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インテリジェンス 武器なき戦争 (幻冬舎新書)
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ASIN:4344980115
幻冬舎(2006-11)
手嶋 龍一
売上順位:42962
¥ 777(中古:¥ 1)

レビュー総評点:121
初心者向け「インテリジェンス入門」という意味ではなかなか面白い。
特に、両筆者が最前線で見聞きし、また対応(対戦?)してきた世界の
舞台裏が紹介されており、なかなか面白い。

加えて、我が国のインテリジェンス能力の低さ、政府の無策…ではない
ものの、組織やそれを担う人材の薄さと準備不足が明かされており、
その啓蒙書としても価値が見いだせる。

ただ、一点残念なのは他のレビュアーにも指摘されているように、お互いを
「よいしょ」しあっている部分が多く、読んでいて冗長的に感じてしまう
部分が多いこと。対談本にせず、それぞれがそれぞれの視点から執筆した方が
良かったのではないか、と思う。 (takozans/2007-10-02)
日本の「インテリジェンス・ジャーナリズム」(こういう言葉がある
として)を牽引する二人の対談。興味深いエピソードが随所にちり
ばめられていて、読んでいるこちらが彼らの仕掛けに試されている
感覚を覚えた。読みやすいし、幻冬舎の新書第一号に相応しい軽やか
さではあった。費用対満足感からすれば充分及第点!

醒めた見方をすれば、この二人を擁して面白くならないわけがないの
だけど。ロシアでの諜報におけるエピソードや、手嶋氏の幅広い取材
から得られたエピソードは、本当に興味深かった。

ただ、なんだかスリル満点でドギマギする諜報の話しのはずなのに、
手嶋氏のつかう2人称が常に(!)「ラスプチ―ン」なので、なんだか
コミカルさがじわっと湧いてくる。呼びかけのときは、「さて、ラスプ
ーチンはどう思いますか?」「さすがはラスプーチン」みたいな感じ。

このあだ名がメディアで最初につかわれたときは、外務省を陰で操る
ワルダマというイメージがあったし、それだけに畏怖さえもよおさせる
効果があった。でも、この本では、ラスプーチン、ラスプーチンと
呼ばれる佐藤氏は、もはやアニメやマンガのキャラクターにしか見えない。
本書では、あまりに何度もこう呼ばれるため、かわいく見えてくるのだ。
さながらラスプーチンという名のテディ・ベア。

初めから終わりまで、終始お互いにエールを送りあう二人、褒めあう
二人。ちょっぴり食傷気味なまでにヨイショしあっている。これこそは、
インテリジェンス・ジャーナリズム向けのポーズなのかもしれない。
本当の諜報活動では、このような微温的で和やかな空間と時間は、
なかなか享受しえないのだろうし。

面白かったのだけれど、そこの点に違和感があったので、星4つ! (el mundo/2007-04-22)
 以前から気になっていたが遅まきながら読了した。“インテリジェンス”とは何か?それは国家間の外交でのイニシアティブを取るための、そして他国の自国への脅威から身を守るための“情報戦”に必要不可欠な武器だと本書は定義付ける。外務省きっての辣腕情報分析官と元NHKのワシントン支局長、国家機関の中枢頭脳ふたりによるいきなり序章での虚々実々のやり取りで読者の好奇心を煽る辺り、これもひとつの“インテリジェンス活動”なのかと勘繰ってしまう(笑)。ゾルゲ事件、イギリス旅客機テロ計画阻止、チェチェン紛争、湾岸戦争と歴史的史実の裏に隠された駆け引きと鬩ぎ合いに、話半分に差し引いてもまるで国際諜報小説を読んでいるような感覚に陥る。世界を取り巻く情報分析が矢継ぎ早に語られる中、米英の諜報活動の違いは相互のメディア環境の影響が大きいとか、ネオコンは元はトロッキストグループからの転向組であり、普遍的な価値観で全世界をアメリカ的民主主義革命するのが目的とか、ロシアのプーチンとイスラエルの蜜月状態とか、眼から鱗的な発言も多く興味深いが、他のインテリジェンス大国に比べ、我が国のそれの脆弱さを憂う記述、その責任の多くは現在の政治システムと外務省のダメさ加減にあるとの指摘は、その最前線で暗躍し“ラスプーチン”と呼ばれた佐藤優の言葉だけに重い。手嶋龍一はいざしらず、「国家と神とマルクス」で、国粋主義からマルクス主義、右翼から極左までの言説を対等に論じていったその強靭でバランスの取れた自由主義者佐藤優を知るテキストとしても有効。 (hide-bon/2007-08-03)
海千山千の二人の懐の探り合い。
このお二人、この本のメインテーマでは同意しているかもしれないけれど、それ以外では路線がちがうのでは?。
そのあたり、互いにさぐりつつ下手なこと言わないように。ほめあうと言うより、おだてて隙をさそうような。おだてられて、のったら最後。そんな火花の散り方がスリリングで興味深かった。
うがちすぎた見方かもしれないが。

肝心の内容は、国家にとって情報戦略は大事。ということ。 (toe-hatae/2007-05-21)
久しぶりに勉強になる本だった。著者の佐藤氏の博識ぶりはつとに有名だが、この本を読むと実際に外交官として凄腕だったことがよく理解できる。学者の机上論ではなく、実際に外交の修羅場を踏んだ著者による国際情勢の冷徹な分析はとても説得力がある。諜報活動と防諜活動の違いや、有名なゾルゲ事件の歴史的理解などは非常に斬新である。こうした佐藤氏の国際感覚は外国人からするとつきあいやすい印象をもたれるのではないだろうか。今後のさらなるご活躍を期待したい。


(鳴神上人/2007-05-12)
NHKワシントン特派員を経験し、退職後小説家・外交ジャーナリストとして活躍中の手嶋龍一氏と、「外務省のラスプーチン」と呼ばれた佐藤優氏の対談録であるが、通常の対談録以上に楽しめる。
新聞や雑誌に、整理した形、細かく文脈を分析された形で掲載されない情報が如何に多いか、またそれらの情報の意味を見極め、どのように分析するべきかの考え方が本書の中で随所に垣間見られる点が非常に興味深い。
特にアンドロポフ大統領死去の情報を世界に先駆けて入手したソ連の日本大使館、第一湾岸戦争時にイラクとイランの関係の変化にいち早く気付いたテヘランの日本大使館のくだりはリアルで迫力のある部分である。
インターネットで単なる情報、活字にされた情報の入手は誰にでも出来るようにはなったものの、本当に世界を揺るがすような情報(インテリジェンス)の入手には金も掛かるし、スパイ映画さながらのリスクも付きまとうのであろう。日本は軍事大国になることが出来ないとすれば、インテリジェンス大国になるべく、この分野により多くの力を注ぐことも必要とされるのではないかと考えさせる一冊である。
(hbspmd/2007-02-26)
著名外交ジャーナリストと外交官(というかスパイ?)が、お互いに手の内を隠しつつ対談する様子をまとめた本。この二人の情報を生業とするプロフェッショナルが情報(インフォメーション)というものを如何にして集め、咀嚼して発信できる情報(インテリジェンス)へと昇華させるのか? そこには外交に限らず、全ての情報への取り組み方において学びの多い書。 (おたこはん/2007-01-16)
最近言論界・出版会で大活躍の佐藤さんですが、私自身、氏の著書「国家の罠」を読むまで、鈴木宗男さんの所謂ムネオ事件の陰で、佐藤という目つきの悪いノンキャリアの外交官が捕まったのを、ただただマスコミが流す情報を元に本当のことを何も知らずに、ただ悪い外交官だなぁと思っただけでした。

ここ数年、船井幸雄さん、森田実さん、関岡英之さん、副島隆彦さんらの著書を読む中で、マスコミが伝えない世の中の本当のことや仕組みを自分なりに解釈できるようになってきましたが、本著では、武器無き戦争=インテリジェンスを用いた外交が第2次大戦後、如何に脆弱になっており、それが外交上如何に重要かが描かれています。

また、世界第2の経済大国である日本はそれに見合った情報が集まるのに、それをインテリジェンスのレベルに国家レベルで活かせていない、それは構造的な問題であり、人材の育成が急務であると佐藤さんと手嶋さんは述べられています。

米国が始めたイラク戦争、それに賛意した日本、腰砕けな近年の日本の外交などに疑問を持つ方にとっては、インテリジェンスとは何か、またその重要性を知る上でとても良い本だと思います。 (New JJ-K 72/2007-02-25)
「インテリジェンス」の本ですが、我々一般国民にとっても得るものが多い。他人とのコミュニケーションも基本的にお互いの尊厳を傷つけず、かつ聖域には踏み込まないというマナーを守ったうえでのギブ・アンド・テイクであるという点は共通だからだ。得た情報を発信する際の「情報源をいかに秘諾するか」という手法も大変参考になる。

前書きにある、「秘密情報の98%は公開情報を再整理することによって得られる」という言葉に唸らされた。新聞を読む際にも問題意識を持って取り組めば、特別な情報網が無くてもある程度世界の流れは読めるというということではないでしょうか。 (cdma2000/2007-02-05)
日本を代表する外交ジャーナリストと、元”外務省のラスプーチン”が、
国家間の”情報(インテリジェンス)戦”の実態について語り合った。

中東戦争、大韓航空機撃墜事件、ベルリンの壁崩壊、湾岸戦争、911テロ……

などなど、現代史の重大事件の裏側で、各国がどのような情報戦を繰り広げていたのか。
それが生々しく語られる。
これまでの自分の見方が次々と覆され、目からウロコがぼろぼろ落ちる…

とはいうもののこの2人、揃って”食えない”!
どこまでが真実で、どこからがブラフなのか?
読みながら疑心暗鬼にさせられ、この本を読んでいること自体が、
どこかの国の情報機関に乗せられてるんじゃないかと疑いたくなる。
この本の存在そのものが、”情報戦”! (D.O./2006-12-25)
本書は、「インテリジェンスとは何か」から始まり、情報収集・分析に必要な素質やインテリジェンス大国になる条件、日本の優れたインテリジェンス事件などを具体的エピソードを用いながら指摘し、また日本におけるインテリジェンス育成組織の構想などが佐藤優氏と手嶋龍一氏の対談形式で語られている。

その中で、日本のインテリジェンス能力は個別に蓄えられ、結晶してはいないが、潜在的に高いレベルにあるという指摘は興味深い。フランスやドイツに劣らない能力はあるという。それなのに、結晶化の障害となっているのは省益や嫉妬であるというのは、インテリジェンスが国益を第一とするものだけに、残念だ。

3つの第一級のインテリジェンス事件を通して語られる、インテリジェンス大国であった過去の日本の姿と、身内の論理で自らその地位を放棄しているように思える現在の日本の姿は、鮮やかに対比をなしている。


具体的な人脈作りや手口に紹介や、手嶋氏のウルトラダラーのソース源など、触れられてはいるが明らかにされないところがいくつかあり、機密等でしかたないことではあるが、読み終えてももどかしい感はある。

しかし、全般的に、外務省で旧ソ連の情報収集・分析を担当していた佐藤優氏とNHKでワシントン特派員や支局著を勤めた手嶋龍一氏、二人の豊富な知識量と分析力には驚かされる。
具体的なエピソードを交えながら、様々な方面へ話が広がっていき、散漫な印象を受けるかもしれないが、それぞれ含蓄に富むものであり、また普段語られる事のない類のエピソードであり飽きはしない。
しかし、両者の著作に触れたことのある読者でないとすんなりとは納得できないかもしれない。『国家の罠』や『ウルトラダラー』に触れておくといいだろう。 (学徒/2006-12-17)
 佐藤優という人は、いろんな相貌/魅力を持っているが、今の所、いちばん読者をひきつけるテーマは、やはり「外交」に関わる部分なのではないだろうか?
 そういう意味では、本書は、佐藤優と(おそらく)同じ土俵でがっぷり四つに組める対談相手が用意されていて、読者は「国家の罠」などに近いレベルで、佐藤優ワールドを堪能できる仕掛けになっている。
 二人の丁々発止のやりとりもおもしろく、結構ヤバメの内容にもかかわらず、読者は肩肘張らず、楽しめる。
 対談ではあるが、佐藤優の恐るべき頭脳によって、彼の発言部分は、かなり精緻な論理構造を保っているので、そのプロセスを吟味するだけでも、十分教養を得られる。
 単なるエンタテインメント書ではないのだ、念のため。 (柴風/2009-02-11)
 本書の最大の意義は、「インテリジェンス」という言葉に市民権を付与したことにある。読者は両氏の洒脱な対談を通して、インテリジェンスの基礎知識をつけることができる。両氏がそれぞれの仕事を通じて体験したエピソードも面白いものが少なくなく、読み物としてもなかなか楽しめる本だ。
 ただ、外交や安全保障をそれなりに学んだ人間にとってはやはり物足りない。気になるのは両氏がインテリジェンス活動のうちのヒューミントのみにフォーカスしがちであり、しかも誰もが知らない情報を入手することをもってインテリジェンスの成功と考えているきらいがある点だ(少なくとも、そう読める箇所が少なくない)。無論、ヒューミントは重要なのだが、公刊情報、電波、衛星画像といった他のソースと比べてしまうと、補完的な役回りにとどまると言わざるを得ないのではないか。より致命的な点は、両氏とも電波・衛星画像という現代のインテリジェンスの核心にあたる情報源に接する権限を有してこなかった点だ。佐藤氏も自ら認めているように、彼は真のインテリジェンス・オフィサーではないのである。本書はこの点を踏まえて読まれるべきだと思う。 (Fernald/2008-09-01)
 9/11のテロの際、連日NHKのニュースに登場していた手嶋ワシントン支局長と、外務省のラスプーチンと言われる佐藤氏との対談である。
 正直、エピソード的にはおもしろい本であるが、体系的に何かをつかもうとしても無理であろう。また、ともに相手をインテリジェント・オフィサーと持ち上げているが、こんなに露出が激しくて、おしゃべりが抑制的でなくて、今後の仕事の妨げにならないのかとまじめに心配になるところである。
 ということで、ちょっと眉唾な気分を持ち、二人とも狸だよなぁと独り言を言いながら読むぐらいがちょうどよかろう。

 個人的には、トム・クランシーの「クレムリンの枢機卿」や「愛国者のゲーム」辺りのジャック・ライアンシリーズの方が国家の安全保障との関わりでインテリジェンスの神髄が印象づけられると思う。
 なお、おもしろかった部分は、
 ・情報機関が、「自分をスパイにしてください」という人間を採用するわけない
 ・フセインがウランを入手したという情報は、イタリアの情報機関が入手したものだった 
 ・オサマ・ビンラディンは、イスラム教のワッハーブ派で、チェチェンのテロリストとはつながっているが、フセイン政権とのつながりはないことはみんな知っていた 
 ・北朝鮮との拉致交渉は、北朝鮮の外務省とでなく人民保安省とすべきであった
 ・日本の場合、「俺は実は知っていたんだ」というウソ話が多すぎる
 ・英国には、SIS、MI5など4つの情報機関を統轄するJIC・合同情報委員会があり、その評価スタッフが機能している
 という辺りであろうか。 (lexusboy/2008-01-02)
この手嶋龍一という人、NHK のアメリカ総局長をやっている時によくテレビで出て来ていました。良くいえば茫洋とした雰囲気、悪くいえばちょっとピントのはずれた顔立ちで、とてもエリートに見えずに、カミさんと二人で、「この人こう見えてもえらいんやろうねえ、天下のNHKアメリカ総局長やもんねえ」と話していたのです。やっぱり、すごく切れる人だったのね。その手嶋氏が、外務省内の抗争ではじき出された佐藤優氏と対談したのが本書だ。

手嶋氏って、NHK で出てる時から大時代的な表現をする人だなあと思ってました。本書でも、佐藤氏のことを最初から最後までラスプーチンと呼び続けるとか、大時代的なもの言いがちょっと鼻についた。

