人間らしく生きていこうとする人々を、遠い国から祖国に想いをはせ、美しく描き出だすことに成功している。 (郷田庄太郎/2003-10-29)
イシグロの原型 ||||||||||||
カズオ・イシグロを読むならまず「The Remains of the Day」から入ることをお勧めします。この作品は3つ目か4つ目に読むのが良いのではないでしょうか。日本人でありながら英国に幼い頃から暮らし、世界的な英文学作家となった彼の最初の小説が、戦後長崎に暮らす一人のご婦人のある面もの苦しいお話だったということに、きっと作品以外のところから、イシグロ文学全体に対しての感慨が生まれることと思います(こういう感慨は日本人にしか持てないものですからね)。
文章、話の展開、登場人物のキャラクターにイシグロ・ワールドの全ての原型が詰まっています。おそらくその頃あなたは既にイシグロファンになっているでしょうから、重苦しい部分がほとんどであるこの作品もワクワクしながら読めるはずです。細部の描写も見事。「きっとイシグロさんは取材の為に長崎に行ったんだろうなあ」とバカみたいに思ってしまいました。 (kokodokodoko/2006-11-28)
自分ではどうしようもない時に,心から離れていかないシーンを描く小説です。
遠い自分の居た場所(きっともう帰ることはない),
自分で分かるような分からないようなそのときの感情。
全編を貫く寄る辺の無さ,非常に細やかな感情の交歓。
共感と反発と見下しと同情。
そして時間がたって気がつくこと。

それらが,現在の悦子と長崎の悦子に浮かんでは消え,全てが薄ぼんやりとしたひとつの光景を構成していきます。
イシグロ得意の二つの時間軸の往来です。

とても表現が鮮やかで楽しめる小説でした。 (green_lotus/2002-04-24)
在英の日本人作家の作品です。最近、長女を自殺というかたちで失ったイギリスに暮らす日本人女性の主人公が、前夫と暮した、終戦後の長崎に思い巡らせる形で物語りは進みます。敗戦後の日本の中でも、原爆で特に被害が深かった場所での、生き残った人々の暮らしが描かれています。愛する人達を失った悲しみだけではなく、敗戦という形で理想として掲げられていた、信条がくつがえされ、それまでの生き方自体を否定される人々。どうしようもない喪失感の中で、心の傷を癒せないまま、日々の暮しを営んでいる敬服すべき人達の日常が淡々と描かれています。英語の文章は平易で読みやすいです。 (/)

日系英国人作家、カズオ・イシグロの長編第一作である。
イシグロ本人も認めているが、本作と
『浮世の画家』『日の名残り』は同じトーンで貫かれている。

イシグロは本作の舞台を長崎に設定しているが
作中の長崎は、氏が五歳のときに出国して以来
一度も帰っていない記憶の中の場所だという。

そのためか作者の記憶も、作中人物の記憶も
夏の陽炎のようにゆらゆらと頼りない。
私たちにとり、自分をこの世界に繋ぎとめているものが、
ある時間を生きてきたという記憶なのだとしたら
イシグロの作品は押し並べてこの拠って立つ
堅牢な土台に鋭いメスを入れているようなものだ。