対談の両方ともインテリジェンスの専門家だし、本当に対談を記録したのでは読者には何のことか分からない話の連続になるから、説明的な話を補足してあるのだが、それが中途半端で、とって付けた印象と、食い足りない感じがあちこちに残ったのが頂けなかった。いっそ、本当に対談らしく仕上げて、分かりにくいところは、注(もちろん、そのページに注がないといけません)にした方が良かったと思う。

まあ、本書を入り口に、興味を持ったエピソードについて、本を探して読めば良いんでしょう。でもねえ、この手のインテリジェンス関係はどの本が本質をつかんでいるのか、なかなか分からないし、ちょっと大変。取り上げたエピソードについてはもう少し解説してくれても良かったんじゃあないかなあ。 (shibchin/2007-12-30)
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外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)
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ASIN:4101381143
新潮社(2006-06)
手嶋 龍一
売上順位:71288
¥ 620(中古:¥ 43)

レビュー総評点:41
あとがきによると「湾岸戦争であれだけの体験をしながら、それが過ぎてしまうと、あの日々を検証する試みが為されることのなんと少ないことか」という感想から著述が始まったらしい。自ら招いた忌々しい結果であり、他国を責めることができず、忘却してしまいたい心理が日本社会においても働いている。NHKという影響力あるメディアに勤める身でありながらそれを掘り起こした努力を評価したい。 (深田森/2006-10-22)
湾岸戦争終結後、クウェート政府が発表した感謝国リストに“JAPAN”がなかった。130億ドルもの巨額歳出をしたにもかかわらずだ。
その結果に至った、大蔵省と外務省の対立を、インタビューと取材で、細かくあきらかにするノンフィクションだ。

ここには手嶋氏の主張は入っていない。
インタビューと取材で集めた事実を入念に繋ぎ合わせ、見えてくる真実を明らかにするだけだ。

これは本物だ。 (taizo16/2006-12-10)
湾岸戦争の頃と言うのは、私が報道・政治討論番組を最も見ていた時期である。言わば、リアルタイムでことの経緯を追っていたはずなのだが、結局何も見えていなかったのだと、本書を読んだ後で強く感じた次第である。例えば、連日繰り広げられた国会論戦で、外務大臣が答弁に汲々しているシーンもショーとして見ていただけで、その裏の事情までに思いを至らすことは出来なかったのである。

湾岸戦争に限らず、10年後、20年後に専門家の目を通して当時を振り返ってみるのは、とても有意義なことだと思う。 (江口哲学/2008-07-06)
湾岸戦争を舞台にした日米同盟の混迷の本質を、丹念な取材に基づく圧倒的な
情報量と、読み手を惹き込む卓越した筆力で見事に描き切っている。
まさに、ジャーナリズムの真骨頂といえる作品でしょう。
湾岸戦争から20年近く経った現在でも、必読の1冊といえるでしょう。 (221Bの住人/2008-06-04)
タイトルの意味するところが、読み進むうちに重くのしかかってくる、そんな迫力でした。

国土を侵食され、人命を奪われる、そんな悲惨な“敗戦”場面は、画面に映るイメージとしては、
実は見慣れたものかもしれません。
我々が、戦争反対をを唱えるのは、そうした表層的な印象からで、
実際の“敗戦”を知っている者は今の日本には、もうほとんどいないでしょう。

この本では、そんな“今の”日本が、国家としての尊厳,あるいは威信,自立の気概といったものが、
微塵にくだけていく“敗戦”が描かれてています。
湾岸戦争で日本が負った傷がどれほどのものか、本書を読むことで、初めて触れたような気がします。

綿密な取材に基づくものの、関係者から見れば“事実”とは異なるところもあるのかもしれません。
しかし、一貫した“敗戦”に向き合うという手嶋氏の姿勢が、この本の“凄み”となってでていると思います。

エンタテイメント以上のインパクトの大きい、お勧めの本です。 (きょうパパ/2008-04-26)
すごい! |||||||||||
湾岸戦争にまつわる出来事について、いくつものストーリーの
絡み合いを、著者一流の取材力で提示し、筆力で解きほぐして
見せてくれます。

国内政治の世界ですら、「言った」、「言わない」という不毛な
議論が政権を左右する可能性を持ち、外交の場ではそれは一国の
存亡を賭ける事態にもなる。
だからこそ、記録を残すことが重要である・・・
著者のここ数年の著作の執筆動機はまさにそこにあり、
そのきっかけの一つとしてこの事件があったのではないかと
思いました。

また、情報源の情報に関する若手外交官とのやりとりが
あとがきの形で記されていますが、これを記すことのできるほど、
著者が情報源の秘匿に自信をもたれているのだな、と感じました。
加えて、近年の外交官の資質への危惧も示されていた、と見るのは、
読み込みすぎでしょうか。
(kaz-p/2007-01-07)
 開戦前のスコウクロフト将軍(国家安全保障担当大統領補佐官)と瀬島龍三との会談や橋本龍太郎大蔵大臣(当時)の分担金額の交渉の場面の記述に関しては、唯一と評価できる箇所です。

 筆者は『この戦争をくぐりぬけた日本という国の生きざま』を描いたと自画自賛していますが、情報源が一元的であまりにも偏りすぎている印象を受けました。とにかく外交官を持ち上げすぎ。開戦時イランで大活躍したインテリジェンスも手前味噌の手柄話のオンパレードでもういい加減にしてくれ!と心中叫びながら読み進めていきました。

 3章以降、外務省の立場からのみの語られており、失態は当時事務次官の栗山尚一にすべて負わされスケープゴートにされています。その他の外交官は何の責めも受けずヒーロー視されている点からも、筆者の目線が本書全体の価値を損ねているように感じました。栗山次官もどうかとは思いましたがそこまで悪者にするかぁといった感があり、かといって栗山次官の取材を十分にしているとは思われず(少なくともインタビューはしていない)、全般にわたって外務省の一部の意思が感じられました。

 大蔵省(当時)との確執も外務省側に思いっきり偏っています。外務省の言い分を一方的に支持して、大蔵省を第二次大戦時の軍部に見立てて二元外交を批判する点はそこまで言うか!ほとんど外務省の広報本です。

 ノンフィクションを読むに当たっては、筆者が直接取材をし、なおかつその事実関係を精査した上で価値観を付加した結果として受け入れます。それだからこそ同じ対象を取材したノンフィクションでも優劣が歴然と出てしまいます。本作に振り返ると、外交官の証言は丸呑みで匿名の「外務省国際情報局の幹部」の推測まで事実に紛れて飛び出すくだりは、タブロイド夕刊紙を思わせる点で瑕疵の多いノンフィクションと言わざるを得ません。残念。
(Coffey man/2008-01-18)
政治・経済・歴史・イデオロギー・宗教・・・世界を取り巻く膨大な情報を、
手嶋氏の冷徹なまでにも客観的な筆致で、読みやすく纏め上げられている
素晴らしい書物ではないでしょうか。

長年、国内の癒着・馴れ合い・セクショナリズムで成り立ってボケまくって
いた90年代の日本が、戦後最大の国際的危機に接して、無能極まりない
対応で失笑を買った「湾岸戦争」で、どのようにして必然的な「敗戦」を
迎えたのか。それをとても読みやすい構成・文章で語られています。

確かに、有能な日本人が随所に極めて輝かしい業績をこの時にもあげては
いたのですが、それらを帳消しにして余りある、余にも無残な政治・官僚の
世界・・・読んでいて嘆息が絶えませんでした。とりわけ90年代の日本が
戴いた政治のトップは「よりによって」「酷い」人材ばかりであったなぁ。
そういえば、「阪神大震災」や「オ●ム」でも、余りにも余りな・・・でしたね。

そう痛感しましたが、翻って現在はそれらの反省が活きているか、と言うと
全くそうでもないですよね。衆愚の骨頂であった「郵政選挙」の結果、関係の
ない「歴史的重要法案」がなしくずしで可決され続ける現在。自分自身を含め、
国家の将来に忸怩たる思い、末恐ろしい思いを改めて感じさせられます。

手嶋氏が最後に述べられているように、今こそ、「外交敗戦」の「総括」が
必要な時かもしれませんね。とにかく、一気に読める秀逸な書だと思います。 (Carouselambra/2007-06-22)
元NHKワシントン支局長の著者が、湾岸戦争を通して日本の危機管理能力及び外交センスの欠如を豊富な取材を基にして克明に描いたもの。著者の経歴と人脈が活きている。

湾岸戦争開始直前のホワイトハウスの描写から始まり、アメリカ、日本、サウジアラビア等の関係者の様子が「まるで見てきたかのように」描かれる。その迫真性は確かなもので、一般人には知り得ない事項も盛り込まれているので興味深い。「湾岸戦争とは何だったのか」をもう一度冷静に振る返るのにも役立つ。しかし結局、著者の主張はイラクの人質となったある日本人の「現在のような日和見的なご都合主義外交はインディペンダントな国の外交とはいえず、...」と言う"遺言"中の言葉に尽きるのではないか。私もこの考え方自身は賛成なのだが、果たして湾岸戦争においてアメリカに"いち早く自主的に"追随する事が自立国家の外交方針として適切だったのか相当に疑問である。アメリカナイズされた著者の頭の中には「金を出す=「汗を掻く」事ではない」という図式が出来上がってしまっている。勿論、日本が巨額の負担金を拠出する裏では多くの日本人が「汗を流して」いるのだ。「外交敗戦」とは本来この事実を世界に認めさせる事が出来なかった事を指すべきだろう。この観点を欠いているので、物語が単に時間軸に沿った事象の羅列にしか見えないのである。拠出金の多寡と貢献度の関連性を云々しても本質を外れるだけである。官僚の体質批判も聞き飽きている。

ただし、クウェートが日本を映す鏡である事は肝に銘じる必要があろう。軍事力を持たない金満国家が有事の際、如何に脆いか本書は雄弁に語っている。この教訓は活かすべきである。 (紫陽花/2008-02-28)
国際的な日本の立場について見識を得ようと思い読みました
手嶋龍一氏の取材にもとづく事実を生々しく描写する文章に引き込まれてしまいました
元大本営参謀 瀬島龍三氏と米国大統領補佐官国家安全保障担当ブレント・スコウクロフト氏の会談をはじめ、湾岸戦争当時の国際政治舞台の様子がつぶさに描かれています
全体をとおして、登場する重要人物の言葉や考え方を知ることは、国際的な日本の立場をしる上で貴重な内容でした (タイガーたか/2007-01-29)
日本は国際社会の一員になれない − 湾岸戦争以来、こんな歯がゆさを誰もが抱き、憲法改正が肯定されようとする昨今。
しかしこの本を読んで、憲法だけが改正されてもどうしようもないんじゃないかな、と暗澹たる気分になりました。
何ていうのか、予想外の事態に直面した時の判断力。そこからさらに悪い事態を想定する想像力。内ではなく外に向けられた視点。
国として、そういったものをあまりに長い間必要としなかったので、錆び付いてしまった…。
しかし、湾岸戦争からすでに15年以上が経過しました。同じ轍を踏むことは決してない、と思いたいものです。
それにしても、この本の面白いこと!手嶋龍一氏といえば、あの9.11のとき、毎日テレビに出ていたけど、所詮(失礼!)NHKの
職員でしょ、という色メガネで見ていました。
それが、実は情報収集、情報処理、文筆に関してこれほどの手腕を温存しておられたとは!  (あぶはち/2007-05-30)
湾岸戦争において巨額の拠出をしたこと。
そしてクウェートが謝意を表明した国に
日本が含まれていなかったこと。

結果として、日本の貢献が実を結ばなかった
ということは知っていたが、本書には
なぜ実を結ばなかったかというプロセスが
綿密な取材に基づいて構成されている。

国民は主権者であるにもかかわらず、
通常このような情報に触れることはない。
敗戦のプロセスを詳細に知ることができる
本書は貴重であり、一読をおすすめしたい。 (あにも/2008-12-31)
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ウルトラ・ダラー (新潮文庫)
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新潮社(2007-11)
手嶋 龍一
売上順位:34611
¥ 660(中古:¥ 1)

レビュー総評点:30
大変面白く読んだが 若干の戸惑いもあった。本書は スパイ小説なのか事実に近いノンフィクションなのかが 読んでいてはっきりしなかったからだ。

 スパイ小説だと考えるなら もっと上手い書き手はいくらでも居る。手島は少なくとも小説家の資質が飛びぬけているわけではない。「創作された小説」として読むなら細部に詰めの甘さも感じるし サスペンスの盛り上げ方も幼い。またもっとエンターテイメント性も出すはずだ。手島が時折サービスのように挿入するエンターテイメント的な場面はいささか浮いている。照れていると言って良い。やはり ジャーナリストという出自だからであると思う。小説家とジャーナリストは 同じように言葉を武器としても まったく「文法」が違う。

 一方 ジャーナリストが書いたノンフィクションかというと それは有り得ない。例えば登場人物でもモデルを特定できる人も出てくるが その中身はおそらくフィクションである。この内容が全てこのまま本当だったとしたら かような本などは発行されないし 手島自身がどうなってしまうのかわからないと思う。

 この本の面白さは「どこまで創作なのか わからない」点にある。これは「どこまで本当なのか わからない」と言う言い方と 同じ事を言っているようで 実は全く違う。
創作だと思っていて読んでいるだけでは読み取れないということだ。

本全体に流れる一種の「説得力」を感じてしまうと「もしかしたらこの部分は本当かもしれない」と思わされてしまう事がしばしば出てくる。おそらく手島は 解る人には解るような書き方をしているはずだ。そんな 手島のウインクが 端々に感じられる。 (くにたち蟄居日記/2007-12-25)
同時代性という事情を鑑みるとよくできた読み物と評価したいと思います。

確かにフィクションとしてみると(濡れ場を含めて)一般ウケする小説は
たくさんあると思います。海外で暗躍する無名の日本人を題材とした小説は
よくある設定ですが私が評価したいのは、日本に暗躍する外国人を主人公とした点です。

登場人物が浮世離れしているというご意見もありますが、キャラもけっこう立って
いると思います。予備知識なしでフィクションとしての楽しみを期待されるのなら
失望される方もいらっしゃるかと思いますが、ある程度ノンフィクションを読む方
であれば、フィクションであるが故曖昧になるディテールがしっかり書かれている
点で楽しんで読むことが出来るのではないでしょうか。

内容の硬さが壁になりノンフィクションに手を出せない方にとっても違和感無く
読める作品に仕上がっています。 (Coffey man/2008-01-18)
本書は、元NHKワシントン支局長としてTVにも登場した手嶋龍一による、わが国初のインテリジェンス小説として、’06年にベストセラーとなった。

主人公は在日英国情報部員スティーブンである。彼の元へ「新種の偽百ドル札(“ウルトラ・ダラー”)がアイルランドのダブリンにあらわれた」という情報が入るところから物語は始まる。

この北朝鮮製とみられる“ウルトラ・ダラー”の謎解きを軸に、拉致問題、ハイテク企業の陥穽、外交官の暗闘など、あらゆる問題を巻き込んで、それこそ世界を股に駆けた北朝鮮をめぐる物語が展開されるのだ。

「なにをもってインテリジェンス小説というのか」という疑問を持って読み始めたが、どうやら今のわが国が抱えている政治・外交・諜報の諸問題の情報を十分に精査・分析して書かれた近未来・問題提起小説のようである。であれば手嶋龍一のような経歴と交友関係を持った人が情報を収集しなければこのような小説は書けないであろう。

本書は、問題が多岐に渡りすぎてポイントがつかみ辛かったり、登場人物が多すぎたりと、物語小説としては未熟の部分があるが、上述のようなインテリジェンス小説という観点からすれば、その目的は充分達成した作品といえるだろう。
(Wakaba-Mark/2007-12-11)
同時多発テロ時NHKのワシントン局長として一躍有名になった手嶋氏が北朝鮮から流れるウルトラダラーと呼ばれる性向な偽札の謎について、取材および独自の解釈を加えて描いた作品。

主人公の日本人とせず、BBCの記者の顔を持つ諜報員とし、彼や彼の周りのCIA、内閣官房、外交官、その他さまざまな人物を通し、日本の拉致問題やウルトラダラーの目的、その黒幕について、見事に書かれている非常に読み応えのある小説ではある。
どこまで本当なのか、もしかしたらこれが真実なのか。そう思わせる力量はある。

しかし、話があまりに多岐にわたり絞り込まれておらず散逸になった部分があるのが残念。
それでも多くの小説家が書く同じような題材の小説に比べて全く遜色はなく、大部分の本職の小説家より上手いと感じた。
(Tochitli/2008-11-08)
「インテリジェンス武器なき戦争」佐藤・手嶋対談の新書を読み、興味を覚えてこの「ウルトラ・ダラー」を手に取った。まさに虚実皮膜、そのブレンドのおもしろさがある。
話は浮世絵オークション会場から始まる。どういう展開になる?オークション描写自体にも仕掛けがあって、それ自体おもしろい。印刷工の失踪(1968年)、紙幣用紙の盗難(1988年)、凹版印刷機購入先の謎(1989年)、高級美術印刷会社社長の行方不明(1990年)という時間軸の伏線の後、2002年、BBC東京特派員のスティーブンに、疑惑100ドル紙幣露見のニュースが送信されてくるところから、ウルトラ・ダラーが動き出す。
スティーブンが、高遠内閣官房副長官、瀧澤アジア大洋州局長、大学の同窓で今はアメリカ財務省のシークレット・サービス捜査官コリンズそれぞれとインテリジェンスの駆け引きと展開が読みどころ。その会話が二重三重の意味を帯びてゆく。情報源を明かさずに目指す情報を得ようとするギブ&テイク、一方で、北朝鮮による偽造ウルトラ・ダラーの狙い解明と対応阻止の協力行動。ウルトラ・ダラーが東アジアでの外交戦略と安全保障の構図に緊密に絡んでゆく。思わぬところに仕掛けがあり、ぐいぐい引き込まれていった。
国家戦略の駆け引き、隠された部分に慄然とさせられる。日本外交に対する著者の厳しい批判の眼もストーリーに組み込まれている。この本を読んだ後、松村テクノロジー社長松村喜秀氏の「犯罪に立ち向かうテクノロジー」というネット連載(日経BP・SAFETY JAPAN:第2,3回)を見つけ、偽造紙幣に一層現実味が加わった。 (茲愉有人/2008-06-22)
内容や中心となる時代背景はかなり最新のスパイ小説。
歴史も立ち返りつつ、現在発生する事象の裏づけを組み立て、構築していく経緯も読みやすく、楽しめる。
ただ、男女の人間関係(だけが)が紋切り型で時代がかっていると感じさせ、小説全体の味わいを損なってしまった気がした。
他が素晴らしいだけに、そこが非常に残念な部分だった。
この部分と、自分がこの小説を読み返さないと思うのとで、星は三つとした。
とはいえ、娯楽として読むには耐えうる、それなりに素晴らしい小説だった。 (久保田夏彦/2008-03-20)
新種のドル偽装の真相を追い求めるというインテリジェンス小説です.主人公の英国情報部員はBBC放送の特派員という肩書きをもって日本で暮らしているのですが,日本語ペラペラでモテモテ,しかもいくら取材とはいえ外務省や内閣府にたびたび足を運んでいたのではさすがにあやしいでしょうという気がしますが,そこは小説ですね.

この主人公を中心として,様々な人たちが関わり合ってくるのですが,駆け引きあり,二重スパイありと,一体誰が本当の事を言っているのかハラハラドキドキの展開で一気に読み終わってしまいました.著者の経歴を鑑みてどこまで本当で,どこからフィクションなのか分からないところも一興です.

あくまでも知的な駆け引きで終わって欲しかったのですが,暴力的な終わり方はちょっと残念でした.
(wave115/2008-09-20)
解説の佐藤優氏によるとインテリジェンス小説とは、公開情報や秘密情報を精査、分析して、近未来に起こるであろう出来事を描く小説とのことで、このウルトラ・ダラーは我が国初のインテリジェンス小説なのだそうだ。

たしかにこの作品に書かれていることは、世界の裏側で起こっている出来事がわからない自分を含めた普通の読者にとって説得力のある内容なのだと思う。

でも、荒唐無稽であろうと現実的であろうと「小説」としてのおもしろさを期待して手に取ったわたしのような読者にとって、この小説はまったく楽しめなかった。

話の本線以外のところにも神経を使って細かく描写しているのはわかるけど、如何せん文章が小説家の文章ではなくジャーナリストの文章なので紋切り型になってしまうので読み飛ばしそうになってしまう。

登場人物の服装を説明するのにやたらとブランド名を用いたり、車の仕様を細かく説明するのもうるさい感じがする。濡れ場のないハードボイルド小説のようだが、ハードボイルド小説ほどはそれが徹底されていないのが何とも中途半端に思える。

そして、魅力のない登場人物、スケールは大きいが先の読めてしまう展開、含みを持たせているようで何の含みも持っていないラストシーン。こうして書き連ねてみると好みにあうところがまったくない・・・。

ゴメンナサイの☆×1
(TaroTaro/2008-07-20)
"ダラー"とは100ドル札のこと。
"ウルトラ・ダラー"とは新しい偽100ドル札のこと。

BBC東京特派員である主人公は、
日本にいて「北」の行う偽ドル札造りを追いかける。
「北」は紙幣印刷機も偽札検知装置も手に入れ、
必要な人は「拉致」もするし、脅迫も。

日本人を主人公にせず、英国人に任せるあたり
やりすぎるとある方面からの標的にされかねないからか。

それにしても内容はおもしろく
あっという間に読切ってしまう本です。
(もれしゃん/2008-06-30)
なぜこの小説が「インテリジェンス小説」と呼ばれているのかは解説を読まないと分からない。そして、なんというか物語が冗長なのです・・・著者が文化に造詣の深いことをアピールしたいのかどうかはわかりませんが、やたらと小説に関係のない話がでてくるために全くテンポがなく、忍耐を強いられました・・・そのあげくにあの終盤・・・半分ぐらいに凝縮していただけたら、評価できるのではないかと思います。
インテリジェンス小説とまでいうのであれば、偽札づくりはその手間やコストとリスクを考えたら全く手を出すべきものではなく、なぜかの国が非合法な行為を行ってまで、そのようなことをしているのか、せざるを得ないのかといったインテリジェンスも欲しかったです。
(さいとうひろし/2007-12-17)
偽札事件から北朝鮮の拉致、ミサイル取引、2重スパイ、エリート官僚の失踪と盛りだくさんの内容に思えるが、全てがご都合主義で繋げられ、どれも中途半端に描かれており、結局何が書きたかったのか良くわからない。日本文化を紹介しているものの、それが何に繋がるのか?登場人物のバックグラウンドの説明や服装の描写など何の意味があるのか?あんな陳腐な結末は一体何なんだ。解説にはインテリジェンス小説の古典、とあったが何をして解説者はそう言うのか?インテリジェンス小説自体が曖昧だし、もしこれがインテリジェンス小説と言われるのであれば二度インテリジェンス小説は読まないだろう。 (しんたろー/2008-10-05)
佐藤 優氏との共著『インテリジェンス 武器なき戦争』によれば、本作品は「嘘のような本当」と「本当のような嘘」をうまく混ぜ合わせ、「日本人にインテリジェンスの現実を気づかせ」るために書かれたらしい。

単なるエンターテインメントとしてもそこそこ読める作品であるが、上記の点を踏まえれば面白さも倍増すると思う。著者が一番訴えたかったのは中国の意図だと素人の私には思えるが、そう単純なものではないかもしれない。 (江口哲学/2008-02-11)
全体的にストーリーから脱線したどうでもいい話が多いため、
ややテンポに欠けるとはいえ、
中盤から終盤にかけての物語の盛り上がりはおもしろい。

国際情勢をめぐる問題に、
様々の立場の人間が入り乱れ、
それぞれの利害でうごめいていく様相と、
単なる偽札づくりにとどまらない、
問題の広がりはなかなかおもしろい小説だった。

読んで損はない本だと思います。
(かさこ/2008-01-13)
へぇー。 ||||||
本邦初のインテリジェンス小説、といわれている本書を今さらながら読了。

・心理描写がほとんど無く薄っぺら、かつ魅力に乏しい人物像。
・登場人物が多すぎて主人公が誰か判らないくらい。
・話が予想できてしまう陳腐な展開。
・たびたび発生する神様視点での描写。
・呆れるくらいつまらないラスト。

小説として読んだけど、すさまじく期待はずれのダメダメ駄作。

これはですな、ミステリファンが「密室ミステリの最高傑作」と絶賛している小説を、ミステリファンじゃない私が読んだとき、ちっとも面白くねえじゃねえか、と感じるときと同じがっかり感ですな。(例:私は、ミステリファンが絶賛している山口雅也の『生ける屍の死』のあまりのつまらなさに、200ページくらいで読むのをやめた)


そんでまあ、文庫版である本書の巻末には、佐藤優の解説が付いているのだが、
・冷戦後、日本人によって書かれた初のインテリジェンス小説だ。
・この小説は細部が実に面白い。
・『ウルトラダラー』はインテリジェンス小説の古典となった。
などと書かれている。

が、この佐藤優の解説をよーく読むと、どこにも「この小説は面白い」「この小説は傑作だ」のようなことは書いていないのだな。

絶賛しているのかと思えてしまうような書き方をしているけど、実はちっとも誉めていないのではないか? とも思えるこの解説は、佐藤優の精一杯の表現なのかな。
(罵詈雑言アラメンド/2008-02-05)
広い知識と人脈をアピールしているだけ。はっきりいって著者のイデオロギーを押しつけ、読者に先入観を植え付ける宗教本と変わらない。 (よち/2009-05-26)
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2009年面白かった本
情報研究入門:佐藤優の世界2
 
w:11 h:17 204page
国家情報戦略 (講談社+α新書)
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講談社(2007-07-20)
佐藤 優
売上順位:159845
¥ 840(中古:¥ 1)

レビュー総評点:119
北朝鮮の行動指針は陸軍中野学校での情報戦略そのままだから、敵を知りたくば、まず陸軍中野学校の教科書を探れという提案には驚かされる。
スーパーKなどと言われて有名になった北朝鮮の精巧な偽札製造も、陸軍中野学校がかつて行った偽札戦略と全く同じ手口だという。
他に金大中拉致事件の真相、日本の核武装の可能性についてなど、どれも淡々と、しかし大変な迫力とリアリティをもって書かれている。
他の佐藤氏の著作と比べると内容が薄いなどと言われているようだが、佐藤優入門書として充分おすすめできると思う。 (ヽ( ゜ゝ゜)ノ/2007-08-16)
本書は、元外務省主任分析官の佐藤さんと元韓国海軍少佐の高さんのインテリジェンスに関する対談集で、陸軍中野学校からイラク戦争まで、様々なテーマについて語られており、私は以下の見立等をとても興味深く拝読しました。

・金正日政権には、モスクワやパリへの留学を含め、欧米の洗練された国際感覚を身につけたエリートが存在し彼らが外交政策に助言していると見るべきで、欧米先進国の水準を凌駕する外交戦略がある

・北朝鮮はソ連時代にロシアで教育を受けた軍事テクノクラートの影響力が強まっており、ロシアは平壌に教会をつくるなどして彼らを取り込もうとしている

・究極のカード(核)を持つなかで、人類はどう生き残っていくか、核の帝国主義時代を迎える前に、(日本における)国家情報戦略の重要性を声高に叫ばなくてはならない
※現代の帝国主義=商品よりも資本の輸出が主流となった最高段階の資本主義

佐藤さんの他の著書と比べると情報の質・量・新鮮さにおいて見劣りする気がしますが、氏の著書を未読の方にはお奨めできると思います。
(New JJ-K 72/2007-08-14)
 外務省の元主任分析官の佐藤優氏と韓国の元海軍少佐にして国防省の海外情報部に勤務していた高ヨンチョル氏の対談が本になったもの。両者ともインテリジェンスの専門家として時の政権により逮捕・投獄された経験を持つ。テーマは日本・韓国・北朝鮮に関わるインテリジェンス(諜報活動)についてであり、主に高氏の経験が語られている。
 「現在、アメリカは、国家安全保障局(NSA)が主導する『エシュロン』と呼ばれる通信傍受システムを通じて、全世界を盗聴監視しています。」「NSAはCIAの三倍以上の予算が投入され、…人材面でも、NSAは修士以上の学歴を持った三万八〇〇〇人以上の要員」がいるアメリカ最大規模の情報機関だという。高氏は、NSAから「SI」すなわち「特別情報官」という韓国国防省情報本部にもつねに数人しかいない特殊な身分を得ていたようだ。
 北朝鮮によるスパイ事件に対し、韓国のカウンター・インテリジェンスはどのような状況なのですかとの質問に対し、高氏は「そうとう苦戦しています。なぜなら、北朝鮮のインテリジェンス能力は、世界でも一線級にあるからです。」と答えている。「とりわけ、スパイ工作活動は、冷戦時代に外国の政府を転覆させたCIAの水準に匹敵する高いレベルにあると見るべきです。」とも答えている。
 高氏は「あとがきに代えて」で、「日本人は昔からインテリジェンス感覚に優れたDNAを備えています。…全世界を舞台に国際ビジネスを展開している日本の総合商社のグローバル・ネットワークは、アメリカのCIAを上回る情報組織といえます。」こう述べた上で、日本が本格的なインテリジェンス機関を立ち上げれば、CIAを凌駕する世界第一の情報機関に飛躍する可能性が大きく、これが最良の選択肢だと言っている。 (A-san/2008-01-06)
対談内容
・韓国軍やアメリカの情報機関についての考査
・陸軍中野学校のインテリジェンスについての考査
・現在の日本のインテリジェンス能力向上への考査
・北朝鮮が置かれた状況
・今後の核武装について

この中の1つでも興味を持たれた方は読んで損は、ないと思います。
まあ、対談本です。
(明日天気にな〜れ/2007-07-20)
日本人が知らねばならない慰安婦問題 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
この問題が他の戦争関連の問題と大きく違う点は、70年代まで一切問題視されなかったということである。
日本の反日学者や韓国の学者ですら「兵士を客とした商行為」として一切問題にしなかった。
「政府・軍による強制連行」の話が出て初めて問題化し、韓国にも伝わったのである。
慰安婦運動は、89年に大分の運動家が韓国で元慰安婦を探したのが全ての始まりである。
この時会った毎日新聞の下川記者は「原告を探すという発想には正直驚いた」と語っている。
この後、朝日新聞の「政府・軍による強制連行」の大宣伝の影響もあり、日韓の国際問題に発展していくことになる。 (日本人慰安婦が圧倒的に多かったこと、多くの慰安婦が大金を稼いでいたことをマスコミは隠すな!/2007-07-21)
日曜を費やしてまた読んでしまいました。ところでこの対談は日本語で行われたのでしょうか?まず痛感させられたのは情報特にハードにおけるアメリカのNSAの存在の大きさです。両者共にこの点についてはアメリカの圧倒的な存在を前提とした上で議論が展開されています。そして情報の共有という意味では、アングロサクソン以外の国に対する明確な区別が指摘されています。ゾルゲについては佐藤氏のほかでの対談と異なり、だいぶトーンダウンした評価となっています。終戦につながるプロセスでの英国につながるグループの暗躍を指摘する点は目新しい点です。そして北朝鮮の謀略自体が日本の中野学校の手法に大きな影響を受けているという仮説が提示されます。最後の予測は恐ろしいものです。つまり将来の核拡散を前提とした上での枠組みの変化とアジア地域における恐怖の均衡の成立の不可避性です。そこでは核保有国は中国と北朝鮮だけではなく、日本、韓国そして台湾までが含まれることになります。 (recluse/2007-08-13)
本当に「過去を直視」すべきは朝日新聞 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
現在、国際社会では「日本国は国策として女性を強制連行し性奴隷とした」という話が常識となっている。
そうなった最大の原因は、朝日新聞の「政府・軍による強制連行」の嘘話の大宣伝である。
その朝日新聞は現在、
「官憲による強制連行があったかどうかは枝葉であり、問題の本質から目をそらそうとしている」
と言っている。
人間ここまで汚くなれるのだろうか?
ならば朝日の記者は世界中に飛んで「実は政府・軍による強制連行の証拠は一切無いんだ」と誤解を解くべきだろう。
それが責任のとり方じゃないのか?
朝日の記者にだって少しは良心があるのだろう? (最近も「数万人の女性を拉致し、強姦し性の奴隷とした」という米紙の社説を嘘とわかって載せていた。最低だ/2007-07-21)
インテリジェンス・オフィサーであった両氏の対談本。