エキゾチックな雰囲気を醸し出すことによって
注目を集めた部分は否めないが、
それだけにとどまる作家ではないことを
この後の作品でイシグロは証明することになる。 (アジアの息吹/2006-09-27)
女性の生き方 |||||||||
冒頭で明かされた「私はついに佐知子のことがよくわからなかった」という悦子の言葉は、自身に対する言葉でもあり、日本的な価値観で見て当時は批判的だった佐知子と同じく、母というよりも女として人生を歩む決意するに至った過程を、彼女自身が不可思議と捕らえているとも思えました。女としての思いと、母としての思いに引き裂かれる女性の物語と言っても良いと思います。筋立ては良く出来ていると思います。
米兵とともにアメリカに渡った後の生活を夢として語る佐知子と、夫と子供と共にある自身の生活は幸せだと語る悦子、二人の会話が完全にすれ違っている場面は一つの山場だと思いました。また、佐知子の娘の万理子と悦子の娘の景子の人生が微妙に重なる点は、物語に奥行きを与えていると思います。景子の末路は明らかですが、万理子のその後は明らかではありません。文章化されていませんが、全く別の結末があったのかもしれないという悦子の疑念や後悔が感じられ、同時に女性が自分らしく生きることの難しさを感じさせる展開でした。 (Sheep/2003-06-29)
Etsuko is a Japanese widow who lives in England alone. One of her daughter commit suicide lately. All through the story, she recalls the life with her 1st Japanese husband in NAGASAKI right after the World War 2. People lost almost everything there: their families, lovers, friends, lovable neighbors, cozy homes, calm life...besides, they have to lose their faith at the same time. However, they went on having a terrible pain in their mind. You see the sadness in NAGASAKI right after the war. (Miyako/2002-01-14)
原爆の影から |||||||||
メロディーを奏でるように滑らかに流れ行くリズムが、この本の全体に覆う暗い影をいくらか軽減させている。明日の見えない不安、孤独、僅かながらもしっかりした希望の存在。物語は原爆の落とされた長崎を舞台に、主人公の記憶の中を彷徨っていく。著しい変化に戸惑う人々、それでも、女たちは、不安を打ち消すことに必死にもがきながら生きていく。その表現は、決して泥臭いものではなく、淡々と語られていく。
主人公の悦子自身の葛藤は余り描かれることがない。彼女が何故イギリスに来たのか、そして日本から連れて来た娘は何故自殺してしまったのか、それは最後まで語られることはない。悦子はイギリスでも子供を産んでいる。彼女は娘に「あなたの好きなように生きなさい」と語る。それはまるで、人生を傍観してしまっているかのような、希薄な存在を表わすかのように。
まるで魔法にかかってしまったかのような印象。読み進む内に、世界に引きずり込まれ抜け出すことができなくなる。描かれることのない謎を、究明していきたくなる、そんな物語だ。 (ガッベリーウェイ/2007-02-18)
This is a story of a family: a woman, her two husbands, their daughters, her father-in-law in Nagasaki, Japan and England. Having grown up to live a married life in Japan, a woman lives alone in England. She spent Japan's post-war days in very poor but honorable way. It is an old fashioned way of life in Japan; people were all social and so was she. She maintained friendly relations with all neighbors, friends and her relatives. She spoke to even a stranger like her friends. She called her husband's father “Ogata-San", which showed her respect for him. It's also humbleness of Japanese women in the past. Their conversation evokes me an Ozu Yasujiro's film, “ Tokyo Story”.
This is also a story of women; Etsuko, Sachiko, Mariko, Keiko, and Niki. all of them are eccentric in various aspects : Etsuko's neighbor Sachiko is eager to leave devastated post-war Japan to start over in America; Mariko, Sachiko's daughter is sullen, always holding cat as if it was a security blanket. Keiko, one of Etsuko's daughter committed suicide. Tediousness in words exchanged between Etsuko and Niki, her another daughter expresses their disagreement with each other. Only Etsuko behaves normally among the others. Kazuo Ishiguro set her in a story as a subsidiary character essential for the development of the plot, I think. She spoke to the others and knew their living. Sometimes she felt compassion for them and sometime she persuaded them to have second thought, but in vain. Whether in Japan in the past or nowadays in England, she has no man to evoke a sympathetic response from. She is always lonely. It casts a tinge of somberness on this story. (/)
 語り手の女性を取り巻く一一あるいは取り巻いていた一一様々な人の姿を冷静な観察で細部から浮き彫りにしつつ物語は進行しますが、それぞれの言葉や態度、そうした表層から推察できるそれぞれの思惑や人生観が悲惨なほどすれ違っているのがおもしろい反面、それはじつはすれ違いではないのかもしれない、という何か無感覚に近い光明(?)をわたしにもたらしました。何より思うのは、これはある国や人びとの過去の姿ではなく、これと同種のことが今もそこら中で日常的に起きているということ、そしてそうした人たちをかろうじて繋いでいるのは、あるいは戦争が代表する死や恐怖の共同体験でしかないのかもしれない、ということでした。その読み易さ以上に深くて重い、わたしにとっては手ごわい作品。 (駱駝楽団[早寝早起き式]/2006-01-24)
翻訳がちょっと× |||||||||||||||||||||||||||||||
翻訳者の日本語がちょっと古い感覚かな…。
女性の話す言葉が全て「~だわ」「~なのよ」調で、読むのがシンドかった。悦子の追憶にある昭和20年代や、その後ニキとのやり取りの舞台である昭和40年代(と思われる)の女性って、皆こんな言葉遣いだったのでしょうかねー? (/)
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イシグロマニア
w:10 h:17
Never Let Me Go
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Vintage(2006-01-01)
Kazuo Ishiguro
売上順位:714
¥ 1,000(中古:¥ 494)

所属カテゴリ:
Arts & Photography Subjects
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最近読んだ英語書籍
最近読んだ超A級の世界文学
w:11 h:19
Never Let Me Go
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Faber and Faber(2006-03-02)
Kazuo Ishiguro
売上順位:12112
¥ 666(中古:¥ 798)

レビュー総評点:37
A great story ||||||
It is such a beautiful, heart breaking, humane book. Using unbelievable imagination and extraordinary prose, author takes the reader deep into the minds and thoughts of cloned for purpose young people, exploring their spirits and souls. I will never let this book slip out of my memory. Also read- Quest by Giorgio Kostantinos. One word, Excellent. (Maribol Kang/2006-06-15)