コウさんの「北朝鮮特殊部隊 白頭山3号作戦」の出版の際に、佐藤さんが解説を書かれています。実は、出版社より、佐藤さんにお願いされたのは、”帯の推薦の一文”だけだった。しかし、著書を読んだ佐藤さんが、あまりに面白かったので、”解説”を書かせてほしいとお願いしたーというエピソードから対談が始まります。

外務省時代から佐藤さんは、陸軍中野学校のことを調べていらっしゃいますが、コウさんとの対談を通して、更にその遺伝子がどう朝鮮半島で成長したのか、より深く感じられたのではないでしょうか。 両氏にとって、刺激的な対談であった思うほど、生き生きした内容です。また、韓国、北朝鮮での政治の舞台裏は、普段、垣間見る機会がないだけに、とても私には新鮮な内容でした。

色々なトピックがある中で、ゾルゲ事件についても、佐藤さんの独特の見立てが面白い。 誰が一番得をしたのかという観点から。
結局イギリスだったのではないか、そこから、新の仕掛け人は、イギリスだったのではないか。。。。白洲次郎がからむんじゃないかと読み取れないこともない内容で、今後、佐藤さんが、白洲さんを調べて、発表してくれると嬉しいなと思いつつ、白洲ファンでもある私は、勝手に期待を膨らませています。

面白くて、あっという間に読んでしまった本でした。


(えっつい/2007-07-22)
日本やロシアのインテリジェンスについて、佐藤氏が高氏に対して解説する箇所がかなり多く、必然的に佐藤氏の他の著作との重複が多くなっている。
特に中野学校やゾルゲなど、第二次大戦におけるインテリジェンスについては手嶋龍一氏との対談本と内容がかぶっているので、少し残念であった。
後半、高氏と佐藤氏による南北朝鮮を中心とする東アジア情勢の分析は非常に興味深いが、佐藤氏は多数の著作があるのだから、もっと高氏から韓国インテリジェンスの内幕について多くの発言を引き出すような対談であってほしかった。 (picander/2007-08-02)
インテリジェンスについて,日本の元外務省局員と韓国の元軍人の対談でまとめた本.

章だてはあるものの本編は全部対話で占めているため,話の流れが
体系立ってはいない.しかし,2人の経験から来ていると思われる
内容だけに迫ってくるものがあった。

いろいろな内容が書かれていたが,特に印象に残ったのは
北朝鮮の話であった.エリートは各国に留学して
対外政策をアドバイスしているため,とても外交レベルが
高いそうである.それに対して日本はスパイ天国お間抜けな国と
この本でも書かれている.
拉致するほうが悪いのは確かだが,拉致を防止できない
国家である日本もかなり間抜けに感じ,考えさせられる本でした. (親カッパ/2007-11-17)
インテリジェンスは、怖い。そしてそれゆえ、恐ろしいほど魅惑的だ。
日韓における屈指のインテリジェンス・オフィサー同士の対談は、凄味のある蠱惑に満ちている。
両者ともに、切れ者であるがゆえに「国に裏切られた」情報士官であるとは、なんという巡り合わせか。

そもそも、インテリジェンスというものは「国益」という徹頭徹尾利己的なものをめぐって行われるものでがゆえに、
「お前が利己的であるということだけは信頼できる」という逆説的な公理が成り立つ。
その逆説が徹底したところが、陸軍中野学校が言う「謀略は誠なり」となるのだろう。
ワクワクするほど面白く、ドキドキするほど怖い。こんな本は、本当に久しぶりである。 (馬場伸一/2008-03-02)
国際情勢を読み取る上で避けて通れない諜報活動。
日本側の佐藤さんと韓国側の高さんのお二人が解説する。
お二人は所謂国策捜査で犯罪者の烙印を押されながら著作活動を行なうという点で共通項を有している。
もちろん本書が国家という概念構造が有する諜報活動を全て網羅しているとは思えないし、当然お二人の守秘義務が今も歴然とある訳ですから外交活動上知得た秘密は暴露していないのでしょう。
それにも関わらず、いかに我々小市民は知らない事が多いかを痛感する。
陸軍中野学校の教えが諜報活動のあたかもグローバルスタンダードの様に思えるし、国家のために死ぬ事をいとわない人々がこれまでの外交の裏舞台で活躍していたことを指摘する。

国益という文脈では諜報活動はやはり不可欠なのだろうか?通信衛星を使った盗聴、盗撮、なんでもありの世界が今後どんな展開をするのか?
小市民は知らない方がよいですね。 (dream4ever/2007-11-26)
平和ボケした日本に警鐘をならす良い対談でした。日本も早く国家情報戦略を築く必要があると痛感しました。また、陸軍中野学校は誠のある素晴らしい諜報機関だったと再確認しました。 (東南西北/2007-11-23)
 政治、軍事、経済において大きな力を持つ国家情報(インテリジェンス)。日韓インテリジェンスの第一人者が、友好国間のインテリジェンス協力、政治とインテリジェンスの関係、さらには核、北朝鮮、日本の未来をも論じた対談集です。

 各国の諜報機関や六カ国協議の裏の目的など、新聞を読んでいるだけではわからないことが、第一線の情報分析官の実体験に裏打ちされた思索から読み解かれています。 (ヒソカ/2008-09-09)
インテリジェンスとして活躍しながらも国策捜査に巻き込まれた2人による、インテリジェンス雑談集。
雑談集ではあるが、その内容には通常知りえぬ興味深い話が多く、一気に読みきってしまった。エシュロンや偵察機、盗聴器などのインテリジェンスを支えるハードウエアの性能が想像以上に進んでいること、北朝鮮のインテリジェンスが非常に高水準であり、韓国の大統領選挙を左右するような情報操作が行われていることなど、現在進行形のニュースの裏側を垣間見ることができる。また、歴史上の大イベントについてもインテリジェンスの目線からの考察があり、2時間たっぷりと楽しませてもらった。
(BOB/2008-08-07)
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たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
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新潮社(2006-06)
手嶋 龍一
売上順位:19325
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レビュー総評点:6
奇跡のようなノンフィクション作品の金字塔である。次期支援戦闘機の導入を巡って、日本国内では零戦の伝統を汲む国産推進派と米国から完成品を購入する輸入促進派の対立。米国内ではペンタゴンと商務省の対立。それらが相互に干渉する関係の中に、日米同盟というお題目だけでは指の間から滑り落ちてしまうような、日米関係の真実の姿が鮮明に表れている。対立する関係者複数の視点を取り、実名とエビデンスを明かして描かれている本書の手法をもって初めてわかることだ。

日本の対米戦略(というものがあったとして)に対して疑心暗鬼に陥る官僚たちや日本になにがしかのシンパシーを抱く議員たちの心理描写も、じつに細かい。日米同盟という理想は、その縁の下で汗をかいて働く男たちの存在なしにはあり得ない。その当たり前のことが痛いほどよくわかる。

ここまで大きな対象を、ここまで「客観的」に描ききった力業には感服せざるを得ない。提供された情報のバイアスに引っかからないためには、反対勢力の話を聞けばよい。業界では「裏を取る」とか「当たる」とか言うが、このことは簡単に見えて、じつはむずかしい。ある主要な情報なり視点なりに依拠しすぎた場合、明らかにそれと反する情報なり証言が出てくると、誰だってそれを素のままに受け容れないものだ。この著者はその罠にほとんど引っかかっていない(強いて言えば外務省寄り過ぎかもしれないくらいか)。それが「奇跡のような」と冒頭に書いた理由だ。

名声を得た後に露見した著者の自己顕示ぶりは、本書の読後感からはウソのように見えてくるが、この本でもけっして著者は「自分」を消していたわけではなかったのかもしれない。また単行本の『ニッポンFSXを撃て』のタイトルのほうがよかったと思う。 (ぴょんきち/2008-08-20)
日米同盟が危機に陥った時期があった。
日米同盟を守るために、ギリギリの戦いを
行った人たちがいた。彼らの活動に焦点を
あてながら、日米同盟の歴史を知ることができる。

日本経済の繁栄によってアメリカの保守化を
もたらしていた時期、この傾向は湾岸戦争にも
続いていく。「外交敗戦」とあわせて読みたい。 (あにも/2009-01-16)
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戦闘機、航空機関係の本
経済・企業小説他
 
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ウルトラ・ダラー
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新潮社(2006-02-28)
手嶋 龍一
売上順位:137889
¥ 1,575(中古:¥ 1)

レビュー総評点:97
素材としてはおもしろいものを扱っています.普通の人があまり知らない諜報という世界のおもしろさと怖さを少しかいま見させてくれます.ただ「小説」としてはあまり感心しません.登場人物がいずれもあまりにステレオタイプで,いかにも絵に描いたような人物ばかりです.人物描写がおざなりで明らかに書き込み不足ですね.また最後の幕切れは,はっきり言って安直です.安物のスパイ小説のような幕切れでは,それまでの描写は何だったんだと思います.NHKの元記者ということですので,事件の背景の書き込みにはさすがと納得できますが,小説としてはまだまだ完成度が低いと思います. (Lady Clare/2006-07-06)
フレデリックフォーサイスの”ジャッカルの日”を読んだときの衝撃と同じぐらい、いや、日本が関わっているだけに、衝撃度は、今回の方が高いと思う。

事実という小さなピース、それ自体はその事実しか表さない。
しかしその小さなピースを沢山集めて、ひとつの絵にしたとき、表面にみえてくるものだけでなく、その奥深くにうっすらと見え隠れする強大な国の意志などが見えたとしたら?

彫琢した情報のみが本質となるのだ。

手嶋氏はそのうっすらと見え隠れする本質膨大な情報のなかから描きだした。

ここに書かれていることは、起こる可能性があるので、フィクションと言えないかもしれない。
現実に十分可能性のあることなのだ。

内容としては、北朝鮮の偽ドル紙幣偽造についての話だ。
詳しくは読んでいただきたい。読む価値が十分にある本だ。

ストーリーと、プロット、内容もすばらしいが、全編に漂う、細部にわたる本物感だ。
具体的にいうと、はじめのオークションのシーン、体験したものでないと味わえないような状況が、手に取るようにわかる表現で表している。
手嶋氏のインテリジェンス(ここでの意味は、深い教養)はそこまで深いのだ。

ところで、著者の手嶋氏は元NHKのワシントン支局長なので、ニュースなどでそのレポートをお聞きになったことがあると思う。
その手嶋氏は、NHKを退社した理由として、この本を書いた責任を組織で負うのではまずいので、個人で負う。
そのために退社したと発言していた。
こういう気骨のあるジャーナリストもいるんだと改めて感心した。

何をおいても、必ず読むべき一冊だ。
(taizo16/2006-03-11)
中途半端な迫力 |||||||||||
同じ著者の「インテリジェンス」などで予備知識を持つと興味を持って読めるだろうが、それは小説としてもノンフィクションとしても一人歩きができていないということだ。
キャラクターがどれもわかりやすい。わかりやすすぎて奥行きが感じられない。特に登場する女性がいずれも教養が高く容姿端麗、ブランド志向。案外インテリジェンスの世界に棲む人間はそういうものなのかもしれないが、それを「あり得る」ように表現できていないのが、やはり小説としての完成を作者が考えていないからだろう。ノンフィクション小説と呼ぶなら、小説としては類書にはるかに劣るし、ノンフィクションとしてはどこまでが事実かが曖昧である。いずれにしても迫力が出し切れていない。頭脳戦に集中していた主人公がラストでゴルゴ13みたいになるのも唐突の感を免れ得ない。 (石屋川乱読/2007-01-28)
佐藤優氏との共著「インテリジェンス」を読んでから、
こちらの作品に流れてきました。
いや、読ませる、読ませる。一気に読めました。

情報の交換に、かなりの想像力を必要とするような
間接的な話法を使っているところが、
プロフェッショナルな感じでリアリティを感じました。

英国人の主人公が日本の洋食屋へ招待される、という件は、
佐藤氏の「自壊する帝国」の中に出てくる
ロシアへ日本の某洋菓子をお土産にすると喜ばれる、
という逸話に似ていて、面白かったです。
外国人と付き合いのある人は、参考にできそうですね。
インド人に日本のカレーを食べさせるのは、NGですが。 (kaz-p/2007-01-06)
前NHKワシントン支局長の著者が送る一冊です。
彫刻職人の失踪、行方不明になった紙幣印刷機、そして偽百ドル札。
物語の展開する場面は多岐にわたり、緻密な情景描写で綴られた文章、
また偽百ドル札にまつわる様々な事柄など全体的に興味深く読めました。
前半の導入部で引き込まれるように物語に入り込みましたが、場面展開に
少し戸惑う部分もありました。偽百ドル札の裏側に迫る、そんな一冊です。 (タイムカプセル/2006-05-03)
おそれいりました |||||||||||||||||||||||||||||||
9.11の直後、休みなくワシントンからレポートしている手嶋さんの頬がだんだん削げていくのを見ながら、それでも変わらない穏やかな口調と、その中に潜んでいる何か熱いものに感銘を受けたのを覚えています。その手嶋さんが書いたというので早速読んだのですが、いやあ参りました。脱帽です。
キャリアから言って取材は綿密なのだろうとは思っていましたが、本筋以外の各方面での造詣の深さにびっくり。オークションから邦楽から料理から和服から競馬から、何と言う守備範囲の広さでしょう。(こんな厳しい題材でなければ映像化を期待したいくらいです。ちなみに、ラブシーンにさしかかるとうまくぼかしがかかるところが、どこか昔のNHK的で、ちょっと笑ってしまいましたけど。)
それら絢爛たる小道具をちりばめて書かれるストーリーは、小説として処理する以外には書きようのない事柄を重く含んでいることが素人ながらよくわかります。私たち日本人は、拉致問題や靖国問題などピンポイントの政治問題はわかっても、それらの海底山脈のような見えないつながりについては、あまり考えていません。プロたるべき日本の政治家・外交官も、実はそうなのではないでしょうか。眼力と知恵と正義感と胆力が兼ね備わったプロが、何より必要だと思います。
フィクションとしても、ノンフィクションと考えても、力ある傑作だと思います。一気に読んだあとの読み返しが全然つまらなくないです。
NHKの人事は政治部偏重だと不祥事報道の時に言われていましたが、名物キャスターは多くが外信部の出身です。手嶋さんも名ワシントン支局長だと思っていましたが、こういう転身をなさるとは、夢にも思っていませんでした。お見それ致しました。硬軟ともに、今後のさらなる御活躍を期待しております。 (helleborus/2006-03-29)
次作に期待 ||||||||||
NHKのワシントン支局長という出世コースのポストにいながら、突然辞職して話題となった手嶋龍一氏が小説を書いたというので読んでみた。北朝鮮による日本人拉致とドル紙幣の偽造、それに対するアメリカ、日本、中国の対応など地球儀全体を飛び回る、スケールの大きな話である。また、パーツパーツは、さすがジャーナリスト出身者だけあり、リアリティあふれる繊細な描写となっており、帯に書いてあったとおり、「これを小説と主張するのは著者だけである」というのもまんざら嘘ではない。一方で、パーツを結ぶ部分の描写、人間関係の描写が未熟で、かなり強引な展開をしている部分が残念。このあたり、もっと丁寧な書き方をしてくれるのであれば、次作は期待できるかもしれない。 (海援隊/2006-05-22)
 この作品は小説として読めば評価は高くないかもしれませんが、手嶋氏が得たインテリジェンスを小説風にして著したと考えると良く出来ていると思います。実話がちりばめられている作品として私は読みましたので、手嶋氏の得たインテリジェンスのセンスを評価したいと思います。
 このコメントは、「国家の罠」の著者の佐藤優氏が手嶋氏のインテリジェンスを誉めていた影響が大きいのですが。 (PAPPY/2006-11-15)
スパイ天国といわれている日本が舞台の物語だけに、諜報の裏側を見せられると現実に恐ろしくなってしまう。
平穏に始まった今日も、世界のいたるところで諜報活動が行われているのであろう。

主人公のスマートな英国人は許せるとしても、女性登場人物がほとんど全て同じタイプであったのがとても残念。そのせいか、逆にどれも個性が無くなってしまった様な気がした。
ラストの展開は、もう少しなんとかならなかったのだろうか。
期待して読んだ割にはあまり面白くなかった。

(ポンキッシュ/2006-08-01)
先日のニュース。米国が北朝鮮で偽ドル札が製造されていることを確認したと発表した。TVのニュースキャスターは「スーパー・ダラー」と紹介した。

北朝鮮が、どのような手段で、どのように精巧な偽ドル札を製造したのか。「小説」というかたちで、その行程を掴むことができるのが、手嶋龍一氏が書いた小説「ウルトラ・ダラー」だ。

手嶋氏はNHKの元ワシントン支局長。つまり、現実に起きている事件を取材し、報道する機関にいた。北朝鮮の偽造ドル札製造とそれに関する動きを、事実である可能性が高くても最終的に報道できるだけの裏づけがなかったり、外交上の理由で報道できない情報として掴んでおり、それを「小説」というかたちにして見せたのだと思う。

小説を読んでいる時には「一体、どこまでが事実なのだろう?」と想像しながら進む。
報道されないままだった重要な事実がようやく報道された時、読者は「あの小説に書かれていたことは、事実だったんだ」と確認することになる。そして、報道でも確認できない部分を、さらに小説から想像することになる。

報道が小説よりも遅い。
報道で伝えられる内容が、小説から読み取れる内容と比べて情報が少ない。
そうなると、「報道=裏づけが取れた事実」の持つ力が脆弱にさえ感じられる。この小説はそういう力を持った作品だと思う。

少し厳しい目で見て、付け加えるならば、小説という土俵でこの作品を見たらどうか?という点である。展開の面白さ、登場人物の描き方などの要素が、よくも悪くも小説の背景にある事実の持つ力に押され気味な印象が残ってしまう。「事実は小説よりも奇なり」なのだろう。
(ゆかり/2007-02-14)
導入部から、何か面白そうとワクワクしましたが、後は、全くの尻つぼみでした。

構成に難があって、登場人物を順番に並べるだけで、
途中まで主人公が誰か分かりませんでした。
あと、真の敵がはっきりしていなかった。
それに、主人公はイギリス人でしたが、
やっぱり日本人の描く小説だから、日本人でないと。

あと駄文が多すぎる。料理も服の説明も粋では無いと感じました。
最後のとって付けた様な、エンディングも興ざめです。

せっかく人の知らない世界や人脈を持ってるのだから、
もう少し、煮詰めていればなあ。とは思いました。
(kawakawa20/2006-08-16)
911の際有名になった話題の人の本ということで詠みたいと思っていたのですが、結果から言うと少し遅れて読んだのがタイミングとしてちょうど良かった気がしています。北朝鮮の核に関して述べられており、報道の最前線にいた人間は北朝鮮の核実験は既にするかしないかと言う問題ではなく、時期だけの問題だったのかという気にさせられます。
イラン、中国、北朝鮮の関係、背後で動いている人々が垣間見れ、現在起こっている国際関係の報道を見るのに非常に参考になる本です。

内容に関しては折り紙つき、逆にこの人が仮にどこかのスパイで我々に情報操作をしていたら怖いなあとふと思ったりして。。。

同氏はつい先日までNHKの社員をされていたのですから、話しの面白さにおいて他の語り口豊かな作家と較べてはいけません。ある意味一級の資料として読むべき本です。

スリルとサスペンスを感じたいならもっと適した本はあります。その点は次作に期待です。


(草雲雀/2006-11-04)
ウルトラ・ダラー |||||||||||||||||||||||||
真実みのあるストーリーですが、なにかものたりない。もっと北朝鮮や中国のことがなまなましく書かれてると思ったが、多くの文化的なことや状況の描写が中途半端でストーリーを進めていくには邪魔になってると思う。正直言って何度も途中で読むのをやめようと思った。
こういうのは小説ではなく著者の想像を入れたノンフィクションのほうがおもしろい。 (yt34/2006-04-09)
著者の手嶋龍一さんには9・11テロ時のNHKワシントン報告で好感を持って
いた.NHK記者としてでは書けないことを小説という形で表現した
かったのでしょう.
北朝鮮で偽ドル札を印刷していることは世界周知のこと.
本書はその事実をもとに,スイス製紙幣印刷機,アメリカ製紙幣用紙,日本製
インクなどの調達策,さらには紙幣印刷のための職人の拉致作戦などを
軽快に描いている.北朝鮮のニセドルの目的は何か,イギリスBBC記者の
諜報部員とアメリカの偽札捜査官が活躍する.目的は最新のミサイル
であった.フランスから北朝鮮への輸送はセーヌ河上で阻止された.
驚いたことに,この阻止作戦の情報が日本の外務省から北側にもれ
ていた.外務省アジア大洋州局長が北と通じていたらしい.彼の生い
立ちを調べると,生みの母は在日朝鮮人で,北の工作員であった.
さらにその中学高校の同級生に,今は北の高官になっている旧友が
いた.その旧友とアジア大洋州局長は北京で再会し,総理のピョン
ヤン訪問が企画された.さらに驚くことに,この一連の企画は中国の
息がかかっているとのことであった.
虚実取り混ぜての小説であるが,90%が実と思われる.
手嶋さんはよほど書きたかったのでしょう. (瀬戸の仙人/2006-03-16)
前出のレビューにあるように、冒頭は意味深で良かった。しかし、その後の展開が遅々として全くおもしろくなく、読み進めるのに時間がかかった。
著者の経験による知識と、物語の部分が乖離し過ぎている。
総じて、純粋なエンターテイメント(スパイ小説)なのか、ドキュメント小説なのか、書き手としてのスタンスをはっきり決めないで書いているのが問題だと思う。
だから、登場人物のやたらとハイセンスな趣向についての話が、突拍子もなく冗長に感じた。
もっと作家として経験を積めば「事実を元にしたエンターテイメント作品」が書けるようになるのかもしれない。
(Avec maman/2007-10-07)
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ライオンと蜘蛛の巣
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幻冬舎(2006-11-10)
手嶋 龍一
売上順位:114076
¥ 1,575(中古:¥ 46)

レビュー総評点:21
アラカルトの如く…という評がありましたがまさにそのような印象。
普通の生活ではあまり触れることのない世界の人々との関わりを、細かくしかしあっさりと軽妙な切り口で語っていて想像力を掻き立てられる。冒頭の『ミーシャの墓碑銘』などは珠玉の一品。
形態がエッセイなので今までの作品とは味が違いますが、味わい深い、興味深い小品集でした。 (冬子/2006-11-27)
世界の各地で蜘蛛の糸のように正義のために戦った人々がついにライオンをもしとめるという。そんな人々との出会い、印象に残った地が、カットの印象画にふさわしい格調のある煌めくような文体で描かれている。そしてさまざまな小さな出来事が一つになって、著者が一番訴えたいメッセ-ジ「早く日本は、経済大国からインテリジェンス大国に変身してほしい。イラク戦争に苦しんでいるアメリカから離れ、透徹した知と志で、日本の戦略を考え、日米同盟を再考し、フランスやドイツのようにしたたかな道を歩いてほしい。」となって心に重厚に迫ってくる。著者独特の世界にどっぷり浸れ、今の日本や世界に必要なインテリジェンスに気づくことのできる本である。「日本は、安全保障をアメリカにゆだねてきた結果、国際秩序の創造に関わる志を喪い、明日の戦略を担う若い人々を育成してこなかった。」93歳のマンスフィ−ルドの演説「日常の些事によってではなく、国家と世界に本質的な変化をもたらす本質的な課題に上院はいかに立ち向かうか。」はすばらしい。
(第三の男/2006-11-15)
満足。満足! |||||||||
今までとは趣を一変する作品だった。
軽妙洒脱な文章の中にちりばめられた著者の「智」と「粋」に引き込まれ、ページが進んだ。
インテリジェンスをバックボーンにした重めの一皿、スパイスとして効かせた軽めの一皿。
29の都市と、人とにまつわる物語がア・ラ・カルトのごとく用意されている。
秋の夜長には打って付けの一冊だった。
(ネット好きの活字中毒/2006-11-24)
ファンの期待を裏切る作品 |||||||||||||||||||||||
 『ウルトラダラー』に感銘を受けて以来、古本屋を歩き回って、手嶋さんの著書を全て読み漁りました。そして、その大半が素晴らしい出来の作品でした。

 しかし、今回の作品はあまりにスカスカです。過去のエッセイをかき集めて、かわいいイラストを挿入して、無理矢理一つの本にしたという感じです。文体がややナルシスティックで、他作品のような臨場感がありません(ノンフィクションでなくエッセイですから、当然と言えば当然ですが・・)。幻冬舎のマーケティング戦略の巧さには感心しますが、マーケティングの巧さに本の質がついこなければ、幻冬舎にとっても、手嶋さんにとっても、ただ単に読者の信用を失うだけで長期的なメリットはないのではないでしょうか。期待していただけに、本当にガッカリしました。 (yukkiebeer/2006-12-19)
 今年(2006年)の前半、「ウルトラ・ダラー」(新潮社)を著して話題になった元NHK記者によるエッセイ集です。長年国際ジャーナリストとして海外で見聞した出来事や出会った人々にまつわる29の随想を、この著者ならではの高い教養と溢れるほどの品位を伴った文章で綴っています。

 私の心に特に響いたのは「冷戦の廃市」と題した一編です。1960年代、英国外交官として西ドイツの首都ボンに勤務していたジョン・ル=カレと、当時の西ドイツ首相アデナウアーの二人を絡めたかと思うと、現代のドイツがイラク戦争に際してアメリカと大きく距離をとる政治方針をとったことの根源をこの60年代冷戦期の米独関係にまで遡って論じて見せます。

 同じように歴史の時計をぐっと巻き戻して、当時はさほど大きな意味をもつとは思いもよらなかった事象を見つけ出し、今まさに進行形の現代史に影響を及ぼす皮肉なまでの巡り会わせを綴ってみせた佳品が「白き沈黙の道」です。
 民主党の連邦議員として米国外交史に大きな影響力を発揮したスクープ・ジャクソンは、1945年ドイツ降伏の数週間後にワイマール郊外のユダヤ人強制収容所ブーヘンヴァルトを調査訪問しています。その時彼が伴っていた大学院生の一人が、あのポール・ウォルフォウィッツだったというのです。この強制収容所での見聞が、後のネオコンの中心人物となった男の原点なのかもしれない。そして大戦中のブーヘンヴァルトの悲劇は、めぐりめぐってイラクでの悲劇を生むに至ったのかもしれない。そう著者は悲しい思いを馳せるのです。

 この著者の著作とは10年以上前に手にした「一九九一年日本の敗北」(新潮社)以来のつきあいで、ノンフィクション、フィクション、どれも期待を裏切らない、とても読み応えのあるものばかりです。今回のエッセイ集でもその点を確認できたことは、私にとってささやかな安心と喜びを与えてくれる出来事でした。

(/)
 今度はエッセイ集ですか…。相変わらずの華麗な文章(少々キザですが)で、取材者、研究者として見聞きした世界の要人たちやインテリジェンス(情報戦)最前線のエピソードや、彼自身の考察や見解がつづられている。

 しかし…著者の人脈の広さや博覧強記ぶりには、舌を巻くしかない。こういう人物が“一放送局員”の立場に甘んじていられなかったのも無理はない。

 それにしても…この人の著書にクリントンやコールと並んで、日本競馬史上の傑物・吉田善哉氏と名種牡馬サンデーサイレンスが登場するとは!!カジノ好きで知られる氏であれば、競馬にも造詣が深くて当然だったかも知れないが、一競馬ファンとしては、嬉しい驚きでした。
 (個人的にはもう一つ、コンピュータ開発史に燦然と名を残す英国の天才数学者アラン・チューリングの名が登場したことも…。)

※”鼻につく”という感じの章も幾つかありましたが、その辺りは”好み”の問題かと…。 (D.O./2007-02-23)
大変評判が良いので、手にとってみた。なにやらやけにキレイな本で意外だった。
はっきりいってつまらなかった。映像ならキレイなのもいいが、書籍の体裁を
とるなら、本書で著者の活字に触れる読者もいるのですから手嶋龍一とは何者であるかを
文体で知らしめてほしかった。エッセーなんだからいいじゃないか?
NO.  だからこそだ。
(人形美々寿/2007-02-11)
NHKの記者として海外駐在し、外交・安全保障問題を担当していた著者による主に国際政治・外交とインテリジェンスに関わるエッセイ集。全く知らなかった地名が国際政治の一ピースとなり、そこでの思わぬ政治・外交の断面がエッセイに切り出されている。それらのピースが大きな国際政治・外交の構図にはめ込まれ、きらりと光る著者の目線で読みやすく語られている。クリントン元大統領やドイツの元宰相コールの素顔の一端を覗けるし、ムービング・セールのエピソードやカジノの描写もあり、おもしろかった。公然とした歴史的事実を除くと「何時」という特定ができない書き方が特徴的。もちろん「誰」という要素も曖昧化されている。インテリジェンスの機微を扱う場面が多いせいだろうか。「かぼそい蜘蛛の巣も、人々が手を携えて丁寧に紡いでいけば、ライオンをも捕らえることができる」(ジョンソン牧師)に、アメリカの底力を感じる。 (茲愉有人/2008-05-28)
「小説の様なノンフィクション」と書かれた帯に違わない、独立した29話が収録されているエッセイ集という感じであろうか。世界のそれぞれの土地で、主に各国の要人と親交を持った際の手嶋氏の叙情豊かな逸話が、小説家=手嶋龍一の目で華麗に描かれている。ハーバードの街並み、ボストンのたたずまい、イギリスの空気、などが匂い立つ様によみがえり、しばし幸せな気分におちいる。外交や政治をテーマにした書籍にもかかわらず、匂い立つような芳醇な文化の香りがする不思議な読後感の書籍である。手嶋さんのファンにはたまらない一冊ではないだろうか。 (るるー/2007-09-03)
・前著の『ウルトラダーラー』を読み、最新刊を探して本書にたどり着きました。
・本書はオムニバス形式になっていて著者が何を言いたかったのか把握しづらかったです。
 ただし、著者の高いアンテナで収集された欧米諸国の要人の視点を気軽に摘み食いできるのは貴重だと思いました。読み手それぞれが美味しいと思う部分を味わえば使える本なのかもしれません。
・個人的に印象に残った部分は、
 −「テレビ・メディアはときに活字メディアをはるかに凌ぐ鮮烈な起爆力を持つ。事柄の核心を誰よりも的確に照射して本質を鋭くえぐり出してみせる。だが、日本ではその可能性を自ら扼殺してはいないだろうか。視聴者は単純な切り口こそ喜ぶはず。そんな傲慢な思い上がりが、送り手の側にありはしないだろうか。その果てに受け手の側もテレビ・メディアにもはや多くを期待することをやめてしまったように見える。」です。 (Pt/2007-05-07)
この著者は広く見識も有り、物知り博士としては立派だが作品はがっかりものばかり。本質が見抜けない日本人には著者としてはいいのかも知れない。とにかく親米派で右より。イデオロギーを押しつけマインドコントロール技量だけはすばらしいと思う。 (よち/2009-05-26)
著者が海外特派員時代に、派遣先の国々で
接触があった人物を描いています。

扱っている人物も大統領や元諜報部員など
政治に関係している人物から、地域の
民間人などまで様々です。

手嶋さんの文章には格調というか
品のようなものを感じました。 (あにも/2009-01-09)

『ウルトラ・ダラー』とは一味も二味も違う、
国際教養派に贈るノンフィクション・エッセイ集。
スパイ小説を読んで心躍らせたい読者には不向き。

歴史上、国際政治上の様々な事象を関連付け、
紐解いていく精神的営みにはまさに頭が下がる。 (アジアの息吹/2007-07-03)
世界の終わりまでを計る「終末時計」では、今年5分前まで進んでいる。
 米ソの冷戦以来の数字なのだが、日本はなぜ、こんなに平和なのだろう。
 あの頃は結構緊張感があった。
 格段に情報が伝わる速度は上がったのに、また、世界は小さくなったと言われるの
に、なぜか、危機感がない。
 北朝鮮やイランの核も、中国の軍拡もすべて対岸の火事であり、インテリジェンス
に対する意識も
低いからか。
自衛隊員の中国人妻によってイージス艦の機密も漏洩している。
しかし、そんな状況に警鐘を鳴らすのがこの本、と言っては持ち上げすぎだろう。

 著者らしいソフトな拵えや、「ウルトラ・ダラー」のせいで、どうしてもそんな目
で見てしまうところもあろう。
そんなことを考えず、フツーのエッセイとして読めばいいのだ。
初出はそれぞれの雑誌だし、トータルの流れがあるわけではない。

でも、一冊の本にする際には、それなりの流れが欲しいのも実感としてある。
世界各地を舞台にしているだけで、加筆・修正など特にいじった風でもない。
ページ数も240頁と少ないし、その割りに、この定価はちょっと、お高い。
タイトルも明らかに前作を意識したつけ方で、読者はそそられてしまうだろう。
(やじうま/2007-04-11)
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イナバウアー的な本
読んだ本(絵本以外)2006年12月
 
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国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
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新潮社(2007-10)
佐藤 優
売上順位:587
¥ 740(中古:¥ 338)

レビュー総評点:196
佐藤優氏は外務省のノンキャリアでロシア大使館での仕事に従事した後、日本に戻って特殊情報(いわゆるインテリジェンス)担当となる。

外交というものはあくまで国益を追求すべきものだから、必ずしも正々堂々がいい訳ではない。北方領土も、現状を踏まえて且つ相手国たるロシアが本質的に求めるものは何か、を追求しつつ、政治と経済と組み合わせて交渉するのが正しい。

佐藤氏はインテリジェンスの内でも、それまでの経験を活かしたロシア、東欧の仕事が主となる。そしてロシアといえば北海道出身の議員、鈴木宗男氏。「ムネオ・ハウス」なんかで有名になった人。結局佐藤優氏は盟友ともいえる鈴木議員に連座する形で起訴された。

僕はこの本を読むまで鈴木宗男氏は利権をむさぼる汚い奴と思っていた。そして連座した佐藤優氏も典型的な世の中の常識からずれた外務官僚と思っていたが、この本を読んで、それが誰か及びマスコミによって作り上げられた歪んだイメージで、真実はこの本に書かれていることの方が近いと感じた。鈴木氏は利権をむさぼる人ではない。また佐藤氏担当検事の西村氏も指摘していたように、鈴木氏はその政治力、押しの強さ、理念を実現できる強さから多欲な他人、たとえば田中真紀子から嫉妬を受け、しかも鈴木氏自身の欲が少ない為、そのような嫉妬自体に気がつかない。従ってその地位から引きずり下ろされたという。

鈴木氏は立派な政治家だ。そして鈴木氏とタッグを組んで日本の国益の為に頑張った佐藤氏も立派だ。二人とも真の日本男児といえる。

一方の魑魅魍魎、事なかれ主義、必要な時には鈴木氏に土下座してまで従う姿勢をとりながら、いざ鈴木氏が訴追されると、「鈴木氏の強いプレッシャーによってあんなこと、こんなことをさせられた」と掌を返したようなことをする外務官僚たちとは対照的だ。

僕が興味深かったのは検察官同士のこの会話だ。「この国=日本の識字率は5%以下だからね。新聞に一片の真実が出ているもそれを読むのは5%。残り95%の世論はワイドショーと週刊誌によって形成されるのだ」。

鈴木氏と佐藤氏とが国策捜査の対象になったのは、「時代のけじめ」のためだと(検察官が)いうが、それを望んだのは僕ら一般国民の空気だ。マスコミのもたらす表面づらをなぞった情報でもって二人を断罪しようとしたから特捜が動いたのだ。

その意味ではワイドショーと週刊誌によって物事を判断する低俗な僕らが彼らを獄に追いやったともいえる。

僕らは猛烈に反省しなければなるまい。
(韓国の龍/2009-02-25)
知識欲を掻き立てられる本です |||||||||||||||||||||||||||||||
著者の本を読んだのはこの本が初めてだったが、詳細な事象に基づく淡々とした文章展開で、著者の知性の高さが感じられ、一気に読み終えた。政治とその裏で権力に平伏し自己保身に走る官僚の姿をありありと想像させられた。

田中真紀子が引き起こした外務省での騒動、鈴木宗男との確執、外務大臣更迭に至るまでの経緯など、一般に報じられていない内部事情を公開しており、こういう事実がもっと国民の知るところになるべきだと感じる。

日本国民は人気(にんき)ばかりで政治家を選ぶ傾向が多々あるが、あまりにも政治音痴過ぎるのもどうかと考えさせられる。「出る杭は打つ」という暗黙の風潮、成功者や目立ちすぎるものを妬む社会、日本が政治・経済の成長を停滞させている要因であり、将来を考えるとなんだか日本という国に対して悲観的になりました。私自身、海外生活が長くなりましたが、本帰国することは当面ないですね。

とにかく、読んで後悔する本ではありません。一読の価値はあります。
(mineralwater/2008-04-12)
情報屋 |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ムネオ事件の内幕を赤裸々に綴っただけでも超一級の歴史資料。「国策捜査」の中身を知ると、あのマスコミのバッシングは何だったのかがよくわかります。そういえば、あのころ世の中おかしかった。小泉旋風と構造改革の熱が冷めた今、残ったのは著者が指摘しているナショナリズムとワイドショー政治だけなのかと思うと暗澹たる思いです。真面目にものを考えている人はどこにいるのだろうか。

読みどころは、拘置所に入ってからの検察官とのやりとりだと私は思います。誰もが拘禁症状に苦しみ、外に出たいと思う塀の中で、妙に生き生きしているのは、著者が生粋の情報屋だからです。情報屋にとって、情報そのものは問題ではない。情報のやりとり自体が問題なので、情報が入ってこない塀の中では、検事とやりとりするしかない。そこから意味を見出すことこそ、情報屋の情報屋たるゆえんです。情報の雑音も多い外部の世界から隔離され、一点にのみ精神を集中できる喜び。この部分の文章には、そうした喜びがあふれています。

驚くべき記憶力によって可能になった検事とのやりとりの再現によって、あの時なにが起こっていたのかという真実を知るとともに、喜びにあふれた文章を読めるという、読書好きならたまらない魅惑の本です。 (文字読み/2007-11-11)
 私は、「佐藤優」に関しては、「遅れてきた中年」だ。
 実のところ、普段、新聞からもテレビからもラジオからも週刊誌からも縁遠い生活をしている私は、外務省汚職の「佐藤優」事件は、全く無知であった。
 ムネオに関しても、時代遅れの小型「田中角栄」程度の印象しかなく、しかも、北海道で再び選挙で当選し、日本人は芸能政治しかできないの? と端から馬鹿にしていた。
 真紀子氏に関しても、なんで外務省と揉めているのかさっぱり理解できなかったし、昨今はほとんど脳髄に残っていなかった。

 佐藤優との出会いは、皮肉なことに、「ラスプーチン」が取り持った。
 ラスプーチンのことをちょっと調べてみようと思い、ネットでアレコレ検索しているうちに、本書のレビューにたどり着いた。そして、その「熱気」にびっくりしてしまった。
 いまどきの日本に、これほど多くの人を真に熱くさせる文筆家がまだいたのか!?
 それで、佐藤優とはどんな人なのか、是非自分も触れてみたくて、本書を手に取った。

 …その結果、確かに皆が熱くなるのはよく理解できた。
 私自身も、最初は睡眠薬代わりにと思い、夜寝る前にちょっとつまみ読みし始めたのだが、途中で、巻を置く事能わざる状態になってしまい、結局、翌日は勤めもあるというのに、明け方3時過ぎまでかかって、一気に読了してしまった。というか、させられてしまった。
 これは、ブラックホール並みの重力と、驚くほどの知的魔術に満ちた本だ。
 そして、多くの人が驚嘆と疑惑をあらわにしているように、佐藤優という存在は、はっきりいって日本文壇に於ける「スーパーノヴァ」だ!!

 内容に関しては、他の多くのレビューが意を尽くしているとおもうので、私はただ一言。
 この間までの私のように佐藤優が何者かまったくわからなかった人は、是非、本書を手にとって見てください!!! (柴風/2009-02-11)
情報専門家として国家の権力を知り尽くした著者は、「国策捜査に巻き込まれた以上、勝ち目は無い」と考える。その上で、検察との心理ゲームにおいて、事実と異なる供述をすることなく、被害の最小化を図る筆者の胆力が、著者の情報専門家としてのキャリアや美学を良くあらわしている。
 検察側が用意した穴(検察が構築したストーリー)を著者が選択するシーンを読むと、「検察=正義の味方」といナイーブなイメージを持っていたことを反省するとともに、それを助長している記者クラブに代表されるマスコミの問題点についても考えさせられる。
今回の国策捜査の目的や背景に対する著者の見立てや、田中真紀子が外相となってからの外務省の混乱に関する記述も非常に興味深い。また、川上弘美の解説も秀逸である。
今後のニュースの読み方を変える、価値のある本である。 (BOB/2008-08-07)
 本書は、鈴木宗男氏の「懐刀」であったノンキャリア外交官佐藤優による、背任と偽計業務妨害事件の前後の経緯と、逮捕されてからの拘置所内での検察官とのやりとり、そして事件の全貌に関する自身の分析を克明に書いた作品です。克明にという点が重要です。

 著者の巻き込まれた「国策捜査」とは何か、外交官の行っているインテリジェンスとは何かが流れるようや筆致で描かれています。作家佐藤優の生まれた背景を知るのに打ってつけの本です。 (ヒソカ/2008-07-16)
国策捜査とはー  |||||||||||||||||||||||
“時代にけじめをつけるために政府は国策捜査を必要とし、ケインズ型路線からハイエク型路線へ日本の政治が移行するとき、その境界線上にいる鈴木宗男が葬り去られるしかなかった。 その渦中にいた自分も−” 実にショッキングな内容でした。 恥ずかしながら国策捜査なるものが何かも知りませんでした。さらに歴史上それが何度も行われてきたということも。

佐藤氏の考察が真実なのかどうかは私には知る由もありませんが、少なくとも当事者でありながら、獄中でこのような冷静沈着な考察をすることができる佐藤氏という人物にむしろ驚嘆してしまいます。 それに読んでいて面白いのは、大物政治家にせよ、検察官にせよ、ロシア政府の高官にせよ、佐藤氏と付き合いのある人達は、みなそれぞれ一本筋の通った人物ばかりのように見受けられるのですが、これはむしろ佐藤氏と付き合う人達自身、彼の前では誠実にならざるを得ないから−というのが理由であるような気がします。 それは佐藤氏が、一個の人間としていかに誠実に生きるか、日本の外務省員としてどうすれば良い仕事が出来るか、そして世界の平和のために何が出来るか−を、ギリギリまで自分に問うてから行動するが故なのではないかと推察されます。 かなり詳細な記録書ですが、私のような素人は細かい説明は多少飛ばし読みしても、そういったものを感じ取れただけでも収穫でした。


(raywayne/2007-12-17)
 本書を読むまで、私は著者を誤解していた。こういう内容の本が書ける程の人物とは思っていなかったのだ。今はその誤解を大変に恥かしく思う。

 本書は、「当事者」が書いたものであるだけに、客観的な事実から程遠い認識も相当箇所存在するのだろうが、それを割り引いて見ても、大いに考えさせる内容である。勿論、「一人称で書かれた小説」として本書を捉える事も可能であり、また「そう考えても不思議でないほど面白い」のであるが、いずれにせよ、大変に興味深い内容である事は間違いない。

 こういう人(良い意味でも、悪い意味でも)が外務省という役所で役人をやっていたのか‥と思うと、ちょっと愉しい。 (コンタナトス/2008-03-17)
 外務省の現役官僚だった著者が、背任罪、偽計業務妨害罪に問われるまでの経緯と逮捕後の取調べや裁判の様子が、克明かつ臨場感たっぷりに描かれている。ただし、著者自身があまりにも優秀かつ冷静沈着で、私利私欲を持たない諜報部員007のように描かれているので、はたして本書に書かれている事実が真実なのか、どれほど客観性があるのかと疑ってしまう。田中眞紀子をして「伏魔殿」と言わしめた外務省という組織の複雑性や、一般市民の常識から乖離した内部抗争に関する記述は、その渦中に外交官として身をおいたことがある著者だからこそ知り得た事実であろうし、情報価値も高いと思う。著者が、外務省内部の構造を、批判も言い訳もせずに淡々と書いているのは、客観的に見ているからというよりは、著者自身が、かつてその一員として、その内部構造を当然のこととして受け入れ、活動してきたからではないかと思う。田中眞紀子については、あくまで「悪人」であることを前提に話が展開するが、この点についての記述が薄く、なぜ田中大臣があれほどまでに毛嫌いされ、外務省から排除されなければならなかったかについて、説得力を欠く。ここに、著者の「外交の専門家」たる元外交官としての傲慢さを感じる。 (Izolde/2008-04-19)
なぜあのときあれほどまでに鈴木宗夫がバッシングを受けたのかよく分かりました。そして、国策捜査という民主主義に対する挑戦もよく分かりました。大手マスコミがほぼ腐っている現状では、このような本を通じてしか事実に近づくことができないのは本当に恥ずかしい話です。国民の知る権利を侵害してるのは大手マスコミなんじゃないかと最近つくづく思いますね。どのような理由があるにせよ、簡単に権力に迎合し、その瞬間瞬間の事実をきちんと世に問うことができないマスコミなら、もう必要ないし、第4の権力を掲げるのはやめてもらいたいです。
まぁ、しかし一方で、人間が作る世の中なんて完璧じゃないのも事実でしょうから、真実は歴史家の手に委ねようという著者の姿勢に非常に好感を覚えます。
最後に、やっぱり最後まで筋を通す人間は格好いいと思いました。真の愛国者ってきっとこういう人です。読んで損のない本です。 (出足は最悪/2009-01-18)
日本近現代政治(史)に興味ある人なら読んでおくべきというか読んでて然るべき書だと思います。この手の内容は(私の頭に入らないだろうと)敬遠していたのですが、すらすら読めました。

著者の、端から見たらストイックな生き様に感動し、文庫版後書き(p539)を読んでは格好良いとはこの事かとしみじみ想い。
解説者の川上氏の文章前半にもどかしさを覚えたのも束の間、p545からの鋭い視点に感銘を受け。

読んで良かった!もっと早く知るべきだった!
熱心な読書家ではないですが、そう思った本は・・・・・・久しぶりです。

佐藤さんには公に発表する事を選んでくれてありがとうございます。

同時代に彼や彼の様な傑物がいることに想いを馳せつつ失礼します。 (アリア/2009-01-21)
身柄を拘束された被疑者が、次々に検察が掘った穴に陥落していくなかで、超人的な精神力を持って否認を続ける、佐藤優氏のパワーに驚かされる。取調べの担当検察官である西村氏とのやり取りも、スリリングで興味深い。佐藤氏は、512日に渡る拘留期間にもめげず、却って、これを読書をし思想をする良い機会と捉える。

国家という組織の力を持って、国策で逮捕されたならば、あとは、検察官の作った作文に従って落ちるしか道はない。執行猶予という「弁当」を付けてもらって、第二の人生を歩むしか道はないのだ。それが普通であるのだが、佐藤優は、国家、国体維持のため、国益を第一として行動する。自分の身を守るために、供述するのではなく、日本におけるインテリジェンスの専門家として、筋を通して、検察側と対立する。

最高裁まで行っても、有罪の判決が出ることは間違いないが、数十年後に明らかになる外交機密情報によって、自分の主張が正しかったと証明されることを見越した上で、否認を続けるのだ。

本人は起訴休職中の外務省に戻る気はないようだが、このような有能な情報マンを失った場合の、日本の国益の損失は大きい。ただ、本人もこの事件があったおかげで、本の執筆や講演活動を行うことが出来て良かったと、ある講演会で話はしている。実に大局的で、前向きの解釈をする人だ。

この国策捜査の歴史的位置付けとして、ケインズ型公平配分路線から、ハイエク型新自由主義へと移る、「時代のけじめ」として行われたものだと分析しているあたりも、興味深い。さらには、国際協調的愛国主義から、排外主義的ナシュナリズムへと国際路線を変更するために、格好の事件となったとの記述もあり、なるほどと思わされる。

最後に、総理経験者にまで話が及びそうになった段階で、上の圧力で捜査にブレーキがかかった。最後まで国家権力によって左右された事件だったのだ。 (ひろ×3/2009-01-12)
とても面白い本です。外交・検察官の取調べ・政治家・国策などについて考えさせれる本です。特に被疑者と検察官との駆け引きは息詰まるような迫真さがあります。またロシア外交をめぐる秘話などとても興味深いです。非常に内容の濃密な本です。国家の真実を知るのに役立つ本なのではないかと思います。厚い本ですが、最後まで、飽きさせずに読ませてもらいました。著者の国家への姿勢は、終始ぶれなく一貫しているように思いました。その姿勢には、感嘆させられるものがありました。 (フィラデルフィアン/2008-07-19)
 情報専門家として国家の権力を知り尽くした著者は、「国策捜査に巻き込まれた以上、勝ち目は無い」と考える。その上で、検察との心理ゲームにおいて、事実と異なる供述をすることなく、被害の最小化を図る筆者の胆力が、著者の情報専門家としてのキャリアや美学を良くあらわしている。
 検察側が用意した穴(検察が構築したストーリー)を著者が選択するシーンを読むと、検察=正義の味方というイメージを持っていた自分のナイーブさや、それを助長している記者クラブに代表されるマスコミの問題点についても考えさせられる。
今回の国策捜査の目的や背景に対する著者の見立てや、田中真紀子が外相となってからの外務省の混乱に関する記述も非常に興味深い。また、川上弘美の解説も秀逸である。
今後のニュースの見方を変える、読む価値のある本である。
(tenagazaru/2008-06-22)
ラスプーチン(1871-1916)・・・ロシア帝国崩壊の原因を作った祈祷者。
その題名から、日露関係に関する詳細が記述されているものと思い読み始めたが、
内容は鈴木宗男氏の贈収賄事件にまつわる真相を明かし、そこから国策捜査について考察するものであった。

第1章は、著者の逮捕前夜の状況から始まり、第2章以降は時計の針を戻して、
田中真紀子外相と鈴木元外相の確執と日露関係を通じて著者がこの政争に巻き込まれる経緯が書き進められていく。
その中には、ロシアの政治家の気質やゴルバチョフからエリツィン、プーチンに至る日露関係についてもできるかぎりの詳細が書かれており、興味深かった。
ただ、政治の権力関係や外務省内部のドロドロした人事の話にはあまり興味がなかったので、読み始めは興味よりもは嫌悪感のほうが強かったのも事実である。

そこから、俄然面白くなったのは、第5章以降に書かれている国策捜査の考察である。
 「国策捜査とは、時代のけじめをつけるもの」であり、
 「鈴木宗男事件とは、公平分配型の政治(小泉内閣以前の政治)から自由主義型の政治(小泉内閣の政治)への転換点におけるけじめであった」
というのは非常に興味深かった。
政治の転換点に時代のけじめがあるというのは、いつにおいてもそうだと感じられる。
昨今の安倍内閣から福田内閣の転換においても、あれだけの不祥事が立て続けに明らかにされたというのはなにか時代のけじめのようなものが感じられる。
そこから一歩先に進めて、安倍氏が組閣した人事を引き継いだ福田内閣では不祥事が全く起こらないというのもなにか納得がいく。

本書を読んでいて残念だと思うのは、検察の捜査にこれだけ冷静に対処している人でありながら、
あまりにも事件における自己の正当性や情報のプロであることを繰り返し強調されるので、
読んでいて自尊心が強い(プライドが高い)人という印象を持ってしまったこと。
ただ、ムネオハウスや疑惑のデパートなどと揶揄された鈴木宗男氏の再評価ができたのは非常に良かったと思う。
過去のロッキード事件やリクルート事件に関しても、分析した書物があれば機会を捕らえて読んでみたいと思った。 (/)
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野蛮人のテーブルマナー
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講談社(2007-12-07)
佐藤 優
売上順位:43990
¥ 1,050(中古:¥ 197)

レビュー総評点:28
野蛮人の優しい入門書 ||||||||||||||||||||||||||||
 雑誌『KING』連載をまとめたもので、インテリジェンスの作法・技術を、女を口説くため、会社で
生き残るためなどの目的にも利用できるものとして一般のビジネスマン、若者に紹介する。

 興味深かったのは情報源として、いかに他人と付き合い、また質問によって相手の知識などを評価す
る方法についてや、会話についての独特の記憶術など。

 本書が佐藤氏が今まで書いたもののなかで一番ライトなものだろう。インテリジェンスの世界を垣間
見れるし、安くて簡単に読める。物足りなければ次の著書へ進めばいいので… (k_1924/2007-12-16)
雑誌KINGに連載された文章と対談等をまとめた一冊。鈴木宗男さんとの対談も含まれている。
相変わらず佐藤さんの博学博識が冴える。また今回は下ネタも入り読みやすい。公務員としてしての守秘義務を守りながらここまで書かれると言う事は、裏を返せば、さらに凄いドロドロした世界が外交上にはあるのだろう。
今回はかなり軽いノリなので、がん細胞化した官僚組織(永遠に増え続ける)の改革にはAV(アダルトビデ)業界のシステム導入が良いとか。
また外交上での付き合い方は一般ビジネス界でももちろん通用することを事例を挙げて説明しているが、基本的には全て人間関係で世の中が動いていることでもある。
いずれにしても世界の動きを多様な価値観を内蔵する佐藤さんのような専門家が増える事で日本の国益に繋がるのは間違いない。逆に言うと、いかにテレビやネットの2択あるいは一刀両断的な世界の見方の危うさを佐藤さんの出現により多くの人が認識しただろう。 (dream4ever/2008-02-03)
本書では、佐藤さんの一人称もしくは、鈴木宗男衆議院議員や国際ジャーナリストの
河合洋一郎氏らとの対談形式で、様々なトピックをインテリジェンスという切り口で
料理し、時にはインテリジェンスのビジネスへの応用方法も紹介されています。

これまでの氏の著書に比べて読みやすく、かつその切り口や分析はいつもどおり、
切れ味するどく知的好奇心が大きくくすぐられます。

河合氏曰く、外交界のイチローである佐藤さんの著書を読んだことが無い人にはとっ
かかりとしてお勧めです。

蛇足ですが、個人的には佐藤さんが村上春樹や高橋留美子(マンガ家)の作品に触れ
外務省のゾンビぶりをマンガ「人魚の森」の人魚になぞらえていた点や、別の著書で
二・二・六事件に触れ宮部みゆきの「蒲生邸事件」を引用されていたこともあり一般
の小説やマンガも良く読まれている(だろう)ことに驚きつつ、親近感を持ちました。

(New JJ-K 72/2008-01-09)
外務省事務官として辣腕を振るってきた著者の、人脈の作り方使い方情報の取り方扱いかた等々がロシアで活躍していた実話を挟みながら具体的に書いてある。
後半は対談、新聞紙面で結果としてでしか知りえなかった内情を語ってくれている。
「必要な情報の90%は公開情報の中にある」というのは面白い。ビジネスマンには必須の様々なテクニックが明るみになっていて勉強になる。 (山根晋爾/2009-03-10)
他の佐藤優本に比べると、分量も少なめで読みやすい。また、映画「グッド・シェパード」を見た後にそれについて対談するなど、最新の話題に沿って文章が書かれている。

だからといって陳腐になったり、情報量が少なくならないところがこの著者のすごいところ。イランのピスタチオ利権、北朝鮮のマカオ秘密口座解除などの情報と、自爆テロはラーメンでなくなるという私見など、なるほどと思わされる部分が多い。特に河合氏との対談はさらっと書かれていることに深い裏がありそうで面白い。
(ショーンズ/2007-12-23)
本来外交上の情報収集に活用されているインテリジェンス(諜報)の技法を企業や個人など日常生活に応用しようと雑誌に連載された記事をまとめた本。

情報源の見つけ方、接待、記憶術、組織の中での生き残り方など、確かにビジネスにも応用できそうで、わかりやすくまとまっており楽しく読めました。

ハードボイルド小説読んでいるような感じですが、佐藤優さんは実際に外交官としてリアルに経験してきたことなんですよね。改めて外交官ってカッコイイなー、すごいなーと思う一冊です。 (たつこばあ/2009-03-21)
インテリジェンスのやり方を、テーブルマナーとして著した本。
こんなにも奥深いものかと、勉強になった。
特に相手のレベルを見極めるのに、わざと間違った質問をするところなど、
賢い人の話には気を抜けないと!

ちょっと違うが、佐藤優と田中森一の共著「正義の正体」でも、田中森一が
検察の調書の信憑性を高める為、わざと間違ったりするって言ってたなぁ。
奥が深い。 (勤労奉仕/2009-01-15)
雑誌の連載を集めて出版したので仕様が無いのかもしれないが、話題が浅く散逸しがちで、この著者のほかの著作を読んでからであるとどうしても物足りない印象がしてしまう(個人的には「自壊する帝国」が秀逸)。
一般論よりも、様々な人物との付き合いを深く掘り下げて描き出すほうがこの著者には向いているような気がする。あと用心深いからか、人の話を引き出すのが元々の職分だからか分からないが、あまり対談には向いていないような気がする。
(金田一/2008-02-07)
買い! ||||
佐藤氏の作品は何冊か読んでいるが、この作品はもともと雑誌に掲載されていたためか、非常に読みやすい。読みやすいが、中身はなかなか濃く、間違いなく買って損はない。

いかにして相手とのコミュニケーションを発展させるか
贈答品は何がいいか
どのように記憶力を上げるか

等々、実社会で役に立つヒント・知恵が沢山紹介されている。もともと外交の世界で、しかもクレムリンの奥深くまで人脈を築いた著者の知恵を読者に紹介してくれる、非常にありがたい作品である。 (tochiai4/2008-02-20)
KINGの紙上の連載や対談をまとめた本です。
ちなみに、半分以上対談です。

佐藤さんの本を全く読んだことが無い方なら
連載内容は、ネットに無料公開されている「地球を斬る」を読んでみて
興味を持ったなら楽しめるでしょう。
もう少し、くだけた内容です。

対談は、KINGホームページのこぼれ話から無料で公開されている
河合さんとの対談がほぼそのまま載ってるので下読みしてあえば楽しめるでしょう。

それ以外にも、グットシェパードについての河合さんとの対談と
鈴木宗雄さんとAV業界の人との対談が入っています。

佐藤さんの本の系統で言うなら「国家の謀略」に近い感じの本で
肩の力を抜いて楽しめる感じの本です。

連載をまとめもらうだけでも嬉しいのですが・・・・・・・・・・・。
ものすごく勝手な言い分ですが、まとめてほしい連載は他にもあり
まとめる連載分が足りないなら対談を入れずに、もう少し溜まってからて出して欲しかった。 (明日天気にな〜れ/2008-02-08)
最近“インテリジェンス”というキーワードで人気のある佐藤優氏の一冊。

修羅場をくぐりぬけてきたであろう荒々しいながらも精密な知を知りたかったのだが、タイトルに沿った内容は前半部分のみだった。
後半は、鈴木宗男氏をはじめとして、面識のある政治分野の著名人との対談などが多かったため、それぞれの話題に興味があればいいかもしれないが、キャッチーなタイトルに惹かれて購入すると損をした気分になるかもしれない。

ただ、著者はこの本について、あとがきにて「テキスト」との表現を使っているので、もしかしたら佐藤氏の意図と、編集・出版側の意図の間に微妙なズレが存在したのかもしれない。

〜本文引用〜

インテリジェンスとは、生情報(インフォーメーション)に評価や分析を加え、国家の政策の遂行に役立つように活用する知的操作を加えた情報を指す(004)


「人柄を知るのに茶なら1年、酒なら1ヵ月、賭博とセックスならば1時間」(029)

同一人物と3カ月以内に3回以上、食事をすると、アルコールを伴わなくても、一応の信頼関係はできる(029) (Hiroshi Ichinohe/2009-06-28)
 既に廃刊となった『KING』(講談社)の連載をまとめたもの。
 大日本雄辯會・講談社にとって由緒ある『キング』から名称を受け継いだ『KING』は、未見でありどのような雑誌であったかは不明であるが、30代のビジネスマンを対象にしたものであったらしい。
 本書の文体は、佐藤優氏の語り下し形式を主にして、掲載雑誌の読者の興味があると思われる話題を材料に用いながら、佐藤優氏の外交官経験(ソビエト・ロシア経験)から、公のルールと「野蛮人」と本書が呼ぶゲームのルールの世界のせめぎあいを描いている。
 この「野蛮人のテーブルマナー」から、ビジネスを勝ち抜く情報戦術の教訓が得られるかは別として、佐藤優氏の他の著書に比較して「取っ付き易さ」は保証できる。 (歯職人/2009-03-25)
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自壊する帝国
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新潮社(2006-05-30)
佐藤 優
売上順位:56507
¥ 1,680(中古:¥ 236)

レビュー総評点:570総評点300以上の注目商品
この著は国策捜査で有名になった佐藤優氏の、外交官になった85年からソ連が崩壊する93年頃までのモスクワ生活回想録である。

恐らく事実であろう。

事実にしては凄い体験だ。ソ連の政治家、思想家等とのコネクションの構築の過程、ソ連邦各国でのクーデターに立ち会ったときのこと細かい説明、ゴルバチョフ死亡疑惑の際に生存の情報を真っ先に得た際の状況等々、現場に立ち会った著者の体験が次から次へと記されている。

『国家の罠』でも感じたことだが、著者が義理なり信念を非常に重んじているのが著書の軸を形成している。この軸からぶれない。それが国策捜査であれ逮捕された著者の本が広く支持されている理由の一つであろう。

もっと仕事をさせたかった、と思うと同時に仕事を今でも続けていればこの内容が表に出ることもなかったのかと思うと複雑な気持ちになる。早く次作を読むこととしよう。

ところで、著者の酒の強さには脱帽、本を読んでいながらもこちらが酔ってしまいそうな酒量である。御身大切に・・・



(草雲雀/2006-11-13)
孤高のインテリジェンス |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
いや実に面白い。「国家の罠」でもそうであったように、読み進めていくうちに小説と錯覚してしまう。それほどに読者の想像力を刺激する。

この著は氏が外交官としての成長と外交官兼スパイになるまでの過程を、ソ連が自壊しロシアに至る大きな歴史の流れに組み込んだものである。そもそも、ソ連が自壊する過程を知らない人は意外と多いはずである。その自壊の過程は実に人間臭く有機的な匂いを放っている。それを知る事が出来るだけでも一読する価値がある。また、その自壊する過程の中で氏の果たした役割は非常に大きいのである。

西側の外交官にして共産党派に多くの人脈を持つ異能の外交官。卓越した洞察力と孤高のインテリジェンス。真にエリートであると痛感させられる。

なお、今回は艶っぽいエピソードが適宜導入されており、思わずにやりとしてしまう場面も多々ある。

とにもかくにも、日本政府は逸材の人物を自ら手放してしまった。殊に外務省の体質弱化には目を覆いたくなるものがある。

(embody_invisible/2006-07-24)
前作『国家の罠』との見事な連環 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
 購入してそのまま、一気に読破しました。面白かったです。前作『国家の罠』を読んで以来、佐藤優さんの類い希な知性と、その文章が醸し出す前向きなユーモアセンスに魅了されてしまいました。
 今回の作品では、情報分析官としての修業時代に遭遇した、「ソ連崩壊」という大事件を佐藤さんの独自の視点から描いています。史実を淡々と時系列で述べていくのではなく、ソ連という巨艦が沈没していくプロセスを、その現場に居合わせた人々の動きを追うことで、緻密な人間ドラマとして描いている、力作です。
 それにしても、モスクワ大学での反体制派学生とのひとつの出会いをきかっけに、アカデミズムやジャーナリズム、守旧派の共産党幹部にまで人脈を広げ、様々な情報を取ってくる佐藤さんの姿は、ラスプーチンというより、ゾルゲのようにも思えました。
 また、物語の最後で、前作と見事な連環を見せるのですが、その辺りの筆力は、熟練した小説家のようでした。 (ddt/2006-06-14)
筋を通すということ |||||||||||||||||||||||||
佐藤氏によるこの新著は、内容時系列的には前著「国家の罠」から遡り、80年代後半からの著者の交友関係の拡大の様子を通し、動乱期渦中のソ連ロシアの知識人と官僚の思考と行動を活写して、きわめて興味深い。

同時に、本著には、「国家の罠」にあらわれた、著者の一個人、あるいは一職業人としての行動のバックボーンを裏付ける意味合いが込められている。それは、困難な事態のなかで「筋を通す」ことに価値を見いだす一群の者たち、その間で国境陣営を越えて「真実を伝えたい」と願いあう欲求、そうした交流をとおして「実際に真実が伝わる」という信念、といったようなものであろうか。そこには、当然、多くの自己撞着、矛盾、敗北、転向、挫折が含まれるにせよ、である。

著者は直接に書いてはいないが、問われるのは「では日本の知識人、官僚、政治家はどうなのか?」ということであろう。それにたいする答えを私はもっていないけれども、少なくとも、この「自壊する帝国」も前著と同じく是非読むべき一冊である、ということは確かに言えると思う。 (のんたろう/2006-08-20)
最高にスリリングな歴史「小説」 |||||||||||||||||||||||||||||||
回顧録な以上、本来はノンフィクションというべきなのだろうけれどそのあまりにも魅力的なストーリーに外交について過剰な幻想、期待を抱かないために「小説」として享受すべきと自戒したくなるほどの一冊。

外交とは普段から先々を見据えて人脈をいかにつくり、発展させていくかということをさまざまなエピソードでもって極めて説得的に教えてくれる。その際に要求されるのはただ単に歓待でもって媚び諂うことではなく、信念、教養で持って人的信頼をつくることそのものであることが何度も何度も語られている。

特に人が苦境に立ったときにどのように振舞うか(おそらくそのことは著者自身が鈴木宗男氏とともに国策捜査に嵌められたという苦境の中で痛感したこともあるのだろうが)が、その人の価値をも示してしまうということをリトアニア独立紛争、ソ連邦解体を決定付けたクーデター騒ぎなどを通して垣間見せている。まさに佐藤氏があとがきで記しているように本書は外交理論の書ではなく、まさに外交精神の書とでもいうべきものであろう。 (遊鬱/2006-06-01)
ラスプーチン青春記 ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
記録的価値もさることながら、筆者自身が歴史の転換点に立つにいたった
プロセス、「外交官佐藤優」が出来上がるまでの成長譚が非常に興味深く、
甘酸っぱい青春小説のような感想を持ちました。

鈴木宗男、アントニオ猪木らとの奇怪な人脈。クーデターのその朝に街中の
キオスクから小銭を買占めて情報屋のインフラを一手に押さえこみ、超高級
ホテルでは丼一杯のキャビアをウオトカで流し込んで大物政治家の懐に飛び込む。

印象的なのは、これらのいかにも「ラスプーチン」的なエピソードではなく、
行間から立ち上ってくるすさまじいまでの勉強に対する執着心でした。
秘密情報の見立てを行うべく現地新聞に赤線を引く姿と、国策捜査の果てに
獄中で決意した余生−ラテン語の古典を訳す姿は不思議と重なります。

神学を究めようとチェコへの留学を思ったことをきっかけに、なぜか
ノンキャリア3等書記官という外交の獣道に入り、モスクワ大学で議論と
ウオトカに明け暮れていたとき、同年代の日本人はバブルに狂奔していました。

あとがきで、著書「国家の罠」がこれほど話題になるとは思わなかったと
述壊していますが、その後に出版される作品が全て好調なセールスを記録
している背景には、本の内容だけではなく、特異な経歴と学問への真摯な
向き合い方で個を確立した、佐藤優という一人の日本人が我々に訴えかける
何かを持っていたからだという気がします。 (ninjaninja/2007-01-29)
宗主国なき帝国。 ||||||||||||||||||
旧ソ連崩壊直前、モスクワ大学をはじめとしたインテリ層や政界要人と親交があった著者の目を通して描く、宗主国なき帝国・自壊の様。

ゴルバチョフが推し進めたペレストロイカ・グラスノスチが結局、共産党一党独裁体制の最中心部である党中央委員会の「チェルノブイリ=炉心融解」を引き起こし、帝国自壊は加速度的に進んだ・・・

政治・経済・学問などあらゆる部分にダブル・スタンダードが横行し、自己矛盾に辟易とする著者の周囲。「不満」というガスの充満、「炉心」の温度上昇がヒシヒシと伝わってくる迫真の筆致。祖国を良くしたい、という愛国心よりはアンシャンレジームの護持・保身のみの体制側に所詮は「宗主国なき帝国」を維持・延命させる術はなかった。

著者も終章に近い部分でいみじくも語っていますが、本書で語られている内容は、著者が大使館職員として冒すことができるギリギリのリスクのリターン。氏がそんなリスクを冒してまで求めたものは何だったのか。氏の所業は本当に「私的外交」だったのでしょうか?深く考えさせられた書でした。 (driven/2006-11-11)
 国家は崩壊することがあります。外圧と、内側からの自壊とがあり、ソ連は国家自壊の例です。国家の崩壊は、今の日本も例外ではありません。61年前の日本には再建するだけの国家・国民の共通認識があったものの、今の日本には内側から復興するための核となる原理が見つからないだろうと著者は危惧します(P. 17)。したがって、「ロシア国家とロシア人の本源的な力が、生命力を失ったソ連という外皮を超越していった(P. 17)」ソ連自壊の過程に学ぶことは多い。だから、当時、外交官としてソ連崩壊に立ち会った際に見聞きしたことを正確に記録したいというのが本書の目的です。

 偏ったエリート意識に凝り固まった外交官も多い中で、著者の佐藤優氏は日本の国益を考え、知識と体力、倫理観を兼ね備えて泥臭い情報収集に当たる人物との印象を受けます。神学の素養、ウオトカに耐えうる体質、情勢に左右されない信義、が佐藤氏の人脈を豊かにしているのは本書を読めば明らかです。

 佐藤氏は2002年、いわゆる「鈴木宗男事件」で背任と偽計業務妨害の容疑により逮捕されました。この経緯は『国家の罠−外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)に書かれています(私はまだ読んでいません)。しかし、私も本書を読むまでは佐藤氏が外務省の権力抗争に巻き込まれたことは存じ上げませんでしたし、佐藤氏が高く評価する鈴木宗男氏についても世間のこき下ろしに特に疑問も感じませんでした。結局、本書を読むと優秀な外交官を我々、国民は国家の宣伝・扇動に乗って失ったのだと感じざるを得ません。

 テレビや新聞は情報としてどこまで信頼できるかが難しく、我々は時に新聞社やテレビ局、国家の意図により欺かれることがあります。日本はスパイ天国とも呼ばれ、日本人は情報音痴とも評されます。その意味を本書で痛感しました。ぜひ、多くの方に読んで頂きたい。
(jinchoku/2006-09-10)
これはすごい |||||||||||||||||||||||||||||||||||
手島龍一氏との共著「インテリジェンス」から流れてきました。

筆者が如何にしてロシア専門家となったのか、
そしてどのようにしてソ連崩壊時の主要な政治家と知り合えたのか、
などなど、いずれも興味深い話題で、一気に読み切れました。
ロシアにおけるキリスト教に関する予備知識も適宜補われており、
勉強になりました。

「インテリジェンス」冒頭にある、「秘密情報の98%は公開情報を
再整理することにより得られるという。」の例とも言える新聞の読み方
なども披露されており、興味深かったです。
(kaz-p/2007-01-05)
一気に読めるおもしろさ |||||||||||||||||||||||
400ページをこえる本だが一気に読んでしまった。ソ連崩壊前後の様子が佐藤氏の個人生活から鮮やかに切り取られ、読者を退屈させない。単なる国際政治分析本ではなくストーリー性もあり、なによりもあの時代に生きていたインテリや官僚達の生活の臭いがしてくる。著者は例の鈴木宗男スキャンダルの時にスケープゴートのごとく外務省から三行半を下された人物である。著者の外務省内部の描写も非常に客観的で好感がもてる。うらみつらみの感情があまり感じられないのはさすがと思わせると同時に、よけいに日本外務省のいいかげんさがよく理解できる良書でもある。 (Leo/2006-12-29)
異能外交官、佐藤優の誕生 ||||||||||||||||||||||||||
異能外交官、佐藤優の外務省入省からソ連崩壊までの約7年の回想録です。外交官としての彼の生い立ちがえがかれています。
色々と驚かされたことはありますが、佐藤氏が外務省に入ったのは「チェコに行って研究活動が出来そうだから」という理由だってことですね。
結局却下されたみたいですが、結果として彼がソ連課に入れられたおかげで、
我々は旧ソ連崩壊の裏側を彼の著書において知ることができるわけです。当時の外務省幹部に感謝ですね。
さて、本書では、彼が現在行っている「情報力」を与えてくれた大学の友人サーシャや、正教の神父だったのにムスリムに回収してしまう怪僧、
ブルブリスやイリインらを始めとするソ連の政治家との出会いなどが非常にヴィヴィッドに語られていますが、
やっぱり異能なんですね。書いて1年ちょいの人とは思えない。読み手をぐんぐん惹きつけます。
本書は、著者も言っているように、前作「国家の崩壊」と対をなす本です。
つまり理論的な小難しい話はそんなになくて、読みやすさも「罠」級ですね。
佐藤の入門書でもありますから、本書を読んでから罠などを読むと、より深く話が理解できるかもしれません。
佐藤ファンは勿論、そうでない方にも絶対オススメの本です。


(フョードル/2006-06-06)
知的好奇心を満足させる書 |||||||||||||||||||||||||||||
理知整然と詳細に書いた
外交官の記録である

もちろん機微な部分で
外交的、個人的に記載できない
内容は省いてあるだろう

それでも登場した人物が
実在する人物で
その行動、内面の動きなど
実際にその場にいなければ
ここまで詳細に書けない
そこに登場する彼らはすごく魅力的だ

思想の違いを乗り越えて
かれらと友情を交わす姿に
思わず感動してしまう。

著者は現在被告人である。
裁判において、自分の心証を良くしようとして
書いたと非難されるだろう。

それでも自分が辿ってきた道を
忘れないうちに
詳細に記録し、まとめかった。
素晴しい人たちと出会えたこと
自分のやってきた事は
無駄なことではなかったと
人々に伝えたかった・・・

全ての物事について
一方向の情報、
一方的な判断は危険であり、
広範な情報を集め、当事者と話をし、
分析し、自分で判断することが大切だと
著書の中で諭しているように思う。 (sukechan/2006-07-01)
「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」で国策調査を一躍有名にした佐藤さんのソ連崩壊前後のおそらくはご自分の日記を元に外交官としての活動を書かれている。また神学者としての背景をお持ちの佐藤さんがいかにモスクワでアカデミックの中でも人脈を広げていたかが分かります。うがった見方をすれば、ここに書かれている事が全部本当なのか?一部はフィクションなのか?それとも外交機密として書けない事の方が多いのか?など気になる点も多い。さらに、友好を深め、接待を通じて情報を仕入れる場面が多々出てきますが(ゴルビーは生きているといち早くその情報を仕入れた事は有名)、日本側の情報は出さないのか?なども気になります。
外交にしろ商売にしろ研究にしろ正しい情報が成功への鍵だと言う事はわかります。また佐藤氏の日露関係を良くしようとしていただろういう意気込みは十分伝わってきます。
是非とも北方領土問題に関しても書いていただきたいと思います。
#拘留直前のお姿(太り気味)はこの本に出てくるモスクワ等でのグルメ接待のせいだと思うの読み過ぎでしょうか?(笑) (dream4ever/2006-12-23)
大学を卒業した同氏が外務省に入省し、英国陸軍語学学校やモスクワ大学の学生たちと共同生活を送り、キリスト教神学という学問的出自をテコにして彼らと切り結びながら外交官の卵として成長していく前半部分は、一種の青春記又はビルドゥングスロマーンとしても一気に読ませお勧め。一方、ソ連の崩壊を描いた後半は(意外なことに)ややダレ気味で詠むのに骨が折れた。(ロシアの小説を読む際にありがちだが、カタカナばかりの人名に若干辟易したせいもある。)それにしても、「危機になると男の本性が見えてくる」(356頁)とは云ったもので、人間としての生き様という点では尊敬すべき者から唾棄すべき者までロシア人も日本人と変わらないなとの感が大。また、クリュチナ・ソ連共産党中央委員会総務部長の暗殺シーン(389頁)には、何だか背筋の寒くなる思いがした。 (麒麟児/2007-12-22)
素晴らしい本だが、警戒しながら読んでちょうどいい ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「国家の罠」「獄中記」と併せて読みました。著者の知性の強靭さ、知的人脈の広さ、仕事のダイナミックな進め方など読む本ごとに刺激を受けっぱなしです。組織の中で生きる男の生き様を、国際政治の最前線でこれほどリアルに書いた本は少ないでしょう。これから社会に出る人にも、すでに出ている人にも読むたびに教えられることが多々あるはずです。

しかしこれほど素晴らしい文章家なのに、どうしても引っかかるものがあります。亡くなったロシア語通訳米原万理さんの本にも同じことを感じました。米原さんも名文章家で、読むたびにその世界に引き込まれたものでした。しかし米原氏も佐藤氏も、うまく隠そうとしているものの、心のどこかに共産主義へのシンパシーを宿しているようで、それがふとした言葉の端々に感じ取れます。わたしの気のせいかと思っていましたが、「諸君!」5月号に佐藤優氏への批判記事が出ていて、その中でもはっきり指摘されています。

佐藤氏の主張でいちばん賛成できないのは、鈴木宗男氏のやったことを擁護している点です。佐藤氏は、ケインズ型公平配分主義からハイエク型自由競争主義への転換の中で、前者の立場を取る鈴木氏が犠牲になったかのような言い方をしています。しかしこれは詭弁でしょう。鈴木氏は北方領土返還の道筋をつけると称して、医薬品の緊急援助くらいならともかく、発電設備まで国民の税金から援助して、担当企業からキックバックを受け取っていました。はたしてそこまでやることに、国民はいつ同意したのでしょうか。

佐藤氏の書く本が名著であることは否定しませんが、できれば「諸君!」の批判記事も併せて読むことをお薦めします。佐藤氏には佐藤氏独特の癖、ゆがみのようなものがあり、読者は決して氏の信者になってはいけません。 (アキレスの踵/2007-03-31)
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